【デジタルで変わる北陸のミライ】北陸DX‐vol. 2 「やさしさ」が生み出す、新しい社会 (知能ロボティクス領域 ホ アン ヴァン 准教授 ) ※e-messe kanazawaに出展予定!

 

デジタルで変わる北陸のミライ:北陸DX‐vol. 2

「やさしさ」が生み出す、新しい社会
(知能ロボティクス領域 ホ アン ヴァン(HO Anh-Van)准教授)

※e-messe kanazawaに出展予定!

 

 

医療や介護の現場でも活躍する、「人」のようなロボットをつくる

 

今後、人口減少が懸念される日本。北陸地域も例外ではありません。人々の生活に寄り添う医療や介護の現場では、ロボットなどを活用した介護などへのニーズが年々高まっています。しかし、金属で作られた無機質なロボットに介護されること、また介護を任せることに拒否感を持つ人はまだまだ多いのが現状です。 安全な介護を実現する十分な強度を持ちながらも、 人の手が伝える温かさや思いやりまでも再現する、そのようなロボットを開発すべく日夜研究を重ねているのが本学のホ アン ヴァン 准教授です。今回は、e-messe kanazawa2021でも展示予定のソフトロボティクス(柔らかいロボットを扱う研究)についてお話を伺いました。

 

― 先生は、違和感なく人間と共存できるロボットの開発に挑戦されているとお聞きしました。

そうですね。例えば工場などでよく使われている産業用ロボットは、一般的に固くて温かみがなく、非常に無機質な印象を与えます。これは、産業ロボットが活躍する現場では、速さと正確さ、力強さや耐久性が求められるからです。一方で、医療や介護など人間の生活に寄り添う現場においては、柔らかい材料でできたロボットであることが理想です。例えばアーム型のような産業ロボットによくみられる特定の機能だけに特化した設計も可能ですが、私はユーザー、つまり人間にとって違和感のないロボットを開発したいので、ヒト型ロボットを目指したいと思っています。

ロボットの開発には幅広い技術や条件が絡み合ってきますが、単に「柔らかいロボット」というだけではなく、人間の求めに応じたり、その意図を汲んだ動作を出力したりするための知能があることも重要な要素だと思っています。ロボットが柔らかさを備えると、ロボットが物理的に人間に優しく接することが可能になりますが、同時に人間がロボットに接した時にもロボットには優しい対応、つまり判断と適切な反応が求められます。いわゆる「阿吽の呼吸」ができるようになれば、人間の生活により密接にかかわることができるのではないかと思います。

 

人間との共存を目指して― ロボットに「感覚」を与える研究

 

 先生が目指されているのは、まさに人の生活にしっかりと寄り添えるロボットなのですね。開発にあたってはどのような課題があるのでしょうか。

まず柔らかいボディーをつくるためには、ソフトマテリアル(高分子、液晶、生体分子などの柔らかい物質)の開発において多くの課題が残されていました。また、人間が身近にいるということが前提なので、可動域の設定が難しくなります。例えば、産業用ロボットの可動域は計算された制限域内で設定されますが、ソフトロボットの可動域は無制限となるので、モデリング(立体物の形状を計算し形成すること)の設定の難易度が格段に上がります。さらに、人間からの接触を理解し、安全かつ適切な反応をするためには「知能」を持たせることが必要です。

可動域の設定や知能を持たせるためには、ロボットが外部からの入力を検知・判断する「感覚」を持っていることが必要です。人間が持つ視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感のうち、ロボットにとって重要なのは視覚と触覚です。これまでのロボット研究で視覚機能の実用化は普及していますが、触覚機能の普及はまだまだこれからです。その理由として、耐久性のある高性能触覚センサーがまだ存在していないことがあげられます。しかし、長年の研究の成果として、私たちはついに耐久性を備えた高性能触覚センサーを開発することができました。

開発した触覚センサーの研究資料

 

― 「触覚」を持っているロボットですか。あまり想像ができませんが、どのようなことができるようになるのでしょうか。

私自身は、ロボットに触覚を持たせることはとても重要だと考えています。触覚を持つことによって、人間にやさしく接することが可能になるからです。例えば医療や介護の現場においてロボットを導入する際に、一番大切なのは安全性です。ロボットが患者さんの腕を強く握りすぎてしまったら痛いですよね。その「痛い」といったような、触覚に含まれる人間からの感情をくみ取り、適切な対応をすることができるようになります。

さらに、言葉を介さずに接触だけで人間の感情を判断できるようになると、会話能力が低下した高齢者へのケアが効果的に行われることが期待されます。例えば、ロボットの腕を、つねる、なでる等の動作をする人間の意図を判断するために、ロボットは人工知能(AI)を使います。しかし、人によってつねる、なでる等に込める思いは様々です。ですので、この状況ではこういうことだろう、という推定する能力がロボットに必要になります。その実現のために、様々なケースや多様な人々からデータを収集し、学習しながらAIの精度を高めることで、適切に推察し、反応できるようになります。今後も、接触を通じて人間の感情を推定し、相手が望む対応ができるロボットの開発を加速していきます。

 

― ソフトロボットの開発にあたって重要なことは何ですか?

これはロボット開発全体に言えることですが、異なる複数のものを組み合わせてまとめるインテグレーションです。先ほども言った通り、ロボットの開発には幅広い技術や条件が複雑に絡みあってくるので、それらを有機的に統合することが非常に重要です。私の研究室では、さまざまな要件を高度に統合し、柔らかさを中心としたロボットの設計能力を十分に培ってきました。

 

自然界から着想を得たイノベーション

 

― 柔らかいロボットの他には、どのようなロボットの開発を手掛けているのでしょうか。

自然界のすべての現象には、何らかのバランスや法則が働いています。これらを理解し、ロボットの駆動装置または感覚装置に応用することで、新しい機構を創出できるとの考えから、動物の優れた構造や機能に着想を得た研究などを行っています。

例えば、アマガエルの手の吸盤を参考に開発した溝を持つ把持機構。内圧を測定、把握、コントロールする仕組みを高度化できたので、コンタクトレンズを持ち上げる段階から、濡れた状態にある豆腐や玉子、こんにゃく等を安全に持ち上げられるまでになっています。全国的に見ても雨の多い金沢。雨から連想されるカエルは、金沢・尾山神社の有名なオブジェにもなっているほど、地元とはなじみの深いモチーフです。また、象嵌や彫金など石川県の伝統産業には細やかな手しごとを必要とするものが多くあり、このような人間の細やかな手の動きを再現するロボットの開発は、必然だったのかもしれないですね。

アマガエルの手の構造から着想を得たソフトハンド ※マニピュレーション=把持
 

人間の「パートナー」になれるロボットを目指して―研究者の想いと未来のカタチ

 

― 先生が最終的に目指しているロボットとは、どのようなイメージでしょうか。

私にとっての理想の形はベイマックス(ディズニー映画のアニメキャラクター)なんです。映画の中でベイマックスは、主人公の「パートナー」として、時にはふわふわの柔らかい体で主人公をハグして慰めたり、時には一緒に格闘したり、様々な場面で主人公を支えます。そんな、人間のパートナーでもあり大切な友人ともなれるロボットの開発を目指して研究を続けています。

 

― 最後に、先生の研究が目指す未来のカタチについて教えてください。

様々なロボットがいろいろな形で人間と共生する、そんな社会を実現したいと考えています。ヒト型のソフトロボットでいえば、医療や介護の現場の省人化はもちろんですが、柔らかさと人間の想いをくみ取る知能や感覚を兼ね備えたロボットであれば、様々な分野で人々の生活をより良いものにする存在になれるのではないかと思います。例えば、過疎化が進む地域で高齢者とロボットが一緒にゲートボールを楽しんだり、茶飲み仲間になったり…というのも面白いかもしれませんね。また、今回e-messe kanazawa2021では柔らかいドローンの羽を展示する予定ですが、これは羽が柔らかいことで、例えば衝突のダメージを軽減できたり、羽がもとの形に復帰することで墜落を防止できたりするので、より幅広い現場でドローンを活用することができるようになります。私の研究室は、今まで蓄積してきたベーシックな研究の成果をもとに、現在は応用的な研究に軸足を置いて活動しています。今後も、いろいろな企業と協力して、実践的な研究と開発を進めていきたいと思っています。

 

― ありがとうございました!

 

 

<展示会出展情報>

ホ研究室がe-messe kanazawa 2021に出展します!

2021年7月16日(金)・17日(土)

10:00 ~ 17:00

石川県産業展示館 3号館

ブース番号:113

本記事でもご紹介した

・柔らかいドローンのプロペラ

・コンタクトレンズをつまみ上げるようなソフトハンド

・柔らかいロボットアーム

の3点を展示予定です。詳細はこちら

 

 

<本件に関するお問い合わせは以下まで>

北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携本部

産学官連携推進センター

Tel:0761-51-1070

Fax: 0761-51-1427

E-mail:ricenter@jaist.ac.jp

 

■■■今回の研究に関わった本学教員■■■

知能ロボティクス領域

ホ アン ヴァン 准教授

https://www.jaist.ac.jp/areas/ir/laboratory/ho.html