よそ者(2023/12/2更新)

こちらのページでは、誰もがなぜか興味がわく「よそ者」についての、「よそ者論」について特集しています。

敷田が今まで進めてきたよそ者についての研究や議論が集大成されたよそ者ページです。よそ者の研究ってどんなことをしているのだろう、どんな分析なのだろうという興味をお持ちの方はじっくり読んでみて下さい。

よそ者の研究特に環境社会学では東京大学の鬼頭秀一先生 の「よそ者論」が有名です。また赤坂憲雄先生の「異人論」も読む価値が高い著作です。

一方、ここにあるのは、いずれも地域づくりやまちづくりに絞ったよそ者論です。30年近く前から、「よそ者・ばか者・若者」がいたからまちづくりが進んだ、という主張が多いですが、それって思考停止ではないでしょうか?なぜよそ者がいるとまちづくりが進むのか、そこを究めないと、「たまたま、よそ者がいたからだね」または、「よそ者がいなかったらだめなのだね」、という結論になってしまうのです。

ここではそれを越えるよそ者論を展開します。

ほとんどの実績はPDFファイルで掲載しているので、印刷して自由に読んでいただけます(ただし、著作権の関係でお読みいただけないものも一部あります)。
  

★お知らせ(最近のできごと)

2023年12月05日〔著作〕
移動縁が変える地域社会:関係人口を超えて』が水曜社から出版されました。 水曜社のWebサイトに表紙付きで案内が出ました。この本は「移動縁」の考えから、都市や農村と行った枠組みを超え、多様な移動者によってつくられる社会のあり方、観光や移住だけでない新たな移動者を、各地の事例を通して説明しています。今までの「よそ者論」「関係人口論」を超える新たな概念を提示する最新刊です。

2022年3月25日
地域政策学会の研究誌『日本地域政策研究』28号に「地域再生におけるよそ者の分類と変容に関する研究―資源所有とサービス創出によるモデルの提案―」を発表しました(発表者:敷田麻実) 。関係人口の議論を整理するための新しい「よそ者論」です。

2019年3月31
敷田麻実・森重昌之・池ノ上真一(2019)「よそ者の地域定住者への変容に関する考察」,『知識共創』,(9)pp.Ⅲ 4-1~4-10.
 10年ぶりによそ者論を改定しました。今回の分析は、地域の内外を往き来するのがよそ者だとしていた考え方を、資源所有とサービス創出によってよそ者の類型化が可能という、よそ者分析の新たな視点の提示です。


★私のよそ者研究の成果が引用された論文など


よそ者って何だ

よそ者とは。。。。

よそ者とは一般に、同じ地域や空間内部にいる関係者ではなく、自分たちとは異質な存在として捉えられる人である。日常生活の中でも、「余所者(よそ者)」や「旅の人」または「風の人」として、主に地域外から来る人々を指すことが多い。そこには、自分たちとの区別を意識した「差」が存在し、自分は相手とは異なるという主張が込められている。

こうした差は時に「差別」につながり、地域内の自分たちとよそ者の差を、過度に強調することも多い。それは、地域内の人々(身内)が外から入って来る者より優れていることや、逆によそ者が地域内の自分たちを凌駕したり、害悪を持ち込んで禍をもたらしたりすることへの懸念を暗黙の前提にしている。よそ者に対するこのような設定は、意識的にまた無意識に、地域内の自分たちとの差を演出することで生み出されたと考えることができる。

よそ者の同義語

アウトサイダー、トリックスター、ノマド、風の人、ボヘミアン、ストレンジャー、まれびと、他者、異人、バガボンドなどなどいろいろな呼び名がある。これだけあるということは、よそ者は私たちの社会や組織にとっての「必需品」ではなかろうか。

地域づくりにおけるよそ者研究の魅力

よそ者は「よそ者・ばか者・若者」という言葉に表れているように、地域づくりで最近重要視されている。しかし、地域づくりの現場で、どうしてよそ者が積極的に評価されるのか、また地域づくりによそ者が寄与できる理由は何なのかなど、地域づくりにおける「よそ者効果」やそのメカニズムは明らかにされていない。そのため、素朴な「よそ者信仰」が地域づくりの現場で喧伝されることも多く、よそ者に過度に依存するなどの誤った選択が行われることも多い。


 しかし、こうした流布や多用にもかかわらず、地域づくりと関連して分析した研究はほとんどない。たとえ、あっても、地域づくりによそ者が貢献していることの事実の報告、あるいはその限界について言及しているだけである。これだけ注目されていながら分析がされていない、「地域づくりにおけるよそ者」は、重要な研究テーマであると考えられる。

よそ者について書いた お勧め研究論文など

番号 書誌情報 概要
   敷田麻実(2022)「地域再生におけるよそ者の分類と変容に関する研究―資源所有とサービス創出によるモデルの提案―」『日本地域政策研究』28, pp.66-75.  本研究では、これまで一括りにされることが多かったよそ者を、地域資源の所有と管理、そして商品やサービスの創出と消費を条件として分類し、その差異をモデルとして明らかにした。さらに、よそ者の内部化プロセスもモデルから考察した。
 1145 敷田麻実・森重昌之・池ノ上真一(2019)「よそ者の地域定住者への変容に関する考察」,『知識共創』,(9)pp.Ⅲ 4-1~4-10..  本研究では,よそ者の変容プロセスの解明を試みた.そして,従来言われてきたように,よそ者が長期滞在や地域行事への参加,地域への思いによって自然に内部者になるのではなく,資源所有とサービス創出を通じて変容することを示唆した.
733 敷田麻実(2010),「 よそ者と協働する生態系保全デザイン-石川県加賀市片野鴨池の坂網猟をめぐるコミュナルリソース」,『 Bio-city』, 44, pp.74-81.  片野鴨池の生態系保全で、地域住民などの関係者が地域外の関係者と協働して進める仕組みを解説した。
694 敷田麻実(2009),「 よそ者と地域づくりにおけるその役割にかんする研究」,『 国際広報メディア・観光学ジャーナル』, 9, pp.79-100.

こちらからどうぞ
 本稿では、従来の一般的な「よそ者論」ではない、地域づくりにおけるよそ者の存在とその特性について考察することを試みた。そしてよそ者が持つ「効果」を積極的に評価した上で、地域がよそ者との関係性を維持しながら相互変容するプロセスをほんらいの地域づくりであるとし、観光や交流についての言及した上で、よそ者について考察した。
439 敷田麻実(2005),「 よそ者と協働する地域づくりの可能性:片野鴨池におけるオープンソース型生態系管理プロセス」,『 研究彙報』, 11, pp.3-31.  よそ者の存在と地域の関係について、片野鴨池の生態系管理の歴史から分析し、オープンな生態系管理への到達を検討した
407 敷田麻実(2005),「 よそ者と協働する地域づくりの可能性に関する研究」,『 えぬのくに』, 50, pp.74-85. 地域づくりの中で一般に使われる「さまざまなよそ者」(以下「よそ者」に統一)を定義し、地域との関係を明らかにした上で、地域の中で果たす役割を議論し、その役割が発揮される際のメカニズムを考察した。そして、よそ者と協働する地域づくりの可能性を提案した。

よそ者について書いた記事など

番号 書誌情報 概要
989 敷田麻実(2015)「地域におけるよそ者からの学び」,『青少年問題』,(660),pp. 28-33p.  地域とよそ者の関係を解りやすく描いた。
747 敷田麻実(2010),「 よそ者との共創社会へ-地域づくりにおける薄い関係と濃い関係」,『 開発こうほう』, 563, pp.10-11. 地域づくりにおいて、地域外の薄い関係者をどう活用するかが重要だという提案をした。
410 敷田麻実(2005),「 地域内よそ者としてのフィールド」,『 エコソフィア』, pp.62-63. 鴨池と著者の関わりや地域内よそ者という新しい考え方について紹介し、これからの環境保全の進め方に関して示唆した。
285 敷田麻実(2003),「 金沢アンダンテ5(地域の視点を持つ「よそ者」として)」,『 朝日新聞石川版』, , pp.. 現在までの経験を随想風に書き綴った(よそ者論)
267 敷田麻実(2003),「 ねおす的提言「新環境資本を創り出す黒松内町のよそ者たちとの協働」」,『 季刊ねおす』, 2, pp.-. よそ者たちとの協働から地域の仕組みが作られることに関して解説した。
234 敷田麻実(2002),「 知識創造サーキットモデルの提案ーよそ者と協働する琴引浜スタイルの環境保全」,『 Ship & Ocean Newsletter』, 56, pp.6-7. 知識創造モデル、サーキットモデルを琴引浜の海岸保全活動の例をあげて解説した。

アクセスと連絡先

敷田麻実への連絡方法や北陸先端科学技術大学院大学、敷田研究室へのアクセスなどがわかります。
電話はつながらないことも多いので、できればメールで連絡をお願いします。