連載 最先端の科学と人類の歴史を学び 社会の分断を防ぐには
「資本家の欲望を擁護した「経済学の父」アダム・スミスは, 一方で, 成功した大企業が社会的に独占することを憂慮する文章も, 『国富論』のあちこちに残しておいた. 市場での唯一の事業者として独占権を行使しようとする資本主義社会の企業の欲望は限りないことを, いち早く見抜いていたのだ. 協同組合は, 多数の経済的弱者がたがいに手を取り, 力を合わせて市場経済力を養い, 資本主義独占の致命的な弊害を克服しようとする企業である. 福祉制度や慈善団体からの助成を期待せず自己責任を基本としているので, 共に歩む人たちの自尊心が高められる.」書籍[6-1]15頁引用.
「ヨーロッパの裕福な地域, エミリア・ロマーニャ州全体の経済を, 協同組合企業が引っ張っているって? プロのサッカーチームFCバルセロナとアメリカのサンキストも協同組合だって? 私たちには腑に落ちないことだが, 全然おかしいことではない. たくさんの協同組合企業が, 国家経済に大きな役割を果たしながら経済力を発揮しているのだ. 小売業と金融, 並びに農業の分野で, 協同組合企業の活躍が目立っている. スイスだけでなく, イタリアとドイツ, フランス, イギリスでも, 屈指の協同組合小売企業がその国の業界の先頭に立っているのである.(中略) ヨーロッパ最大の青果卸会社であるオランダのグリーナリー, デンマークの養豚業の90パーセントを掌握してるデニッシュ・クラウン, イタリア最大の牛乳生産企業であるグラナローロ, これらのブランドの共通点は, 園芸農家, 養豚農業, または酪農農業の協同出資で作られた協同組合企業だということだ. 農業改革のモデル国といわれるニュージーランドの農業を引っ張っているフォンテラ(酪農企業)とゼスプリ(キウイ輸出企業)もまた, 自国の農民が出資持ち分の100パーセントを保有する協同組合企業だ. 」書籍[6-1]17-18頁引用.
「この都市での生活について次のように話した. 「ここは富に対する考えが私たちとは違うように思います. 私たちは, ある家が裕福だというと, 家を何軒持っていて通帳にはいくらあるのか, といったことを口にしますよね. でもここはそうではありません. 生活できるくらいほどほどに食べられる基盤があって, 福祉施設が整っていれば, それで満足しているみたい.(中略) イタリアはブランド品で有名ですけど, 実際にそんなに高い鞄を持ち歩く人は, あまりいないようです.」(中略) この地方の経済活動の30パーセントは協同組合が占めている. ボローニャに限って言うと, ボローニャでは400余りの協同組合が活発に動き, 経済に占める比重は40パーセントにもなる. 賃金はイタリア全体の平均賃金の2倍もあり, 失業率は3パーセントに過ぎない.」書籍[6-1]37-38頁引用.
「彼は「グラナローロでは職を失った人は一人もいませんでした. イタリアの協同組合では失業者はほぼ出なかったのです. なぜなら, 協同組合の最も重要な精神は働く場を守り, 人を守ることだからです.」 と答えた.(中略) もちろん協同組合も企業なので, 倒産の危機が皆無とは言えない. しかしそういった場合は, 失業した人たちをほかの協同組合で雇い入れるという方法を使って, 雇用不安の問題を解決している.(中略) 協同組合企業もほかの企業と同様に事業を展開して利潤を残すが, 最も重要視するのは組合員とその人たちの働く場なのである. 」書籍[6-1]52頁引用.
「1997年に設立されたこの協同組合は, 海上に10基の風力発電機を所有している. 環境に関心を持つコペンハーゲン市民8600人がこのミドルグロン風力協同組合の所有者である. 市民が投資者なのだから, ここで出る利益は特定企業の株主が持っていくのではなく, コペンハーゲン市民に還元されるわけだ.」書籍[6-1]74頁引用.
「デンマーク輸出経済の機関的役割をしているデニッシュ・クラウンの競争力は, 徹底した管理システムにある. カール・クリスチャン・モーラーさんは, 「国家間の競争とアメリカ産の安い農産物が, ヨーロッパ市場を脅かすのは間違いありません. なんといっても, デニッシュ・クラウンの製品は, アメリカやほかの国より価格が高い. でも品質は同じではありません. 私たちは高い品質を武器に競争しています. 動物の福祉と徹底した衛生管理, そして研究開発に持続的に投資しているので, デニッシュ・クラウンを倒すのは難しいと思います. 私たちは砂の城ではなく, 堅固に作られた城なのですから.」と語った. そうしてひと言付け加えた. 「デンマークの畜産農家が協同組合を作らなかったなら, 農民たちは無秩序で荒廃した競争をしながらさまよっていたと思います.」 」書籍[6-1]84頁引用.
「ヨーロッパのどこに行っても信頼されている, 世界8位の乳加工協同組合アルラ・フーズ. 政府からの支援を受けることなく, 農民の自救策として作られた協同組合が, どうしてこれだけ大きくなれたのだろうか. それは決して, 少数の人によって短期間にここまで成し遂げられたのではない. エンズ・フィスケルさんのように, 協同の重要性に目覚めて共同の利益のために政策決定に積極的に参加した. 8000余りの農家が到達したものだ. これらの人たちは, 誰かが自分たちのために何かしてくれるのを待つのではなく, 自分たちで努力してシステムを作り上げたのである. 」書籍[6-1]88-89頁引用.
「「酪農民が生産した牛乳の価値を高くすることがフォンテラの使命です」 と単純明快に言った. また, 「協同組合同士の協同」と「酪農家全体の協同」が, こんにちのニュージーランド酪農業の競争力を生んだのだと, 誇らしく話した. 「大多数の酪農家がフォンテラ1つに力を結集して, 強力なマーケティングの力量とブランド力を持つようになりました. 新製品を開発するのに年1億ドル以上投資します. フォンテラの研究所で働く研究員だけでも400人を越えます.」(中略) 「フォンテラは, 一貫して社会と地球に対する責任を果たしています. 水質保護と温室ガス軽減プログラムを遂行して, 世界で最初の酪農炭素追跡研究を行っています. フォンテラは協同組合ですからね.」」書籍[6-1]100頁引用.
「1つ目, 経済活動には, 適者生存という論理を挙げて利潤を追求する形とはまた違うほかの形態があることを, 学校で教えなくてはいけない. ここ2世紀のあいだ世界は, 資本主義市場の拡散が社会病理の解決策であるという論理と, 市場は強者による弱者の支配という反対論理, この2種類だけを教えてきた. 互恵と連帯の精神で働く協同組合という企業形態が入り込む隙を与えなかったのだ. 二つ目, 商品自体の特性のみならず, 商品の生産過程に敏感に反応する消費者, すなわち社会的責任を負う消費者が登場することである. 三つ目, 政治的・制度的装置を完備する. 協同組合をはじめとする多様な形態の企業が, 市場で(資本主義株式会社と) 同じ出発点に立てるよう社会秩序が支えなくてはいけない. 」書籍[6-1]207頁引用.
「いままで, 私たちは, 見かけ上の売上や投資額の大きさで, 経済効果を測っていました. しかし, その商店の売上や向上の投資額がどれほど大きくとも, そのうちどれだけが地域経済の中にとどまり, 新たな所得を生み出すかが大切なのです. 私たちは, まず, それぞれの地域において, 一人ひとりが受け取った給料やお店の売上が, その後どのように域内に流れているかを, 確かめていく必要があります. 」書籍[6-2]7頁引用.
「全国の中山間地域で増えてるパン屋さんについては, どうでしょう.(中略) 1個100円の域外製のパンと1個150円の原料を含めて地元製のパンについて, 先ほどの地元での所得発生率をかけて計算すると, 実は50円という価格差以上の所得差が生じてきます(58円分). 安いからといって, 域外のものばかり買っていると, 地域経済としては「身ぐるみ剥がれる」ような結果を招いてしまいます. 」書籍[6-2]52-53頁引用.
「大手の全国チェーンのスーパーやコンビニでは, 地元からの仕入はゼロに等しく, 当然ながら地元産の商品もほとんど並んでいません. その結果, こうしたスーパーやコンビニで買い物をすればするほど, 多くのお金が域外に逃げていく結果となります.(中略) 一方, 産直市では, 域内の仕入比率も生産比率も5割を越えており, 地域内での所得の確保に大きく貢献しています.」書籍[6-2]56-57頁引用.
「地域の構造とキーパーソンの把握, キーパーソン同士をつなぎ, 地域の新たな共通価値の創造へ(中略) 地域が一丸となって, 大切に守り育てていくべき共通の価値や資産は, 地域の人々が, 地域のすごさを認識し, よりよい未来を考える, という一連の発見的な活動のなかで見出されていくものです. 」書籍[6-2]91頁引用.
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[6-1] H.Kim他 (著), 中野 宣子(訳)
『地域に根差してみんなの力で起業する -協同組合で実現する社会的連帯経済-』 彩流社 (2018/6/19), ISBN-13: 978-4779124631 |
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[6-2] 藤山浩 (著, 編集), 有田昭一郎 (著), 豊田知世 (著)
『「循環型経済」をつくる -図解でわかる田園回帰1%戦略)-』 農山漁村文化協会 (2018/3/26), ISBN-13: 978-4540171086 |