産学官連携の取り組み

  • 2020年09月29日 (後編)柔らかいだけではない、知性と優しさを備える次世代ソフトロボットの開発に邁進
    【シーズ レポート】 柔らかいだけではない、知性と優しさを備える次世代ソフトロボットの開発に邁進(後編) ソフトロボティクス(柔らかいロボットを扱う研究)に取り組むホ准教授を紹介する2回目。触覚を備えたロボットが人工知能を駆使することでもたらされる状況と、最新の研究成果を見ていきます。   ロボットの「触覚」保持に向けて進む研究 その実現が人間に及ぼす影響は計り知れない ホ准教授は、「ロボットが触覚を持つ意義は、人間に優しく接することが可能になることです」と「触覚」開発の効果の大きさを示します。例えば、医療や介護の現場において、ロボットは患者や医療従事者と安全に接するために、確実な動作とともに、触覚に含まれる「人間からの感情、思い」の判断が求められます。これは、言葉を使わずに患者や医療従事者の意図をくみ取り、適切に対応することを意味し、現在は、その実現にかなり近いところまで研究は進んでいると言います。「このことは、今で言えば新型コロナウイルスのPCR検査をロボットができるようになり、結果として検査実施者をはじめ、医師、看護師の感染リスクの低下がもたらされます。実は、既にその実現に向けたプラン、アイデアは私の中にあります。しかし、このようなロボットを開発するには予算的な制約がありますので、共同研究先が現れることを期待しています」と話すホ准教授は、次のステップを明確に見据えています。 ※マニピュレーション(把持)   高性能触覚センサーを開発し人工知能と連携する 人間の感情や意図を判断し、対応できるロボット 人間との接触を通じて、言葉を介さずに人間の感情を判断できるようになると、会話能力が低下した高齢者のケアが効果的に行われることが期待されます。「例えば、ロボットの腕を、つねる、なでる等の動作をする人間の意図を判断するために人工知能を使います。ただこの場合、人によってつねる、なでる等に込める思いには個人差があるので、この状況ではこういうことだろう、という推定する能力がロボットに必要になります。その実現のために、様々なケースや多様な人々からデータを収集し、学習しながらAIの精度を高めることで、AIが適切に推察し、反応できるようになります」と、ホ准教授は人工知能を使ったロボット開発の有効性を指摘します。そのうえで、「現在、こういう研究をしているところは少ないのですが、それは高性能触覚センサーがまだ存在していないことが理由にあげられます。しかし、私たちは耐久性を備えた高性能触覚センサーを開発することができました。今後は、接触を通じて人間の感情を推定し、相手が望む対応ができるロボットの開発を加速していきます」とし、今後の研究に自信を見せます。 開発した触覚センサーの研究資料   着実に進んでいる駆動装置、感覚装置の開発 ソフトロボットは応用実験を経て実践の段階に 昨秋、JAISTのウェブサイトにホ准教授の研究を紹介する記事が掲載されました。 https://www.jaist.ac.jp/research/movie/topics/ho-anh-van.html そこにある動物の優れた構造や機能に着想を得て進められている研究は、着実に進化しています。「まず、ウナギにヒントを得た水中を泳ぐロボットは、外付け状態だったケーブル等は全て内包化しました。ケーブルや制御回路はもとより、新たに開発したソフトアクチュエーター、バッテリーも内部に持ち、今はさらに洗練された動きになるよう改良を進めています。次に、アマガエルの手の吸盤を参考に開発した溝を持つ把持機構は、内圧を測定、把握、コントロールする仕組みを高度化できたので、コンタクトレンズを持ち上げる段階から、濡れた状態にある豆腐や玉子、こんにゃく等を安全に持ち上げられるまでになっています。そして、高性能触覚センサーを開発した触覚については、アームの部分はできあがっています。今は、頭、胸、指、そして指先に触覚を備える研究を進めています」と、ホ准教授は研究が全体的に着実に前進していることを強調します。 別に研究を進めているトンボの羽にヒントを得たドローンのプロペラの資料   ホ研究室にはソフトロボットの開発における、インテグレーション(異なる複数のものを組み合わせてまとめる)の力があると言います。前にも指摘しましたが、ロボットの開発には幅広い技術や条件が複雑に絡みあってくるので、それらをいかに有機的に統合できるかが問われます。「私の研究室では、それらの要件を高度に統合し、柔らかさを中心としたロボットの設計能力を十分に培ってきました。ですので、これまでに見たことがない技術を提供できます」と、ホ准教授は共同研究に向けた意欲を語ります。そして「既に私の研究室はベーシックな研究を十分に手掛けてきましたので、現在は応用的な研究に軸足を置いて活動しています。今後は、いろいろな企業と協力して、実践的な研究と開発に進みたいと考えていますので、ソフトロボットに関心がある方には、気軽に声を掛けていただければと思っています」と、ホ准教授は将来の共同研究への期待を示します。   <シーズレポート>柔らかいだけではない、知性と優しさを備える次世代ソフトロボットの開発に邁進(前編)はこちら。   本件に関するお問い合わせは以下まで 北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携本部 産学官連携推進センター Tel:0761-51-1070 Fax: 0761-51-1427 E-mail:ricenter@jaist.ac.jp ■■■今回の研究に関わった本学教員■■■ 知能ロボティクス領域 ホ アン ヴァン 准教授 https://www.jaist.ac.jp/areas/ir/laboratory/ho.html
  • 2020年09月16日 (前編)柔らかいだけではない、知性と優しさを備える次世代ソフトロボットの開発に邁進
    【シーズ レポート】 柔らかいだけではない、知性と優しさを備える次世代ソフトロボットの開発に邁進(前編) 本学教員の研究シーズを紹介する3回目は、知能ロボティクス領域のホ アン ヴァン(HO Anh-Van)准教授のソフトロボティクス(柔らかいロボットを扱う研究)を紹介します。従来、生産性の向上や労働力の代替装置として産業用ロボットは大きな役割を果たしています。一方で、医療や介護等の現場でリスクの低減や人手の確保が求められている現状があります。これは工場から日常へ、ロボットが活動する領域が広がるニーズがあることを意味し、その際、ロボットには金属等でできた固いものではなく、強度的・構造的に適度な柔らかさがあるロボットの普及が期待されます。   速さとパワー、正確さが求められる産業用とは異なる 生物のような動作で、人間に優しく接するロボットを 産業用ロボットは一般的に固くて触覚がなく、稼働する環境下(工場等)では速さと正確さ、時にパワーが求められます。一方で、少子高齢化が進み、その影響が毎日の暮らしにも及んでいる現在においては、これまでのロボットとは異なる機能が求められています。ホ准教授は、「人間と生活を共にするケースでは、安全面から柔らかい材料でできたロボットであることが理想です。さらに、人間の求めに応じたり、その意図を汲んだ動作を出力したりするための知能が必要になります」と、研究領域であるソフトロボティクスの一端を話します。 ソフトロボットも産業用ロボットのように、特定の機能に限定した腕だけ、上半身だけのものも設計できますが、ホ准教授が目指すのはあくまでヒト型ロボットです。「私としては、ユーザー、つまり人間が違和感を感じることがない人のような機能を持ったロボットを開発したいので、柔らかさは必要不可欠な要素になります」とホ准教授は高い目標を掲げ、「ベイマックス(ディズニー映画のアニメキャラクター)が理想のカタチです」と笑顔で続けます。 ロボット制御の事例   課題だらけだったソフトロボット研究のスタート 「柔らかい」からこそ湧き上がる新たな課題の数々 ロボットの開発には幅広い技術や様々な条件が絡み合ってきますが、ソフトロボットの場合はソフトマテリアル(高分子、液晶、生体分子などの柔らかい物質)の開発において多くの課題が残されていたうえ、人間が身近にいることが前提になることから、その実現には新たなハードルが次々に現れます。ホ准教授は、「産業用ロボットの可動域は計算された制限域内で設定されますが、ソフトロボットは対象が人間になるので可動域の設定は無制限となり、モデリング(立体物の形状を計算し形成すること)の際のロボットの可動域の設定が難しくなります」と可動域の問題を口にします。さらに「ロボットが柔らかさを備えると、ロボットが人間に優しく接することと同じく、人間がロボットに接した時にもロボットには優しい対応、つまり判断と適切な反応が求められます」と話し、この点からも双方向の対応が迫られるソフトロボット開発の難しさが分かります。 ホ アン ヴァン准教授。後ろはドローンの研究をしている学生   ロボットに「知能」を持たせることで課題解消を 実現の条件はロボットが「感覚」を備えること ロボットの体勢や腕の可動域をどう設計するのか。人間からの接触をどう理解するのか。この難しい課題をクリアするために、ホ准教授はロボットに「知能」を持たせる研究を進めています。しかし、その前に、ロボットが安全に、適切に動くためには、外部からの入力を検知、判断する「感覚」を持つことが求められます。ホ准教授は、「人間が持つ視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感のうち、ロボットには視覚と触覚が重要になります。これまでのロボット研究で視覚機能の実用化は普及していますが、触覚機能の普及はまだまだの状況です。そして、特に力覚(物体と接触した際に人間が感じる力感覚)センサーの開発のハードルが高く、できたとしても耐久性の問題を抱えています」と、ロボットに感覚を持たせるうえで、まだ多くの問題が存在していることを指摘します。   次回は、備えた触覚で人間からの入力を人工知能で判断する取り組みと、最新の研究の模様をお伝えします。   本件に関するお問い合わせは以下まで 北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携本部 産学官連携推進センター Tel:0761-51-1070 Fax: 0761-51-1427 E-mail:ricenter@jaist.ac.jp ■■■今回の研究に関わった本学教員■■■ 知能ロボティクス領域 ホ アン ヴァン 准教授 https://www.jaist.ac.jp/areas/ir/laboratory/ho.html
  • 2020年08月27日 (後編)材料開発の前に立ちふさがる様々な課題に、スーパーコンピュータを駆使して立ち向かう
    【シーズ レポート】 材料開発の前に立ちふさがる様々な課題に、スーパーコンピュータを駆使して立ち向かう(後編) 本郷研太准教授の研究シーズを紹介する2回目。機械学習、AI、そしてスパコンを縦横無尽に使ってマテリアルズ・インフォマティクス(※)の研究を進め、新しい化合物の発見に迫る姿とその想いに迫ります。 (※)マテリアルズ・インフォマティクス=AI等の高度な解析ツールを活用して、新しい材料を開発する研究分野   私たちの生活と密接な関わりを持つ材料開発の分野 マテリアルズ・インフォマティクスでより効率的に 新しく開発された材料が私たちの暮らしに変化をもたらしたケースは枚挙にいとまがありません。例えば、新しい材料を導入して普段使いの製品が改善した事例として、スピーカーの音質を見てみます。 以前は、スピーカーの音質を改善するには電気的に制御することが主流になっていました。その後、ネオジム磁石という強力な磁石が登場して、それをスピーカーの中に組み込むと劇的に音質が向上しました。これはあくまで一例で、私たちの身のまわりのあらゆるところで、新しい材料による製品が生活の質的向上に役立っています。 共同研究でも積極的に活用されている本学保有のスパコンとその前に立つ本郷准教授 当然ながら、材料開発の道のりは決して平坦なものではありません。前編で指摘しましたが、那由多の数だけあるとされる化合物の組み合わせを前に、人間ができることには限界があり、例え新たな材料、化合物に目星を付けても、その合成や特性の確認にはある程度の時間が必要になります。 本郷准教授は、「その点で言えば、私のアプローチ法は、まずこういう性質を持った材料は、だいたいこんな材料だということをコンピュータ、いわゆるAIに教え続けて大量のデータを確保します。次に、このデータをベースとしてスパコンで膨大な数のシミュレーションを行うことで、今までよりずっと効率的に新しい物質を見つけられるようになりました」と、マテリアルズ・インフォマティクスによる材料開発の優位性を話します。さらに、「例えば、単純な化合物から新たな分子結合を始めるケースでも、AIが分子をどんどん改善させていって欲しい分子に近づけていくので、斬新で、これまでに見たことがない新しい分子がどんどん出来てきます。AIの技術を用いたこのような研究を続けていくことで、そのうちに狙っている、欲しい属性を持つ化合物が見つかることにつながるのだと思います」と続けます。   既に誰も見たことがない化合物をコンピュータ内で確認 課題を解消する未知の化合物発見の最先端手法を提案 マテリアルズ・インフォマティクスの研究の進展によって、本郷准教授の研究室では、今まで誰も見たことがないような化合物をコンピュータの中で見つけられるようになっています。一例を挙げると、AIを使って高熱伝導率のポリマーを探索し、実際に合成することに成功しています。ポリマーは他の工業材料に比べてかなり熱伝導率が低い材料ですが、熱伝導率が高く放熱性があれば、金属材料の代替として使うことができ、デバイスの軽量化につながることも期待されます。 本郷准教授は、「私は新しい化合物を発見する手法の開発が専門なので、電池でも磁石でもポリマーでも、あらゆる面白そうな化合物の発見や材料開発のお手伝いができると思います。共同研究先とは、一緒に材料開発に汗する中で、チャンピオンデータ(最も効果の顕著な結果)を出したいですね」と、共同研究にかける想いを熱く語ります。   材料開発に興味を持ったのは幼き頃の刀鍛冶への憧れ 最先端の研究者は歴史好きの趣味を持つ意外な一面も 本郷准教授の子どもの頃の夢は、刀鍛冶になることでした。その後、大学では金属材料の研究に進み、海外を含む研究機関を経て現在に至った経緯をみると、材料開発に向けた素地は日本刀に興味を持った幼い頃からあったのでしょう。 時々、研究室のメンバーや留学生を誘って兼六園や金沢城に足を運び、歴史のレクチャーをするほど歴史好きでもある本郷准教授。話し好きで温厚な人柄は、気軽に問い合わせや相談ができる雰囲気に満ちています。 兼六園で学生に説明する本郷准教授   <シーズレポート>材料開発の前に立ちふさがる様々な課題に、スーパーコンピュータを駆使して立ち向かう(前編)はこちら。 本件に関するお問い合わせは以下まで 北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携本部 産学官連携推進センター Tel:0761-51-1070 Fax: 0761-51-1427 E-mail:ricenter@jaist.ac.jp ■■■今回の研究に関わった本学教員■■■ 環境・エネルギー領域 本郷研太 准教授 https://www.jaist.ac.jp/areas/ee/laboratory/hongo.html
  • 2020年08月20日 (前編)材料開発の前に立ちふさがる様々な課題に、スーパーコンピュータを駆使して立ち向かう
    【シーズ レポート】 材料開発の前に立ちふさがる様々な課題に、スーパーコンピュータを駆使して立ち向かう(前編) 本学教員の研究シーズを紹介する2回目は、環境・エネルギー領域の本郷研太准教授です。現在、私たちは、新型コロナウイルスという未知だったものが生活に与える影響の大きさを実感しています。しかし、一方で、私たちはそれまで知らなかったモノ、分からなかったモノを発見し、開発して様々な便益を手にしてきました。今回の本郷准教授が取り組んでいる研究は、未知の物質を探索、発見する手法で、材料開発の効率を大きく促進させることが期待されています。   研究者の経験と勘に依拠してきた材料開発の世界は データ科学、AIによるコンピュータでの開発が主流に 従来、材料開発は日本が得意としてきた分野です。そこでは、研究者が長年に渡って培った経験と勘によって新たな材料を合成し、その材料の特性を調べるという手順で開発が進められてきました。ただ、この場合、優秀な研究者であっても創造力、発想力には限界があり、また合成した材料の特性を確認するにはそれなりの時間経過が必要となります。現在、このような従来の材料開発の状況を一変させているのが「マテリアルズ・インフォマティクス」と言われる世界的な潮流です。 本郷准教授は、「マテリアルズ・インフォマティクスは、新素材の設計と開発、評価を行う材料科学とAI、データ科学等を融合させて、新しい物質、材料の開発を目指す最先端の研究分野です。研究者の実験と理論計算に負うところが大きい従来型の研究ではたどり着けなかった、未知の材料が発見されることが期待されるので、世界中の国々で戦略的に進められています」と、新物質の発見と材料開発におけるその可能性の大きさを口にします。 環境・エネルギー領域の本郷研太准教授   この世に存在する物質はすべて元素からできている 那由多の数だけある化合物の特性にスパコンで挑む ※那由多=10の60乗 現在までに確認されて周期表に記載されている元素の種類は100個ほどで、この元素の組み合わせによって様々な化合物、物質ができています。例えば、2種類の元素の組み合わせは100×99=990個、3種類では100×99×98=970,200個となり、これが5種類になると90億(9.0×10の9乗)の数となって、以降は指数関数的に生成できる化合物は増えていきます。 「実は、組み合わせが可能な化合物の数は『那由多=10の60乗』にのぼると言われています。このような膨大な組み合わせの中から求める性質や機能を有する化合物を見つけることは、砂漠の中で一粒の砂金を探すようなものなのです」と、本郷准教授は新しい物質の発見の難しさを指摘します。 仮にある研究者が、従来の材料開発法の一環として理化学研究所のスパコン「京」をフルに活用しても、その研究者が生涯に計算できる物質の数は12億程度に過ぎないとのことです。このことから、那由多の数の化合物にアプローチするにはこれまでとは異なる新しい取り組みが求められます。本郷准教授の研究室ではAIやデータ科学の手法を基に、スーパーコンピュータ(以降、スパコン)を使って那由多の化合物の把握に挑んでいます。 この時、本郷准教授が求める化合物や物質をより効率的に探索するために用いている手法の一つに「ベイズ推定」という統計学の手法があります。私たちの身近なところでは、迷惑メールを自動的に選り分ける迷惑メールフィルターの頭脳として使われているものです。 ベイズ推定は、当初のデータが不十分でも”ある事態が発生する確率(例えば、迷惑メールである確率)”を最初に設定し、その後に得られたデータを反映させてその確率を更新し、精度を上げていくことで本来起こるだろう事態の確率を導き出す概念です。 本郷准教授はこの手法を用いて、膨大な数の化合物の組み合わせのシミュレーションとその個々の特性を、スパコンを用いて導き出しています。   次回は、マテリアルズ・インフォマティクスで誰も見たことがない化合物の発見に挑む、本郷准教授の研究を見ていきます。   本件に関するお問い合わせは以下まで 北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携本部 産学官連携推進センター Tel:0761-51-1070 Fax: 0761-51-1427 E-mail:ricenter@jaist.ac.jp ■■■今回の研究に関わった本学教員■■■ 環境・エネルギー領域 本郷研太 准教授 https://www.jaist.ac.jp/areas/ee/laboratory/hongo.html
  • 2020年07月28日 (後編)学生のアイデアをビジネスへ。2019年「M-BIP」最優秀賞受賞アイデアのフォローレポート
    【産学連携レポート 特別編】 学生のアイデアをビジネスへ。2019年「M-BIP」最優秀賞受賞アイデアのフォローレポート 今秋開催する「Matching HUB Kanazawa 2020」で行われる学生のビジネスアイデアコンペティション「Matching HUB Business Idea & Plan Competition(以降、「M-BIP」)」。前回は、昨年の模様と各賞を受賞したアイデアを紹介しました。 今回は、最優秀賞を受賞した徳島大学の学生によるアイデアが、その後、産学官連携本部(以降、産連本部)によってどのようにフォローされているかを見ていきます。今年の「「M-BIP」」応募の参考にしてください。   運動不足により短命化が進む動物園の動物 動物の健康回復を目指したエサやり機を発案 11月5日(木)、6日(金)、JR金沢駅前のANAクラウンプラザホテル金沢において、北陸地域の活性化と人材育成を目的とした産学官金連携イベントMatching HUB Kanazawa 2020が開催されます。「M-BIP」は同マッチングイベントのプログラムの一つで、全国から集まった学生の熱のこもったプレゼンテーションが繰り広げられます。 昨年の「M-BIP」で最優秀賞といくつかの企業賞を獲得したのは、徳島大学 総合科学部2年前田晏里さん、藤川達矢さん、理工学部2年毛笠龍之介さんによる「サルのストレスを解消し、来園者を笑顔にする給餌装置『kuru・kuru』」でした。 同アイデアを思いついたきっかけは、徳島大学内のイノベーションプログラムで出された課題、「ベアリングを活用した製品の開発」を考えていた時に訪れた動物園で目にした光景でした。 動物園の動物はあまり動き回ることがなく、見応えがないと感じた前田さんが調べてみると、動物の運動不足が原因で、それが動物の短命化にもつながっていることが分かりました。 そこで前田さんと毛笠さんは、動物の運動不足の解消を目指した、エサやり機と遊具を合わせた給餌装置を考えつき、まずはサルの給餌装置の開発を目指すことにします。 あまり動き回らない動物たちを不思議に思い… ここで避けて通れないのが、「M-BIP」に限らず、アイデアコンペティションは独自性が条件となること。開発メンバーは、2018年10月にプロトタイプ機を製作するとともに類似の製品がないかを調査し、一方でユーザー評価のヒアリングを進めました。その後、2019年4月に試作品を完成させ、アイデアの独自性を確認して5月に特許の出願を完了し、秋の「M-BIP」に挑みます。 昨年の「M-BIP」でプレゼンテーションに臨む前田さん 試作品が完成しテストが繰り返される 試作品のテストを進める一方で取り組んだ数々の調査   ビジネス化に向けた受賞者の要望をヒアリング 産連本部は即座に要望の協力先を選定し行動 「Matching HUB Kanazawa 2019」の2日目、11月12日(火)の夕方に「M-BIP」の最優秀賞ほかの受賞アイデアが発表されて約ひと月。徳島大学側の要望を聞いた産連本部はすぐにスキームを整え、昨年のうちに行動に移します。徳島大学側の要望は、同アイデア実現のための出資企業と、精度向上のための実地テストを行える施設の紹介でした。 この求めに対して産連本部が協力を打診したのは株式会社ビーイングホールディングス(以降、ビーイング社)といしかわ動物園で、ビーイング社には早速年末に足を運んで話し合いを始めています。 年が明けると、産連本部はいしかわ動物園ほかの関係先と連絡を取り合い、3月5日(木)に金沢で開かれる「第4回 Matching HUB 全国展開推進会議」で、ビーイング社の喜多甚一代表と徳島大学の前田さんの面談をセッティングしました。 「M-BIP」受賞後、香川県のしろとり動物園で運用が始まる   新型コロナウイルスの影響で面談はリモートに 活動が制約されるなかで懸命なやりとりが続く 日本人初の新型コロナウイルスの感染が1月28日(火)に発表され、直後にクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号での集団感染が明らかになると、一気に新型コロナウイルスへの不安が国内に拡がりました。当然、その影響は産連本部の取り組みにも及びます。徳島大学の前田さんや毛笠さん、教員のみなさんは3月の直接の面談の機会をとても貴重なものと考えており、予定通りの開催を希望していました。しかし、徳島大学が全ての出張を自粛する判断を下し、やむを得ず「web会議システム(Zoom)」での面談となります。 全国の「Matching HUB」関係者と「M-BIP」受賞学生が金沢で一堂に会する「Matching HUB 全国展開推進会議」の第4回目が、3月5日(木)にホテル日航金沢で開かれました。今回は、新型コロナウイルスの影響があり、NEC社の協力の下、全国各地をZoomで結ぶ形で行われましたが、特に支障をきたすことなく、無事に終えることとなります。 同会議が始まる5時間前、ビーイング社の喜多代表には本学の金沢駅前オフィスにお越しいただき、徳島にいる前田さん、毛笠さんほかメンバーと2時間に渡りZoomでの面談が行われました。面談では、喜多代表から鋭い指摘がいくつも出され、彼らがその一つひとつを熱心に聞き入り、メモをとっていたのが印象的でした。 全国展開推進会議に徳島からリモートで参加した前田さん   飛躍的なブレークスルーを果たした『kuru・kuru』 次の段階に向け、前田さん達の意気込みはさらに熱く 3月の喜多代表とのZoom面談以降、産連本部と前田さん、毛笠さんほか徳島大学関係者はZoomを使って進捗の確認と、サポートを続けました。 この間に、受賞アイデアの「kuru・kuru」は大きなブレークスルーを見せます。当初のアイデア名「サルのストレスを解消し、来園者を笑顔にする給餌装置『kuru・kuru』」は、「サルとヒトが共に楽しめる『kuru・kuru』」と端的かつ分かりやすいものに改められ、装置自体にも磨きがかけられます。 一方で、既に「株式会社KAI」と法人化されていたものの、遅れていた事業化、事業継続の絶対条件となる収益化の対応もしっかりと考えられます。この大きな発展を目にした喜多代表は、とても感心されたご様子でした。 サルにフォーカスし、リファインされた給餌装置 だからといってこのままでビジネスにつながるわけではありません。ビーイング社で出資を担当する部署からは、出資を検討するうえで必要となる、収支計画等の様々な数字に関する指摘、質問が寄せられます。ビーイング社からの指摘を受け、株式会社KAI社内では情報が共有され、双方の真摯なやりとりが続けられています。 「事態が落ち着き次第、金沢に足を運びたいと思っています。その際には、より成長した姿でお会いできることを目指し、これからも精進します」、と最近のメールを結んだ前田さん。徳島大学発のベンチャー企業でも、初めて現役学生である毛笠さんが社長となり陣頭を指揮する「株式会社KAI」のこれからも目を離せません。   今秋の「M-BIP」にも、学生らしい斬新なアイデアが数多く寄せられることを期待しています。 募集要項は近日中にアップしますので、ぜひチェックしてください。   昨年の「M-BIP」の様子と受賞したアイデアを紹介した前編はこちらから   =本件に関するお問い合わせは以下まで= 北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携本部 産学官連携推進センター  Matching HUB 事務局 Tel:0761-51-1070 Fax: 0761-51-1427 E-mail:jaist-net@jaist.ac.jp
  • 2020年07月14日 (前編)学生のアイデアをビジネスへ。M-BIP開催のお知らせ
    【産学連携レポート 特別編】   学生のアイデアをビジネスへ。M-BIP開催のお知らせ(前編) 今秋、北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携本部の主催で、第7回「Matching HUB Kanazawa」を開催します。今回は、その主要プログラムの一つで毎回大きな盛り上がりをみせる、学生のビジネスアイデアのコンペティション「Matching HUB Business Idea & Plan Competition(以降、M-BIP)」を紹介します。   学生のアイデア、研究成果をビジネスに 若い力を地域のイノベーションに繋げる 11月5日(木)、6日(金)、JR金沢駅前のANAクラウンプラザホテル金沢において、北陸地域の活性化と人材育成を目的とした産学官金連携イベントMatching HUB Kanazawa 2020が開催されます。「M-BIP」は同マッチングイベントのプログラムの一つで、全国から集まった学生の熱のこもったプレゼンテーションが繰り広げられます。 ほかのビジネスアイデアコンテストと異なる点としては、「M-BIP」は、研究活動を行う学生らしい斬新なアイデアを大切にしたいという想いから、マネタイズプランより研究活動や日頃の気づきから生まれるアイデアに重点をおいているところに特徴があります。募集するアイデアの業種、分野も問わず、ものづくりはもとより、IT、サービス、小売販売等々、幅広い領域のアイデアを対象としている点もアイデアの発想範囲を広げるためです。 堂々とした振る舞いが印象的なファイナリストのプレゼンテーション   選考方法は、まず1次審査として応募された全アイデアの書類審査を行います。この時、1次審査を通過した学生は入選となり、引き続き入選者のアイデアの2次審査(書類審査)を行います。そして、2次審査を通過した学生はファイナリストとして、「M-BIP」会場でプレゼンテーションを行う最終審査に臨みます。 なお、1次審査を通過した入選者(ファイナリストを含む)のアイデアは、Matching HUB Kanazawa 2020の会場にアイデアを紹介・説明するポスターが掲出され、ポスターセッションが行われます。ポスターセッションでは、Matching HUB Kanazawa 2020の参加者の投票によって、オーディエンス賞が選ばれます。   「M-BIP」はMatching HUB Kanazawa 2020の初日に行われます。今年も、未来を拓かんとする学生による多様なアイデアが寄せられることが期待されます。   今年の募集要項は近日中に公開されます。JAIST-netでご案内しますので、ぜひご確認ください。   熱のこもったプレゼンテーションに沸く会場 真摯な説明が心を打つポスターセッション 昨年の「M-BIP」では、入選が28案、最終審査進出が12案、厳正な審査のもと選ばれました。どの案も「M-BIP」の特徴であるアイデア重視の選考ならではの、斬新で自由な発想から生まれたアイデアばかりです。 最終審査では、最前列に並んで熱い視線を送る審査員と多くの聴衆が見つめる張りつめた雰囲気の中、ファイナリストがひたむきに自らのアイデアの説明とアピールに汗していたのが印象的でした。 審査員、聴衆が真剣な眼差しを送る昨年のM-BIPの様子 ポスターセッションで来場者にアイデアを説明する入選者   昨年の「M-BIP」で最優秀賞を獲得したのは 動物園の動物の短命化解消を目指す 昨年、最優秀賞を獲得したのは、提案名「サルのストレスを解消し、来園者を笑顔にする給餌装置『kuru・kuru』」でした。 発案者の徳島大学の前田晏里さんによると、動物園の動物が運動不足に陥っていて、それが原因で短命化が進んでいる問題がありました。そこで、エサやり機と遊具を掛け合わせたサルの給餌装置を思い立って研究と開発に着手。昨年の12月からは香川県のしろとり動物園で実機の運用を始めています。 動物園の動物の健康だけではなく、元気に動き回る動物を目にした来園者も楽しめるように配慮した本アイデアは、最優秀賞のほか数々の企業賞を獲ることになりました。 最優秀賞を獲得した前田さんと寺野産学官連携本部長 昨年の最終審査の結果は以下のとおりです。(敬称略) 〇最優秀賞 「給餌装置『kuru・kuru』」 前田 晏里(徳島大学 総合科学部 社会総合科学科 地域創生コース) メンバー:藤川 達矢、毛笠 龍之介 〇優秀賞 「地域の観光資源を描いたイラストを商品のラベル等に活用してもらうビジネス」 能登 由佳(金沢学院大学 芸術学部 芸術学科) メンバー:鋤田 瑞生、出村 菜苗、沢崎 栞、向 渚紗 「AICO AI-Counseling」 戸部田 貴裕(北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 先端科学技術専攻) メンバー:髙野 あゆみ 〇NEDO賞 ※優秀賞として授与 「給餌装置『kuru・kuru』」 前田 晏里(徳島大学 総合科学部 社会総合科学科 地域創生コース) メンバー:藤川 達矢、毛笠 龍之介 〇中小機構北陸本部賞 「かおかお 画像認識で学生の理解度をリアルタイムで可視化」 髙野 あゆみ(北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 先端科学技術専攻) メンバー:奥平 知理 〇ISICO賞 「地域の観光資源を描いたイラストを商品のラベル等に活用してもらうビジネス」 能登 由佳(金沢学院大学 芸術学部 芸術学科) メンバー:鋤田 瑞生、出村 菜苗、沢崎 栞、向 渚紗 〇北陸銀行賞 「にゅーふぇいす ~おしゃれに飲みたい女子大生による 新・日本酒プロジェクト~」 田邉 和香(新潟大学 経済学部 経済学科) メンバー:遠藤 綾華、中津川 華澄 〇三谷産業賞 「かおかお 画像認識で学生の理解度をリアルタイムで可視化」 髙野 あゆみ(北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 先端科学技術専攻) メンバー:奥平 知理 〇フューチャー賞 「かおかお 画像認識で学生の理解度をリアルタイムで可視化」 髙野 あゆみ(北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 先端科学技術専攻) メンバー:奥平 知理 〇レボーン賞 「地域特産物のポテンシャルを引き出す協働型ブランドマネジメント」 坂田 柚子香(東京大学 農学部 獣医学専修) 〇JBMC賞 「給餌装置『kuru・kuru』」 前田 晏里(徳島大学 総合科学部 社会総合科学科 地域創生コース) メンバー:藤川 達矢、毛笠 龍之介 〇NECソリューションイノベータ賞 「シリカゲヒーター」 伴田 千紘(石川県立大学大学院 生物資源環境学研究科) メンバー:浪江 日和、蜜澤 岳、西尾 拓哉、水田 陽斗 〇オーディエンス賞 「Knowledge Reactor 概念に基づいた産学官協働による地域活性化モデル」 麻生 大雅(第一工業大学 工学部 建築デザイン学科 建築デザインコース) 「日本酒を世界の食卓へ 作って学ぶ食べて学ぶ料理教室型日本酒推進プロジェクト~」 高橋 快成(立命館大学 情報理工学部 知能情報コース) メンバー:福成 実祐、野里常 光塁、出雲 かなる、中井 一希、田中 美歩 「シリカゲヒーター」 伴田 千紘(石川県立大学大学院 生物資源環境学研究科) メンバー:浪江 日和、蜜澤 岳、西尾 拓哉、水田 陽斗 「次世代が選択できる豊かな地域社会の構築 ~見る・学ぶツアーによる持続可能な地域づくり~」 正城 奈々美(金沢星稜大学 経済学部 経済学科 川澄ゼミ(持続可能なまちづくり) メンバー:向出 安佑、藤井 悠里、長谷川 真緒、石田 裕美子   次回は、最優秀賞となった前田さんとメンバーによるアイデアが、その後、本学産学官連携本部によってどのようにフォローされているかを紹介します。   =本件に関するお問い合わせは以下まで= 北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携本部 産学官連携推進センター  Matching HUB 事務局 Tel:0761-51-1070 Fax: 0761-51-1427 E-mail:jaist-net@jaist.ac.jp
  • 2020年06月23日 (後編)中小企業のIoT導入の道を開き、IoEで農業や地域の課題解消に挑む
    【シーズ レポート】 中小企業のIoT導入の道を開き、IoEで農業や地域の課題解消に挑む(後編) 前回に続き内平教授のIoTの研究を紹介する今回。内平教授は現在のIoTシステムに欠けているところを指摘し、その解消に向けたAIを使ったシステムの研究を続けています。AIによってIoTが威力を発揮する分野はさらに広がるとする、その様子を見ていきます。   人間の感覚が素晴らしいセンサーとして機能 「音声つぶやきシステム」でIoTからIoEへ 現在、IoTの情報収集というと物理センサーに注目が集まりますが、「物理センサーだけで全てのデータを取るのは難しいのではないでしょうか」と、内平教授はデータ収集における物理センサーの限界を指摘します。そのうえで「人間は五感を持ち、どんなセンサーより感じ取る力があります。ですから人間を素晴らしいセンサーとすることで、物理センサーと合わせて初めて意味のあるIoT になると思います」と話し、IoTの今後の可能性を強調します。 音声つぶやきシステム 内平教授は人間をセンサーとする取り組みとして「音声つぶやきシステム」を開発しました。これは医療・介護の現場で、患者や入居者の表情の変化や発言等、スタッフの気づきを記録し応用するシステムとして手掛けたものです。介護施設で試行評価を行うと、スタッフの連携、ケア記録ほかの品質が向上し効果が確認されました。 「音声つぶやきシステムは人間の活用を主眼に置いています。その背景には、IoTを機械だけの閉じたシステムではなく、人間が関わることでより使いやすくできる、との考えがありました」と、内平教授はその開発の経緯を打ち明けます。 前編で内平教授は、現在のIoTの開発に求められているものとして、現実のビジネスと様々なデータを読み解くAIシステムをトータルに設計すること、と指摘していました。 「音声つぶやきシステム」はまさに、仕事の現場でのつぶやきや表情等の非定型データをAIが処理し、その結果を現場にフィードバックするもので、今のIoTの開発ニーズを満たすものと言えます。 これは人間センサーによる気づきの情報と従前の物理センサーからの情報の融合であり、IoTの高度化というよりIoE(Internet of Everything モノと人のインターネット)を意味し、その本格的な到来はIoTの未来を大きく広げるものだと内平教授は指摘します。   農業分野で進められているIoEの実地研究 農業問題の解消に向けて期待がかかる 二つのセンサーを融合した内平教授のIoEの研究は、農業の分野で進められています。 現在、農業では従事者の高齢化や就農者の減少といった問題を抱え、その対策として、省力化と高品質化を目指したIoTの導入が進行しています。そこでは、様々な物理センサーを使って温度や湿度、土壌の状態等の環境データを収集し活用されています。 一方で、農作物の生育状況や病害虫による被害等は人間が目視で行っているのが現状で、ここでは物理センサーではなく人間が持つ五感がものを言います。 今回の内平教授の研究では、物理センサーが収集する気温、湿度、土壌等の状況と人が音声でつぶやく実際の農作物の状況を合わせてクラウド上のAIが分析、判断することで、様々な気づきをフィードバックする、新しい時代のIoT、IoEによる農業ナレッジマネジメントシステムの実現に向けた取り組みが行われています。 農業ナレッジマネジメントシステム   経験者の潜在的な知識がIoT、AIによって顕在化 IoEによる知識の継承は様々な業界で応用が可能 農業分野に限らず、いろいろな業界で少子高齢化等の進行による影響が出てきています。 例えば製造業では、高度な技術を持つ熟練作業者が引退する事態は珍しくありませんが、そのようなケースでも、熟練者が発するつぶやき等のデータと物理センサーによるデータを融合させることで、知識や技の継承がなされることが期待されます。 内平教授は「人間センサーと物理センサーの融合の取り組みは世界的にもユニークな研究ですが、これこそ将来のIoTの本流になると思います」とIoTのこれからを見据え、さらに「世界がこの二つのセンサーを合わせたIoT、IoEを取り入れる時代が必ずくると思うので、この分野で先頭に立ちたいですね」と意欲を見せます。 これからのIoT 一方で、「IoTニーズの高まりを肌で感じていますが、ビジネスの現場では、自社の製品やサービスにどのように活かせばいいのか分からないという、期待と現実の間にギャップがあるように思えます」と、IoTの導入に向けたハードルの存在を認める内平教授は、「そのギャップを埋めるのが僕らの仕事なんですけどね」と、IoTの活用促進に向けた自らの使命を口にします。 そして、「今後、農業での活用は有望なので、人間センサーと物理センサーの融合に関心がある方と、ぜひお話ししてみたいですね」と、企業等との共同研究について積極的な姿勢を示す内平教授でした。 内平研究室メンバー   <シーズレポート> 中小企業のIoT導入の道を開き、IoEで農業や地域の課題解消に挑む(前編)はこちら。   本件に関するお問い合わせは以下まで 北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携本部 産学官連携推進センター Tel:0761-51-1070 Fax: 0761-51-1427 E-mail:ricenter@jaist.ac.jp ■■■今回の研究に関わった本学教員■■■ 知識マネジメント領域 内平直志教授 https://www.jaist.ac.jp/areas/km/laboratory/uchihira.html
  • 2020年06月09日 (前編)中小企業のIoT導入の道を開き、IoEで農業や地域の課題解消に挑む
    【シーズ レポート】   中小企業のIoT導入の道を開き、IoEで農業や地域の課題解消に挑む(前編) 産学官連携の取り組みのページでは、これまでの共同研究に加え、本学教員の研究成果であるシーズも紹介していきます。その第一回目は、知識マネジメント領域の内平直志教授が研究に取り組んでいるIoTを取り上げます。   技術の進歩でIoTを取り巻く環境が大きく変化 製造業の中小企業こそ導入して製品の差別化を IoTは既に一般的な用語となり、高品質な製品やサービスを提供するためにその導入を考えている企業は少なくないのではないでしょうか。 一方で、IoTに欠かせないAI(人工知能)等について、中には、そんな難しいことは大企業だけの話、優秀なプログラマーを抱えている一部の企業にしかできない、と考えている人がいるかもしれません。 知識マネジメント領域の内平直志教授 しかし、現在のIoTに関する状況は大きく様変わりしています。 まず、内平教授はIoTの意味について、「現実空間とクラウドをインターネットで相互に結合し、現実空間のモノやヒトからの情報をインターネット経由でクラウドに蓄積し、AI等を用いて様々な処理を行い、現実空間にフィードバックするための仕組み」とIoTの概念が以前より広がっているとし、より高度な活用、展開が繰り広げられていると指摘します。 さらに、コンピュータやAI、アプリケーション、センサー、通信といったIoTを構成する様々な技術が高度に成熟しながら調達コストが低下し、IoTは中小企業にとっても導入しやすい環境が整っています。 IoTの概念図 このような状況の下、「製品に新たな価値を付与する製造業のサービス化こそIoTの強みなのです」と内平教授は強調します。一例を挙げると、あるエンジンメーカーは、稼働しているエンジンの故障の予兆をIoTセンサーがとらえることで早めの対処を可能とし、整備にかかる労力や時間といったコストを大幅に削減することに成功しています。このことはIoTの有効性を如実に物語っています。   IoTを導入する際の課題を解消する方法論を作成 IoTの活用を推し進める一層の高精度化を目指す 大きく改善されたIoTの周辺環境ですが、では実際に導入する時は何から始めればいいのでしょう。内平教授は、企業がIoTを導入する際に対応しなければならない手順を方法論としてまとめています。「まず解決したい課題や将来のビジョンを明確にすることが何よりも大切です。IoTはあくまでも課題の解消や将来の目標を実現させるためのツールでしかありません。IoTを、導入そのものを目的化しないように注意する必要があります」と、内平教授は企業が陥りやすいポイントを示します。 「今回のIoT導入の方法論は、ビジネス的視点とシステム的視点を一貫して設計するところがポイントです」と内平教授は言います。それは、内平教授が東芝で長らくソフトウェア設計の研究に携わり、その後付加価値をもたらすサービスの設計、そしてビジネスへの応用を目指したIoTの設計と、順に研究領域を広げてきた背景があるからこそ実現できたものと言えます。 IoT導入の方法論(IoTイノベーションデザイン手法) 現在のIoTの開発には、センサーからデータを収集し分析するシステムとそれを用いて利益をあげるビジネスモデルをトータルに設計することが求められています。その意味で、内平教授が提案しているビジネス的視点とシステム的視点を有するIoT導入のための方法論(IoTイノベーションデザイン手法)は、導入の前に立ちふさがる様々な課題の解消につながるでしょう。そのうえで、「多くの企業に私たちのIoT導入の方法論を使ってもらい、さらに実践を通じて方法論を洗練化していきたいですね」と内平教授はこれからの研究の展開に意欲を見せます。 IoTイノベーションデザイン手法を解説した書籍 そして、「IoTによる製造業のサービス化をさらに進展させるためには、生産設備等のモノからデータをとり、データを分析して価値を導き出す事例を積み重ねる必要があります。また、IoT導入の方法論は、IoTやAIを活用して地域課題を解消する場面でも活用できます。希望としては、こういったデータの収集、分析、価値化に関心があるところと協力して研究を進められればと思います」と語り、IoTの導入に前向きな企業、団体との共同研究に期待しています。 石川県能美市のIoT/AIの課題解決にIoTイノベーションデザイン手法を活用   次回は、人間センサー(五感)から得られる「気づき」もデータ化して活かす、IoE(Internet of Everything  人とモノのインターネット)の研究に取り組む内平教授を紹介します。 <シーズレポート> 中小企業のIoT導入の道を開き、IoEで農業や地域の課題解消に挑む(後編)はこちら。   本件に関するお問い合わせは以下まで 北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携本部 産学官連携推進センター Tel:0761-51-1070 Fax: 0761-51-1427 E-mail:ricenter@jaist.ac.jp   ■■■今回の研究に関わった本学教員■■■ 知識マネジメント領域 内平直志教授 https://www.jaist.ac.jp/areas/km/laboratory/uchihira.html
  • 2020年05月29日 (後編)高い性能と安全性を備えた未来エネルギー材料の創出
    【産学連携レポート】 <episode 2 > (後編)高い性能と安全性を備えた未来エネルギー材料の創出   前編では、本学との共同研究によって、優れたオリジナル素材を始め様々な材料の構造や性質が明らかになり、今後の開発の道が開けたことを紹介しました。後編では、これからの展開や共同研究の裏側を見ていきます。   求める材料を作製するデザイン手法を確立 スーパーキャパシタの実現は安全性もカギ 松見教授は、共同研究の現在について、「グラフェン(炭素原子が蜂の巣状に互いに強く共有結合した単原子シート)やカーボンナノチューブを用いた様々な処理方法を検討し、本学の充実した装置群を活用して材料キャラクタリゼーションを繰り返してきました。今は、求める材料を必要十分なプロセスで作製できるデザイン手法の確立に近づいています」と手応えを語ります。 共同で開発した材料を取り出して確認 一方で、高精度なキャパシタ・電池の開発は安全性の担保が不可欠です。松見教授が研究しているリチウム電池の安全性は、例えば、有機溶媒(水に溶けない物質を溶かす有機化合物の総称)を使わないことで発火や爆発を回避するものであることに対して、スペースリンク(株)が開発を目指しているスーパーキャパシタはより安全な電解質を使って安全性に対応するものです。 また、同社は環境負荷が少ないデバイスであることも目指しているので、再利用できる電解質であったり、最初から環境負荷が全くないカテゴリーの電解質であったり、いわゆるグリーン溶媒と言われるものを使用することも重要になると考えています。松見教授は、「その点では、我々もリチウムイオンの研究でグリーンな溶媒を使うことに取り組んでいるので、環境負荷の少ないデバイスの開発はお互いに有意義な研究です」と話します。   共同研究を経験して広がった将来の可能性 サポイン事業に採択され、新たなステージへ 今回の共同研究を通じて梶浦氏は、「分析結果、実験結果、考察などの信頼性が非常に高いと感じました。このことは松見研究室に優秀なスタッフ、学生がいるからだと思います。共同実験を何度か行う中で、実験の準備や進め方、評価方法など、参考になるところがとても多かったです」と感想を話します。さらに「共同研究を行うまでは、この実験結果はおそらくこのようなことが起きているのだろう、といった定性的な考察しかできませんでしたが、共同研究による分析結果に基づくことで定量的な考察ができるようになりました。また、いただいた学術的な知見に基づいたコメントによって、次にやるべきことがより明確になりました。今回、令和元年度サポイン事業の交付が決定したのも、JAISTとの共同研究が大きな影響を及ぼしたと考えています」とその意義を強調します。 ※サポイン事業の採択理由は「オールカーボンキャパシタからなる蓄電デバイスの開発。①急速充放電が可能であり、②リチウムイオン電池に相当する大容量を有し、③高い安全性を担保し、かつ④長寿命である蓄電デバイスが強く求められてきている。弊社は、これらニーズに応えるべく、カーボンナノチューブやグラフェンなどのナノ炭素材料を活用したオールカーボンキャパシタからなる蓄電デバイスを開発する」。 遠心分離実験にて(内尾氏)   情報の共有は英語で行われるWeb会議やメールで 熱い想いで地理的なハンデを乗り越えて続く研究 加賀電子(株)の内尾氏は、「共同研究は期待していた以上に進んでいます。実験の経過はその都度、WEB会議で報告していただいています」と研究の進み具合を評価します。 今回のケースは、加賀電子(株)は東京都秋葉原に、スペースリンク(株)は神奈川県川崎市に拠点があり、地理的なハンディキャップを抱えながら共同研究が進んでいます。このハンデを乗り越えるには、双方のモチベーション、熱意が重要になると松見教授は指摘し「加賀電子(株)、スペースリンク(株)の皆さんは非常に熱心に研究と向き合ってくださっています」と、両社の熱い姿勢を口にします。さらに、「私の研究室のメンバーは外国人研究者が多いのですが、両社の担当の方も英語が堪能であるのに加えて、非常にオープンに接してくれるので、メンバーも大変喜んでいます」と、研究員の指導においても成果は少なくないことを指摘します。 月次定例会の様子。定例会はスケジュールやこの1ヶ月の成果、現在の位置を確認し、次に何をすべきかを議論する 今後の展開について松見教授は「最終的なアウトプットに向けては、本研究室がかねてから取り組んでいる高電圧対応の電解質の研究とも融合させて、さらに高いレベルのスーパーキャパシタの実現を目指したい」と話します。一方の梶浦氏は「松見教授が研究されているリチウムイオン二次電池とスーパーキャパシタ両方の特性を持ち合わせた新規エネルギーデバイスを創出したいですね」と、大きな目標を掲げます。 スーパーキャパシタの登場が社会に与える影響は非常に幅広いものがあります。身近なところでは、スマートフォンやタブレット等の端末は1分以内で充電が完了します。またEVやロボット、あるいはドローン等の充電時間が大幅に短縮されると、それらの稼働率の劇的な向上につながります。スーパーキャパシタの実現に向けて、炭素系材料による電極開発に向けた共同研究は今も熱く続けられています。 研究室メンバーとの食事会は常に刺激的な会話に溢れる   < episode 2 > 高い性能と安全性を備えた未来エネルギー材料の創出(前編)はこちらです。 ■■■今回の共同研究に関わった本学教員■■■ 物質科学領域 松見紀佳教授 https://www.jaist.ac.jp/areas/mc/laboratory/matsumi.html
  • 2020年05月15日 (前編)高い性能と安全性を備えた未来エネルギー材料の創出
    【産学連携レポート】 高い性能と安全性を備えた未来エネルギー材料の創出(前編) 「産学官連携の取り組み」の第2回目は、物質科学領域の松見紀佳教授の研究室と、スペースリンク(株)、加賀電子(株)との共同研究である「次世代蓄電池として期待される大容量のキャパシタ(急速充電を得意とするエネルギーデバイス)の実現に向けた炭素系電極開発」を取り上げます。 現在、EV(電気自動車)や再生可能エネルギーの分野で補助電源として使われているキャパシタですが、単位重量当たりの蓄電能力が低いことがネックとなっています。その大容量化に向けて、加賀電子(株)が、独自のナノカーボン制御技術を持っているスペースリンク(株)との共同研究を本学に持ち掛け、リチウムイオン2次電池等の研究をしている松見教授の研究室との取り組みが始まりました。   急速な充放電が可能で耐久性にも優れるキャパシタ 理想的なエネルギーデバイスの、蓄電大容量化に挑む 今回の共同研究について、加賀電子(株)技術統括部FAE技術グループの内尾誠一郎氏は、「スペースリンク(株)はナノ構造解析機器、測定機材、サンプル作製設備等が不足しているので、JAISTの高度な知見と経験がある研究員の方によって、炭素系材料の分析と実験データによる理論的な考察、助言をお願いしたいと思いました」とスペースリンク(株)と本学とのマッチングの背景を話します。 松見教授は以前から、大容量で充放電サイクル寿命に優れる等の特徴を持つスーパーキャパシタには大きな可能性を感じていたと言います。また、「加賀電子さんとスペースリンクさんが開発されている環境負荷の少ないグリーンキャパシタは、私たちの研究室でもグリーンなテクノロジーを目指したい思惑や方向性が一致していたので、ぜひご一緒にやらせていただきたいと思いました」と当時を振り返ります。 スペースリンク(株)の梶浦尚志次世代蓄電デバイス事業部長は、共同研究を始めるに当たり、「既に社内で炭素素材に関する興味深い実験データが得られていたので、JAISTの最先端の分析装置で炭素材料の高精度な評価をしていただくことや、松見教授や研究室メンバーとの議論を通じて学術的に実験結果の考察が深められばと思いました。そして、学術的な考察を反映した電極構造設計につなげたかった」との期待を持っていました。 開発が進むスーパーキャパシタのイメージ画像(スペースリンク社のホームページより)   スペースリンク(株)の優れた炭素素材を詳細に解析 構造の把握がその後の材料作製プロセスを確かなものに 実際の分析では、スペースリンク(株)は非常に良い炭素材料を持っていましたが、その構造の詳細は分かっていなかったと松見教授は言います。そこで、その炭素素材の構造を詳細にキャラクタリゼーション(材料の構造や性質の調査、測定)するところから研究は始まりました。 炭素素材の構造が明らかになると、素材の合成手法を確立するための実験に移ります。構造の変化がどのような影響を与えるのか、合成処理の方法と構造のモディフィケーション(部分的な変更や修正。加減)にどのような相関関係があるのか等の解明に臨みました。そして、これらを通じて、求めている材料開発の方向性を明確にして、材料の作製方法やそのプロセスの簡略化を図るとともに、コストの低減にもつながる開発を一緒に取り組みました。 様々な材料の構造が明確化され、言わば材料の現在地が示されると、これまでは見えていなかった多様な事実を目にできました。この時のことを梶浦氏は「共同研究の成果が形となって現れたことに、興奮を抑えきれませんでした。同時に、更なる展開を可能にするためにはどうするべきかを考えるよう、自分を落ち着かせました」と、当時の熱い気持ちを振り返ります。 電気化学的特性評価の模様    < episode 2 > 高い性能と安全性を備えた未来エネルギー材料の創出(後編)はこちらです。   ■■■今回の共同研究に関わった本学教員■■■ 物質科学領域 松見紀佳教授 https://www.jaist.ac.jp/areas/mc/laboratory/matsumi.html
  • 北陸地域の産学連携・産産連携のマッチングイベント「北陸メッセ」に向けて Matching HUB Kanazawa2020 新産業創出を目指した地域連携のHUBへ
  • 会員登録について
  • お問い合わせ

JAIST-netとは?

北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は、産業界との連携の広がりを目的に、
コアとなる新しい交流の場 JAIST-netを創設します。
この取組みは、本学の有する最先端技術や最新の科学的成果を
企業の皆さまに広くお知らせし、新しい事業や産業の創出につなげて頂くこと、
また各社の固有ニーズや課題に適確に対応し解決に貢献することを目的としています。
本ネットワークを通じて、各社特有の技術ニーズを企業間連携に発展させることにも貢献したいと考えています。
以上のような趣旨に基づき、JAIST-netでは、下記の活動を実施します。

ネットワーク関係図

活動内容

研究成果の産業利用や情報発信、産業界と研究者の交流の促進を目的に
さまざまな活動を行っています。

  • 技術相談(随時)
    技術相談(随時)
  • 技術相談会、セミナーへの招待
    技術相談会、
    セミナーへの招待
  • 産学連携活動等の情報提供(メール配信)
    産学連携活動等の
    情報提供(メール配信)
  • JAIST-net交流会の開催
    JAIST-net交流会
    の開催