研究科について
知識科学研究科は、
個人・組織・社会・自然の営みとしての「知識創造」という視点から、
人文学・社会科学・認知科学・情報科学・自然科学・システム科学分野の諸学問を再編・融合する教育研究体制を整備しながら「知識とは何か?」「知識はいかに創られるか?」を探求すると同時に、問題を発見・解決して新しい技術・組織・社会イノベーションを構想・実現する能力を持つ人材、すなわち2 1 世紀の「知識社会のパイオニア」を養成することを目標としています。この目標の実現に向けて、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の第3番目の研究科として「知識科学研究科」が設置され、平成10年4月に学生受入れを開始しました。
このページでは、世界でも類を見ない「知識科学研究科」を知っていただくために、「知識科学」、「研究科設置の背景」、「研究科の概要」などについてご紹介します。
知識科学研究科は「知識」をテーマとして設立された世界で初めての研究・教育機関です。社会科学的観点から組織における知識の形成と伝達過程を研究したり、認知科学的視点からグループでの意思決定を調べてグループウェアなど知識創造を支援する情報システムを構築したり、複雑系や遺伝子情報の研究を通して知の本質を解明しようとしています。「知識」という新しい視点で、既存の学問領域に囚われることなく、自由に、あらゆる手段を使って様々な問題に取り組んでいます。これから社会が進んでいくべき方向を考える上で、「知識」が非常に重要なコンセプトであることは明らかでしょう。しかし、その一方で「知識とは何か」、「知識は何の役に立つのか」、「いかにして知識を創り出せるのか」といった重要な問題については、ほとんど何もわかっていません。このような状況を打破し、「知識」を中心に据えて未来を考えていく、それが我々の姿勢です。

21世紀は、「知識」が、生産、商品流通などの経済活動をはじめ、さまざまな社会的活動の中心となる時代、すなわち「知識社会」の時代であるといわれています。実際に、最近のインターネットの普及やバーチャルコーポレーションの登場、知的所有権への関心の高まりなどに見られるように、知識の生産やイノベーションに高い価値が与えられ、いわば「知識創造」を核とする社会システム全般の大変革が世界的に起きています。
一方、科学技術それ自体が、これまでの歴史の中でターニングポイントを迎えています。高度化した科学技術が、極端に細分化・専門化したため、現実社会で発生する大規模で複雑な問題への対応が難しくなっており、「徹底した要素への分割」を基本とする近代科学の限界が指摘されています。いまや、こうした閉塞状況を打ち破り、社会発展への道筋を示す新しいパラダイムの出現が待望されているのです。
このような時代にあって、近代科学的手法の限界を超えて「知識社会」のニーズに応える理論や技術の創造と新しいタイプの人材の養成が求められますが、残念ながらこうした教育・研究を本格的に行う組織はこれまでありませんでした。新しい時代はすでに始まっており、もはや一刻の猶予も許されません。
人類の存続とさらなる発展を目指すためには、人間の思考や感性・行動などを踏まえて理工系と人文社会系の「知」の再編と融合を図り、新しい知の体系「知識科学」を確立すること、また同時に、これを基盤として、理系・文系の枠を超えた幅広い知識、自由な発想と総合的判断力、深い洞察力やシステム思考の能力を有し、「知識創造」の担い手となる人材、すなわち「知識社会のパイオニア」を組織的に養成することがぜひ必要です。
以上のような時代背景と問題意識により、世界でも類を見ない「知識科学研究科」が生まれました。われわれは、「人間・社会・自然と科学技術との調和」を目指して、「知」の理論と実践がスパイラル状に発展していく新しい学問を構築したいと考えます。人類の未来を「知識創造」によって切り拓く志のある人々がこの研究科の門をたたくことを心より待っています。
知識科学研究科は、自然、個人、組織および社会の営みとしての「知識創造」という切り口で、システム科学、情報科学、メディア科学、認知科学、生命科学、物質科学から、経営学、組織論、経済学、社会学、政策科学、デザイン科学にいたるまでの自然科学、社会科学や人文科学の各分野の学問を再編・融合した教育研究体制を整備し、知識の創造・蓄積・活用のメカニズムを探究します。
同時に、知識社会を担う問題発見・問題解決型人材、すなわち「知識社会のパイオニア」を養成することを目標とします。
研究対象としては、
- 知識構造、知識表現、科学的知識、社会的知識、政策的知識、伝統的知識(知恵)、暗黙知
- 組織や社会における知識経営、知識ベースの技術経営、知識ベースのプロジェクトマネジメント、知識創造としての技術・組織・社会イノベーション、知識経済、知識社会
- 人間の認知・知能・創造性、身体知、個人的知識創造、知識技術、知識システム、データマイニング、知識創造技法、知識創造としてのデザイン
- 社会・技術・自然におけるネットワーキングや進化などの複雑系現象、システム思考、モデリング・シミュレーション、構成論的手法、環境のシステム分析、地域システム分析
- サービスイノベーション、サービスマネジメント、サービス価値創造、サービスマーケティング、医療サービス
などを取り扱います。
このように、知識科学研究科の研究対象はきわめて幅広く、既存の学問的枠組みを超えて、知識の視点からの自由な研究テーマ設定を可能としています。
研究活動においては、グループ創造技法やモデリング&シミュレーションなどの知的な技法・技術を活用すると同時に、現場でのデータ収集・分析や知識創造を行うフィールドワークも重視し、現象を説明する理論的モデルの構築を目指す理論研究のみならず、現実の問題の解決を目指す実践的研究を行い、地域や海外のさまざまな組織との共同研究を積極的に実施しています。
このような研究への取組みを背景に、自然科学・システム科学、情報科学・認知科学、経営学・組織論のそれぞれの「知」を融合した教育カリキュラムを編成し、変貌する社会のニーズに対応する先端科学技術を創造・伝承する大学院大学として、新しい社会システムのデザイン、新技術の開発や知識創造のメカニズムの探求に携わる高度な専門能力や研究能力を有する人材を育てます。
知識科学研究科は、教員の学問的背景と学生の研究関心に応じた教育研究を行うために、4領域(基本3領域・応用1領域)に分かれています。
[基本領域]
● 社会知識領域
社会知識領域では、グループや組織、社会における知識の創造・共有・活用のプロセスを考究します。そして、企業や行政官庁、非営利組織、地域社会等における知識経営と技術経営の実践的な技能・技術を習得し、技術的・組織的・社会的イノベーションを創出できる有為な人材を育成します。
● 知識メディア領域
知識メディア領域では、人間が知識を発見し表現する過程を考究し、知識情報やメディア情報に基づき、知識ベースシステムをデザイン・構築するための体系的理解を習得し、そこから知識創造あるいはメディア創造に関する知識社会にふさわしい応用領域を開拓できる有為な人材を育成します。
● システム知識領域
システム知識領域では、地域社会、ネットワーク、言語やコミュニケーションなどの複雑な対象における知識の創造・共有・活用を、システム思考やモデリング・シミュレーションなどのシステム科学をもとに考究します。そして、システム科学の基礎の体系的理解に基づいた上記の複雑な現象の分析や研究、および、それらの抱える問題の解決に貢献する有為な人材を育成します。
[応用領域]
● サービス知識領域
サービス知識領域では、企業や組織におけるサービス価値の創造に着目し、サービス知識の創造・共有・活用のプロセスを考究します。そして、様々な組織におけるサービス経営の実践的なノウハウ・技術を習得させ、技術的・組織的・社会的イノベーションを創出できる有為な人材を育成します。
