学生の田澤さんが人工知能学会40周年記念論文賞 最優秀論文賞を受賞
学生の田澤龍之介さん(博士後期課程3年、データ社会メディア研究領域、日髙研究室)が、人工知能学会40周年記念論文賞(「人工知能の未来を拓く研究論文」部門 最優秀論文賞)を受賞しました。
人工知能学会40周年記念論文賞は、一般社団法人人工知能学会(JSAI)の創立40周年を記念して創設された表彰制度です。「人工知能の未来を拓くサーベイと研究」をテーマとした記念特集号への投稿論文を対象に、独創性、学術・技術への貢献度、将来への波及効果などの観点から厳正な審査が行われました。
授賞式は、令和8年6月8日~12日にかけてGメッセ群馬(群馬県高崎市)にて開催された、第40回人工知能学会全国大会(JSAI2026)において執り行われました。
※参考:人工知能学会
■受賞年月日
令和8年6月10日
■研究題目、論文タイトル等
課題要求と身体制約の両立による不良設定問題の解消:発達的視点からの投球運動分析
■研究者、著者
田澤龍之介、日髙昇平、鳥居拓馬(東京電機大学)
■受賞対象となった研究の内容
本研究は、運動制御における不良設定問題を、発達的視点から捉え直すものです。不良設定問題とは、一つの課題を達成しうる運動が多数存在する中で、身体をもつ主体がどのように一つの運動を選択するのかという問題です。従来、この問題は主に最適化や制御方策の選択として扱われてきましたが、本研究では、運動の解は制御器の内部だけで決まるのではなく、「課題が何を要求するか」と「身体が何を実現できるか」の関係によって構造的に定まると考えました。
具体的には、単振子による投球運動をモデルとし、目標距離という課題要求と、発揮可能なトルク上限という身体制約の関係を解析しました。その結果、誤差なく課題を達成できる運動解の集合は、課題要求と身体制約の組み合わせに応じて、存在しない場合、一意に定まる場合、複数存在する場合へと変化することが示されました。すなわち、不良設定性は単に「解が多すぎる」という問題ではなく、課題と身体の関係によって現れたり、解消されたりする動的な性質であることが明らかになりました。
この知見は、発達や運動学習の理解に加えて、人工知能の将来にも重要な示唆を与えます。AIが固定された課題を最適化するだけでなく、身体制約や課題難易度を段階的に変化させながら学習することで、より柔軟で適応的な知能を形成できる可能性があります。本研究は、身体性をもつAI、ロボット学習、カリキュラム学習の設計に向けて、課題・身体・環境の相互作用を基盤とする新しい理論的視点を提示するものです。
■受賞にあたって一言
このたびは、人工知能学会40周年記念論文賞において、最優秀論文賞という大変名誉ある賞をいただき、誠にありがとうございます。本論文では、投球運動を題材に、課題要求と身体制約がどのように相互に作用し、一見すると不良設定に見える運動制御の問題が、発達の過程においてどのように解消されていくのかを検討しました。人間の知能や運動は、あらかじめ与えられた正解を単に計算するものではなく、身体、環境、課題との関係のなかで、実行可能な解を見いだしていく過程であると考えています。今回、本研究を人工知能学会の40周年という節目に評価していただけたことは、大変大きな励みです。人工知能研究においても、身体性、発達、制約の相互作用という観点は、今後ますます重要になると考えています。本研究が、そのような議論の一助となれば幸いです。
最後になりましたが、本研究をご指導いただいた日髙昇平准教授、共著者である東京電機大学の鳥居拓馬准教授、ならびに研究を支えてくださった皆様に心より御礼申し上げます。今回の受賞を励みに、今後も人間の知能と身体の関係を深く理解し、人工知能研究に貢献できるよう精進してまいります。


令和8年7月21日
