2026年ノーベル生理学・医学賞受賞の3氏に祝意 ―小泉周理事・副学長がコメント―
2026年10月5日、2026年ノーベル生理学・医学賞が、Karl Deisseroth(カール・ダイセロス)氏、Peter Hegemann(ペーター・ヘーゲマン)氏、Georg Nagel(ゲオルク・ナーゲル)氏の3氏に授与されることが発表されました。受賞理由は、「光で作動するイオンチャネルと光遺伝学(Optogenetics)に関する発見」です。
光遺伝学(Optogenetics)とは、光に反応するタンパク質を細胞に導入し、光を当てることで特定の神経細胞などの活動を制御する技術です。例えば、特定の神経細胞の活動を光によって促したり抑えたりすることができるため、脳の神経回路と記憶、感情、行動などとの因果関係を調べる研究手法として、現在では広く利用されています。Hegemann氏とNagel氏は単細胞藻類から光に反応するタンパク質「チャネルロドプシン」を発見し、Deisseroth氏はこれを神経細胞の活動を光で制御する技術へと発展させました。
本学の小泉周理事(研究戦略担当)・副学長は、光遺伝学が新しい研究技術として広がり始めた2009年、国内で光遺伝学に関する研究成果や技術を共有する「光操作研究会」の立ち上げ・開催に携わりました。また、2013年には日本神経科学学会の英文機関誌『Neuroscience Research』の光遺伝学に関する特集号で、八尾寛・東北大学教授(当時)、今回ノーベル賞を受賞したPeter Hegemann氏とともにGuest Editorを務めています。
さらに、2015年には八尾氏、神取秀樹・名古屋工業大学教授とともに、光遺伝学を体系的に紹介する英文書籍『Optogenetics: Light-Sensing Proteins and Their Applications』を編集・刊行し、2021年に刊行された第2版でもEditorを務めました。
■小泉周理事(研究戦略担当)・副学長のコメント
Peter Hegemann先生、このたびのノーベル生理学・医学賞の受賞を心からお祝い申し上げます。また、ともに受賞されたKarl Deisseroth先生、Georg Nagel先生にも、心よりお祝い申し上げます。
光遺伝学は、光を使って特定の神経細胞の活動を操作することを可能にし、脳の働きを調べる方法を大きく変えた技術です。現在では神経科学の研究現場で広く使われていますが、2000年代の終わり頃には、まだ非常に新しい技術でした。
私自身、2009年に第1回「光操作研究会」の立ち上げ・開催に携わり、この新しい技術を日本の研究者に広げる活動を行いました。2013年には、八尾寛先生、Hegemann先生とともに『Neuroscience Research』の光遺伝学に関する特集号のGuest Editorを務め、その後、光遺伝学に関する書籍『Optogenetics』の編集にも携わりました。私自身の研究の軸足はその後、光操作とは異なる領域へと移りましたが、光遺伝学が日本の神経科学に広く定着し、その基礎を築いた研究者が今回ノーベル賞を受賞されたことを、大変うれしく、また感慨深く感じています。
光遺伝学の発展は、ある分野で生まれた基礎的な発見や技術が、別の研究分野と結びつくことで、それまでにない研究手法となり、医学生理学をはじめとする生命科学研究を大きく前進させた好例だと思います。新しい科学や技術は、一つの分野の中だけで生まれるとは限りません。異なる分野の研究者が出会い、それぞれの知識や技術を持ち寄ることから、大きな飛躍が生まれることがあります。
現在、私は本学(JAIST)の研究戦略を担当する理事として、このような異分野融合を生み出す研究環境づくりを重要な課題の一つと考えています。JAISTでは、超越バイオメディカルDX研究拠点(eMEDX)をはじめ、マテリアルサイエンスや情報科学など本学が強みを持つ研究分野の知見を、医学・医療・ヘルスケアなどの分野につなげる取組を進めています。
今回のノーベル賞を契機に、異なる分野の基礎研究や技術が結びつくことの可能性を改めて強く感じています。JAISTにおいても、研究分野の垣根を越えた交流や国内外の研究者との連携をさらに促進し、これまでになかった発想や技術が生まれる環境をつくっていきたいと考えています。そして、そうした研究の中から、将来の科学や社会を大きく変える成果が生まれることを期待しています。
令和8年10月6日
