小中学生の「英語コミュニケーション力」をAIで"見える化"に成功 ~新しい「AI英語コミュニケーション訓練システム」の開発に期待~
小中学生の「英語コミュニケーション力」をAIで"見える化"に成功
~新しい「AI英語コミュニケーション訓練システム」の開発に期待~
【ポイント】
- 計446名の小中学生によるインタビューデータを用いて、小中学生の英語コミュニケーションスキルと「ふるまい」との関係を分析し、世界で初めてAIによる「英語コミュニケーション力」の推定モデルを構築。
- 本技術と対話AIを組み合わせ、誰もが地域差や学習環境によらず、高いレベルの英語コミュニケーション教育を受けられる統合的な「AI英語コミュニケーション訓練システム」の開発に期待。
- 子どもたちが英語を「話せる」「伝わる」と実感できるようになる――そんな英語学習の未来に向けた大きな一歩。
【概要】
グローバル社会で活躍する人材を育成するためには、日本や中国など英語を母国語としない小中学生に対する英語コミュニケーション教育の充実が求められています。しかし、彼らが自身の英語コミュニケーション能力を客観的に把握し、改善点をとらえ学習する機会は依然として限られています。
北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市) 人間情報学研究領域の岡田将吾教授、Mawalim Candy-Olivia(マワリム ケンディ オリビア)助教の研究グループは、英語を母国語としない小中学生の英語コミュニケーションの訓練システムの開発を目指し、対話中の音声・表情・言語情報を用いて、多様な英語コミュニケーションスキルレベルを推定する機械学習モデルを開発しました。この機械学習モデルは、米国ニュージャージー州プリンストンに本社を置くグローバルな教育・人材ソリューション企業であるETSとの共同開発により実現しました。
モデルは、446人の未成年者とのインタビューから収集された発話データ、顔表情データ、言語データを組み合わせて訓練され、英語のコミュニケーション能力の高/低を83%の精度で推定できることを示しました。 400人以上の非英語圏の小中学生によるインタビューデータから、英語コミュニケーションスキルとコミュニケーションにおける「ふるまい」(音声特徴や表情特徴)との関係を大規模かつ定量的に分析し、スキルの推定モデルを構築した研究は前例がなく、世界初の事例となります。
小中学生の英語コミュニケーション能力をコミュニケーションデータから精緻に推定し、改善点をフィードバックできるシステムの実現は、児童生徒らに対する実践的な訓練機会の提供につながることが期待されます。
グローバル社会が進む中、「英語ができる子」と「苦手な子」の格差が広がっています。特に、英語を母語としない日本やアジア各国では、子どもたち自身が「自分の英語が通じているのか」分からず、やる気を失うケースも少なくありません。今後は、英語学習機会の格差是正を目的に、研究チームはスキル推定技術を対話型AIと統合し、包括的な「AI英語コミュニケーショントレーニングシステム」の開発を進めています。このシステムは、地理的・社会経済的な障壁に関わらず、高品質な英語コミュニケーション教育を提供し、すべての学習者が「話す」また「コミュニケーションを取る」能力に自信を持てるように支援することを目的としています。 また、本システムは、英語教育の質の均一化と向上、学習意欲の喚起にもつながることが期待されます。
本研究成果は、ETSとの共同研究によるもので、Elsevier社の学術誌「Computers & Education: Artificial Intelligence」(Mawalim Candy-Olivia助教が筆頭著者)に2025年3月20日にオープンアクセス版にて掲載されました。なお、本研究は、一部日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)「オンライン知識獲得による音声対話システムの自律進化」(課題番号:22H00536)及び基盤研究(B)「視聴傾向とマルチモーダル特徴量に基づく講義アーカイブの適応的視聴体験拡張」(課題番号:23H03506)の支援により実施されました。
【論文情報】
雑誌名 | Computers and Education: Artificial Intelligence, Volume 8 |
論文名 | Beyond accuracy: Multimodal modeling of structured speaking skill indices in young adolescents |
著者 | Candy Olivia Mawalima∗、 Chee Wee Leong、 Guy Sivan、 Hung-Hsuan Huang、 Shogo Okada |
掲載日 | 2025年6月号に掲載予定。論文は2025年3月20日 (オープンアクセス版)にて公開済 |
DOI | https://doi.org/10.1016/j.caeai.2025.100386 |
Educational Testing Service (ETS)について
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令和7年6月2日