ニュース・イベント

受賞

サスティナブルイノベーション研究領域の宮田講師が日本熱電学会の進歩賞を受賞

 サスティナブルイノベーション研究領域の宮田全展講師が一般社団法人日本熱電学会の進歩賞を受賞しました。

 日本熱電学会では、熱電工学、熱電科学、及び熱電技術、並びに関連分野における発明、発見、研究と開発、並びに同学会の発展に顕著な功績があったと認められる同学会会員に対して、その功績を讃え表彰を行っています。
 本研究では、実験とスーパーコンピューターを活用したシミュレーションを協奏的に行うことで、希少元素を含まない新しい硫化物・リン化物熱電材料の創製と、革新的な材料設計指針を確立することに成功しました。それら一連の研究成果が、同学会において、熱電工学、熱電科学、及び熱電技術、関連分野における発見、研究と開発、並びに同学会の発展に顕著な功績であったことが認められ、この度の受賞となりました。

※参考:日本熱電学会

■受賞年月日
 令和5年9月25日

■研究題目
 実験と第一原理計算による新奇硫化物・リン化物熱電材料のマテリアルデザイン

■研究者、著者
 宮田全展

■受賞対象となった研究の内容
 本研究では、実験とスーパーコンピューターを駆使したシミュレーション計算により、高い性能(出力因子)を示す新しい硫化物熱電材料を創製し、そのメカニズムを明らかにしました。さらに、JAIST生まれのシミュレーション計算コードOpenMXと、電子輸送計算コードBoltzTraPをつなぐ汎用インターフェースプログラムを開発し、世界に先駆けて800種類を超える硫化物熱電材料の大規模計算を行うことで、熱電性能を最大化する設計指針を確立しました。本研究で開発されたインターフェースプログラムはOpenMXの公式計算オプションとして実装されています。
OpenMX Ver. 3.9 ユーザーマニュアル
 実験とスーパーコンピューターによる高精度なシミュレーション計算により、新しい高性能熱電材料の候補物質群として、リン化物が高いポテンシャルを持つことを詳細に明らかにし、中でもAg(銀)-P(リン)化合物中のAg原子が特殊な振動をすることで、熱伝導を大きく抑制し、極めて低い格子熱伝導率を示すメカニズムを明らかにしました。そして、リン化物のみならず、広く無機材料について、熱伝導において重要なフォノン(原子振動の伝搬を仮想の粒子の運動として取り扱う概念)において、比熱・音速・緩和時間に相関関係があることを発見し、フォノンの観点から熱電材料の新しい評価指針を確立しました。
 株式会社白山、石川県工業試験場を中心とした産官学連携により、Mg(マグネシウム)とSi(シリコン)を主成分とした環境にやさしい熱電材料の高性能化の材料設計指針を、実験とスーパーコンピューターによるシミュレーションより確立し、材料の高性能化に貢献しました。

■受賞にあたって一言
 この度は、日本熱電学会の優秀ポスター賞、優秀講演賞に続き、進歩賞を賜りまして誠に光栄でございます。これも本学の小矢野幹夫教授、東大物性研の尾崎泰助教授、石川県工業試験場の豊田丈紫氏、株式会社白山の内田健太郎氏をはじめとした、数えきれないほどの共同研究者の先生方との研究・ディスカッションのお陰でございます。また、本研究は科研費(若手研究JP20K15021)をはじめとした数々の研究助成、本学の大規模計算機KAGAYAKIによって実施されました。この場を借りて、深く感謝御礼申し上げます。今後も学術・社会により一層の貢献ができるよう、研究・教育活動に邁進いたします。

award20231012.jpg

令和5年10月16日

PAGETOP