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リチウムイオン電池の高容量化に向けたデータ科学的手法による物質探索

リチウムイオン電池の高容量化に向けたデータ科学的手法による物質探索

ポイント

■「電池の持ち」を良くするために、なるべく多量に充電できて、かつ、放電末期に電圧が下がりにくい電池の開発が望まれる。従来技術であるニッケル系の電極材料に、クロムや鉄、バナジウム、プラチナなどを添加することで、こうした容量や電圧に関わる特性の改善が実現できることをシミュレーションで予測した。

【背景と経緯】
 リチウムイオン電池の性能を向上させる代表的な方策として、プラス側の電極(正極)に使う材料に創意工夫を加える研究が精力的に展開されている。具体的には、最初に開発されたコバルト系正極に代わるものとして、コバルトをニッケルに置換することで廉価化や高容量化が実現されたが、更にニッケルの一部を別の金属種に置き換えることで長寿命化を目指すなどの研究開発が進められている(元素置換による探索)。
 「どのような金属種を、どの程度置換すればいいか」を、実際に電池を作り上げて実験するとなると、膨大なコストと手間が掛かるため、シミュレーションによる可能性の絞り込み予測は大変有用な方策となる。実際に長寿命化のためのシミュレーション予測は数多く進められているが、これまでに予測された元素置換では、長寿命化を実現する代わりに電池の容量を低下させる問題があった。そこで、「電池高容量化のための元素置換」を予測するシミュレーションが待望されていた。
 しかしながら、電池の容量をシミュレーション予測するには、金属種や置換量の「場合の数」に加えて、充電状態から放電状態に至る「多数の中途状態」をすべて計算しなければならず、「場合の数が膨大」でまともにシミュレーションして予測するにはコストが高く現実的に不可能であった。

【研究の内容】
 北陸先端科学技術大学院大学・先端科学技術研究科 環境・エネルギー領域の前園 涼教授のグループは、データ科学的手法を活用してこの問題を解決した。
 金属種/置換量/放電量に関する莫大な組合せを全てシミュレーションすることは避け、限られた代表的な金属種に対してのみいくつかの放電量に対する電圧をシミュレーションし、その結果をコンピュータにデータ学習させた。
 「放電量に対する電圧変化のパターン」を学習させることで、他の金属種に対する「計算の手数」を省略することができる。この方法により、世界でも初めて電池高容量化のための元素置換を予測するシミュレーションが実現できた(図1)。
 本研究成果は、2021年7月2日(米国東部標準時間)に科学雑誌「The Journal of Physical Chemistry C」のオンライン版に掲載された。
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図1 リチウムイオン電池の正極材料では、最初に開発されたコバルト系正極のコバルトをニッケルに置換することで廉価化や高容量化が実現するが、更にニッケルの一部を別の金属種に置き換えることで「電池の持ち」が向上することを示す。ニッケル(ref:黒実線)をバナジウム(V:青実線)などで一部置換すると、放電しても電圧(縦軸値)が下がりにくく「電池の持ち」が良くなる様子がシミュレーションで予見された。

【今後の展開】
 今回は、ニッケルを「単一」元素で置換する範囲内で有望な結果が得られたが、更に二種以上での組合せ探索を進めることで、高容量化電池の可能性は更に広がる。今回開発した探索手法によって、より「電池の持ち」を向上する材料開発が加速されるものと期待できる。

【論文情報】

掲載誌 The Journal of Physical Chemistry C
論文題目 High-Throughput Evaluation of Discharge Profiles of Nickel Substitution in LiNiO2 by Ab Initio Calculations
著者 Satoshi Yoshio, Kenta Hongo, Kousuke Nakano, Ryo Maezono
掲載日 2021年7月2日(米国東部標準時間)にオンライン版に掲載
DOI 10.1021/acs.jpcc.0c11589

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令和3年7月14日

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