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シリセンと六方晶窒化ホウ素の積層構造を実現 -シリセンの性質に影響しない絶縁性酸化防止膜の実証-

シリセンと六方晶窒化ホウ素の積層構造を実現
-シリセンの性質に影響しない絶縁性酸化防止膜の実証-

ポイント

  • シリセンはケイ素版グラフェンと言える原子層物質。このシリセンと絶縁性の原子層物質である六方晶窒化ホウ素の積層構造を二ホウ化物薄膜上で実現。
  • 世界で初めて、絶縁性の六方晶窒化ホウ素シートにより、シリセンの構造や電子状態に影響を及ぼすことなく、大気中での酸化防止に成功した。

 北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)(学長・浅野 哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科応用物理学領域アントワーヌ・フロランス講師高村 由起子准教授らは、トゥウェンテ大学、ウォロンゴン大学と共同で、シリセンと六方晶窒化ホウ素(hBN)の積層構造を二ホウ化ジルコニウム薄膜上に形成し、シリセンの構造と電子状態を乱さずに、大気中で一時間以上の酸化防止が可能であることを世界で初めて実証しました。
 シリセンは、原子一層分の厚みしかない、究極に薄いケイ素(Si)の二次元結晶です。1994年に日本人研究者によってシリセンの安定な構造を理論的に研究した成果が発表されています。その後、炭素(C)の二次元結晶「グラフェン」に関する研究成果が2010年度のノーベル物理学賞を受賞するなど大きな注目を集め、そのSi版であるシリセンの研究が世界的に行われるようになりました。JAISTの研究チームは、2012年にSiウェハ上のエピタキシャル二ホウ化ジルコニウム薄膜上にシリセンが自発的に形成することを発見しました。今回、その二ホウ化物薄膜表面を窒化して形成した原子層厚みのhBNシートにSiを蒸着したところ、Si原子がhBNシート下に挿入され、二ホウ化物薄膜とhBNシートの間にシリセンが形成されました。hBNは、「白いグラフェン」と呼ばれることもある絶縁性の層状物質で、シリセンとの相互作用が小さいことが理論的にも予測されていましたが、今回、放射光施設における角度分解光電子分光測定により、シリセンの電子状態がhBNに影響されないことが実験的に明らかとなりました。さらにhBNにより、シリセンが大気中で一時間は酸化されないことが明らかとなりました。
 この成果により、シリセンと良好な界面を形成する絶縁性酸化防止膜としてのhBNシートの性能が実証されました。これまで、酸化されやすいために大気中での取り扱いが困難であったシリセンを超高真空環境から取り出す可能性を拓きました。
 本成果は、4月5日(金)に英国物理学会出版局の発行する電子ジャーナル「2D Materials(ツー・ディー・マテリアルズ)」誌に掲載されました。
 なお、本研究は、科学研究費補助金、分子科学研究所共同利用などの支援を受けて行われました。

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<今後の展開>
 六方晶窒化ホウ素(hBN)がシリセンの電子的特性に影響せずに良好な界面を形成することが実験的に明らかとなり、加えて、一原子層厚みにも関わらず、短時間とはいえ大気中での酸化防止効果があることが実証されました。今後は、このhBNシート上にさらに厚く保護層を形成することでシリセンを大気中で安定的に取り扱うことが可能になり、従来困難であった大気中での評価や加工、ひいてはデバイス作製へと発展することが期待できます。

<論文>
"Van der Waals integration of silicene and hexagonal boron nitride" (シリセンと六方晶窒化ホウ素のファン・デル・ワールス積層)  
DOI: https://iopscience.iop.org/article/10.1088/2053-1583/ab0a29/  
F. B. Wiggers, A. Fleurence, K. Aoyagi, T. Yonezawa, Y. Yamada-Takamura, H. Feng, J. Zhuang, Y. Du, A.Y. Kovalgin and M. P. de Jong
2D Materials 6, 035001 (2019).

平成31年4月8日

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