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研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。研究員のSUWANSOONTORNさんが2021年度日本化学会北陸地区講演会と研究発表会において優秀ポスター賞を受賞

サイレントボイスセンシング国際研究拠点の研究員のSUWANSOONTORN, Athchayaさん(物質化学領域、長尾研究室)が2021年度日本化学会北陸地区講演会と研究発表会において優秀ポスター賞を受賞しました。
北陸地区講演会と研究発表会は、毎年秋に、金沢大学、福井大学、富山大学、北陸先端科学技術大学院大学のいずれかの大学にて開催しています。特別講演のほか、ポスター発表があり、200~300名が参加しています。
今回、2021年度北陸地区講演会と研究発表会は、11月12日にオンラインにて開催されました。
■受賞年月日
令和3年11月16日
■発表題目
The influence of functionalized carboxylic acid on proton transport pathways in styrene-based polymer thin films
■研究者、著者
〇Athchaya Suwansoontorn, Yuki Nagao, Katsuhiro Yamamoto, Shusaku Nagano, Jun Matsui
■受賞対象となった研究の内容
The proton-donating functional groups or acids in proton conductive materials are the critical key for proton transport. Protons can flow via both conductive materials' interfaces and internal. Many researchers reported the proton transport at the biomaterials' interface, which commonly contains carboxylic acid, highlighting carboxylic acid's important role in proton conduction. However, the influence of carboxylic acid concentration and distribution on the proton transport pathways is still unclear. The influence of carboxylic acid concentration on proton transport pathways, internal and interfacial, was investigated in this study. High and low carboxylic acid concentration styrene-based polymers, P4VBA100 and PS4VBA50, respectively, were prepared. The in-plane proton conductivity (σ) and normalized resistance (R') were estimated to explore the proton conduction pathways. The film thickness independent of σ and film thickness dependent of R' were observed in P4VBA100 thin films, referring to the internal proton conduction. On the other hand, the film thickness dependent of σ and film thickness independent of R' was found in PS4VBA50 thin films, indicating the interfacial proton conduction. This study suggests the role of carboxylic acid concentration and/or distribution on the proton transport behavior, which might explain the proton transport in various systems, including biological systems.
■受賞にあたって一言
I'm incredibly honored with this poster award from the 2021 Hokuriku area lecture and research presentation. First, I would express my appreciation to the organizer of this conference, the Kinki branch of the chemical society of Japan, for providing us the opportunity to share and discuss our researches. Importantly, I would describe my gratitude to Assoc. Prof. Yuki Nagao, Prof. Katsuhiro Yamamoto, Prof. Shusaku Nagano, and Prof. Jun Matsui for their precious support. And I am also grateful to Nagao-LAB members for their kind encouragement. This award is an essential motivation for me to further research and contribute to the materials science community.



令和3年12月2日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2021/12/02-1.html生命機能工学領域の藤本教授らの論文がOrganic & Biomolecular Chemistry誌の表紙に採択
生命機能工学領域の藤本 健造教授らの論文が王立化学会(RSC)刊行の Organic & Biomolecular Chemistry誌の表紙(Front cover)に採択されました。
■掲載誌
Organic & Biomolecular Chemistry
掲載日2021年12月7日
■著者
Jun-ichi Mihara, Kenzo Fujimoto*(*責任著者)
■論文タイトル
Photocrosslinking of DNA using 4-methylpyranocarbazole nucleoside with thymine base selectivity
■論文概要
核酸医薬や遺伝子解析への応用が期待される可視光応答型DNA光クロスリンカーは合成収率の低さが実用化への大きな障害となっていた。本研究では新規合成ルートを模索し、従来の5倍の高収率での合成に成功した。また、本DNA光クロスリンカーが従来のものと比較し、今までにない圧倒的な塩基特異性をもつことを明らかにした。これらの知見は可視光応答型DNA光クロスリンカーを用いた核酸医薬や遺伝子解析への実用化にむけて、大きな弾みとなる。
論文詳細:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2021/OB/D1OB01621K
表紙詳細:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2021/OB/D1OB90170B
令和3年11月29日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/11/29-1.html最先端ナノ材料グラフェンを用いた電界センサ素子で、雷雲が生み出す電界の検出に成功 -襲雷予測に向けた「広域雷雲監視ネットワーク」実現に期待-

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北陸先端科学技術大学院大学 音羽電機工業株式会社 東京工業大学 |
最先端ナノ材料グラフェンを用いた電界センサ素子で、雷雲が生み出す電界の検出に成功
- 襲雷予測に向けた「広域雷雲監視ネットワーク」実現に期待 -
北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科/環境・エネルギー領域のアフサル カリクンナン研究員、マノハラン ムルガナタン講師、水田 博教授の研究チームは、音羽電機工業株式会社、東京工業大学と共同で、グラフェン(炭素原子シート)を用いた超小型電界センサ素子を開発し、雷雲が生み出す大気電界(最小検出電界~67V/m)を、センサにグラフェンを使用して検出することに世界で初めて成功しました。
本研究成果に関し、11月26日に、北陸先端科学技術大学院大学において記者発表を行いました。
<記者発表出席者>
・北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科/環境・エネルギー領域
水田 博 教授
マノハラン ムルガナタン 講師
アフサル カリクンナン 研究員
・音羽電機工業株式会社 技術本部
圓山 武志 取締役 本部長
工藤 剛史 部長
・東京工業大学 地球インクルーシブセンシング研究機構
堀 敦 URA(リサーチ・アドミニストレーター)
<ポイント>
- 超小型グラフェン電界センサで、雷雲が生み出す大気電界の検出に世界で初めて成功。
- 雷雲内の電荷の分布を反映した大気電界のプラス・マイナス極性判定にも成功。
複雑な雷現象のメカニズム解明と襲雷予測の精度向上に期待。 - 既存技術に比べて大幅な小型化と低消費電力化を実現。
<研究背景と内容>
雷の事故による世界の死者数は年間6千~2万4千人と推定され、日本では毎年数名が亡くなっています。また、雷サージ(雷による異常電圧・電流)は情報システムや生産ラインなどに甚大な影響を与えます。こうした被害を軽減するには、早期に襲雷/避難情報を提供する予測システムを開発し、人々に行動変容を促す必要があります。高精度な襲雷予測には広域かつ高密度な雷雲監視ネットワーク作りが重要ですが、そのためには電界センサの小型化と省電力化が大きな課題となっています。
これに対して研究チームは、ナノ炭素材料のグラフェン(炭素原子が蜂の巣状の六角形結晶格子構造に配列した単原子シート)膜を検出用チャネルとした微細センサ素子を開発しました(図1参照)。このグラフェン電界センサを用いて、雷雲が生み出す大気電界の時間変化を電気的に検出することに世界で初めて成功しました。最小検出電界は約67V/mで、これは晴天時の地表付近における大気電界レベルです。さらにこの電界センサでは、大気電界の極性の判別も可能です(図2参照)。これにより、雷雲内部の電荷分布の推定が容易になり、複雑な雷現象のメカニズム解明に大きく寄与するものと予想されます。
このグラフェンセンサをモジュール化して、屋外で雷雨時に動作試験を行ったところ(図3参照)、20km以上離れた地点での落雷を電界ピーク信号として検出することに成功しました。信号検出のタイミングは、既存のフィールドミル型電界検出装置(重量~1kg, 要外部電源)と精度よく一致しています。今回の電界センサは、従来のフィールドミル装置と比べて、電界検出部の寸法で約2万分の1の小型化(ミルの直径:170mm ⇒ グラフェンチャネル寸法:10mm)と、低消費電力化(太陽電池駆動)を実現しています。さらに、測定された電界の時間発展データを特異スペクトル変換法で解析することで、5km圏内の落雷を32分前に予測できることも見出しています。これらの新技術を統合すれば、既存技術では困難だった多数のセンサ素子を広域に配置した落雷検出ネットワークの構築が容易となり、高精度な襲雷予測の実現に向けた大きな前進が期待できます。
本成果は、第82回応用物理学会秋季学術講演会で発表されました。
・題名:Enhancing Electric Field Sensitivity in Graphene Devices by hBN Encapsulation(11a-N306-9)
・題名:雷予測精度向上のための特異スペクトル変換法を用いた電界波形解析(9p-Z22-10)
本成果は、科学技術振興機構(JST)による以下の研究助成によって得られました。
・事業名:センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム
研究課題名:「『サイレントボイスとの共感』地球インクルーシブセンシング研究拠点」
研究代表者:サテライト拠点代表 水田 博(北陸先端科学技術大学院大学 教授)
研究開発期間:平成29年度~令和3年度
・事業名:研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)トライアウト JPMJTM20DS
研究課題名:「襲雷予測システムのためのグラフェン超高感度電界センサの開発」
研究代表者:マノハラン ムルガナタン(北陸先端科学技術大学院大学 講師)
研究開発期間:令和2年度~令和3年度
図1 グラフェン雷センサイメージ図
図2 (a)開発したセンサの構造, (b)電界検出感度特性, (c)電界極性判定
図3 (a)フィールドテストの様子, (b)グラフェン電界センサの検出信号と既存のフィールドミル電界計の検出信号の比較,
(c)検出地点から10km以内での雷発生状況
令和3年11月26日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2021/11/26-1.html学生の筑間さんと渡部さんが2021年度日本化学会北陸地区講演会と研究発表会において優秀ポスター賞を受賞
学生の筑間 弘樹さん(博士前期課程2年、物質化学領域、谷池研究室)と渡部 康羽さん(博士後期課程3年、生命機能工学領域、藤本研究室)が2021年度日本化学会北陸地区講演会と研究発表会において優秀ポスター賞を受賞しました。
北陸地区講演会と研究発表会は、毎年秋に、金沢大学、福井大学、富山大学、北陸先端科学技術大学院大学のいずれかの大学にて開催しています。特別講演のほか、ポスター発表があり、200~300名が参加しています。
今回、2021年度北陸地区講演会と研究発表会は、11月12日にオンラインにて開催されました。
■受賞年月日
令和3年11月16日
【筑間 弘樹さん】
■発表題目
触媒ナノ粒子の構造決定を目的としたニューラルネットワークポテンシャルの構築
■発表者名
筑間弘樹、高棹玄徳、BEHLER Jörg、谷池俊明
■研究概要
近年の計算機や第一原理計算の発展によって複雑な材料の高精度なシミュレーションが可能となった一方、第一原理計算の限界は物理化学的な直感や実験結果に基づいて初期構造を推定する経験的な過程にあった。この問題を解決するため、第一原理計算と遺伝的アルゴリズムを組み合わせた非経験的構造決定が試みられてきたが、第一原理計算手法の計算コストが構造決定の律速であった。本研究では、過去研究によって蓄積されたZiegler-Natta触媒一次粒子に関する第一原理計算データセットを用いて、第一原理計算を高精度に再現できるニューラルネットワークポテンシャル(NNP)を構築することで非経験的構造決定を高速に再現することに成功した。
■受賞にあたって一言
この度は、2021年度日本化学会北陸地区講演会と研究発表会におきまして、ポスター賞をいただけたことを光栄に思います。終始熱心なご指導を頂きました谷池俊明教授のご指導なしでは決して得られるものではなかったと思います。共同研究者である高棹玄徳さんには研究の方針や考察の方法など、細部にわたるご指導をいただきました。ゲッティンゲン大学のBEHLER Jörg教授には数々の適切なご助言、ご協力をいただきました。ここに感謝いたします。さらに、谷池研究室の皆様にこの場をお借りして心より御礼を申し上げます。
【渡部 康羽さん】
■発表題目
超高速RNA光架橋反応を用いた16S rRNA検出困難領域を標的とした新規FISH法の開発
■発表者名
渡部康羽、渡辺ななみ、藤本健造
■研究概要
生体内においてRNAは様々な高次構造を形成するため、核酸プローブの侵入を阻害していた。本研究では、複雑な高次構造を形成する大腸菌16S rRNAの検出困難領域を標的とした光操作法の開発を行った。複数の光架橋性核酸プローブを用いることにより、複雑な高次構造を有するRNAに対する光架橋反応を実現した。
■受賞にあたって一言
この度は、2021年度日本化学会北陸地区講演会と研究発表会におきまして、このような賞を頂けたことを大変光栄に思います。本研究の遂行にあたり、日頃よりご指導いただいている藤本健造教授にこの場をお借りして心より御礼申し上げます。また、多くのご助言やディスカッションに乗って頂いた藤本研究室の皆様に深く感謝いたします。
令和3年11月25日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2021/11/25-1.html物質化学領域の木田助教の研究課題が澁谷学術文化スポーツ振興財団の研究助成に採択
公益財団法人 澁谷学術文化スポーツ振興財団の研究助成「大学の新技術、研究活動への奨励金」に物質化学領域の木田 拓充助教の研究課題が採択されました。
澁谷学術文化スポーツ振興財団では、大学における学術研究の充実を目的とした奨励金の給付事業を行っています。「大学の新技術、研究活動への奨励金」は、石川県内の大学において、機械・電子・電気・化学・情報処理・環境関係等の研究を行う教授・学生等のグループ又は個人を対象とし、成果が期待される新技術開発の研究に対して給付されます。
*詳しくは、澁谷学術文化スポーツ振興財団ホームページをご覧ください。
■研究者名
物質化学領域 木田 拓充助教
■採択期間
令和3年11月~令和4年10月
■研究課題名
振動分光法を用いた重水素化プローブ分子鎖の直接観察による高分子の変形メカニズムの解明
■研究概要
ポリエチレン(PE)をはじめとする結晶性高分子材料は、非常に優れた延伸性や柔軟性、加工性を示すことから、我々の日常生活で幅広く利用されています。結晶性高分子材料は内部に結晶と非晶が入り混じった複雑な構造を有しており、例えば結晶と結晶を繋ぐ分子や、非晶内に浮遊する分子鎖など、さまざまな構造状態の分子鎖が存在しています。材料の変形過程において、これらの分子鎖はそれぞれ異なる力学応答を示すため、各構造状態の分子鎖量の違いによって物性は大きく変化します。そのため、最近では各構造状態の分子鎖量を最適化することにより、従来の高分子材料に比べて飛躍的に優れた物性を有する高性能高分子を開発する試みが盛んに行われてきました。本研究では、我々が有する精密合成技術を駆使することで、特定の分子鎖のみを重水素化し、赤外分光法などの振動分光法で重水素化分子鎖の運動状態を直接観察することに挑戦します。各分子鎖の力学応答を正確に把握することができれば、材料設計者が希望する物性を達成するために必要な分子鎖構造を予測することが可能となり、高性能高分子開発のための重要な知見となることが期待されます。
令和3年11月24日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/11/24-2.html環境・エネルギー領域の高田助教がPolymer Journal誌のRising Stars 2021に選定
環境・エネルギー領域の高田 健司助教が、Springer Nature刊行のPolymer Journal誌の"Rising Stars in Polymer Science 2021"(世界中の新進気鋭の研究者による優れた研究をハイライトする特集号)に選ばれました。
*詳しくは、Polymer Journal誌ホームページをご覧ください。
また、この研究に関連した論文(環境・エネルギー領域 金子 達雄教授との共著)が同誌の表紙に掲載されました。
■掲載誌
Polymer Journal 2021, 53 (11), 1223−1230.
掲載日2021年11月8日
■著者
Kenji Takada*, Takumi Noda, Takuya Kobayashi, Toyohiro Harimoto, Maninder Singh, Tatsuo Kaneko* (*責任著者)
■論文タイトル
Synthesis of pH-responsive polyimide hydrogel from bioderived amino acid
■論文概要
本研究では、水溶性になる特殊なポリイミドを用いて、ポリイミドハイドロゲルを初めて合成しました。
バイオ生産が可能な4-アミノ桂皮酸をベースとしたバイオポリイミドは、分子鎖中にカルボン酸を有するため、水溶性ポリマーであるアクリル酸ナトリウムのように水溶化させることができます。溶媒に溶解させることができるということは、各種化学反応を行えるということであり、本研究では水溶性バイオポリイミドの側鎖を、同じくバイオ分子であるアミノ酸により架橋させることで、ハイドロゲル化させることに成功しました。さらに、このバイオポリイミドは側鎖のカルボン酸の効果によりpHの変化に応じてプロトン移動を引き起こし、親水性・疎水性のスイッチングが起きます。このことから、ポリイミドハイドロゲルはpHに応じて体積変化を引き起こし、pH応答性があることを見出しました。こうした性質から、本ポリイミドゲルは完全バイオ由来のpH応答ゲルとして生体内へのドラッグデリバリーとしての応用が期待されます。
論文詳細:https://www.nature.com/articles/s41428-021-00509-8
掲載誌詳細:https://www.nature.com/pj/volumes/53/issues/11
![]() ※上段右端が該当するCover Picture |
令和3年11月10日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/11/10-1.html物質化学領域の松村教授、都准教授、ラジャン助教らの論文がMaterials Today誌に掲載
物質化学領域の松村 和明教授、都 英次郎准教授、ラジャン ロビン助教、研究員のSajid Fazalさん(松村研究室)、学生のNishant Kumarさん(博士後期課程2年、松村研究室)らの総説論文が材料科学の最高峰雑誌の一つであるMaterials Today誌に掲載されました。
Materials Today誌は材料科学コミュニティに広く関心のある最も革新的で最先端の影響力のある論文を掲載する、Materials Todayファミリー誌の旗艦誌です。
■掲載誌
Materials Today
掲載日2021年10月31日
■著者
Nishant Kumar, Sajid Fazal, Eijiro Miyako*, Kazuaki Matsumura*, Robin Rajan*(*責任著者)
■論文タイトル
Avengers against cancer: A new era of nano-biomaterial-based therapeutics
■論文概要
今回の論文は、抗がん治療に利用される様々なナノ材料、高分子材料を系統的に整理し、抗がん高分子化合物や免疫治療、バクテリア療法にいたるまで幅広い材料化学の観点から抗がん治療の最前線および将来展望をまとめた総説論文です。本発表は、科研費基盤研究(A)およびJAISTの超越バイオ医工学研究拠点 リサーチコアの支援による成果であり、この分野におけるJAISTのプレゼンスが高く評価された結果だといえます。
論文詳細:https://doi.org/10.1016/j.mattod.2021.09.020
令和3年11月5日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/11/5-1.html学生の浅井さんが第70回高分子討論会において優秀ポスター賞を受賞
学生の浅井 優作さん(博士後期課程融合科学共同専攻1年、物質化学領域、松見研究室)が第70回高分子討論会において優秀ポスター賞を受賞しました。
高分子討論会は、高分子科学に携わる研究者・技術者が研究成果の発表を行い、発表内容に関し、参加者と充実した討論およびコミュニケーションができる場を提供することを開催の基本方針としています。
優秀ポスター賞は、高分子討論会において優れたポスター発表を行った発表者を表彰するため授与されるもので、もって発表を奨励し、高分子科学ならびに同会の発展に資することを目的としています。
第70回高分子討論会は、9月6日~8日にかけてオンラインで開催されました。
■受賞年月日
令和3年9月8日
■発表題目
共役系高分子によるIrO2の電子構造制御と酸素発生反応触媒性能への効果
■研究者、著者
〇浅井優作、Rajashekar Badam、松見紀佳
■受賞対象となった研究の内容
電気化学的水分解による水素製造法はシンプルで有望な方法である。しかし、アノードにおける酸素発生反応(OER)は電気化学的水分解の律速段階であり、効率的な触媒が求められる。本研究ではIrO2の電子構造をポリチオフェン系高分子によって制御することで、先行研究と比較して電流密度10 mAcm-2における過電圧を10~70 mV低下させるOER触媒を見出すに至った。
■受賞にあたって一言
この度は、2021年度第70回高分子討論会におきまして、このような賞をいただけたことを大変光栄に思います。本研究の遂行にあたり、厳格かつ熱心にご指導を頂きました松見紀佳教授、Rajashekar Badam講師にこの場をお借りして心より御礼を申し上げます。さらに、多くのご助言をいただきました研究室の皆様にこの場をお借りして心より御礼を申し上げます。


令和3年11月4日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2021/11/04-2.html物質化学領域の長尾准教授らの論文が、英国王立化学会(RSC)刊行のCrystEngCommでHot Articlesに選出

物質化学領域の長尾 祐樹准教授、修了生のLI, Zhongpingさん(令和元年9月博士後期課程修了、長尾研究室、元日本学術振興会特別研究員)、学生のLIU, Zhaohanさん(博士前期課程2年、長尾研究室)、YAO, Yuzeさん(博士後期課程2年、長尾研究室)、HASAN, Md. Mahmudulさん(博士後期課程3年、長尾研究室)らの論文 "Intrinsic proton conduction in 2D sulfonated covalent organic frameworks through a post-synthetic strategy" が、英国王立化学会(RSC)刊行のCrystEngCommでHot Articles(レビュアによって推奨された上位10%論文)に選出されました。
■選出年月日
令和3年10月6日
■研究題目、論文タイトル等
Intrinsic proton conduction in 2D sulfonated covalent organic frameworks through a post-synthetic strategy
■研究者、著者
Yuwei Zhang, Chunzhi Li, Zhaohan Liu, Yuze Yao, Md. Mahmudul Hasan, Qianyu Liu, Jieqiong Wan, Zhongping Li*, He Li* and Yuki Nagao*(*は責任著者です)
■対象となった研究の内容
Two-dimensional covalent organic frameworks (2D COFs) have attracted much attention in proton conduction, owing to their regular pore channels and easy functionalization. However, most of the COFs required loading of proton carriers to achieve high proton conductivity. Here, we report the immobilization of flexible sulfonic acid groups on the channel walls of PyTTA-DHTA-COF (synthesized by condensation of 4,4′,4′′,4′′′-(pyrene-1,3,6,8-tetrayl)tetraaniline and 2,5-dihydroxyterephthalaldehyde) via a simple post-synthetic modification strategy. The sulfonated COF showed intrinsic proton conductivity up to 10−3 at 25 °C and 100% relative humidity (RH) and high conductivity up to 10−2 S cm−1 at 70 °C and 100% RH without the introduction of any non-covalent acid molecules or imidazole derivatives.
■選出にあたって一言
It is a great honor for us to be selected as the Hot Article at CrystEngComm. I would like to gratitude to Prof. Yuki Nagao, Dr. He Li, and all our lab members for contributions and support to this work. I also appreciate the support by JSPS. We believe that this research is a step towards achieving our research goals and inspiring us to do better in the future.
令和3年11月4日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2021/11/4-1.html物質化学領域の都准教授の論文がAccounts of Materials Research誌の表紙に採択

物質化学領域の都 英次郎准教授の論文が米国化学会(ACS)刊行のAccounts of Materials Research誌の表紙(Front cover)に採択されました。本研究成果は日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究A)の支援のもと実施されました。
■掲載誌
Acc. Mater. Res. 2021, 2, 10, 858-862
掲載日2021年9月9日
■著者
Eijiro Miyako
■論文タイトル
Convergence of Liquid Metal Biotechnologies for Our Health
■論文概要
都研究室では、高い生体適合性と優れた物理化学的特性を有するガリウム・インジウム合金からなる室温で液体の金属(液体金属)の表面化学修飾法の開拓と細胞・生体組織との相互作用に関する研究を進めています(例えば、Nature Commun. 8, 15432, (2017).、Angew. Chem. Int. Ed. 56, 13606, (2017).)。本論文では、高機能性液体金属を用いたヘルスケアデバイスならびに医薬への応用と、それらを統合したバイオテクノロジーの将来展望について述べています。
論文詳細:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/accountsmr.1c00126
表紙詳細:https://pubs.acs.org/toc/amrcda/2/10
令和3年10月26日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/10/26-2.html環境・エネルギー領域の高田助教と物質化学領域の木田助教の研究課題が小笠原敏晶記念財団の研究助成に採択
公益財団法人 小笠原敏晶記念財団の研究助成「一般研究助成」に環境・エネルギー領域の高田 健司助教および物質化学領域の木田 拓充助教の研究課題が採択されました。
小笠原敏晶記念財団では、わが国の産業の発達に寄与することを目的として、理学・工学の領域において健全な発展の一助となる助成活動が行われています。一般研究助成は、高分子分野における、新素材・加工技術・新機能に関する研究開発に対して助成する制度です。
*詳しくは、小笠原敏晶記念財団ホームページをご覧ください。
- 採択期間:令和4年4月~令和5年3月
- 研究課題名:主鎖型ポリ桂皮酸ブロックポリマーのミクロ相分離構造の制御と光変形性の精密制御
- 研究概要:光エネルギーを運動エネルギーへと変換することができる光変形性材料はサスティナブルマテリアルとして注目されており、その変形挙動の制御や機能化法の確立が急務の課題となっています。本研究では、私たちが従来から研究してきた光応答性材料の開発と、有機分子触媒を利用したリビング重合技術を発展させ、ポリマーのミクロ相分離にもとづく多彩な変形挙動を有した新しい光応答材料の創出を目的としています。
- 採択にあたって一言:本研究課題を採択頂き大変嬉しく存じます。また、小笠原敏晶記念財団、および本助成の選考委員会の皆様に深く感謝申し上げます。本研究が、地球の環境・エネルギー問題に資するものになるよう邁進してまいります。また、本研究に関して多大なアドバイスをいただいた金子達雄教授はじめ、様々な知見を頂いた研究室の皆様、および研究協力者の方々にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。
- 採択期間:令和4年4月~令和6年3月
- 研究課題名:重水素化プローブ分子鎖の直接観察による高分子材料の結晶化機構に与える分子量分布の影響の解明
- 研究概要:高分子材料において、分子量分布(分子鎖長分布)は材料物性を決定する最も重要な分子パラメータの一つです。我々の日常生活で多く利用されているポリエチレン(PE)は分子鎖が部分的に結晶化する結晶性高分子に分類され、分子量分布の平均値や分散度の違いで結晶度や結晶厚など結晶構造が著しく変化し、結果として材料物性に大きな違いが現れます。従来の研究においても、分子量分布の形状と結晶構造の関係についてはさまざまな報告が行われてきましたが、具体的にどの分子量成分が、どのように結晶構造の形成に影響を与えているかを理解することができませんでした。本研究では、重水素化プローブ法という技術を用いることで、特定の分子量成分の結晶化挙動を独立かつ直接に観察します。具体的には、母材として用いる分子量分布が広い軽水素化PEに対して、特定の分子量の重水素化PEを微量添加することで、特定の分子量成分のみが重水素化された試料を調製します。分光測定を用いることで軽水素化PEと重水素化PEを別々に検知することができるため、特定の分子量成分の結晶化挙動を直接観察することができ、結晶化機構に対する分子量分布の影響を解明することが期待されます。
令和3年10月26日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/10/26-1.html学生のRuchikaさんが国際会議Plant Genomics 2021においてYoung Scientist Awardを受賞

学生のRuchikaさん(博士後期課程3年、生命機能工学領域、塚原研究室)が国際会議5th World Plant Genomics and Plant Science Congress(Plant Genomics 2021)においてYoung Scientist Awardを受賞しました。
Plant Genomics 2021は、「植物ゲノミクスと植物科学のビジョンを超える」をテーマとした国際会議で、令和3年9月27日から28日にかけてフランスのパリで開催されました。
Plant Genomics Congressは、世界中の学界と産業界の専門家、研究者、意思決定者のユニークで国際的な組み合わせが集まり、知識、専門知識、研究革新を交換して、世界クラスの植物ゲノミクスを構築する最高のイベントとなっています。
■受賞年月日
令和3年9月27日
■研究題目、論文タイトル等
RNA-Seq-based identification and analysis of uridine-to-cytidine RNA editing related genes in Arabidopsis thaliana
■研究者、著者
Ruchika, Toshifumi Tsukahara
■受賞対象となった研究の内容
Cytosine-to-Uridine (C-to-U) and adenine-to-inosine (A-to-I) RNA editing involves the deamination phenomenon, which is common in animals and plants; however, the amination of U-to-C is confined to the plants. In this study, the high-throughput RNA sequencing (RNA-seq) of 12-days-old Arabidopsis seedlings was performed, which enables transcriptome-wide identification of RNA editing sites to analyses differentially expressed genes (DEGs) and nucleotide base conversions. The results showed that DEGs were expressed to higher levels in 12-days-old seedlings than in 20-days-old seedlings. This was confirmed by higher higher. Fragment Per Kilobase of transcript per Million mapped reads (FPKM) values, read counts, and more up-regulated genes, in 12-days-old seedlings. Additionally, pentatricopeptide repeat (PPR) genes were also expressed at higher levels as indicated by the log2FC values. The U-to-C RNA editing are predominantly found in the untranslated region (UTR) region of the mature mRNA and affect its secondary structure. Our results suggest that U-to-C RNA editing in mature transcripts impacts plant physiology. Furthermore, we investigated the physiological role of U-to-C RNA editing in Arabidopsis by using the transcription inhibitor, Actinomycin D (ActD). Addition of ActD to the cell suspension culture of transgenic Arabidopsis generated by Agrobacterium-mediated transformation revealed that single nucleotide conversion adversely affects the secondary structure and mRNA half-life of PPR protein.
■受賞にあたって一言
It is my great honour to receive the Young Scientist Award at Plant Genomics 2021. First of all I would like to make a special mention of my supervisor Professor Toshifumi Tsukahara, for his constant support and believe on me throughout my doctoral study in Japan. I would like to thank him, who saw the capabilities in me and nurtured my passion for doing a quality research. His discussions have always added the value to my research. Special cheers to all the Tsukahara lab members, this award is definitely an effort by all of us together and will be shared equally among all of us. At the same, I would also like to take this opportunity to thank the judging committee at the conference who selected me as the candidate for this award. Finally, I would like to thanks my parents and family members for always encouraging me to continue the hard work and morally supporting throughout my good and bad times.
令和3年10月25日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2021/10/25-1.html環境・エネルギー領域の高田助教の研究課題が泉科学技術振興財団の研究助成に採択
公益財団法人 泉科学技術振興財団の研究助成に環境・エネルギー領域の高田 健司助教の研究課題が採択されました。
泉科学技術振興財団では、科学技術の振興を図り、もって社会経済の発展に寄与することを目的として、高度機能性材料及びこれに関連する科学技術の基礎研究分野における真に独自の発想に基づく新しい研究に対して助成を行っています。
*詳しくは、泉科学技術振興財団ホームページをご覧ください。
■研究者名
環境・エネルギー領域 高田 健司助教
■採択期間
令和3年10月~令和4年9月
■研究課題名
高靭性バイオポリアミドを用いた自己支持性ナノ薄膜の作製と有機ELデバイスへの応用
■研究概要
眼鏡やディスプレイパネルに用いられるアクリル樹脂やポリカーボネートなどの透明樹脂は、有機ガラスと呼ばれ、様々な材料化の研究が行われています。一方で、材料の透明性の高さと力学物性(破壊強度、弾性率、靭性)はトレードオフの関係であり、高い透明性を維持しながらも高い力学強度を発揮する材料の開発は急務の課題でした。当研究課題では、これまでに開発したバイオ由来トルキシル酸という特殊な構造を持つポリアミドが透明な非晶性高分子でありながら極めて高い靭性を示すという研究成果を発展させ、これらの薄膜化の技術の確立とそれを用いたデバイス化の検討を行うことでバイオベース発光有機ELデバイスの試作検討を目的としています。
■採択にあたって一言
本研究課題を採択頂き大変嬉しく存じます。泉科学技術振興財団、および本助成の選考委員会の皆様に深く感謝申し上げます。近年、様々なバイオ由来材料が注目されている中で当研究が採択されたことは、それだけ重要な課題であるとご判断いただけたものと存じます。また、本研究に関して多大なアドバイスをいただいた金子達雄教授はじめ、様々な知見を頂いた研究室の皆様、および研究協力者の方々にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。これを励みに研究を加速できればと思います。
令和3年10月7日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/10/7-1.html応用物理学領域の村田研究室の論文がThe Journal of Physical Chemistry Letters誌の表紙に採択
応用物理学領域の江口 敬太郎助教、村田 英幸教授の論文が米国化学会(ACS)刊行のThe Journal of Physical Chemistry Letters誌の表紙(Front cover)に採択されました。
■掲載誌
J. Phys. Chem. Lett. 2021, 12, 38, 9407-9412
掲載日2021年9月23日
■著者
Keitaro Eguchi* and Hideyuki Murata*
■論文タイトル
Evolution of the Ionization Energy in Two- and Three-Dimensional Thin Films of Pentacene Grown on Silicon Oxide Surfaces
■論文概要
分子薄膜が2次元構造から3次元構造に成長するにつれて、分子薄膜のイオン化エネルギーが小さくなることが理論計算により予測されていますが、実験的には確認されていませんでした。本研究では、光電子収量分光法を用いて2次元と3次元構造におけるペンタセン薄膜のイオン化エネルギーを測定し、ペンタセンを20層積層した3次元のペンタセン薄膜では、2次元のペンタセン薄膜に比べて、イオン化エネルギーが約0.2 eV小さくなることを初めて実証しました。
論文詳細:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jpclett.1c02723
表紙詳細:https://pubs.acs.org/toc/jpclcd/12/38
令和3年10月6日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/10/6-1.html環境・エネルギー領域の小矢野教授がSSH指定校の福島高校でオンライン講演会を実施
9月24日(金)、環境・エネルギー領域の小矢野 幹夫教授が、文部科学省「SSH(スーパーサイエンスハイスクール)」指定校である福島市の県立福島高等学校において、SS(スーパーサイエンス)部の1学年26名を対象に、オンラインによる講演会を行いました。
文部科学省のホームページはこちら
福島高校のSSHニュースはこちら
今回の講演は、「熱電変換の物理と最先端のエネルギー変換の研究」というテーマで行われました。
導入部分では、SDGsの観点から、熱電変換の研究がエネルギー問題にどのように貢献できるかについての説明がありました。続いて、物質の両端に温度差を与えると電位差が生じる「ゼーベック効果」を利用して、熱を電気エネルギーに変換する技術について、解説が行われました。
生徒の皆さんは、熱電材料の金属組成を変えることで、より高い変換効率を目指す研究開発が盛んに行われてきたことを学ぶとともに、有毒または希少な元素を含まない、環境に優しい次世代の熱電材料の開発の重要性についても理解を深めました。
また、身の周りにある熱を"収穫(ハーベスト)"して電気エネルギーに変換する「エネルギーハーベスティング」の考え方にも触れ、エネルギーの捉え方に新たな視点を持ったようでした。
最後に、小矢野教授から生徒の皆さんに向けて、「自身の知的好奇心と向き合い、ぜひ大学院進学というキャリアプランも考えてみてほしい」とメッセージを送りました。
講演後には質疑応答が活発に行われ、生徒の皆さんからは、「講義の中で化学物質がたくさん出てきたので、化学の分野ももっと勉強してみたい」、「効率を改善する方法がいくつも研究されており、自分の研究でも一つで満足しないようにしたい」、「学者の交友関係、進路の考え方、研究への向き合い方を学ぶことができた」といった前向きな感想があり、向学心の高さがうかがえる講演会となりました。
![]() 講演を行う小矢野教授 |
![]() 受講の様子(写真:福島高校提供) |
![]() 質疑応答の様子 |
令和3年9月29日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/09/29-2.html触媒ビッグデータから「触媒世界地図」を描写 ~ブラックボックス化していた触媒設計を紐解く~
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国立大学法人 北海道大学 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 国立研究開発法人 科学技術振興機構 |
触媒ビッグデータから「触媒世界地図」を描写
~ブラックボックス化していた触媒設計を紐解く~
ポイント
- 触媒の組成・実験条件の知識ネットワーク「触媒世界地図」を触媒ビッグデータから描写。
- 触媒世界地図を用いた触媒設計が可能となり、新たな活性触媒を発見。
- 大規模な科学データからの材料・触媒設計の技術基盤になることを期待。
【概要】
北海道大学 大学院理学研究院の髙橋 啓介准教授、髙橋 ローレン学術研究員らの研究グループは、北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 物質化学領域の谷池 俊明教授らと共同で、触媒ビッグデータから触媒の知識を表現した「触媒世界地図*1」を描写しました。 これまで研究グループは、多数の触媒データを高速で自動取得可能なハイスループット実験装置によりメタン酸化カップリング反応*2における触媒ビッグデータ(6万件)の構築に成功してきましたが、この規模の触媒データからどのように知識を抽出し触媒設計に結びつけるかが触媒インフォマティクス*3において大きな課題でした。 そこでメタン酸化カップリング反応におけるハイスループット実験装置により得られた触媒ビッグデータに対して、オントロジー*4(知識の関係性をネットワークとして記述)の概念を活用することにより、触媒ビックデータから元素組成・実験条件・C2収率等の関係性を描写し、触媒の世界地図を作成することに成功しました。この触媒の世界地図により各要件の関係性が明白となり、そこで得られた情報から触媒設計が実現しました。 結果、触媒の世界地図からKVEu-BaO(20%C2収率)、LiTiW-BaO(19%C2収率)、EuMgZr-BaO(19%C2収率)、MoKW-BaO(19%C2収率)等の未報告の活性触媒を設計し、実験実証することに成功しました。 本手法は触媒ビッグデータや材料ビッグデータにも適用できるため、大規模な科学データからの材料・触媒設計の技術基盤になることが期待されます。 本研究成果は、2021年9月22日(水)にChemical Science誌にてオンライン公開されました。 |
元素と収率の関係、元素と実験条件の関係等が表現された触媒世界地図
【背景】
触媒は化学反応の反応速度を速める材料であり、自動車の排気ガスの浄化からエネルギーの変換まで幅広い分野で実用化されています。これまでの触媒開発は、研究者の熟練の経験や勘で試行錯誤して開発していました。その中で、マテリアルズインフォマティクス・触媒インフォマティクスの登場により材料・触媒科学は大きな転換期を迎えています。
マテリアルズインフォマティクス・触媒インフォマティクスでは、第4の科学であるデータ科学を用い、材料・触媒データのパターンから材料・触媒設計を行います。いわば、これまでの研究者の経験や勘をデータ科学で再現することを目的としています。しかし、材料・触媒ビッグデータから知識・設計をどのように抽出するかが大きな障壁となっています。特に機械学習等のデータ科学手法では機械がどう学習したのかを説明することができず、理論的解釈による設計が難しいという問題があります。
そのため、理論に基づいた触媒設計を行う必要がありました。
【研究手法】
メタン酸化カップリング反応を対象とし、独自開発したハイスループット実験装置で得られたメタン酸化カップリング反応の触媒ビッグデータに対して、オントロジーの概念を元にデータ内の知識と関係性をネットワークとして表現しました。
【研究成果】
触媒ビックデータから触媒の世界地図を作成することに成功しました。この触媒の世界地図により元素組成・実験条件・C2収率等の関係性が明白となり、そこで得られた情報から触媒設計を行うことに成功しました。結果、触媒の世界地図からKVEu-BaO(20%C2収率)、LiTiW-BaO(19%C2収率)、EuMgZr-BaO(19%C2収率)、MoKW-BaO(19%C2収率)等の未報告の活性触媒を設計・実験実証することに成功しました。
【今後への期待】
触媒ビッグデータからどのように触媒科学の知識を取り出すかが大きな課題でしたが、オントロジーという概念を元に知識のネットワークを設計することにより、触媒ビッグデータから知識の抽出・触媒設計が可能になることを初めて提案しました。この方法は今後の触媒ビッグデータや材料ビッグデータにも適用することができるため、大規模な科学データからの知識・材料設計の技術基盤になることが期待されます。
【謝辞】
本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST研究領域「多様な天然炭素資源の活用に資する革新的触媒と創出技術」(研究総括:上田 渉)における「実験・計算・データ科学の統合によるメタン変換触媒の探索・発見と反応機構の解明・制御」(研究代表者:髙橋 啓介)の支援を受けて行われました。
【論文情報】
論文名 | Constructing Catalyst Knowledge Networks from Catalysts Big Data in Oxidative Coupling for Methane for Designing Catalysts(メタン酸化カップリング反応ビッグデータから触媒の知識ネットワークの構築と触媒設計) |
著者名 | 髙橋 ローレン1 , Thanh Nhat Nguyen2, 中野渡 淳2、藤原 綾2、谷池 俊明2、髙橋 啓介1 (1北海道大学大学院理学研究院、2北陸先端科学技術大学院大学) |
雑誌名 | Chemical Science(英国王立化学会が発行する化学ジャーナル) |
DOI | 10.1039/D1SC04390K |
公表日 | 2021年9月22日(水)(オンライン公開) |
【用語解説】
*1 触媒世界地図...触媒ビックデータから元素組成・実験条件・C2収率等の関係性をネットワークとして描写したもの。
*2 メタン酸化カップリング反応...普遍的に存在するメタンはそのままでは化学的な有用性が低く、これを触媒によって別の有用化合物へ変換することが望ましい。メタンの酸化的カップリングとは、メタンと酸素分子の反応を通してエタンやエチレンを直接合成する高難度反応である。
*3 触媒インフォマティクス...データ科学手法を用いて触媒設計・触媒解析を行う学問。
*4 オントロジー...物事をどの様に概念化したかを記述する学問。
令和3年9月24日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2021/09/24-1.html