研究活動の検索
研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。先端材料でエネルギー社会をリードする
先端材料でエネルギー社会をリードする
エネルギーナノ材料研究室 Laboratory on Energy Nanomaterials
教授:長尾 祐樹(NAGAO Yuki)
E-mail:
[研究分野]
プロトニクス(高分子、無機化学、錯体化学、物理化学)
[キーワード]
水素社会、燃料電池、蓄電池、エネルギー関連材料
研究を始めるのに必要な知識・能力
多様なバックグラウンドを歓迎します。今までに修めた学問を大事にしながら、新しいことに取り組む意欲を持ち続ける力が求められます。
この研究で身につく能力
週2回のゼミ(英語で行います、具体的には研究相談と文献紹介)を通して、教員や先輩の助けを借りながら、自ら調べ、考える力を身に着けていきます。英語の会話スキルの向上が期待できます。実践の場として、高分子化学、表面化学、電気化学、錯体化学等に関連した研究を行うことで次のスキルが身に付きます。1.問題発見と解決方法。2.材料合成や各種分析方法の習得。3.論理的思考に基づいたデータの解釈方法と性格やセンスに帰着させない基本的なプレゼンテーション技術。
【就職先企業・職種】 電力関連、エネルギー関連、材料メーカー、精密機器関連など(企業名はwebに記載)
研究内容
資源の少ない日本が持続的な発展をするためには、多様なエネルギー資源を確保することが喫緊の課題です。ありふれた水から水素や酸素を作り出し、二酸化炭素を資源と見立てて炭素材料を作り出すことは人類の夢です。世界で急速に進む脱炭素社会には水素社会が必要です。我々は水素社会を支える燃料電池、蓄電池、センサーやプロトンスイッチなどに応用可能なイオン伝導性高分子材料、無機材料、有機無機ハイブリッド材料の研究を行っています。我々と共に水素社会に貢献しましょう。
研究テーマ例
- 燃料電池、リチウムイオン電池の性能向上の研究
電池反応場の界面近傍の構造とイオン輸送を調べる基礎研究と、反応界面をデザインして電池の性能を向上させる応用研究をしています。 - 充電可能な水素電池の開発
プロトンを使った次世代蓄電池の開発をしています。 - イオン輸送を利用した触力覚センサの研究
五感やロボットへの応用研究として、ヒトの皮膚のように力にイオン輸送が応答する高分子組織構造を研究しています。 - 外場印加によるイオンスイッチの研究
青木助教が主体的に取り組んでいる、光などの外場によってイオン伝導のオン・オフを制御する研究です。


主な研究業績
- T.Honbo, Y. Ono, K. Suetsugu, M. Hara, A. Taborosi, K. Aoki, S. Nagano, M. Koyama, Y. Nagao, Effects of Alkyl Side Chain Length on the Structural Organization and Proton Conductivity of Sulfonated Polyimide Thin Films, ACS Appl. Polym. Mater., 6, 13217 - 13227 (2024).
- Y. Nagao, Proton-Conducting Polymers: Key to Next-Generation Fuel Cells, Electrolyzers, Batteries, Actuators, and Sensors (Review), ChemElectroChem, 11, e202300846 (2024).
- Y. Nagao, Advancing Sustainable Energy: Structurally Organized Proton and Hydroxide Ion-Conductive Polymers (Review), Curr. Opin. Electrochem., 44, 101464 (2024).
使用装置
材料分析装置 (IR, UV-Vis, NMR, GPC, XRD, TG-DTA)
電気化学装置(LCR, CV, in situ QCM, fuel cell, battery test system)
表面分析装置 (XPS, in situ GIXRS, XRR, white interference, AFM)
分子配向分析装置 (IR, pMAIRS, polarized microscope)
外部の放射光や中性子実験施設
研究室の指導方針
研究室への参加にあたり、平日は研究活動に専念し、セミナーへの出席をお願いします。フレキシブルですが、9時から17時の間でメリハリのある研究時間を推奨します。英語のセミナーや留学生との会話を通じ、英語力の向上を目指しましょう。研究テーマは指導教員との相談で決め、皆さんの研究への情熱を全力でサポートします。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/nagao-www/
“探索・学習・予測”のシナジーを実践する次世代マテリアル設計
“探索・学習・予測”のシナジーを実践する
次世代マテリアル設計
マテリアルズインフォマティクス研究室
Laboratory on Materials Informatics
教授:谷池 俊明(TANIIKE Toshiaki)
E-mail:
[研究分野]
ハイスループット実験、マテリアルズインフォマティクス、計算化学
[キーワード]
固体触媒、重合、ナノコンポジット、分離膜、グラフェン、データ科学
研究を始めるのに必要な知識・能力
私たちの研究はユニークであり、様々な専門の研究者が活躍できる非常に学際的なものです。新しい分野に創意工夫を持って挑戦する志を重視し、元々の専門分野を問わず多様な学生を受け入れています。所属学生の専門は、例えば、化学(触媒・高分子・ナノ材料)、化学・機械工学、データ科学、計算科学などです。
この研究で身につく能力
所属学生は、自身の研究やゼミ活動への参画を通して、1)ハイスループット実験、データ科学、計算化学のいずれか、ないしはこれらを組み合わせて用いる先進的な材料科学研究の実践方法、2)与えられた資源の中で成果を最大化するための研究計画能力、3)国際・学際的な環境でチームワークするスキルなどを習得できます。
【就職先企業・職種】 材料、化学、化学工学、マテリアルズインフォマティクスなどに関する研究開発職
研究内容

ハイスループット実験とマテリアルズインフォマティクスによる材料科学研究
気候変動や少子高齢化など、人類社会や我が国が置かれた避けられない課題に鑑み、谷池研究室では、ハイスループット実験、データサイエンス(マテリアルズインフォマティクス)、シミュレーションを基盤とした、イノベーション志向の物質科学を目指しています。かつてない効率で膨大な材料候補を探索し、社会問題の解決を目指しています。
❶ ハイスループット実験
異なる元素や物質を組み合わせることで得られる材料の数は膨大です。マテリアルサイエンスの目標の一つは、特別に優れた組み合わせやうまい組み合わせ方(プロセス)を発見し、より優れた材料を生み出すことです。私たちの研究室では、高度に自動化・並列化された実験装置を駆使するハイスループット実験を行っています。新しい装置やプロトコルの開発を通して実験のスループットを最大化し、浮いた時間を思考や情報収集に当てる研究スタイルを志向します。
➋ データ科学
ハイスループット実験は材料の合成条件、構造、性能を紐づけた材料ビッグデータを生み出します。効率的な材料探索を行うためには、良い材料を選出するだけでなく、材料性能の良し悪しがどのような因子と相関しているかを見極める構造性能相関を明らかにしていく必要があります。多変量解析や機械学習を駆使し、全てのデータから余すことなく学習することで物質探索を飛躍的に加速します。
➌ コンピュータシミュレーション
コンピュータや計算化学の発展によって、現実的な精度でのシミュレーションが可能になってきました。一方で、コンピュータを使った新しい材料の予測(in-silico設計)にはまだまだ距離があります。最も難しい問題は、複雑な材料を代表するような分子モデルを如何に構築するかです。実験も行う当研究室では、実践的な計算化学を標榜し、計算化学の夢であるin-silico材料設計に取り組んでいます。
ハイスループット実験装置の開発やデータサイエンスのプログラミングに加え、以下5つのテーマに注力しています:触媒・ポリマーインフォマティクス、構造性能相関、MOF やグラフェンなどのナノマテリアル、ポリマーナノコンポジット。
主な研究業績
- L. Takahashi, T. Taniike, K. Takahashi et al., Constructing Catalyst Knowledge Networks from Catalysts Big Data in Oxidative Coupling for Methane for Designing Catalysts, Chemical Science 2021, 12, 12546-12555 (press released, selected as Front Cover).
- T.N. Nguyen, K. Takahashi, T. Taniike et al., High-Throughput Experimentation and Catalyst Informatics for Oxidative Coupling of Methane, ACS Catalysis, 2020, 10, 921-932 (press released).
- G. Takasao, Toru Wada, T. Taniike et al., Machine Learning-Aided Structure Determination for TiCl4-Capped MgCl2 Nanoplate of Heterogeneous Ziegler-Natta Catalyst, ACS Catalysis, 2019, 9, 2599-2609.
使用装置
ピペッティングロボット Andrew+
多目的並列反応装置(研究室開発装置)
自動マイクロ波合成装置
触媒スクリーニング装置(研究室開発装置)
光触媒スクリーニング装置(研究室開発装置)
オペランド化学発光分析装置(研究室開発装置)
化学発光イメージング装置(研究室開発装置)
その場中・遠赤外分光光度計
レーザラマン分光光度計
マイクロプレートリーダー
X線回折装置 (オートサンプラー付)
蛍光X線分析装置 (オートサンプラー付)
研究室の指導方針
私たちの研究室にはコアタイムがありません。実験や研究のスループットを最大化し、ワークライフバランスを自身で設計して下さい。豊富なスタッフ陣があなたの研究をサポートします。チームミーティング(数週間に1回)やコロキウム(月に1回)を通して密な議論や指導を行います。また、国内外の学会への参加も積極的に支援しています。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/taniike/
固体電子構造と局所配位環境のデザインにより所望の光機能を発現させる!
固体電子構造と局所配位環境のデザインにより所望の光機能を発現させる!
光機能無機材料化学研究室
Laboratory on Optical Functional Inorganic Materials Chemistry
准教授:上田 純平(UEDA Jumpei)
E-mail:
[研究分野]
無機化学、固体化学、光化学、ガラス
[キーワード]
蛍光体、蓄光材料、応力発光体、白色LED、レーザー励起、白色光源、近赤外蛍光体、蛍光温度計、高圧物性、有機長残光蛍光体
研究を始めるのに必要な知識・能力
知的好奇心をもち、積極的に研究に取り組み、コミュニケーションとディスカッションを通して学問の発展や新分野の開拓、自己の成長を遂げたいという意欲が必要です。必要な知識は問いませんが、無機固体化学の知識があると研究に有利です。
この研究で身につく能力
研究テーマは、材料合成、物性評価、応用展開の一連の内容を含み、研究を通して計画能力、課題把握能力、論理的思考や幅広い知見と様々な測定技術を習得できます。英語での研究発表会や最新英語学術論文を紹介する雑誌会のゼミによって、プレゼンテーション力と英語コミュニケーション力が鍛えられます。
専門的には、材料合成技術(無機固体粉末、セラミックス、透光性セラミックス、ガラス、単結晶)や物性評価技術(X線回折測定、X線吸収分光、基礎的な光学特性評価、蛍光寿命測定、光伝導度測定、真空紫外分光、蓄光材料評価手法、ダイアモンドアンビルセルによる高圧実験)など、固体化学と分光学の研究者としての能力を身に付けることができます。
【就職先企業・職種】 材料・化学メーカー、電機メーカー
研究内容

組成に伴う化学的、幾何学的変化により光物性を制御
身の回りには発光する材料やデバイスが多く存在します。例えば、白色LED照明、レーザープロジェクター、テレビやスマートフォンのディスプレイはその一例です。これらの発光デバイスには、短波長の光を吸収して長波長の光に変換する蛍光体と呼ばれる発光中心イオン(希土類や遷移金属など)を添加した無機固体材料が使われています。蛍光体の光物性は、発光中心イオンの種類やその幾何学的・化学的な配位環境、結晶ホストの固体電子構造で大きく変化します。本研究室では、これらの光物性を支配する要因を詳細に調査・特定し、高効率蛍光体や近赤外蛍光体、残光蛍光体など所望の光機能を有した固体材料をデザインしています。
◆白色光を創る!
白色LED照明やレーザー励起白色光源は、青色LED(またはレーザー)と可視蛍光体から構成されています。白色光源用蛍光体は、用途により要求される特性が異なり、最近ではディスプレイ用の発光バンドの半値幅の狭い「ナロ―バンド蛍光体」やレーザーの強励起でも消光しない「レーザー励起用蛍光体」などの開発が求められています。我々は、物理現象の解明を通し、より高い特性を有する蛍光体を戦略的に創製します。

開発した長残光蛍光体
◆光を蓄える!
通常、蛍光体は励起光を遮断すると、直ちに減衰し光らなくなります。しかしながら、励起電子の一部を結晶ホストに存在する電子トラップに蓄えることにより、数分から数日の時間スケールで光続ける蛍光体(長残光蛍光体または蓄光材料)を作製できます。我々は固体電子構造に着目し、光誘起電子移動機構を制御することにより、残光蛍光体を設計しています。
◆光で測る!
蛍光体の光物性は、温度や圧力により変化するので、特徴的な発光の変化を利用することにより、非接触・非侵襲型の温度センサーや圧力センサーとして使用できます。バイオ応用に向けた近赤外サーモメーターや高感度圧力センサーなどを開発しています。
◆その他研究テーマ
透光性セラミックス、フォトクロミック材料、熱ルミネッセンス蛍光体、応力発光体、アップコンバージョン蓄光、有機長残光蛍光体、太陽電池用波長変換材料、消光機構解明、圧力誘起相転移
主な研究業績
- A. Hashimoto, J. Ueda, et al., J. Phys. Chem. C. 127, 15611(2023).
- J. Ueda, et al., ACS Appl. Opt. Mater. 1, 1128(2023).
- Jumpei Ueda, Bull. Chem. Soc. Jpn. 94, 2807(2021)
使用装置
真空高温管状炉、X線回折装置
蛍光分光光度計、クライオスタット
波長可変レーザー、蓄光材料評価装置
ダイアモンドアンビル高圧セル
研究室の指導方針
当研究室では、メンバーの人数により調整しますが、1週間に一度の研究報告会と雑誌会(最新英語論文の紹介)を行います。規則正しい生活のために、コアタイムを9時から17時とします。研究テーマは、材料合成、物性評価、応用展開の一連の内容を含み、研究室での実験だけでなく、共通分析機器の利用や学外との共同研究により、幅広い専門知識と技術の修得ができます。基本的に、在籍中に国内学会や国際学会で、一度は研究発表を行って頂きます。また、得られた研究成果は、国際論文雑誌にて学生が第一著者または共著者として発表することを目指します。
[研究室HP] URL:https://uedalab.com/
ヘテロ元素化学から未来エネルギーを考える
ヘテロ元素化学から未来エネルギーを考える
蓄電池・エネルギー材料化学研究室
Laboratory on Energy Storage Materials and Devices
教授:松見 紀佳(MATSUMI Noriyoshi)
E-mail:
[研究分野]
エネルギー材料の創出研究
[キーワード]
リチウムイオン2次電池、ナトリウムイオン2次電池、リチウム空気電池、スーパーキャパシター
研究を始めるのに必要な知識・能力
研究への意欲、知的好奇心、多少の失敗にひるまない楽観性、他のメンバーと協調的に研究を遂行できる適応性。また、以下は研究室に入る時点で必須ではありませんが、有機合成化学、高分子合成化学、電池関連化学、光化学などの経験や知識があればアドバンテージになります。
この研究で身につく能力
物質をデザインし、合成し、キャラクタライズする能力。実験データの意味を客観的に考察する能力。短期的、長期的に研究計画を立てる能力。報告書を作成したり、効果的にプレゼンテーションを行う能力、ディスカッション能力などがそれぞれ身につきます。さらには英語でコミュニケーションをとるための実践的能力を身につける場としても適しています。よりテクニカルな点では、嫌気下で様々な物質を有機合成し、NMR等で構造確認するスキル、イオン伝導性材料をインピーダンス測定などにより評価し、それらの電気化学的安定性を評価し、実際に電池を構築して充放電評価するスキルが身につくほか、光電気化学反応を電気化学的に評価するスキルを身につけることが出来ます。
【就職先企業・職種】 総合化学メーカー、自動車関連メーカー、繊維系メーカー、素材メーカー、機械系メーカーなど。
研究内容

高分子バインダーと活物質から成る
高性能電極材料のイメージ図
次世代用高性能蓄電池の創成研究
これまで、リチウムイオン二次電池用負極としては長きにわたりグラファイト負極が使用されてきました。現在、従来型のグラファイト負極よりも10倍以上の理論容量を有するシリコン負極の適用に関する研究が注目を集めています。しかし、シリコンは充放電中の体積膨張・収縮が大きく、粒子や界面の破壊や集電体からの活物質の剥離などの問題を引き起こし、問題が山積しています。本研究室では特殊構造高分子バインダーを適用することで、次世代用高容量電池の創成を目指しています。また、現存する多くの電池系は、性能が大幅に経年劣化することがユーザーレベルで広く認識されており、長期耐久性の課題解決も重要となっています。この点においても、分子レベルでの高機能バインダーの設計を行っています。さらに、シリコン負極型リチウムイオン二次電池と同様に、高容量の革新型電池として期待されている蓄電池系として、リチウム―空気電池が挙げられます。リチウム空気電池の開発の鍵となっている酸素還元反応触媒、及び酸素発生反応触媒においても、独自のアプローチにより研究を進めており、とりわけ白金の代わりに卑金属を用いた低コスト系の開発を進めています。さらに、リチウムに依存しない元素戦略に配慮した次世代蓄電池設計も進めています。例えばナトリウムイオン二次電池の高性能化に関する研究を電解質設計の立場から進めており、汎用の電解質を利用した系よりも大幅にサイクル特性やレート特性に優れた全固体ナトリウムイオン二次電池系の開発につながっています。現在の本研究室の電池開発において、もう一点注力しているのが急速充放電への対応です。現状の電気自動車では、高速道路のサービスエリアなどで充電を行う際に約30分を要しており、ガソリンスタンドでの給油と比較すると極めて長時間を要しています。本研究室では特殊な活物質の合成や、特異的な人工界面形成により充放電時間を大幅に短縮する試みを行っています。それを実現するキーワードとなるのが積極的な界面設計です。長きにわたって電池研究は四大部材(電極、電解質、バインダー、セパレータ)の研究を中心に展開されてきました。しかし、固体電解質界面(SEI)の重要性がいっそうクローズアップされつつあり、その戦略的かつ合理的な設計が次世代蓄電池の成否の鍵を握っていると考えられます。本研究室では、有機合成化学や高分子合成のバックグラウンドを有する電池研究グループという個性を最大限に活かしつつ、独自のアプローチで未来社会のニーズに応える高性能電池系の創出を目指します。
主な研究業績
- "Densely imidazolium functionalized water soluble poly(ionic liquid) binder for enhanced performance of carbon anode in lithium/sodium-ion batteries", A. Patra and N. Matsumi, Adv Energy Mater (2024) 20243071.
- "Water-soluble densely functionalized poly(hydroxycarbonylmethylene) binder for higher performance hard carbon anode-based sodium-ion batteries", A. Patra, N. Matsumi. J Mater Chem A., 12 (2024) 11857-11866.
- "Confronting the issue associated with the practical implementation of zinc blende-type SiC anode for efficient and reversible storage of lithium ions"R. Nandan, N. Takamori, K. Higashimine, R. Badam, N. Matsumi. ACS Appl Ener Mater., 7 (2024) 2088-2100.
使用装置
充放電評価装置
インピーダンスアナライザー
電気化学アナライザー
核磁気共鳴分光装置
ソーラーシミュレーター
研究室の指導方針
合成化学を基盤にしながら、リチウムイオン二次電池やナトリウムイオン二次電池など社会的要求の高い研究分野に果敢にチャレンジします。クリエイティブな発想力と失敗を恐れない実行力、社会貢献への意識などを有したバランスのとれた人材の育成を目指します。ヘテロな研究集団を目指していますので、様々なバックグラウンドを持った人材を歓迎します。入って来るメンバーの科学的知識レベルも様々でしょうが、2年間ないし5年間にそれぞれのレベルに応じて大きな成長と達成感、自信を味わって巣立っていただくことが目標です。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/matsumi
電磁波と原子核でナノ空間を視(み)て、制御する
電磁波と原子核でナノ空間を視(み)て、制御する
固体ナノ化学研究室 Laboratory on Solid-State Nanochemistry
教授:後藤 和馬(GOTOH Kazuma)
E-mail:
[研究分野]
物理化学、無機材料化学
[キーワード]
核磁気共鳴(NMR)、炭素材料、二次電池(リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、次世代電池)、その場分析
研究を始めるのに必要な知識・能力
化学の基礎知識があれば研究をすみやかに始められますが、必要なことは学ぶという意欲さえあれば知識の有無は問題ありません。研究を通して自分の成長(能力的&人間的)を望み、新しいことに取り組む意思があれば大丈夫です。
この研究で身につく能力
ものづくりに始まり、測定機器による分析、得られた実験結果・測定結果の考察までを行うので、無機材料を中心とした材料合成の実験技術、電池作製および評価の技術、NMRをはじめとする各種機器分析の技術など幅広い技術が身につきます。また、研究室でのセミナーや学会発表、海外研究グループとの国際交流を通してプレゼンテーション能力、英語力なども磨かれます。しかし一番大事なことは、得られた実験・測定結果から「物質の中で何が起きているか」を総合的にとらえ考察する能力や、課題を解決し研究をまとめるための論理的な思考力など、AIにとって代わられることのない「人間」としての考える力であり、これを特に重視しています。社会に出て長くずっと第一線で活躍できる能力を持った人になってもらいたいと考えています。
【就職先企業・職種】 化学・材料メーカー、電機・電池・自動車および関連メーカー、分析機器メーカー、公設試験研究機関、教員
研究内容
ナノサイズの空間や表面などの構造、およびミクロな環境を解明することをテーマとして、細孔物質(物質の中に多数の小さな穴=細孔をもった固体材料)の内部空間や、黒鉛などの層状化合物の層間に吸蔵された分子やイオンの状態、動的挙動、内部空間の表面状態などを、核磁気共鳴(NMR)法を中心に様々な方法で研究しています。内部空間への分子やイオンの導入(インターカレーション)は電池電極反応とも密接な関連があることから、特にリチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池や今後実用化が期待される次世代電池など、各種二次電池の電極材料の研究を積極的に進めています。
【固体NMR開発と二次電池電極の状態分析】


電池のリアルタイムNMR解析(左上)*),金属リチウム析出イメージ(右上)2.
非晶質炭素の充電,過充電挙動モデル(下)2.
*) K.Gotoh et al., Carbon (2014).
・固体材料についてのNMRは、固体物質中の局所構造やダイナミクスの解析に極めて有効な分析手法です。特にナノ空間の構造や環境を調べる際には、吸着された物質中の原子やイオンを「プローブ(探針)」として利用し直接的に内部環境を調べることができます。よって、リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池ではそれぞれリチウム、ナトリウムのNMR共鳴信号を解析することで、電池内部の微小な状態変化を検出できます。軽元素であるリチウムやナトリウムは電子顕微鏡やX線分光など他の分析手段では直接観測が非常に難しいため、NMRでリチウムやナトリウムなど電荷を担持する重要な核種の状態を観測することが、イオンの吸脱着メカニズム、すなわち電池の充放電メカニズムの解明に大きく役立ちます。
・最新のリチウムイオン電池や次世代電池であるナトリウムイオン電池、全固体電池などの電極内に吸蔵されたリチウム、ナトリウムの状態を解明しています。充放電により刻々と変化する内部環境をリアルタイムで観測するためには、電池の「その場観測(オペランド解析)」が必須となるため、電池観測のための高感度オペランドNMR法の開発を積極的に進めています。本手法により電池が過充電された際の金属析出メカニズムも解明できるため、安全性評価にも貢献できます。
・充放電メカニズムの解析から、新たな材料の設計指針を立て、それに基づいた負極材料の開発を行っています。炭素材料は以前から負極に用いられてきましたが、次世代電池用電極材料としても期待できることから、新たな炭素材料の開発を進めています。
主な研究業績
- Dynamic nuclear polarization -nuclear magnetic resonance for analyzing surface functional groups on carbonaceous materials. H. Ando, K. Suzuki, H. Kaji, T. Kambe, Y. Nishina, C. Nakano, K. Gotoh*, Carbon, 206, 84 (2023).
- Mechanisms for overcharging of carbon electrodes in lithium-ion/sodium-ion batteries analysed by operando solid-state NMR. K. Gotoh*, T. Yamakami, I. Nishimura, H. Kometani, H. Ando, K. Hashi, T. Shimizu and H. Ishida, J. Mater. Chem. A 8, 14472 (2020).
- Combination of solid state NMR and DFT calculation to elucidate the state of sodium in hard carbon electrodes. R. Morita, K. Gotoh*, M. Fukunishi, K. Kubota, S. Komaba, T. Yumura, N. Nishimura, K. Deguchi, S. Ohki, T. Shimizu and H. Ishida, J. Mater. Chem. A 4, 13183 (2016).
使用装置
Bruker AVANCE NEO 400MHz NMR(固体測定専用)拡散測定システム付, Bruker AVANCE Ⅲ500MHz-NMR(固体対応)オペランド測定用特殊プローブ付
X線回折,X線光電子分光(XPS),熱分析,電子顕微鏡,ガス吸脱着装置,電気化学測定装置(充放電試験装置等),電池作製設備(グローブボックス等),高温熱処理炉(2200℃)
研究室の指導方針
社会人としてどのような分野でも力を発揮できる基礎力と、専門家として活躍できる知識経験の、両方を持った人になってもらうことを目的として指導します。定期的な研究室でのセミナーや報告会がありますが、実験については装置の都合により個々のスケジュールがかなり異なってくるので、自分自身で研究計画を立案し、実行してもらうことになります。国内外の学会での発表のほか、海外研究グループや企業と進めている多彩な共同研究にも積極的に参加してもらい、国際的な幅広い視野を持てる機会を提供したいと考えています。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/nmcenter/labs/gotoh-www/
新しい固体触媒プロセスの構築による資源・エネルギー問題の解決に挑む!
新しい固体触媒プロセスの構築による
資源・エネルギー問題の解決に挑む!
触媒・資源変換プロセス研究室
Laboratory on Catalyst/Resource Chemical Process
准教授:西村 俊(NISHIMURA Shun)
E-mail:
[研究分野]
触媒化学、固体触媒、合金触媒、バイオマス変換
[キーワード]
資源・エネルギーの有効利用技術、金属ナノ粒子触媒、固体酸塩基触媒、新触媒の創成、触媒作用機構の解明
研究を始めるのに必要な知識・能力
基礎的な計算・データ処理能力と仲間と安全に研究を進められる方であれば、バックグラウンドを問わずに歓迎します。物理化学、有機化学、無機化学、分析化学、触媒化学などの基礎・経験があると、よりスムーズに研究を開始できます。失敗にひるまずに挑戦する「忍耐力」や「好奇心・探究心」がより自発的に研究を進める上で役に立ちます。
この研究で身につく能力
新しい固体触媒プロセスの開発は、触媒設計→触媒調製・条件の最適化→触媒活性評価・反応条件の最適化→触媒のキャラクタリゼーション→触媒作用機構の提案→検証・再考といった多くの研究段階からなっています。また、触媒作用に関連する因子は一つであるとは限りません。従って、触媒開発プロセスを経験することで、様々な分析・評価手法の技術習得、多角的に実験データを整理・解析・統合する力を身に付けることができます。また、英語の先行研究を読み自らの研究へフィードバックする力、自分の結果を他人へより分かりやすく伝えるためのプレゼンテーション力を、日常の研究室ゼミや学会発表等を通じて向上できます。
【就職先企業・職種】 化成品・ポリマー製造や自動車触媒製造を主とした化学・材料メーカーなど。
研究内容
触媒は様々な物質変換・合成プロセスに欠かすことができない材料で、身近な生活を力強く下支えしています。そのため、高機能な触媒プロセスの開発は、日常の生活様式の劇的な改善やより低環境負荷なスタイルへと大きく変えるインパクトを持っています。例えば、空気中の窒素の人工的な固定化を実現したアンモニア合成触媒の実現(1918年ノーベル化学賞)は、窒素を含む化学品合成の発展に繋がり、その後の安定的な食料生産による人口増加や火薬製造による工業の発展へと繋がりました。
当研究室では、「従来の在来型化石資源の利用技術で培われた触媒プロセス技術を生かし、より高効率な触媒を設計するための指針の提案」や、「固体触媒を用いた高効率な次世代バイオマス資源変換プロセスの構築」から、持続可能・低環境負荷な社会形成に貢献できる触媒・資源変換プロセス技術の構築を目指しています。
・金属担持触媒の高機能化に向けた触媒設計と作用機構解明
金属活性点を固体表面に固定化した金属担持触媒は、主に1. 金属活性中心の電子状態や形状、2. 金属活性点の周囲環境、3. 担体の性質によって、その触媒作用が大きく異なります。それぞれの因子を系統的に制御し、対象とする触媒反応への性能を評価することで、求める触媒作用に対して選択的に欲しい性能を付与できる触媒調製指針の策定を目指します。例えば、異種金属を合金化させた活性サイトの構築による高活性化、保護配位剤を作用させることによる活性点周囲の環境制御による高活性・高選択性の発現、特異な構造を有する担体合成による超高活性化を実現しています。
・高効率なバイオマス資源変換を実現する固体触媒プロセス開発
バイオマス資源は再生可能でカーボンニュートラルであることから、持続可能な次世代資源としての活用が期待されています。しかし、低いLCA(ライフサイクル・アセスメント)が課題です。固体触媒を用いた高効率プロセスの実現によるバイオマス資源利用の拡大を目指しています。例えば、常圧水素によるバイオ燃料製造プロセス、非可食性グルコサミン類からの高品位化成品合成プロセス、高活性な酸- 塩基反応プロセス、バイオマス由来有機酸・脂肪酸の高効率な水素化転換を実現しています。また、バイオマス資源の連続的なフロー変換プロセスの展開に必要な課題抽出とその改善にも取り組んでいます。
主な研究業績
- S. D. Le, S. Nishimura: Selective hydrogenation of succinic acid to gamma-butyrolactone with PVP-capped CuPd catalysts. Catal. Sci. Technol. 12 (2022) 1060.
- K. Anjali, S. Nishimura: Efficient Conversion of Furfural to Succinic Acid using Cobalt-Porphyrin based Catalysts and Molecular Oxygen. J. Catal. 428 (2023) 115182
- X. Li, S. Nishimura: Synthesis of 5-Hydroxymethy-2-furfurylamine via Reductive Amination of 5-Hydroxymethyl-2-furaldehyde with Supported Ni-Co Bimetallic catalysts. Catal. Lett. 154 (2024) 237.
使用装置
触媒活性評価(GC, HPLC, GC-TOFMS, FTICR-MS, 液体 NMR)
触媒構造評価(XRD, ガス吸着 / 脱着 , SEM/TEM, XPS, 固体 NMR, FT-IR, TPR/TPD, パルス分析など)
状況に応じて、外部の共同利用研究施設(KEK-PF, SPring-8, SAGA- LS など)での XAFS 測定も行います。
研究室の指導方針
当研究室では、月1~2回の研究室ゼミ(研究進捗報告・ディスカッション)を行います。コアタイムは設けませんが、社会人生活に向け て規則正しい生活リズムを作って実験・大学院生活を送ってください。本学には様々な分析機器が共通設備として整備されており、 装置によっては専門職員からのサポートも得られる充実した環境が整っています。在籍中にこのサポート・分析体制を存分に活か し、自らのスキルアップを実現してほしいと思います。在籍中に得られた成果は、国内外での学会等で対外発表を行うことを推奨 します。また、修了生1人に対して1報以上の学術論文・国際会議プロシーディングス等を公開し、各学生の成果を残せるように努めています。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/~s_nishim/index.html
高分子材料の機能化、高性能化をレオロジー的な手法で行います
高分子材料の機能化、高性能化を
レオロジー的な手法で行います
材料レオロジー研究室 Laboratory on Materials Rheology
教授:山口 政之(YAMAGUCHI Masayuki)
E-mail:
[研究分野]
高分子レオロジー、成形加工
[キーワード]
インテリジェントポリマー、バイオマスポリマー、マテリアルリサイクル
研究を始めるのに必要な知識・能力
マテリアルサイエンス(材料科学)系分野に関する基礎知識があれば、これまでの専門は気にせずとも結構です。むしろ意欲ある学生を希望します。
この研究で身につく能力
高分子はひとつの分子が線状で長いことが最大の特徴です。このような分子形状であるため、高分子は“からみ合い”相互作用を示します。その結果、例えば液体状態でも弾性を示し、さまざまな成形加工が適用できるようになります。からみ合いは高分子らしさを表す最も適切な特性であると言え、レオロジーではその「からみ合い」により示される特性や、それによって形成される構造を取り扱います。当研究室ではレオロジー的な考え方や成形加工の技術を取り入れることで、新しい機能材料や、ポリマー系材料の高性能化へ取り組み、世の中の役に立つ新規材料を創出しています。これらの研究で身につく材料設計に対する考え方は、企業における研究でも大いに役立ちます。
【就職先企業・職種】 高分子材料を扱う樹脂メーカー、加工メーカー、ユーザーなど(詳細はHPに記載)
研究内容
当研究室では、レオロジー特性の新しい制御技術、成形加工技術、ブレンド・アロイやコンポジットなどの樹脂複合化の独自技術を「武器」として、新しい材料設計を化学反応に頼ることなく創出しています。
対象とする材料は、ポリ乳酸やセルロースなどのバイオマス系ポリマー、ポリエチレンやポリプロピレンなどの汎用高分子、ポリメタクリル酸メチルやポリカーボネートなどの光学ポリマー、各種エラストマーなど、ほとんどの高分子材料であり、さらにカーボンナノチューブなどのナノ粒子、各種樹脂添加剤を幅広く取り扱っています。また、高分子以外にも、化粧品や食品などを研究対象とすることがあります。これらの材料の組み合わせや改質、さらには成形により、さまざまな機能を付与し、また、高性能化を行っています。
応用分野はさまざまですが、自動車関係の材料や次世代のディスプレイなど、日本の技術力が強い分野を中心にした研究開発が多くなっております。得られた研究成果の一部は既に工業的にも応用されています。また、成形加工のトラブルや高速成形に対する研究も進め、高分子加工を技術的にサポートしております。以下、研究例の一部を紹介します。
【高分子系複合材料の研究開発】
分子レベルで異種物質の凝集状態を高度に制御することにより、ポリマー系複合材料の高性能化を目指す研究です。次世代気自動車などへの用途展開が期待できる透明樹脂や内装材向け樹脂、透明かつフレキシブルな導電性ポリマーフィルム、植物由来の原料を用いた革新的な光学デバイスなどの開発に取り組んでいます。また、ポリ乳酸の革新的な高性能化など低環境負荷材料を用いた研究も積極的に推進しています。
【レオロジー制御による機能性ソフトマテリアルの材料設計】
レオロジーの考え方はポリマーのみならず、さまざまな分野で必要とされます。特に、ソフトマテリアルである食品や生体材料、化粧品などではレオロジー特性の把握が必要不可欠です。本テーマでは、これら機能性ソフトマテリアルの材料設計をレオロジーの観点から進めています。切断しても再び元通りに治癒する自己修復性材料、形状記憶材料などの設計指針をこれまでに提案しています。
【成形加工技術の深化・構築】
優れた高分子材料でも、成形加工できなければ世の中で使用されません。そのため高分子産業では、成形加工に必要不可欠なレオロジーの専門家を常に必要としています。その基礎となる研究を実施すると共に、新材料のレオロジー特性を明らかにすることで実用化へ貢献しています。
主な研究業績
- 環境問題に立ち向かうポリオレフィンの成形加工技術,山口政之, 成形加工, 32(9), 301 (2020).
- 低分子添加による複屈折制御,山口政之,工業材料,66(4), 33-37 (2018).
- 成形加工性向上のための高分子レオロジー制御技術,山口政之,機能材料,38(4), 4-12 (2018).
使用装置
レオロジー測定装置
成形加工機
分光分析装置
力学特性評価装置
研究室の指導方針
当研究室では、主として高分子物性に関する知見に基づいて、材料の設計から成形技術に至るまで、さまざまな研究テーマを設定し活動しています。また、実際に役立つ研究を行うために、企業との共同研究を積極的に進めています。私自身の企業経験も活かしながら就職活動へのサポートも行い、総合的な力を伸ばしてもらいたいと考えています。
ポリマー材料の研究開発に興味をお持ちの方は、是非、当研究室を訪問してください。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/yamaguchi/
自然環境と生体物質の歴史に学ぶー高分子の世界に挑戦!ー
自然環境と生体物質の歴史に学ぶ
ー高分子の世界に挑戦!ー
DRY & WET ソフトマテリアル研究室
Laboratory on DRY & WET Soft Materials
准教授:桶葭 興資(OKEYOSHI Kosuke)
E-mail:
[研究分野]
高分子科学、光化学、ソフトマター
[キーワード]
ゲル、水、ソフトマテリアルの幾何学、光機能材料、エネルギー変換材料、バイオミメティクス
研究を始めるのに必要な知識・能力
高分子科学、物理化学、材料科学、光化学、ソフトマターの基礎知識や経験を持っていると望ましいでしょう。そして何より、チャレンジングスピリットを強く持っている人、好奇心の強い人、思考の持久力を高めたい人と研究を始めたいと考えています。
この研究で身につく能力
論理説明能力・解釈能力、科学的な仮説検証・立案力、高精度なディスカッション能力、発表能力、英語コミュニケーション力
学問分野:高分子科学、光化学、コロイド科学、界面化学、幾何学、非線形科学など
【就職先企業・職種】 化学メーカー、医療機器メーカー、自動車関連、材料全般、食品関連、化粧品関連など
研究内容
自然界を見渡すと、目に見えるレベルで綺麗なパターンがたくさんあります。たとえば生体組織は小さな分子から「自己組織化」 によって創り上げられています。これは、物質そのものにだけ由来している訳ではなく、外的な環境が強く作用した結果です。変化する環境に適応できるように生命が進化した結果、多様な空間 パターンやリズムが生まれています。
一方、人工的に合成された分子から物理環境を制御してパターンを創り出す研究は歴史的に長くなされています。しかし、合成分子のままでは医療や工業的に材料化する上で困難を極め、生体組織との調和や自然との共生には幾つものハードルがあります。これに対して我々は直近の研究で、天然分子の多糖が自らパターンを再構築する現象を発見しました。ここで、「なぜ」「どのように」パターンをつくるのかを解明できれば、生体適合性と環境適応性を合わせ持つマテリアルを手に入れることができます。
1.DRY でWET な天然多糖の自己組織化
天然から抽出された多糖は、どのようにcmスケールの幾何学パターンを生み出すのか、特に、乾燥環境下で多糖が見せる「空間認識」の法則性を検証しています。DRY でWET な非平衡環境下、ミクロにもマクロにも高分子が組織化して析出してきます。実際の生体組織が常に乾燥環境におかれながらもWETなからだを維持していることを振り返ってみれば、水中から陸上進出した生体高分子の進化を紐解く鍵があるはずです。
2.ソフトマテリアルのパターン制御
生体高分子、合成高分子に関わらず多くのソフトマテリアルは、界面の応力制御によって形態の制御が可能です。ほんの小さな環境の違いや僅かな力学的エネルギー負荷によって、多様な構造や形態を見せます(自己集積、自己相似、フラクタルなど:図参照)。これを利用してDRY でWET な環境に適応した医療用材料の設計法を見出したいと考えています。
これら「自然美の追求」を基に現象の法則性を導くことが究極目標です。そして、生物がなぜパターンを創るようになったのか?自然科学の大命題に挑戦しています。

主な研究業績
- Bioinspired gels: polymeric designs towards artificial photosynthesis. Hagiwara R, Yoshida R, Okeyoshi K, Chemical Communications 60, 13314-13324 (2024).
- Recognition of spatial finiteness in meniscus splitting through evaporative interface fluctuations. Wu L, Saito I, Hongo K, Okeyoshi K, Advanced Materials Interfaces 10, 2300510 (2023).
- DRY & WET: meniscus splitting from a mixture of polysaccharides and water. Okeyoshi K, Polymer Journal 52, 1185 (2020).
使用装置
各種光学顕微鏡、各種光学装置(偏光、蛍光など)、画像解析装置、粘度計、密度計、動的光散乱、電子顕微鏡
研究室の指導方針
社会で働くトレーニング期間として、個人個人の能力を最大限に発揮できるようにサポートします。我々のグループは研究・文化の両面で多様な環境に在り、多角的な視野を構築する上で日本でも稀に見る貴重なチャンスです。突出した先端研究をみなさんと進めたいと考えています。そのためにも以下1−3の基礎を実践していきます。
1. 実験とディスカッションを通して論理的思考力と先見性の能力を養う。
2. 仮説と検証を繰り返し大目標にアプローチする。
3. 学会発表、学術論文発表を念頭に科学的言語を使う。
これらの積み重ねを自信にして創造力を高めていきたいと考えています。熱いハートのみなさん、ぜひ21世紀のパイオニアを目指して一緒にチャレンジしましょう!
[研究室HP] URL:https://sites.google.com/oke-acgroup.com/web/home-j
【10/28】JAIST量子国際シンポジウム 特別講演
このたび、JAIST量子国際シンポジウムの一環として、NVセンター研究の先駆者であるJörg Wrachtrup(ヨルク・ブラハトルプ)教授(シュトゥットガルト大学)をお招きし、特別講演を開催します。
量子科学、スピントロニクス、量子センシング、および量子技術が拓く未来社会にご関心のある教職員・学生の皆様にとって、貴重な機会となります。
多くの皆様のご参加をお待ちしています。
| 日 時 | 令和8年10月28日(水) 14:00~15:30 |
| 場 所 | 石川ハイテク交流センター 大会議場 (石川県能美市旭台2-1) |
| 講演者 | Jörg Wrachtrup教授 (シュトゥットガルト大学) |
| 使用言語 | 英語 |
| 参加申込 | 参加を希望される方は、以下のURLより事前登録をお願いします。 【参加登録URL】https://forms.gle/Y9EXCeWNodpVEBBh9 |
| お問合せ先 | 超越量子未来アリーナ(taQumi) 准教授 安 東秀(E-mail:toshuan |
学生の福田さんがPESI 2026においてBest Poster Paper Awardを受賞
学生の福田雄太さん(博士後期課程3年、物質化学フロンティア研究領域、山口政之研究室)が、Polymer Engineering & Sciences International (PESI) 2026において、Best Poster Paper Awardを受賞しました。
PESI 2026は、令和8年6月28日~7月2日にかけて金沢市文化ホール(石川県金沢市)にて開催された高分子に関する国際会議です。同会議では、高分子工学および高分子科学の様々な研究分野から国際的な研究コミュニティーが集まり、高分子材料、技術、方法論に関わる最新の研究成果について、活発な議論が行われました。
※参考:PESI 2026
■受賞年月日
令和8年7月1日
■研究題目、論文タイトル等
Relationship between daughter lamellar content and mechanical properties of polypropylene containing hydrogenated oligo(cyclopentadiene)
■研究者、著者
Yuta Fukuda、Masayuki Yamaguchi
■受賞対象となった研究の内容
ポリプロピレンのメゾ相をより高温で形成するために、水素化オリゴシクロペンタジエン(hOCPD)に着目しました。hOCPDの添加によってガラス転移温度が上昇し、流動場においてメゾ相が高温下で形成されることが判明しました。その結果、子ラメラ量が著しく低下し、結晶の配向性が高まることにより力学特性が向上することを発見しました。
■受賞にあたって一言
この度はPolymer Engineering & Sciences International 2026においてポスター賞を受賞でき、大変うれしく思っています。日頃から熱心な指導をしてくださる山口政之教授、そして研究室のメンバーに心から感謝します。
令和8年9月16日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2026/09/16-1.htmlリチウムイオン電池の負極を守り、耐久性を大幅に向上させる新しい電解液添加剤を開発
リチウムイオン電池の負極を守り、耐久性を
大幅に向上させる新しい電解液添加剤を開発
【ポイント】
- リチウムイオン電池で広く使われているグラファイト負極を保護し、耐久性を大幅に向上させる新しい電解液添加剤(FPTI)を開発しました。
- FPTIは、電解液の成分よりも先に反応し、グラファイト表面に丈夫で安定した保護膜を形成します。これにより、電池内部で起こる不要な副反応を抑えます。
- FPTIを添加することで、負極と電解液の界面における抵抗が低下するとともに、リチウムイオンが移動しやすくなることを確認しました。
- 試験用のグラファイト/リチウムハーフセルでは、FPTIを4 mg/mL添加した場合、1,000回の充放電後も、約200回時点で得られた最大容量の95.6%を維持しました。
- 今回確認したのは主に試験用セルにおける負極の耐久性向上です。今後、実用電池に近い条件での検証を進めることで、リチウムイオン電池の長寿命化への応用が期待されます。
【概要】
| 北陸先端科学技術大学院大学物質化学フロンティア研究領域の松見紀佳教授、MANTRIPRAGADA, Bharat Sri Mitra助教、REDDI, Uday Sai大学院生(博士後期課程)の研究グループは、リチウムイオン二次電池*1で広く使用されているグラファイト負極を保護し、その耐久性を大幅に向上させる新しい電解液添加剤を開発しました。 スマートフォンや電気自動車(EV)、定置型蓄電池など広く利用されるリチウムイオン電池をより長く安定して使用するためには、充放電を繰り返しても性能が低下しにくい電極の実現が重要です。 開発した添加剤「FPTI」は、フッ素を高密度に含む分子構造を持ち、通常の電解液成分よりも先に反応して、グラファイト負極の表面に安定した保護膜を形成します。これにより、不要な副反応を抑えるとともに、負極と電解液の界面の抵抗を低減し、リチウムイオンが移動しやすくなることを確認しました。試験用のグラファイト/リチウムハーフセルでは、FPTIを4 mg/mL添加した場合、1,000回の充放電後も、約200回時点で得られた最大放電容量の95.6%を維持しました。 本研究で実証したのは、主に試験用セルにおけるグラファイト負極の耐久性向上であり、実用電池そのものの耐用年数の向上を直接示したものではありません。今後、実用電池に近い条件での検証を進めることで、リチウムイオン電池の長寿命化への応用が期待されます。 本成果は、米国化学会の学術誌「Energy and Fuels」に掲載されました。 |
1.背景
リチウムイオン電池は、高い電圧とエネルギー密度を持つことから、スマートフォンやノートパソコンなどの携帯機器だけでなく、電気自動車(EV)や定置型蓄電池などにも広く利用されています。これらの用途が拡大するなか、電池を長期間にわたって安定して使用できるようにすることは、利便性やコストの面だけでなく、資源を有効に利用するという観点からも重要な課題です。
現在広く利用されているリチウムイオン電池では、負極材料として主にグラファイトが使われています。グラファイトは充放電を安定して行える優れた材料ですが、電池を使い始める際に、負極表面で電解液の一部が分解して「固体電解質界面(SEI:Solid Electrolyte Interphase)*2」と呼ばれる薄い膜が形成されます。この膜は、負極を電解液から守りながらリチウムイオンを通す、いわば負極表面の保護膜として重要な役割を果たします。
一方、この保護膜が不安定で、充放電のたびに壊れたり作り直されたりすると、その過程でリチウムや電解液が消費され、電池の内部抵抗が増加して容量低下につながります。そのため、グラファイト表面に薄く安定した保護膜を形成し、それを長期間維持することが、負極の耐久性を高めるうえで重要です。
これまで、リチウムイオン電池の性能を改善するためにはさまざまな電解液添加剤が研究されてきました。特に正極を安定化させる添加剤については多くの研究が進められている一方、グラファイト負極を安定化させる添加剤は相対的に限られています。
これは、炭素材料自体の耐久性が一般的に低く、グラファイト負極を安定化するための効果的な添加剤の設計戦略が十分に確立されていないことが原因と考えられます。
そこで研究グループは、負極表面で電解液よりも先に反応し、安定した保護膜を形成できる分子の開発に取り組みました。
2.研究内容
研究グループは、グラファイト負極の表面に安定した保護膜を形成する新しい電解液添加剤として、フッ素を高密度に含むイミン化合物「FPTI(pentafluorophenyl thiophene imine)」を設計しました。FPTIは、3-チオフェンカルボアルデヒドとペンタフルオロフェニルアミンとの反応により、94%の収率で合成しました。
FPTIは、フッ素を多く含むペンタフルオロフェニル基と、硫黄を含むチオフェン構造を併せ持つことが特徴です。研究グループは、この特徴的な分子構造によって、FPTIがグラファイト負極の表面で通常の電解液成分よりも先に反応し、負極を保護する安定した膜を形成することを狙いました。
研究グループは、FPTIを電解液に添加し、グラファイトを負極、金属リチウムを対極とした試験用のCR2025型コインセル(グラファイト/リチウムハーフセル)を用いて、その効果を調べました。
計算化学(DFT計算)による解析の結果、FPTIは一般的な電解液成分やバインダーよりも低いLUMO*3準位を持ち、グラファイト負極上で通常の電解液成分よりも先に還元されやすいことが分かりました。このため、充電時にFPTIが先に反応することで、グラファイト負極の表面にSEIと呼ばれる保護膜を形成し、電解液の不要な分解を抑えることができます。
実際にFPTIを添加したセルでは、添加していないセルと比べて、負極表面のSEI抵抗と、負極と電解液の間でリチウムイオンが移動する際の抵抗がいずれも低下しました。4 mg/mL添加した場合、SEI抵抗は7.6 Ωから2.2 Ωへ、電荷移動抵抗は41.8 Ωから19.8 Ωへ低下しました。
また、リチウムイオンの移動しやすさを示す拡散係数は、非添加系の3.45±4.71×10⁻14cm²s⁻¹に対し、2 mg/mL添加系では2.92±3.96×10⁻13cm²s⁻¹、4 mg/mL添加系では3.58±3.74×10-13cm²s⁻¹となり、FPTIの添加によってリチウムイオンが移動しやすくなることが確認されました。
さらに、負極表面を分析したところ、FPTIを添加したセルでは、フッ化リチウム(LiF)を多く含む安定したSEIが形成されていることが分かりました。FPTIに含まれるフッ素や硫黄などが保護膜の形成に寄与することで、グラファイト負極と電解液の界面が安定化したと考えられます。
長時間の充放電試験では、最初の3サイクルを0.1C、その後0.5Cで評価しました。その結果、約200サイクル時の最大容量を基準とした1,000サイクル時点の容量維持率は、FPTIを添加しないセルでは62.7%だったのに対し、2 mg/mL添加したセルでは89.4%、4 mg/mL添加したセルでは95.6%となりました。FPTIを添加することで、繰り返し充放電した際のグラファイト負極の容量低下が大きく抑えられることが示されました。
また、研究グループは、実際のリチウムイオン電池により近い構成として、NMC811正極とグラファイト負極を組み合わせたフルセルについても評価しました。FPTIを用いてあらかじめグラファイト負極表面にSEIを形成した後、FPTIを含まない電解液を用いてフルセルを構成したところ、4 mg/mLのFPTIで処理した負極を用いたセルで約233 Wh kg⁻¹のエネルギー密度が得られました。
なお、このフルセル試験は、FPTIを実用電池の電解液に直接添加して性能を評価したものではなく、FPTIによってあらかじめ形成した負極側の保護膜の効果を検証したものです。
3.今後の展開
今回の研究により、FPTIを用いてグラファイト負極表面に安定した保護膜を形成することで、試験用セルにおける負極の耐久性を大幅に向上できることが示されました。
一方、今回の成果は、実際に市販されているリチウムイオン電池の耐用年数が延びることを直接実証したものではありません。社会実装に向けては、実用サイズ・実用条件に近いフルセルでの長期試験をはじめ、温度条件、安全性、添加剤の最適な使用方法、製造工程への適合性、量産性などについて、さらに検証する必要があります。
本技術は、電解質や電極活物質そのものを新たな材料に置き換えるものではなく、少量のFPTIを既存の電解液に添加することでグラファイト負極の耐久性向上を図るものです。そのため、既存の電池製造設備や工程を大きく変更することなく導入できる可能性があり、研究グループでは、社会実装に向けたハードルが相対的に低い技術になると考えています。今後、実用電池に近い条件での検証・実証を進めていくことを希望しています。
今後、こうした検証を進め、実用電池でも長寿命化が実現できれば、スマートフォンや電気自動車、定置型蓄電池などの交換頻度を減らし、ユーザーの利便性向上やコスト低減につながる可能性があります。また、電池をより長く使用できるようになれば、電池の製造・交換に伴う資源消費や環境負荷の低減にもつながることが期待されます。
松見教授は、「本研究成果についてはすでに国内特許を出願しています。今後は企業との共同研究などを通じて実用化に向けた研究開発を進め、耐久性の高いリチウムイオン電池の実現と、将来的な低炭素社会への貢献を目指します。現在、開発パートナーを募集しており、サンプル提供についてもご相談に応じます」と話しています。

| 図1.イミン型負極添加剤の設計コンセプト FPTIがグラファイト負極表面で電解液より先に反応し、LiFなどを含む安定した保護膜(SEI)を形成することで、不要な副反応を抑え、リチウムイオンが移動しやすい界面を形成する考え方を示しています。 |

| 図2.FPTIの合成と分子設計 (a) FPTIの合成法、(b) FPTIの1H NMRスペクトル、(c)FPTI、電解液及びバインダーのHOMO-LUMOエネルギーレベル。 |

| 図3.FPTI添加による充放電特性 (a)グラファイト/リチウムハーフセルの長期充放電サイクル特性、(b)第一サイクルにおけるdQ/dVプロット、(c)NMC811/グラファイトフルセルの充放電レート特性、(d)フルセルの充放電サイクル特性。 |
【用語説明】
リチウムイオンが正極と負極の間を移動することで充電・放電を行う二次電池。高い電圧とエネルギー密度を持ち、スマートフォンやノートパソコン、電気自動車(EV)、定置型蓄電池などに広く利用される。
主にリチウムイオン電池の負極表面に形成される薄い膜。リチウムイオンを通す一方で、電解液のさらなる分解を抑える「負極表面の保護膜」として働き、その性質が電池の性能や耐久性に大きく影響する。
電子が入っていない分子軌道のうち、最もエネルギーが低い軌道。一般にLUMOのエネルギーが低い分子ほど電子を受け取りやすく、還元されやすい。本研究では、FPTIが電解液成分よりも先に還元され、負極表面に保護膜を形成する性質を説明する指標として用いた。
【論文情報】
| 論文タイトル | Enhancing the Cycling Stability of Graphite Anodes Using a Dense Fluorine Containing Thiophene-Based Electrolyte Additive |
| 日本語タイトル | 高密度フッ素含有チオフェン系電解液添加剤によるグラファイト負極のサイクル安定性向上 |
| 著者 | Uday Sai Reddi, Bharat Srimitra Mantripragada and Noriyoshi Matsumi* (*責任著者) |
| 掲載誌 | Energy and Fuels |
| 掲載日 | 2026年8月31日 |
| DOI | 10.1021/acs.energyfuels.6c02613 |
令和8年9月7日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2026/09/07-1.html第8回研究科セミナー(物質化学フロンティア研究領域)「遷移金属内包ゼオライトによるバイオマス資源変換」
| 日 時 | 令和8年9月14日(月)15:30~16:30 |
| 場 所 | 知識科学講義棟2階 中講義室 |
| 講演題目 | 「遷移金属内包ゼオライトによるバイオマス資源変換」 Transition Metal Encapsulated Zeolites for Sustainable Biomass Conversion |
| 講演者 | Department of Chemistry, School of Physical Sciences, Central University of Kerala Professor, AYYAMPERUMAL Sakthivel |
| 使用言語 | 英語 |
| お問合せ先 | 北陸先端科学技術大学院大学 物質化学フロンティア研究領域 准教授 西村 俊(E-mail:s_nishim |
● 参加申込・予約は不要です。直接会場にお越しください。
出典:JAIST イベント情報https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/event/2026/09/02-1.html多様な光触媒の性能を左右する「ボトルネック」を診断し、設計指針を確立 ―大規模材料探索と速度論解析の融合により、高性能光触媒開発を加速―
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| 北陸先端科学技術大学院大学 東京科学大学 東京理科大学 |
多様な光触媒の性能を左右する「ボトルネック」を診断し、設計指針を確立
―大規模材料探索と速度論解析の融合により、高性能光触媒開発を加速―
【ポイント】
- 多数の酸化物光触媒を同一条件で比較し、性能を左右する「ボトルネック」を判別する新たな速度論的評価法を構築しました。
- 光の強さと温度への応答から、材料表面への電荷供給と、表面での界面電荷移動のどちらが性能を制限しているかを診断できることを示しました。
- 遷移金属(Mn、V)を含む材料では電荷供給能力が高く、第3族元素(Sc、Y)を含む材料では電荷供給が制限要因になりやすいことを明らかにし、構成元素に基づく材料設計指針を提案しました。
【概要】
| 東京科学大学物質理工学院材料系の張葉平助教(研究当時、北陸先端科学技術大学院大学特任助教)、東京理科大学先進工学部の中野渡淳助教、北陸先端科学技術大学院大学物質化学フロンティア研究領域の谷池俊明教授らの共同研究チームは、多様な酸化物光触媒について、性能を左右する「ボトルネック」を効率的に見分ける新たな速度論的評価手法を開発しました。光触媒は、太陽光を利用して化学反応を起こす材料であり、水素製造や二酸化炭素の資源化、環境浄化などへの応用が期待されています。しかし、光吸収や熱力学的条件を満たす材料であっても、必ずしも高い性能を示すとは限らず、どの過程を改善すべきかを多数の材料について効率的に診断することは困難でした。 研究チームは、材料データベースから選出した多数の酸化物材料を合成し、ハイスループット評価によって光触媒活性を比較しました。さらに、光の強さと温度に対する応答を組み合わせ、材料表面への電荷供給と、表面での界面電荷移動のどちらが性能を制限しているのかを判別する手法を構築しました。その結果、見かけの活性が同程度の材料であっても、「表面へ十分な電荷を供給できない材料」と「供給された電荷を表面反応に十分利用できない材料」が存在することを明らかにしました。 さらに、こうした速度論的特性が、材料を構成する元素によって系統的に変化することを見いだしました。マンガン(Mn)やバナジウム(V)などの遷移金属を含む材料は高い電荷供給能力を示した一方、スカンジウム(Sc)やイットリウム(Y)を含む材料では、電荷供給が性能の制限要因になりやすいことが分かりました。本成果は、高活性材料を見つけるだけでなく、材料ごとに「電荷供給」と「界面電荷移動」のどちらを改善すべきかを示す、新たな光触媒設計指針となるものです。本研究成果は2026年7月21日に学術誌「Journal of Materials Chemistry A」にオンライン掲載されました。 |
1.研究の背景
光触媒は、光のエネルギーを利用して化学反応を進める材料であり、水素製造や二酸化炭素の資源化、環境浄化などへの応用が期待されています。一般に光触媒の候補は、「光を吸収できること」と「目的の反応を熱力学的に進められること」を手がかりに選ばれてきました。しかし、これらの条件を満たしていても、高い性能を示すとは限りません。
光を受けた材料の内部では、電荷が生成・分離され、材料表面まで移動し、最後に反応物へ受け渡されます。この一連の過程のうち、ある材料では表面への電荷供給が不足し、別の材料では表面での電荷移動が遅いなど、性能を制限する「ボトルネック」は材料ごとに異なります。
高性能な光触媒を効率よく開発するには、活性の高い材料を見つけるだけでなく、どの過程が性能を制限しているかを把握することが重要です。しかし、従来の速度論的解析は複雑で時間がかかるため、多数の材料を対象とする大規模探索への適用は困難でした。そのため、大規模探索と両立し、材料ごとの改善方針まで示せる新たな診断方法が求められていました。
2.研究の詳細
本研究では、大規模材料探索と、大規模に展開可能な速度論解析を組み合わせることで、多様な光触媒材料の性能を支配する要因を明らかにしました。まず、材料データベースMaterials Project*1に登録された82,202種類の酸素含有材料から、安全性、合成可能性、光吸収特性などを基準として1,319種類まで候補を絞り込みました。さらに、その中からランダムに選んだ100組成を、異なる温度条件(400℃と1,000℃)で合成し、計200試料を作製しました。研究グループがこれまでに開発した96ウェルマイクロプレート*2を用いるハイスループット評価系により、メチレンブルー分解反応を指標として一斉評価しました。その結果、明確な活性を示す材料は探索空間のごく一部に限られ、特に銀(Ag)やマンガン(Mn)を含む酸化物に有望な材料が多いことを見いだしました。一方、従来有望と考えられていた元素を含む材料でも高い活性を示さない例があり、既存の経験則だけでは十分な材料設計指針にならないことも明らかになりました。
次に、有望な材料について反応温度と光の強さを系統的に変化させて測定し、各材料が持つ二つの能力を評価しました。一つは、光によって生じた電荷を材料表面まで供給する能力であり、もう一つは、その電荷を表面で反応物へ受け渡す能力です。光の強さは表面へ供給される電荷量に、温度は主に表面での電荷移動に影響するため、両者への応答を組み合わせることで、どちらの過程が性能を制限しているかを判別できます。研究チームは、この応答を理論的に整理するとともに、「温度依存性が現れ始める光強度(OITD:Onset Intensity for Temperature Dependence)*3」という新たな指標を提案しました。OITDを用いて解析した結果、見かけの反応速度が同程度の材料であっても、性能を制限している過程は材料ごとに異なることを明らかにしました。
さらに、電荷供給と界面電荷移動のバランスは、材料を構成する元素によって系統的に変化することも分かりました。銀と、マンガン(Mn)やバナジウム(V)などの遷移金属を組み合わせた材料では、電荷を表面へ供給する能力が高い傾向が見られました。特に、本研究で最も高い性能を示したMnAgO2は、弱い光でも温度依存性を示し、優れた電荷供給能力を持つことが分かりました。一方、銀と、スカンジウム(Sc)やイットリウム(Y)などの第3族元素を組み合わせた材料では、強い光を照射しても温度依存性がほとんど現れず、電荷供給が性能を制限していることが示されました。表面での界面電荷移動は助触媒の担持や表面修飾によって改善できる場合が多い一方、材料が本質的に持つ電荷供給能力を高める手段は限られています。本成果により、高性能材料を探索するだけでなく、材料ごとに必要な改良の方向性を判断できる設計指針が得られました。

| 図1. 大規模探索と速度論解析を組み合わせた光触媒材料の評価フロー Materials Projectに登録された82,202種類の酸素含有材料から候補を絞り込み、100組成を2種類の温度で合成して計200試料を一斉評価した。さらに、有望材料について温度と光強度を変えて測定し、電荷供給と界面電荷移動のどちらが光触媒性能を制限しているかを解析した。 |
3.今後の期待
今回の成果は、多数の候補材料の中から高性能な光触媒を効率よく探索するだけでなく、材料ごとに「電荷供給」と「界面電荷移動」のどちらを改善すべきかを判断できる、新たな設計指針を提供するものです。
特に、光触媒を利用した水素製造や二酸化炭素資源化、環境浄化技術の高度化に向けて、材料開発の試行錯誤を減らし、開発効率を高めることが期待されます。今後は、本研究で開発した評価手法をさらに多様な材料群や反応系へ展開し、次世代の高性能光触媒の開発につなげる予定です。
【論文情報】
| 論文タイトル | Element-dependent charge-supply and charge-transfer balance in oxide photocatalysts identified by high-throughput kinetic screening |
| 日本語タイトル | ハイスループット速度論解析による酸化物光触媒の電荷供給・電荷移動特性の解明 |
| 著者 | Yohei Cho, Kyo Yanagiyama, Emi Sawade, Sunao Nakanowatari, Toru Wada, Toshiaki Taniike |
| 掲載誌 | Journal of Materials Chemistry A(2026) |
| 掲載日 | 2026年7月21日(オンライン公開) |
| DOI | 10.1039/d6ta04494h |
【研究資金】
本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業「特別研究員奨励費(課題番号:24KJ1201)」「若手研究(課題番号:26K17938)」、リバネス研究費京セラ賞、公益財団法人ヒロセ財団研究助成、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業(課題番号:JPMJMI25G1)の支援を受けて実施されました。
【用語説明】
第一原理計算に基づく材料物性データベース。材料の組成、結晶構造、電子状態、熱力学的安定性などを検索でき、材料探索の出発点として広く利用されている。
96個の小さな容器(ウェル)が並んだ実験用プレート。多数の試料を同時に測定・評価できるため、材料探索の効率化に役立つ。
光を徐々に強くした際に、反応速度に温度の影響が現れ始める光強度を表す指標。値が低いほど、表面反応に必要な電荷を供給する能力が高いことを示す。
令和8年8月18日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2026/08/18-1.html令和7年度(第23回)「学生ビジネスプランコンテスト」において本学学生2名が受賞
一般財団法人学生サポートセンター主催の令和7年度(第23回)「学生ビジネスプランコンテスト」において、本学の学生2名が受賞しました。加藤裕介さん(博士後期課程3年、物質化学フロンティア研究領域、松村研究室)が優秀賞を、大平尚輝さん(博士後期課程3年、社会システムマネジメント研究領域、郷右近研究室)がアイデア賞をそれぞれ受賞しています。
なお、表彰式は令和8年2月9日、新宿NSビル(東京都新宿区)にて執り行われました。
同コンテストは、全国の大学・大学院、専門学校の学生から寄せられたビジネスプランを対象に、書類審査によりアイデアの独創性や新規性、実現性などを評価するものです。学生らしい自由な発想で創造性や意欲にあふれ、自ら考え行動できる学生の育成を目的として開催されています。
※参考:学生サポートセンター
令和7年度(第23回)「学生ビジネスプランコンテスト」受賞者一覧
【優秀賞 加藤裕介さん】
■プラン名
豚凍結精液の販売事業
■提案者
加藤裕介
■受賞対象となったビジネスプランの内容
養豚における人工授精において、既存の希釈精液(生精液)の優れた代替となり得る凍結精液の販売事業を提案しました。現実的な市場性やマーケティング戦略と共に、本事業の社会的意義をアピールしました。
■受賞にあたって一言
このたびは優秀賞を頂き、大変光栄に存じます。本事業の共同研究者であり、指導教員である松村和明教授に、この場を借りて心より御礼申し上げます。また、本事業における研究開発およびビジネス可能性の評価には、TeSH GAPファンドプログラムよりご支援をいただいております。内田史彦特任教授をはじめTeSHプログラムに携わられている皆様と、日頃より多くのご助言をいただいている北陸RDXの水野惠介様に、深く感謝申し上げます。
表彰式当日は、受賞者を代表し、本プランの発表の機会を頂戴しました。多くの方にご関心をお寄せいただき、大変励みになりました。この新たな繋がりを糧に、今後とも一層精進してまいります。
【アイデア賞 大平尚輝さん】
■プラン名
森林現場の業務効率化に特化したDXプラットフォーム
■提案者
大平尚輝、高橋隆造(東北大学)
■受賞対象となったビジネスプランの内容
地理空間データを活用した森林DXプラットフォームを開発しています。森林組合と森林所有者をつなぎ、業務効率化と収益改善を実現するとともに、土砂災害リスクの低減や脱炭素への貢献を通じて、持続可能な森林管理の基盤を築きます。
■受賞にあたって一言
このたび、学生ビジネスプランコンテストにおいてアイデア賞を受賞することができ、大変光栄に存じます。発表にあたり、日頃よりご指導を賜りました先生方、そして審査に向けて繰り返しブラッシュアップの機会を提供してくださった関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。今回の受賞を励みに、今後一層、研究および事業の推進に努めてまいります。


令和8年7月10日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2026/07/10-1.html触媒と反応を同時に探す新手法「反応探索」を実証 ―メタン転換で100万点規模のデータから未知反応の芽を発見―
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北陸先端科学技術大学院大学 科学技術振興機構(JST) |
触媒と反応を同時に探す新手法「反応探索」を実証
―メタン転換で100万点規模のデータから未知反応の芽を発見―
ポイント
- 触媒と反応を同時に探し、未知の触媒プロセスを発見する新しい研究方法を実証
- メタン・酸素・二酸化炭素からなる広大な反応空間を探索し、生成物を限定しない質量分析により100万点規模の反応データを取得
- 従来の探索では到達困難だった高いメタン転換収率を実現し、想定外の生成物へつながる未知反応の芽も発見
| 北陸先端科学技術大学院大学 物質化学フロンティア研究領域の谷池 俊明 教授、CHAMMINGKWAN, Patchanee 特任准教授らは、物質・材料研究機構 マテリアル基盤研究センター 田村 亮 グループリーダーらと共同で、触媒と反応を同時に探索する新しい研究方法「反応探索」(注1)を、メタン転換を対象として初めて実証しました。 触媒は、肥料、燃料、プラスチック、医薬品などの製造を支える基盤材料であり、カーボンニュートラル社会の実現には触媒技術の革新が不可欠です。しかし、触媒反応では、触媒の材料設計と反応条件が複雑に関係するため、現在でも実験的な試行錯誤に大きく依存しています。従来は、既知の反応に対して触媒を改良する、あるいは既知の触媒に対して反応条件を最適化することが中心でしたが、革新的な触媒プロセスの多くは、触媒と反応の思いがけない組み合わせから生まれてきました。 本研究では、メタン・酸素・二酸化炭素からなる広い反応空間(注2)を対象に、200種類の触媒と50種類の反応条件をハイスループット実験(注3)で評価しました。さらに、生成物を限定しない質量分析によって100万点規模の反応データを取得しました。その結果、触媒ごとに高い性能を発揮する原料組成が大きく異なることが明らかとなり、ある条件では低性能に見える触媒でも、別の条件では優れた性能を示し得ることが分かりました。また、既知反応の条件に限定した場合を上回るメタン転換収率が得られるとともに、従来のように目的生成物を定めた探索では見つけられない未知反応の芽も見出しました。 本成果は、既知の反応を改良するだけでなく、広大な探索空間から未知の価値を持つ触媒プロセスを発見する「反応探索基盤」の有効性を示すものです。今後は、探索する基質、触媒、反応条件の範囲を拡張するとともに、ハイスループット実験と機械学習を組み合わせることで、カーボンニュートラル社会の実現に必要なさまざまな触媒プロセスの開拓へ展開できると期待されます。 本研究成果は、2026年7月8日(ワシントンD.C.時間)に米国の科学誌「ACS Catalysis」のオンライン版で公開されました。 本研究は、科学技術振興機構(JST)「未来社会創造事業 探索加速型 本格研究(No. JPMJMI25G1)」の支援を受けたものです。 |
【研究の背景と経緯】
触媒は、化学プロセスの約80%で利用され、肥料、燃料、プラスチック、医薬品などを通して、間接的にGDPの約35%に影響するとされる、まさに人類の物質文明を支える材料です。私たちの身の回りにある多くの物質は、原料を目的の化合物へと変換する化学プロセスによって作られており、その多くで触媒が重要な役割を担っています。カーボンニュートラル社会の実現には、エネルギー利用の変革だけでなく、こうした物質生産の基盤である触媒技術の革新が求められています。
しかし、触媒は極めて複雑であり、理論だけで最適設計することは困難です。触媒の組成や構造といった材料設計に加え、原料の組み合わせ、混合比、温度といった条件によって、生成物や性能が大きく変化します。このため、触媒開発は現在でも、実験的な試行錯誤に大きく依存しています。特に従来の触媒研究では、既知の反応に対する触媒開発や、既知の触媒に対する反応条件の最適化が中心でした。
一方で、革新的な触媒プロセスの多くは、触媒と反応の新たな組み合わせを"偶発的に"見出すことで実現されてきました。このことは、触媒と反応を同時に探索する必要性を示していますが、その組み合わせは膨大であり、人の経験や直感だけでは効率的な探索は困難です。
そこで本研究グループは、科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業において、広大な探索空間の中から未知の触媒と反応を同時に発見する「反応探索基盤」の開発に挑んでいます。これは、「反応を決めて触媒を探す」研究から、「触媒と反応を同時に探す」研究への転換であり、既知の価値を最適化するだけでなく、未知の価値を発見するための新しい考え方です。本研究では、大量の触媒を合成し評価するハイスループット実験を使って、触媒と反応の同時探索を初めて実証することに成功しました。
【研究の内容】
今回、本研究グループは、メタンを特定の生成物に転換するのではなく、メタンを有用な化合物へ転換する広い反応空間として捉え、触媒と反応を同時に探索することを試みました。具体的には、メタン・酸素・二酸化炭素からなるCH4-O2-CO2三元系を対象としました(図1)。この反応空間には、例えばメタン酸化カップリング、部分酸化、ドライリフォーミング、非酸化的分解など、既に知られている複数のメタン転換反応が含まれています。従来の研究では、これらの反応ごとに原料比や目的生成物を定め、その条件で触媒を評価することが一般的でした。これに対して本研究では、既知反応を広大な反応空間の一部として捉え、化学量論組成に制限されない広い条件範囲を、触媒とともに探索しました。
本研究では、研究グループがこれまでに構築してきたハイスループット実験基盤を用いて、単一酸化物、複合酸化物、担持触媒などからなる200種類の触媒ライブラリーを評価しました。各触媒について、25種類のCH4/O2/CO2混合比を、600℃および800℃の2つの温度で調べました。さらに、生成物をC2化合物や水素などに限定せず、質量分析により質量数1~100の範囲を網羅的に測定しました。これにより、200種類の触媒、50種類の反応条件、100種類の質量シグナルからなる、合計100万点規模の反応データを取得しました。
その結果、触媒ごとに高い性能を発揮するCH4/O2/CO2比が大きく異なることが分かりました。すなわち、ある一点の原料組成で「低性能」と判断される触媒でも、別の原料組成では優れた性能を発揮し得ることが明らかになりました。これは、触媒を正しく評価するには、触媒と反応条件を切り離さず、同時に探索する必要があることを示しています。
実際に、エチレン、プロピレンなどのC2-C3炭化水素の生成では、既知反応の化学量論点(注4)に近い条件に限定した場合の最大収率が約27%であったのに対し、化学量論点に限定せず広い反応空間を探索することで、30%を超える収率が得られました(図2)。この条件では選択率も80%を超えており、メタン酸化カップリングの歴史において重要な目安とされてきた高収率・高選択率の領域に到達しました。また、水素生成においても、既知反応の化学量論点に近い条件では最大収率が約85%であったのに対し、広い反応空間を探索することで、100%に近い高収率が得られました。
さらに、生成物を指定しない網羅的な質量分析により、エチレン、プロピレン、水素といった主要生成物に加えて、1-ブテン、1,3-ブタジエン、ベンゼンなど、従来のメタン転換反応では主な標的とされてこなかった生成物も検出されました(図2)。特に、メタンからブタジエンのようなC4炭化水素を作る反応は、収率としてはまだ未成熟であるものの、従来のように目的生成物を決めた探索では見逃されやすい未知反応の芽を示すものです。
以上の結果は、化学反応だけを探しても適切な触媒がなければ反応は進まず、触媒だけを探しても適切な反応条件がなければ性能は発揮されないことを示しています。すなわち、革新的な触媒プロセスを発見するためには、触媒と反応を同時に探すことが重要です。本研究は、メタン転換のような高難度反応において、既知反応の収率を高めるだけでなく、新しい転換ルートを見出し得ることを示し、反応探索基盤の有効性を初めて実証しました。

| 図1 CH4-O2-CO2三元系における反応探索の概念。既知のメタン転換反応は、メタン酸化カップリング(OCM)、部分酸化(POM)、ドライリフォーミング(DRM)、非酸化的分解(TDM)などの化学量論条件に対応します。本研究では、これらの既知反応点に限定せず、CH4、O2、CO2の組成を広く変化させた反応空間を探索しました。 |

| 図2 反応探索により見出された高収率条件と想定外の生成物。CH4-O2-CO2からなる広い反応空間を調べることで、既知反応の条件周辺だけでは見えにくい高いC2収率の領域が見つかりました。さらに、生成物をあらかじめ決めずに質量分析を行うことで、通常の探索では見逃されやすい想定外の生成物と未知反応の芽が示されました。 |
【今後の展開】
本研究は、触媒と反応を同時に探索する「反応探索」の初めての実証です。一方で、今回探索した範囲は、メタン、酸素、二酸化炭素の3成分からなる反応空間、200種類の触媒、50種類の反応条件に限られています。すなわち、広大な反応探索空間全体から見れば、今回の実証はまだごく一部を切り出したものです。
それにもかかわらず、本研究では、既知反応の化学量論点に限定した評価では見落とされる高性能な触媒・反応条件の組み合わせや、従来の目的生成物を決めた探索では見つかりにくい未知反応の芽を見出すことができました。これは、反応探索が、既知の触媒反応を改良するだけでなく、未知の価値を持つ触媒プロセスを発見するための有力な方法であることを示しています。
今後は、探索する基質、触媒、反応条件の範囲を大きく拡張するとともに、ハイスループット実験によるデータ取得のさらなる高速化と、機械学習を用いた効率的・自律的な探索を組み合わせていきます。これにより、研究者の経験や直感だけでは当たりを付けることが難しい広大な探索空間から、革新的な触媒と反応の組み合わせを効率的に発見する反応探索基盤の構築を目指します。
本研究で得られた成果は、メタン転換に限らず、カーボンニュートラル社会の実現に必要なさまざまな触媒プロセスの開拓へ展開できると期待されます。
<参考図>

| 触媒と反応の同時探索「反応探索」: 反応探索とは、触媒だけ、あるいは反応条件だけを個別に最適化するのではなく、触媒、原料組成、温度、生成物を含む広い探索空間から、有用な触媒プロセスを見出す研究方法です。本研究では、200種類の触媒ライブラリーを、メタン・酸素・二酸化炭素からなる広い反応空間で評価し、生成物をあらかじめ限定しない広域質量分析により、100万点規模の反応データを取得しました。これにより、既知反応の条件にとどまらない高性能領域や、想定外の生成物につながる未知反応の芽を見出しました。 |
【用語解説】
本研究グループがJST未来社会創造事業の中で提唱し、発展させている触媒と反応を同時に探索する独自の研究アプローチ。従来の触媒研究では、既知の反応に対する触媒改良や、既知の触媒に対する反応条件の最適化が中心であった。一方で、触媒技術の大きな革新の多くは、試行錯誤の中で、触媒と反応を偶発的に同時に見出すことで生まれてきた。反応探索とは、この同時発見を偶然に任せるのではなく、触媒と反応を同時に探すことで、未知の価値を持つ触媒プロセスを見出す研究方法である。
本研究では、メタン・酸素・二酸化炭素からなるCH4-O2-CO2三元系を指す。この中には、メタン酸化カップリング(OCM)、部分酸化(POM)、ドライリフォーミング(DRM)、非酸化的分解(TDM)などの既知反応が含まれる。本研究では、既知反応ごとに決まった原料比の周辺だけでなく、CH4、O2、CO2の混合比を広く変化させて、未知の反応や高性能な反応条件を探索した。
自動化・並列化・効率化などの手段に基づき単位時間当たりの実験数を飛躍的に増大させた実験を指す。本研究では、多数の触媒を並列に合成し、さまざまな原料組成や温度において、各触媒がどのような生成物を与えるかを自動的に評価した。
反応式から決まる、原料が過不足なく反応する混合比を指す。本研究のCH4-O2-CO2三元組成図では、その混合比は一つの点として表される。例えば、メタンのドライリフォーミング(DRM)では、CH4 + CO2 → 2CO + 2H2 から、CH4/CO2 = 1 が化学量論点に相当する。
【論文情報】
| 雑誌名 | ACS Catalysis |
| 論文タイトル | "Catalyst and Catalysis Co-exploration in Methane Utilization" (メタン転換における触媒と反応の同時探索) |
| 論文著者 | Patchanee Chammingkwan*, Ranjithkumar P. Manchan, Tomoya Nagai, Poulami Mukherjee, Taiyo Kaneuchi, Ryo Tamura, Toshiaki Taniike* *責任著者 |
| DOI | https://doi.org/10.1021/acscatal.6c03318 |
令和8年7月9日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2026/07/09-1.html物質化学フロンティア研究領域の松見紀佳教授がSpringer Nature「Editorial Contribution Award」を受賞
物質化学フロンティア研究領域の松見紀佳教授 が、Springer Natureが刊行する学術誌 『Polymer Bulletin』の編集長(Editor-in-Chief)としての貢献が高く評価され、Springer Nature Editor of Distinction Awards 2026の「Editorial Contribution Award」を受賞しました。
同賞は、投稿論文の綿密な評価および査読プロセスの厳格な管理を通じて、掲載論文の科学的正確性の維持に貢献した編集者に授与される賞です。
■受賞にあたって一言
Polymer Bulletin誌は日本の高分子化学の黎明期における意義深い背景を有したジャーナルです。故三枝武夫先生(京都大学名誉教授)は、立体特異性Ziegler-Natta重合の先駆けを目指してNatta(後にノーベル化学賞を受賞)と熾烈な研究競争を展開されていました。しかし、当時は京都からドイツへ船便で改訂稿を送付するために片道に一カ月以上を要する地理的事情のなか、僅かの差でNattaが本研究において先駆ける結果となりました。以降、三枝先生は、日本人がリーダーシップを発揮する欧州ジャーナルの創刊が急務とお考えになり、Polymer Bulletin誌を創刊し、自ら編集長となられました。三枝先生の在りし日のご講演で創刊のいきさつを拝聴し、フロンティア精神に深い感銘を覚えました。その後同ジャーナルは中條善樹先生(京都大学名誉教授)がEditor-in-Chiefを引き継がれ、三枝先生が灯された灯を守りつつ発展させてこられました。その後、中條先生のご退任を機に、同ジャーナルのCo-Editor-in-Chiefを拝命して現在に至っています。時代の移ろいと共にジャーナルの役割も変化しつつありますが、最新のインパクトファクターは4.2(2025)であり、今日もなお成長を続けているジャーナルです。今回の受賞を励みに、今後も創刊の精神を忘れず、日本の優秀な若手研究者の方々に選んでいただけるジャーナルであるよう微力を尽くしたいと考えています。
令和8年6月18日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2026/06/18-1.html





