研究活動の検索
研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。物質化学領域のBADAM講師が田中貴金属記念財団 萌芽賞を受賞

物質化学領域のBADAM, Rajashekar講師(松見研究室)が一般財団法人田中貴金属記念財団 萌芽賞を受賞しました。
田中貴金属記念財団は、貴金属に関する研究への助成を行い、貴金属の新分野を開拓醸成し、学術、技術ならびに社会経済の発展に寄与することを目的としています。
本助成金制度は、「貴金属が拓く新しい世界」へのさまざまなチャレンジを支援するため、1999年度から毎年実施されています。第22回目となる今回は、貴金属が貢献できる新しい技術や研究・開発に対して、あらゆる分野から研究を募集し、その結果、合計171件の応募があり、この中から合計26件の研究に対し、総額1,610万円の研究助成金を授与しています。
■受賞年月日
令和3年3月31日
■研究題目
水分解に適した効率的酸素発生触媒活性を有する強い金属―基盤相互作用を伴うIrO2系有機・無機ハイブリッド触媒
■受賞対象となった研究の内容
Dr Rajashekar Badam, has been working on various energy materials especially electrocatalysts for oxygen redox reactions for fuel cell and electrolyser applications to name a few. His passion to mitigate environmental issues lead to the research in green hydrogen production using water electrolysis. Water electrolysis is one of the cleanest ways to produce hydrogen. Oxygen evolution reaction (OER) at anode being kinetically and thermodynamically more demanding, need an efficient catalyst. IrO2 is the best-known catalyst which is stable in acidic medium but with high overpotential (~330 mV). Changing the morphology and electronic structure of IrO2 by alloying with other metals was found to reduce the overpotential but poor stability due to agglomeration of nanoparticles and leaching of alloying metal are the key problems to be answered. In this regard, they are working on a novel strategy of anchoring IrO2 nanopartlcles to electrochemically stable conducting polymer with coordination sites. The strong metal substrate interaction between IrO2 nanoparticles and high heteroatom content in the polymer lead to high durability and reduced overpotential making water electrolyser a viable method for green hydrogen production.
ラージャシェーカル バダム博士は様々なエネルギー関連材料、とりわけ電気化学触媒(燃料電池用の酸素還元触媒や水分解反応触媒)に注力した研究を行っています。グリーンな水分解反応など、環境問題の解決を指向した研究を進めています。水分解反応は水素を得るための最もクリーンな反応であり、アノード電極側での酸素発生反応が速度論的にも熱力学的にも技術課題になっています。IrO2は酸性条件でも安定ですが、高い過電圧を有しています。IrO2を他の金属と組み合わせることでモルフォロジーや電子構造を改変でき、過電圧を低下させることができますが、同時にナノ粒子の凝集や、合金触媒からの脱離が問題となります。この点に関して、彼らはIrO2を電気化学的に安定な導電性高分子中の配位子に配位させることに取り組んでいます。強い金属―基板相互作用がIrO2と高ヘテロ元素濃度を有するポリマー間で起こることは高い触媒の安定性と過電圧の低下につながり、水分解反応をグリーンな水素製造法として実現可能なものにすることにつながると期待しています。
■受賞にあたって一言
I would like to thank Tanaka Kikinzoku Memorial Foundation and the selection committee for bestowing me with this prestigious award. I would like to thank Professor Matsumi for all the guidance, Matsumi lab members and my family for the support. I take this opportunity to dedicate this award to the almighty God.
令和3年5月25日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2021/05/25-1.html新しい固体触媒プロセスの構築による資源・エネルギー問題の解決に挑む!


新しい固体触媒プロセスの構築による
資源・エネルギー問題の解決に挑む!
触媒・資源変換プロセス研究室
Laboratory on Catalyst/Resource Chemical Process
准教授:西村 俊(NISHIMURA Shun)
E-mail:
[研究分野]
触媒化学、固体触媒、合金触媒、バイオマス変換
[キーワード]
資源・エネルギーの有効利用技術、金属ナノ粒子触媒、固体酸塩基触媒、新触媒の創成、触媒作用機構の解明
研究を始めるのに必要な知識・能力
基礎的な計算・データ処理能力と仲間と安全に研究を進められる方であれば、バックグラウンドを問わずに歓迎します。物理化学、有機化学、無機化学、分析化学、触媒化学などの基礎・経験があると、よりスムーズに研究を開始できます。失敗にひるまずに挑戦する「忍耐力」や「好奇心・探究心」がより自発的に研究を進める上で役に立ちます。
この研究で身につく能力
新しい固体触媒プロセスの開発は、触媒設計→触媒調製・条件の最適化→触媒活性評価・反応条件の最適化→触媒のキャラクタリゼーション→触媒作用機構の提案→検証・再考といった多くの研究段階からなっています。また、触媒作用に関連する因子は一つであるとは限りません。従って、触媒開発プロセスを経験することで、様々な分析・評価手法の技術習得、多角的に実験データを整理・解析・統合する力を身に付けることができます。また、英語の先行研究を読み自らの研究へフィードバックする力、自分の結果を他人へより分かりやすく伝えるためのプレゼンテーション力を、日常の研究室ゼミや学会発表等を通じて向上できます。
【就職先企業・職種】 化成品・ポリマー製造や自動車触媒製造を主とした化学・材料メーカーなど。
研究内容
触媒は様々な物質変換・合成プロセスに欠かすことができない材料で、身近な生活を力強く下支えしています。そのため、高機能な触媒プロセスの開発は、日常の生活様式の劇的な改善やより低環境負荷なスタイルへと大きく変えるインパクトを持っています。例えば、空気中の窒素の人工的な固定化を実現したアンモニア合成触媒の実現(1918年ノーベル化学賞)は、窒素を含む化学品合成の発展に繋がり、その後の安定的な食料生産による人口増加や火薬製造による工業の発展へと繋がりました。
当研究室では、「従来の在来型化石資源の利用技術で培われた触媒プロセス技術を生かし、より高効率な触媒を設計するための指針の提案」や、「固体触媒を用いた高効率な次世代バイオマス資源変換プロセスの構築」から、持続可能・低環境負荷な社会形成に貢献できる触媒・資源変換プロセス技術の構築を目指しています。
・金属担持触媒の高機能化に向けた触媒設計と作用機構解明
金属活性点を固体表面に固定化した金属担持触媒は、主に1. 金属活性中心の電子状態や形状、2. 金属活性点の周囲環境、3. 担体の性質によって、その触媒作用が大きく異なります。それぞれの因子を系統的に制御し、対象とする触媒反応への性能を評価することで、求める触媒作用に対して選択的に欲しい性能を付与できる触媒調製指針の策定を目指します。例えば、異種金属を合金化させた活性サイトの構築による高活性化、保護配位剤を作用させることによる活性点周囲の環境制御による高活性・高選択性の発現、特異な構造を有する担体合成による超高活性化を実現しています。
・高効率なバイオマス資源変換を実現する固体触媒プロセス開発
バイオマス資源は再生可能でカーボンニュートラルであることから、持続可能な次世代資源としての活用が期待されています。しかし、低いLCA(ライフサイクル・アセスメント)が課題です。固体触媒を用いた高効率プロセスの実現によるバイオマス資源利用の拡大を目指しています。例えば、常圧水素によるバイオ燃料製造プロセス、非可食性グルコサミン類からの高品位化成品合成プロセス、高活性な酸- 塩基反応プロセス、バイオマス由来有機酸・脂肪酸の高効率な水素化転換を実現しています。また、バイオマス資源の連続的なフロー変換プロセスの展開に必要な課題抽出とその改善にも取り組んでいます。
主な研究業績
- S. D. Le, S. Nishimura: Selective hydrogenation of succinic acid to gamma-butyrolactone with PVP-capped CuPd catalysts. Catal. Sci. Technol. 12 (2022) 1060.
- K. Anjali, S. Nishimura: Efficient Conversion of Furfural to Succinic Acid using Cobalt-Porphyrin based Catalysts and Molecular Oxygen. J. Catal. 428 (2023) 115182
- X. Li, S. Nishimura: Synthesis of 5-Hydroxymethy-2-furfurylamine via Reductive Amination of 5-Hydroxymethyl-2-furaldehyde with Supported Ni-Co Bimetallic catalysts. Catal. Lett. 154 (2024) 237.
使用装置
触媒活性評価(GC, HPLC, GC-TOFMS, FTICR-MS, 液体 NMR)
触媒構造評価(XRD, ガス吸着 / 脱着 , SEM/TEM, XPS, 固体 NMR, FT-IR, TPR/TPD, パルス分析など)
状況に応じて、外部の共同利用研究施設(KEK-PF, SPring-8, SAGA- LS など)での XAFS 測定も行います。
研究室の指導方針
当研究室では、月1~2回の研究室ゼミ(研究進捗報告・ディスカッション)を行います。コアタイムは設けませんが、社会人生活に向け て規則正しい生活リズムを作って実験・大学院生活を送ってください。本学には様々な分析機器が共通設備として整備されており、 装置によっては専門職員からのサポートも得られる充実した環境が整っています。在籍中にこのサポート・分析体制を存分に活か し、自らのスキルアップを実現してほしいと思います。在籍中に得られた成果は、国内外での学会等で対外発表を行うことを推奨 します。また、修了生1人に対して1報以上の学術論文・国際会議プロシーディングス等を公開し、各学生の成果を残せるように努めています。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/~s_nishim/index.html
先端材料でエネルギー社会をリードする


先端材料でエネルギー社会をリードする
エネルギーナノ材料研究室 Laboratory on Energy Nanomaterials
教授:長尾 祐樹(NAGAO Yuki)
E-mail:
[研究分野]
プロトニクス(高分子、無機化学、錯体化学、物理化学)
[キーワード]
水素社会、燃料電池、蓄電池、エネルギー関連材料
研究を始めるのに必要な知識・能力
多様なバックグラウンドを歓迎します。今までに修めた学問を大事にしながら、新しいことに取り組む意欲を持ち続ける力が求められます。
この研究で身につく能力
週2回のゼミ(英語で行います、具体的には研究相談と文献紹介)を通して、教員や先輩の助けを借りながら、自ら調べ、考える力を身に着けていきます。英語の会話スキルの向上が期待できます。実践の場として、高分子化学、表面化学、電気化学、錯体化学等に関連した研究を行うことで次のスキルが身に付きます。1.問題発見と解決方法。2.材料合成や各種分析方法の習得。3.論理的思考に基づいたデータの解釈方法と性格やセンスに帰着させない基本的なプレゼンテーション技術。
【就職先企業・職種】 電力関連、エネルギー関連、材料メーカー、精密機器関連など(企業名はwebに記載)
研究内容
資源の少ない日本が持続的な発展をするためには、多様なエネルギー資源を確保することが喫緊の課題です。ありふれた水から水素や酸素を作り出し、二酸化炭素を資源と見立てて炭素材料を作り出すことは人類の夢です。世界で急速に進む脱炭素社会には水素社会が必要です。我々は水素社会を支える燃料電池、蓄電池、センサーやプロトンスイッチなどに応用可能なイオン伝導性高分子材料、無機材料、有機無機ハイブリッド材料の研究を行っています。我々と共に水素社会に貢献しましょう。
研究テーマ例
- 燃料電池、リチウムイオン電池の性能向上の研究
電池反応場の界面近傍の構造とイオン輸送を調べる基礎研究と、反応界面をデザインして電池の性能を向上させる応用研究をしています。 - 充電可能な水素電池の開発
プロトンを使った次世代蓄電池の開発をしています。 - イオン輸送を利用した触力覚センサの研究
五感やロボットへの応用研究として、ヒトの皮膚のように力にイオン輸送が応答する高分子組織構造を研究しています。 - 外場印加によるイオンスイッチの研究
青木助教が主体的に取り組んでいる、光などの外場によってイオン伝導のオン・オフを制御する研究です。
主な研究業績
- T.Honbo, Y. Ono, K. Suetsugu, M. Hara, A. Taborosi, K. Aoki, S. Nagano, M. Koyama, Y. Nagao, Effects of Alkyl Side Chain Length on the Structural Organization and Proton Conductivity of Sulfonated Polyimide Thin Films, ACS Appl. Polym. Mater., 6, 13217 - 13227 (2024).
- Y. Nagao, Proton-Conducting Polymers: Key to Next-Generation Fuel Cells, Electrolyzers, Batteries, Actuators, and Sensors (Review), ChemElectroChem, 11, e202300846 (2024).
- Y. Nagao, Advancing Sustainable Energy: Structurally Organized Proton and Hydroxide Ion-Conductive Polymers (Review), Curr. Opin. Electrochem., 44, 101464 (2024).
使用装置
材料分析装置 (IR, UV-Vis, NMR, GPC, XRD, TG-DTA)
電気化学装置(LCR, CV, in situ QCM, fuel cell, battery test system)
表面分析装置 (XPS, in situ GIXRS, XRR, white interference, AFM)
分子配向分析装置 (IR, pMAIRS, polarized microscope)
外部の放射光や中性子実験施設
研究室の指導方針
研究室への参加にあたり、平日は研究活動に専念し、セミナーへの出席をお願いします。フレキシブルですが、9時から17時の間でメリハリのある研究時間を推奨します。英語のセミナーや留学生との会話を通じ、英語力の向上を目指しましょう。研究テーマは指導教員との相談で決め、皆さんの研究への情熱を全力でサポートします。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/nagao-www/
原子スケールナノテクノロジーで、革新的エネルギー・環境デバイスを開拓!


原子スケールナノテクノロジーで、
革新的エネルギー・環境デバイスを開拓!
R7年10月以降に入学する学生の受け入れは行いません
水田研究室 MIZUTA Laboratory
教授:水田 博(MIZUTA Hiroshi)
E-mail:
[研究分野]
サイレントボイスセンシング、超高感度センサ、熱制御素子
[キーワード]
グラフェン、ナノ電子機械システム(NEMS)、雷センサ、においセンサ、熱整流デバイス、バレートロニクス、量子デバイス、極限構造作製、第一原理計算
研究を始めるのに必要な知識・能力
水田研究室では物性物理、電気・電子工学、機械工学、化学、コンピュータ、IoT/AIの融合領域研究を行っていますので、これらのどれか1つ(あるいは複数)の基礎を修得していることが必要です。さらに、その専門を広げて行く好奇心旺盛な人が適しています。
この研究で身につく能力
水田研究室では、グラフェンをはじめとする新奇な原子層材料をベースに、NEMS(ナノ電子機械システム)技術と1ナノメートル精度の超微細加工技術を駆使して、超高感度センサデバイス、超低消費電力スイッチ、熱整流素子、バレートロニクスデバイスなどを開発しています。これらの研究を通して、①電子線直接描画や最先端ヘリウムイオンビーム技術による極微デバイス作製技術、②環境制御型・高周波プローブステーションや希釈冷凍機などを用いた極限電気特性測定、③第一原理計算からデバイス・回路シミュレーションに至る設計・解析技術、などを幅広く修得することができます。また、欧州を中心に海外研究機関と緊密に連携し、学生・スタッフが頻繁に交流しているため、研究を進める中で自然に国際的コミュニケーションスキルとリーダーシップ能力を身につけていくことが可能です。
【就職先企業・職種】 ICT企業、製造業、国立研究開発法人
研究内容
水田研究室では、グラフェンや極薄シリコン膜をはじめとする新奇な原子層材料と、原子スケール精度の超微細加工技術を駆使して、超高感度センサ、超低消費電力NEMS(ナノ電子機械システム)スイッチ、バレートロニクス、熱フォノンエンジニアリングなどを開発し、グローバルな環境・エネルギー問題に貢献することを目指しています。
具体的には以下の4テーマを中心に研究を推進しています。

図1.

図2.

図3.
①サイレントボイスセンシングの研究
従来のセンサ技術では検出が難しい自然界や生体の様々な微小信号(サイレントボイス(声なき声))を検出する革新的センサ素子の研究を行っています。落雷の予測を可能とする大気中電界センサ(図1右)や、疾病の予兆検出を目的とした超低濃度の皮膚ガス(におい)センサ(図1左)など、素子の原理探索から試作、測定データ解析技術の研究、さらに実用化研究まで、産業界とも連携して精力的に推進しています。
②超低電圧動作グラフェンNEMSスイッチの研究
グラフェンやhBN膜など異種原子層材料をファンデルワールス積層させたNEMS素子を作製し、その電気・機械的な動作の解明と超低電圧・急峻動作スイッチ(図2)の研究を行っています。シリコンMOSFETの理論限界を超える急峻スイッチング特性と0.5V未満の超低電圧動作を実現しています。
③ナノスケール熱制御技術の研究
最先端技術ヘリウムイオンビームミリング技術を用いて宙吊りグラフェン上に直径10nm以下のナノ孔周期的構造を形成します。特に非対称構造における熱整流素子(図3右)の実現を目指しています。
④原子層材料によるバレートロニクスの研究
バレー自由度を新たな情報担体として利用するバレートロニクスは、従来のエレクトロニクスを超える将来の情報処理技術として期待されています。原子層材料を積層した様々な構造におけるベリー曲率発生(図3左)を理論と実験の両面から探求しています。
主な研究業績
- J. Sun, M. Muruganathan, and H. Mizuta, ‘ Room temperature detection of individual molecular physisorption using suspended bilayer graphene’, Science Advances vol.2, no.4, e1501518 (2016) DOI:10.1126/sciadv.1501518
- A. Kareekunnan, T. Agari, A. M. M. Hammam, T. Kudo, T. Maruyama, H. Mizuta, and M. Muruganathan, ‘Revisiting the Mechanism of Electric Field Sensing in Graphene Devices’, ACS Omega 6, 34086-34091 (2021) DOI: 10.1021/acsomega.1c05530
- F. Liu, M. Muruganathan, Y. Feng, S. Ogawa, Y. Morita, C. Liu, J. Guo, M. Schmidt and H. Mizuta, ‘Revisiting the Mechanism of Electric Field Sensing in Graphene Devices’, Nano Futures 5(4), 045002 (2021) DOI: https://doi10.1088/2399-1984/ac36b5
使用装置
電子線リソグラフィー、走査型電子顕微鏡、
電界電離ガスイオン源(GFIS)微細加工装置、ヘリウムイオン顕微鏡(産業技術総合研究所)
環境制御型高周波プローバー、マルチガス種対応プローバー、
第一原理・量子輸送シミュレータ
研究室の指導方針
最先端のナノテクノロジーを駆使して、現在のCMOS技術を越える‘More than Moore’ & ‘Beyond CMOS’世代のエマージングテクノロジ開拓を目指しています。「まだ世界で誰も実現したことのない機能のデバイスをこの手で初めて開発してみたい!」という意欲のあるあなた、ぜひ一緒に研究しましょう。また、欧州・アジアを中心に海外研究機関に滞在しての研究活動も積極的に推進していますので、国際的に活躍したい方も大歓迎です。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/mizuta-lab/
ヘテロ元素化学から未来エネルギーを考える


ヘテロ元素化学から未来エネルギーを考える
蓄電池・エネルギー材料化学研究室
Laboratory on Energy Storage Materials and Devices
教授:松見 紀佳(MATSUMI Noriyoshi)
E-mail:
[研究分野]
エネルギー材料の創出研究
[キーワード]
リチウムイオン2次電池、ナトリウムイオン2次電池、リチウム空気電池、スーパーキャパシター
研究を始めるのに必要な知識・能力
研究への意欲、知的好奇心、多少の失敗にひるまない楽観性、他のメンバーと協調的に研究を遂行できる適応性。また、以下は研究室に入る時点で必須ではありませんが、有機合成化学、高分子合成化学、電池関連化学、光化学などの経験や知識があればアドバンテージになります。
この研究で身につく能力
物質をデザインし、合成し、キャラクタライズする能力。実験データの意味を客観的に考察する能力。短期的、長期的に研究計画を立てる能力。報告書を作成したり、効果的にプレゼンテーションを行う能力、ディスカッション能力などがそれぞれ身につきます。さらには英語でコミュニケーションをとるための実践的能力を身につける場としても適しています。よりテクニカルな点では、嫌気下で様々な物質を有機合成し、NMR等で構造確認するスキル、イオン伝導性材料をインピーダンス測定などにより評価し、それらの電気化学的安定性を評価し、実際に電池を構築して充放電評価するスキルが身につくほか、光電気化学反応を電気化学的に評価するスキルを身につけることが出来ます。
【就職先企業・職種】 総合化学メーカー、自動車関連メーカー、繊維系メーカー、素材メーカー、機械系メーカーなど。
研究内容

高分子バインダーと活物質から成る
高性能電極材料のイメージ図
次世代用高性能蓄電池の創成研究
これまで、リチウムイオン二次電池用負極としては長きにわたりグラファイト負極が使用されてきました。現在、従来型のグラファイト負極よりも10倍以上の理論容量を有するシリコン負極の適用に関する研究が注目を集めています。しかし、シリコンは充放電中の体積膨張・収縮が大きく、粒子や界面の破壊や集電体からの活物質の剥離などの問題を引き起こし、問題が山積しています。本研究室では特殊構造高分子バインダーを適用することで、次世代用高容量電池の創成を目指しています。また、現存する多くの電池系は、性能が大幅に経年劣化することがユーザーレベルで広く認識されており、長期耐久性の課題解決も重要となっています。この点においても、分子レベルでの高機能バインダーの設計を行っています。さらに、シリコン負極型リチウムイオン二次電池と同様に、高容量の革新型電池として期待されている蓄電池系として、リチウム―空気電池が挙げられます。リチウム空気電池の開発の鍵となっている酸素還元反応触媒、及び酸素発生反応触媒においても、独自のアプローチにより研究を進めており、とりわけ白金の代わりに卑金属を用いた低コスト系の開発を進めています。さらに、リチウムに依存しない元素戦略に配慮した次世代蓄電池設計も進めています。例えばナトリウムイオン二次電池の高性能化に関する研究を電解質設計の立場から進めており、汎用の電解質を利用した系よりも大幅にサイクル特性やレート特性に優れた全固体ナトリウムイオン二次電池系の開発につながっています。現在の本研究室の電池開発において、もう一点注力しているのが急速充放電への対応です。現状の電気自動車では、高速道路のサービスエリアなどで充電を行う際に約30分を要しており、ガソリンスタンドでの給油と比較すると極めて長時間を要しています。本研究室では特殊な活物質の合成や、特異的な人工界面形成により充放電時間を大幅に短縮する試みを行っています。それを実現するキーワードとなるのが積極的な界面設計です。長きにわたって電池研究は四大部材(電極、電解質、バインダー、セパレータ)の研究を中心に展開されてきました。しかし、固体電解質界面(SEI)の重要性がいっそうクローズアップされつつあり、その戦略的かつ合理的な設計が次世代蓄電池の成否の鍵を握っていると考えられます。本研究室では、有機合成化学や高分子合成のバックグラウンドを有する電池研究グループという個性を最大限に活かしつつ、独自のアプローチで未来社会のニーズに応える高性能電池系の創出を目指します。
主な研究業績
- "Densely imidazolium functionalized water soluble poly(ionic liquid) binder for enhanced performance of carbon anode in lithium/sodium-ion batteries", A. Patra and N. Matsumi, Adv Energy Mater (2024) 20243071.
- "Water-soluble densely functionalized poly(hydroxycarbonylmethylene) binder for higher performance hard carbon anode-based sodium-ion batteries", A. Patra, N. Matsumi. J Mater Chem A., 12 (2024) 11857-11866.
- "Confronting the issue associated with the practical implementation of zinc blende-type SiC anode for efficient and reversible storage of lithium ions"R. Nandan, N. Takamori, K. Higashimine, R. Badam, N. Matsumi. ACS Appl Ener Mater., 7 (2024) 2088-2100.
使用装置
充放電評価装置
インピーダンスアナライザー
電気化学アナライザー
核磁気共鳴分光装置
ソーラーシミュレーター
研究室の指導方針
合成化学を基盤にしながら、リチウムイオン二次電池やナトリウムイオン二次電池など社会的要求の高い研究分野に果敢にチャレンジします。クリエイティブな発想力と失敗を恐れない実行力、社会貢献への意識などを有したバランスのとれた人材の育成を目指します。ヘテロな研究集団を目指していますので、様々なバックグラウンドを持った人材を歓迎します。入って来るメンバーの科学的知識レベルも様々でしょうが、2年間ないし5年間にそれぞれのレベルに応じて大きな成長と達成感、自信を味わって巣立っていただくことが目標です。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/matsumi
エネルギー変換の最先端 ―未利用廃熱の高効率回収―


エネルギー変換の最先端 ―未利用廃熱の高効率回収―
R7年10月以降に入学する学生の受け入れは行いません
小矢野研究室 KOYANO Laboratory
教授:小矢野 幹夫(KOYANO Mikio)
E-mail:
[研究分野]
固体物性、熱電変換
[キーワード]
物理・実験系、低次元伝導体、熱電変換の物理、熱電材料、エネルギーの有効利用、エネルギーハーベスティング
研究を始めるのに必要な知識・能力
物理の実験系の研究室ですが、出身分野にはこだわりません。今までにも物理系、電子・電気系、機械系、化学系の学生が本研究室に来て活躍しています。JAISTに入学してから、応用物性数学、量子力学、固体物理学など自然科学系の講義を受講してもらうことをお願いしています。
この研究で身につく能力
物理系のみならず多様な分野から来た学生が、総合的な科学技術としての熱電変換の研究を行うことにより、修了後に企業や研究機関で社会に貢献することを目指しています。私たちの研究室で身につけられる能力は、具体的には以下のとおりです。
- 実際に手を動かしてものを作る面白さを知ること。
- 先端的な実験機器を用いた物理研究と実験手法の習得。
- 物理的または科学的な考え方の習得、ものごとを定量的に捉える力の獲得。
- プレゼンテーション能力、科学的な論文(主として日本語)の作成の方法。
【就職先企業・職種】 製造業ほか
研究内容

テトラヘドライト

硫化物熱電材料

ポストグラフェン材料
ゼーベック効果やペルチェ効果などを利用した『熱電変換技術』を使うと、熱エネルギーと電気エネルギーの相互変換が出来るため、廃熱から直接発電を行う『熱電発電』が可能となります。私たちの研究室では、【はかる】【つくる】【さがす】という3本の柱で熱電変換に関する研究を行っています。
【はかる】微小スケールの熱電性能の測定
「はかる」とは熱電材料の特性をはかるための評価手法の開発という意味です。近年、微細な構造を持った新規熱電素子が開発されていますが、システム自体が小さく測定が難しいため、新しい評価手法の開発が望まれています。
私たちの研究室では、3ω法(スリーオメガ法)と呼ばれる熱伝導率測定法を改良して、Bi-Te 系熱電ナノ粒子凝集体の熱伝導率を測定することに成功しました。さらにこの3ω法を改良することにより、遷移金属トリカルコゲナイドナノワイヤーの熱伝導率測定にもチャレンジしています。またポイントコンタクト型局所熱電性能測定法も開発しており、将来的にはグラフェンやポストグラフェンなど先端材料のフォノン物性を解明することを目指しています。
【つくる】インクジェット技術を用いた新規熱電モジュールの開発
実際に熱電発電を行うためには、Bi-Te 系熱電素子を多数配列させた熱電モジュールを作製しなければなりません。われわれは、LCD 用カラーフィルターの製造に利用されているインクジェット技術を熱電モジュール作製に応用するという、新たな製造プロセスの開発を行いました。
インクジェット印刷を用いることにより、従来作製が難しかった微小サイズモジュールや、ポリイミドをはじめとするフレキシブルな基板を用いたモジュールの試作に成功しました。今後は、焼成後の素子の密度と粒子配向性の向上といった課題を解決し、既存の分野およびエネルギーハーベスティングなど新しい分野への応用展開を図ることを予定しています。
【さがす】新しい熱電変換材料の創製
現在実用化されている熱電材料(Bi-Te 系材料)は、構成元素のTe が希少・高価であるという問題を抱えています。この問題を解決するため、私たちはTe の代替元素として硫黄(S)を用いた化合物、すなわち新しい硫化物熱電材料の開発を行っています。
最近、私たちはテトラヘドライトと呼ばれる熱電鉱物Cu12Sb4S13が、実用化されている材料と比べても遜色ない性能を示すことを発見しました。この材料は母体のままでも良好な熱電性能を示しますが、さらに、Cu サイトをNi で置換することにより熱電性能を約1.4倍向上させることに成功しました。
これ以外にも、多様な硫化物の低次元伝導体や、熱電材料と磁性体のハイブリッド材料の合成・開発を行い、その基礎物性や熱電性能を調査しています。
主な研究業績
- Development of thermal conductivity measurement system using the 3ω method and application to thermoelectric particles, S. Nishino, K. Suekuni, K. Ohdaira, and M. Koyano, Journal of Electronic Materials (2014), DOI: 10.1007/s11664-014-2993-9.
- High-performance thermoelectric mineral Cu12-xNixSb4S13 tetrahedrite, K. Suekuni, K. Tsuruta, M. Kunii, H. Nishiate, E. Nishibori, S. Maki, M. Ohta, A. Yamamoto, and M. Koyano, Journal of Applied Physics 113, 043712 (2013)
- 廃熱も電気に変える熱電発電,小矢野幹夫,Ohm Bulletin, 2014年 VOL.49 冬号(通巻200号)pp. 02.
使用装置
物理特性測定装置 PPMS(熱電性能、電気伝導の測定)
ラマン散乱分光装置(固体中の素励起のエネルギー分析)
管状電気炉・マッフル炉(無機材料の合成)
ホットプレス装置(粉体試料の加圧焼結・配向制御)
研究室の指導方針
『多様な物性に多様な価値観で挑む』をモットーに、今まで誰も知らなかった新しい現象を発見したり、新規材料を創製することを目指しています。小矢野研は『エネルギーに興味がある人』『無機材料を自分で作ってみたい人』『科学や物理が好きな人』 を歓迎します!
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/kotai/koyano/index.html
エレクトロニクスの機能的多様化を目指す化合物半導体デバイス技術


エレクトロニクスの機能的多様化を目指す
化合物半導体デバイス技術
化合物半導体エレクトロニクス研究室
Laboratory on Compound Semiconductor Electronics
教授:鈴木 寿一(SUZUKI Toshi-kazu)
E-mail:
[研究分野]
化合物半導体エレクトロニクス
[キーワード]
化合物半導体デバイス、異種材料融合技術、超高速デバイス、省エネルギーデバイス、デバイス計測技術
研究を始めるのに必要な知識・能力
必要な知識・能力ということではありませんが、ものごとの本質を理解したいという意欲、数学や物理学の基礎力とそれを支える論理性は、研究を進める際に重要であると考えています。
この研究で身につく能力
化合物半導体電子デバイスの作製技術および測定解析技術を身に付けながら、デバイス内の電子の挙動を物理的に考察して理解することができるようになると思います。こうした能力は、将来エレクトロニクスの広い分野で活躍するための素地となると考えています。また、産学連携を通じて産業界の問題意識を感じてもらうことも期待しています。さらに、日本語および英語によるプレゼンテーション能力の向上も目指します。
【就職先企業・職種】 総合電機、半導体・電子部品、半導体製造装置、通信機器、輸送機器、自動車
研究内容

化合物半導体高速トランジスタ

デバイスの周波数応答特性

異種材料基板上化合物半導体デバイス

異種材料閉じ込めによる二次元電子状態
<エレクトロニクスの機能的多様化に向けて>
現在のディジタルエレクトロニクスの主役であるSiデバイスは、微細化による性能向上を続けてきました。しかし、こうした「More Moore」の軸に沿った進歩の限界が意識されるようになっています。今後のエレクトロニクスの発展のためには、「More than Moore」の視点に基づく機能的多様化が必要であり、それに向けて重要な役割を果たすのが化合物半導体デバイスです。
<化合物半導体とは?>
III-V 族を中心とした化合物半導体は多彩な材料系であり、これまでもSi では不可能な様々な機能を有するデバイスに応用されてきました。特に、高い電子移動度と高い電子飽和速度を有する化合物半導体は高速電子デバイス応用に、また、直接遷移型の化合物半導体は光デバイス応用に好適であるため、化合物半導体を用いたデバイスは、高速アナログ・ミックスドシグナルエレクトロニクス、光エレクトロニクス分野で利用されてきました。これまで、GaAs 基板上格子整合材料が化合物半導体の第一世代として、InP 基板上格子整合材料が第二世代として大きな役割を果たしてきましたが、今後は、高In 組成InGaAs、InAs、Sb 系材料などのナローギャップ化合物半導体と、GaN、AlN などのワイドギャップ化合物半導体の重要性が高まると考えられます。これらナローギャップ半導体は中赤外光に対応するエネルギーギャップを、ワイドギャップ半導体は紫外光に対応するエネルギーギャップを有しており、それぞれの波長域における光デバイス応用に重要です。また、電子有効質量は概ねエネルギーギャップと比例関係にあり、ナローギャップ化合物半導体は小さい電子有効質量を有しています。電子有効質量が小さければ、高い電子移動度と高い電子飽和速度が得易いため、ナローギャップ半導体は超高速デバイス応用に有用です。ただし、高耐圧化に適したワイドギャップ半導体に対し、ナローギャップ半導体の耐圧は低く、充分なパワー性能を得ることが困難です。一方、GaN は電子有効質量が大きく、この点ではデバイス高速化に有利ではないように思われますが、大きい光学フォノンエネルギーと特有のバンド構造により、電子移動度こそ低いものの、高い電子飽和速度を有しているため、高速性能とパワー性能を併せ持ったデバイスへの応用が期待されます。
<本研究室の取り組み>
こうした特長を有する化合物半導体を適材適所にデバイス応用することは、エレクトロニクスの機能的多様化に向けて極めて重要です。さらに、化合物半導体と異種材料を融合集積する技術によって、より高度な機能的多様化の可能性も期待できます。こうした背景のもと、本研究室では、ナローギャップ/ ワイドギャップ化合物半導体エレクトロニクスの研究に取り組んでいます。次世代の超高速デバイスや省エネルギーデバイスを目指し、ナロー/ ワイドギャップ化合物半導体デバイス技術とそれらの異種材料融合技術の研究を進めながら、デバイス動作を深く理解するためのデバイス計測技術も開拓しています。
主な研究業績
- Low-frequency noise in AlTiO/AlGaN/GaN metal-insulator-semiconductor field-effect transistors with non-gate-recessed or partially-gate-recessed structures, D. D. Nguyen, Y. Deng, and T. Suzuki, Semicond. Sci. Technol. 38, 095010 (2023).
- Mechanism of low-temperature-annealed Ohmic contacts to Al-GaN/GaN heterostructures: A study via formation and removal of Ta-based Ohmic-metals, K. Uryu, S. Kiuchi, T. Sato, and T. Suzuki, Appl. Phys. Lett. 120, 052104 (2022).
- Electron mobility anisotropy in InAs/GaAs(001) heterostructures, S. P. Le and T. Suzuki, Appl. Phys. Lett. 118, 182101 (2021).
使用装置
分子線エピタキシー装置
電子線・紫外線リソグラフィー装置
パラメータアナライザ
ネットワークアナライザ
ダイナミックシグナルアナライザ
研究室の指導方針
・理学の心で工学を。ものごとの本質を理解することを大切にします。
・少しづつであっても、自分でよく考え、納得しながら前進することが重要であると考えています。
・学生と教員がよき共同研究者となり、お互いに成長することを目指します。
・毎週行う研究報告会・日本語輪講・英語輪講を通じ、エレクトロニクス分野で活躍するための基礎を固めます。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/nmcenter/labs/suzuki-www/
自然環境と生体物質の歴史に学ぶー高分子の世界に挑戦!ー


自然環境と生体物質の歴史に学ぶ
ー高分子の世界に挑戦!ー
DRY & WET ソフトマテリアル研究室
Laboratory on DRY & WET Soft Materials
准教授:桶葭 興資(OKEYOSHI Kosuke)
E-mail:
[研究分野]
高分子科学、光化学、ソフトマター
[キーワード]
ゲル、水、ソフトマテリアルの幾何学、光機能材料、エネルギー変換材料、バイオミメティクス
研究を始めるのに必要な知識・能力
高分子科学、物理化学、材料科学、光化学、ソフトマターの基礎知識や経験を持っていると望ましいでしょう。そして何より、チャレンジングスピリットを強く持っている人、好奇心の強い人、思考の持久力を高めたい人と研究を始めたいと考えています。
この研究で身につく能力
論理説明能力・解釈能力、科学的な仮説検証・立案力、高精度なディスカッション能力、発表能力、英語コミュニケーション力
学問分野:高分子科学、光化学、コロイド科学、界面化学、幾何学、非線形科学など
【就職先企業・職種】 化学メーカー、医療機器メーカー、自動車関連、材料全般、食品関連、化粧品関連など
研究内容
自然界を見渡すと、目に見えるレベルで綺麗なパターンがたくさんあります。たとえば生体組織は小さな分子から「自己組織化」 によって創り上げられています。これは、物質そのものにだけ由来している訳ではなく、外的な環境が強く作用した結果です。変化する環境に適応できるように生命が進化した結果、多様な空間 パターンやリズムが生まれています。
一方、人工的に合成された分子から物理環境を制御してパターンを創り出す研究は歴史的に長くなされています。しかし、合成分子のままでは医療や工業的に材料化する上で困難を極め、生体組織との調和や自然との共生には幾つものハードルがあります。これに対して我々は直近の研究で、天然分子の多糖が自らパターンを再構築する現象を発見しました。ここで、「なぜ」「どのように」パターンをつくるのかを解明できれば、生体適合性と環境適応性を合わせ持つマテリアルを手に入れることができます。
1.DRY でWET な天然多糖の自己組織化
天然から抽出された多糖は、どのようにcmスケールの幾何学パターンを生み出すのか、特に、乾燥環境下で多糖が見せる「空間認識」の法則性を検証しています。DRY でWET な非平衡環境下、ミクロにもマクロにも高分子が組織化して析出してきます。実際の生体組織が常に乾燥環境におかれながらもWETなからだを維持していることを振り返ってみれば、水中から陸上進出した生体高分子の進化を紐解く鍵があるはずです。
2.ソフトマテリアルのパターン制御
生体高分子、合成高分子に関わらず多くのソフトマテリアルは、界面の応力制御によって形態の制御が可能です。ほんの小さな環境の違いや僅かな力学的エネルギー負荷によって、多様な構造や形態を見せます(自己集積、自己相似、フラクタルなど:図参照)。これを利用してDRY でWET な環境に適応した医療用材料の設計法を見出したいと考えています。
これら「自然美の追求」を基に現象の法則性を導くことが究極目標です。そして、生物がなぜパターンを創るようになったのか?自然科学の大命題に挑戦しています。
主な研究業績
- Bioinspired gels: polymeric designs towards artificial photosynthesis. Hagiwara R, Yoshida R, Okeyoshi K, Chemical Communications 60, 13314-13324 (2024).
- Recognition of spatial finiteness in meniscus splitting through evaporative interface fluctuations. Wu L, Saito I, Hongo K, Okeyoshi K, Advanced Materials Interfaces 10, 2300510 (2023).
- DRY & WET: meniscus splitting from a mixture of polysaccharides and water. Okeyoshi K, Polymer Journal 52, 1185 (2020).
使用装置
各種光学顕微鏡、各種光学装置(偏光、蛍光など)、画像解析装置、粘度計、密度計、動的光散乱、電子顕微鏡
研究室の指導方針
社会で働くトレーニング期間として、個人個人の能力を最大限に発揮できるようにサポートします。我々のグループは研究・文化の両面で多様な環境に在り、多角的な視野を構築する上で日本でも稀に見る貴重なチャンスです。突出した先端研究をみなさんと進めたいと考えています。そのためにも以下1−3の基礎を実践していきます。
1. 実験とディスカッションを通して論理的思考力と先見性の能力を養う。
2. 仮説と検証を繰り返し大目標にアプローチする。
3. 学会発表、学術論文発表を念頭に科学的言語を使う。
これらの積み重ねを自信にして創造力を高めていきたいと考えています。熱いハートのみなさん、ぜひ21世紀のパイオニアを目指して一緒にチャレンジしましょう!
[研究室HP] URL:https://sites.google.com/oke-acgroup.com/web/home-j
ナノ粒子工学:機能材料の創製から応用まで


ナノ粒子工学:機能材料の創製から応用まで
ナノ粒子工学研究室 Laboratory on Nanoparticle Engineering
教授:前之園 信也(MAENOSONO Shinya)
E-mail:
[研究分野]
ナノ材料化学、ナノ材料物性、コロイド化学
[キーワード]
半導体ナノ粒子、磁性体ナノ粒子、金属ナノ粒子、バイオ医療、エネルギー変換、センシング
研究を始めるのに必要な知識・能力
基礎学力、コミュニケーション能力、知的好奇心、柔軟な思考
この研究で身につく能力
修士課程では、(1) ナノ材料の化学合成技術、(2) 各種分析機器(透過型電子顕微鏡、X 線回折装置、X 線光電子分光、組成分析装置など)の操作スキル、(3) 基礎学問の知識(無機材料化学、結晶学、コロイド化学、固体物性など)、(4) ナノ材料に関する先端専門知識を身につけて頂きます。博士課程では、1-4に加え、英語によるプレゼンテーション能力、英語論文執筆能力、研究課題設定能力、共同研究遂行能力など、研究者に必要なあらゆる能力を身につけて頂きます。
【就職先企業・職種】 製造業(化学、精密機器、電気機器、ガラス・土石製品、繊維製品、その他製品など)
研究内容
物質をナノメートルサイズまで細かくしていくと、種々の物性がサイズに依存する新奇な材料となります。このような新奇材料を一般に「ナノ材料」と呼びますが、我々はその中でも特に「ナノ粒子」に興味を持ち、ナノ粒子に関する基礎から応用に亘る研究を行っています。半導体、磁性体、金属などのナノ粒子を化学合成し、その表面をさまざまな配位子によって機能化し、さらにそれらナノ粒子の高次構造を制御することによって、バイオ・医療分野あるいは環境・エネルギー分野で新たな応用を開拓することを目指しています。
1.磁性体ナノ粒子の合成とバイオ医療分野への応用
超常磁性体のナノ粒子を独自の方法によって合成し、その表面を自在に修飾することによって、バイオ医療分野での様々な応用の道を開拓しています。具体的には、細胞やタンパクの磁気分離、MRI 造影剤、ドラッグデリバリーシステムなどのナノ磁気医療に応用するための技術開発を行っています。
2.半導体ナノ粒子の合成とエネルギー変換素子への応用
狭ギャップ化合物半導体から広ギャップ酸化物半導体のナノ粒子まで、幅広い種類の半導体ナノ粒子を化学合成し、それらを用いて低炭素社会の実現を志向したナノ構造エネルギー変換素子の創製に関する研究を行っています。特に、ナノ構造熱電素子や光機能素子などに興味を持っています。
3.金属ナノ粒子を用いたバイオセンシング技術の開発
近年、金ナノ粒子を用いた様々なバイオセンサが開発され、簡便かつ迅速に DNA 配列検出やタンパク質機能解析などが可能となってきています。我々は、ナノ粒子プローブを用いたバイオセンシング技術の更なる高度化を目指し、異種金属元素からなるヘテロ構造ナノ粒子や合金ナノ粒子のプローブの開発を進めています。
主な研究業績
- T. S. Le, M. Takahashi, N. Isozumi, A. Miyazato, Y. Hiratsuka, K. Matsumura, T. Taguchi, and S. Maenosono, “Quick and Mild Isolation of Intact Lysosomes Using Magnetic-Plasmonic Hybrid Nanoparticles”, ACS Nano 16 (2022) 885
- J. Hao, B. Liu, S. Maenosono, and J. Yang, “One-Pot Synthesis of Au-M@SiO2 (M = Rh, Pd, Ir, Pt) Core-Shell Nanoparticles as Highly Efficient Catalysts for the Reduction of 4-Nitrophenol”, Sci. Rep. 12 (2022) 7615
- T. S. Le, S. He, M. Takahashi, Y. Enomoto, Y. Matsumura, and S. Maenosono, “Enhancing the Sensitivity of Lateral Flow Immunoassay by Magnetic Enrichment Using Multifunctional Nanocomposite Probes”, Langmuir 37 (2021) 6566
使用装置
透過型電子顕微鏡 (TEM) 超伝導量子干渉磁束計 (SQUID)
過型電子顕微鏡 (STEM) 動的光散乱測定装置 (DLS)
X 線回折装置 (XRD) 共焦点レーザー顕微鏡 (CLSM)
X 線光電子分光装置 (XPS) 核磁気共鳴装置 (NMR)
研究室の指導方針
就職希望者には、基礎・専門知識はもちろん、コミュニケーション能力、英会話力、論理的思考力および柔軟な対応力を涵養し、不確実性の時代を生き抜くことができる人材となってもらうための指導を行います。企業経験を活かした実践的就職指導も行っています。
博士後期課程への進学希望者については、先端的かつ国際的な研究環境を提供することによって、将来的に大学教員や企業研究者として活躍できるグローバル研究人材を育成します。
[Website] URL:https://www.jaist.ac.jp/~shinya/
環境・エネルギー領域の高田助教の研究課題が松籟科学技術振興財団の研究助成に採択
公益財団法人 松籟科学技術振興財団の研究助成に環境・エネルギー領域の高田 健司助教の研究課題が採択されました。
松籟科学技術振興財団では、科学技術の振興に貢献するため、科学技術、特に天然物の有効利用、生理活性物質、有機新素材及び電子材料等、同財団の指定する課題分野にて優れた研究に携わる研究者への助成を行っています。
*詳しくは、松籟科学技術振興財団ホームページをご覧ください。
■研究者名
環境・エネルギー領域 高田 健司助教
■採択期間
令和4年4月~令和5年3月まで
■研究課題名
バイオマス由来ヒドロキシ酸を基盤としたフォトメカニカル材料の開発
■研究概要
フォトメカニカル材料は光によって材料の形状・形態を大きく変化させることが可能であり、古くからスマートマテリアルとしての利用が注目されていました。また、エネルギー効率の良い光を用いるという点からサスティナブルマテリアルとしても注目されており、その物性の精密制御や機能化法の確立が急務の課題となっています。本研究では、主鎖に桂皮酸を有するポリエステルの特徴的な構造に対して、リビング重合によるブロック/グラフトポリマー化による柔軟性の精密コントロールを達成し、多様な刺激応答性能を有するバイオベースプラスチックの提案を目的としています。
■採択にあたって一言
本研究課題を採択頂き大変嬉しく存じます。また、松籟科学技術振興財団、および本助成の選考委員会の皆様に深く感謝申し上げます。本研究が、地球の環境・エネルギー問題に資するものになるよう邁進してまいります。また、本研究に関して多大なアドバイスをいただいた金子達雄教授はじめ、様々な知見を頂いた研究室の皆様、および研究協力者の方々にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。
令和3年12月28日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/12/28-1.html環境・エネルギー領域の高田助教がPolymer Journal誌のRising Stars 2021に選定
環境・エネルギー領域の高田 健司助教が、Springer Nature刊行のPolymer Journal誌の"Rising Stars in Polymer Science 2021"(世界中の新進気鋭の研究者による優れた研究をハイライトする特集号)に選ばれました。
*詳しくは、Polymer Journal誌ホームページをご覧ください。
また、この研究に関連した論文(環境・エネルギー領域 金子 達雄教授との共著)が同誌の表紙に掲載されました。
■掲載誌
Polymer Journal 2021, 53 (11), 1223−1230.
掲載日2021年11月8日
■著者
Kenji Takada*, Takumi Noda, Takuya Kobayashi, Toyohiro Harimoto, Maninder Singh, Tatsuo Kaneko* (*責任著者)
■論文タイトル
Synthesis of pH-responsive polyimide hydrogel from bioderived amino acid
■論文概要
本研究では、水溶性になる特殊なポリイミドを用いて、ポリイミドハイドロゲルを初めて合成しました。
バイオ生産が可能な4-アミノ桂皮酸をベースとしたバイオポリイミドは、分子鎖中にカルボン酸を有するため、水溶性ポリマーであるアクリル酸ナトリウムのように水溶化させることができます。溶媒に溶解させることができるということは、各種化学反応を行えるということであり、本研究では水溶性バイオポリイミドの側鎖を、同じくバイオ分子であるアミノ酸により架橋させることで、ハイドロゲル化させることに成功しました。さらに、このバイオポリイミドは側鎖のカルボン酸の効果によりpHの変化に応じてプロトン移動を引き起こし、親水性・疎水性のスイッチングが起きます。このことから、ポリイミドハイドロゲルはpHに応じて体積変化を引き起こし、pH応答性があることを見出しました。こうした性質から、本ポリイミドゲルは完全バイオ由来のpH応答ゲルとして生体内へのドラッグデリバリーとしての応用が期待されます。
論文詳細:https://www.nature.com/articles/s41428-021-00509-8
掲載誌詳細:https://www.nature.com/pj/volumes/53/issues/11
![]() ※上段右端が該当するCover Picture |
令和3年11月10日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/11/10-1.html環境・エネルギー領域の高田助教と物質化学領域の木田助教の研究課題が小笠原敏晶記念財団の研究助成に採択
公益財団法人 小笠原敏晶記念財団の研究助成「一般研究助成」に環境・エネルギー領域の高田 健司助教および物質化学領域の木田 拓充助教の研究課題が採択されました。
小笠原敏晶記念財団では、わが国の産業の発達に寄与することを目的として、理学・工学の領域において健全な発展の一助となる助成活動が行われています。一般研究助成は、高分子分野における、新素材・加工技術・新機能に関する研究開発に対して助成する制度です。
*詳しくは、小笠原敏晶記念財団ホームページをご覧ください。
- 採択期間:令和4年4月~令和5年3月
- 研究課題名:主鎖型ポリ桂皮酸ブロックポリマーのミクロ相分離構造の制御と光変形性の精密制御
- 研究概要:光エネルギーを運動エネルギーへと変換することができる光変形性材料はサスティナブルマテリアルとして注目されており、その変形挙動の制御や機能化法の確立が急務の課題となっています。本研究では、私たちが従来から研究してきた光応答性材料の開発と、有機分子触媒を利用したリビング重合技術を発展させ、ポリマーのミクロ相分離にもとづく多彩な変形挙動を有した新しい光応答材料の創出を目的としています。
- 採択にあたって一言:本研究課題を採択頂き大変嬉しく存じます。また、小笠原敏晶記念財団、および本助成の選考委員会の皆様に深く感謝申し上げます。本研究が、地球の環境・エネルギー問題に資するものになるよう邁進してまいります。また、本研究に関して多大なアドバイスをいただいた金子達雄教授はじめ、様々な知見を頂いた研究室の皆様、および研究協力者の方々にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。
- 採択期間:令和4年4月~令和6年3月
- 研究課題名:重水素化プローブ分子鎖の直接観察による高分子材料の結晶化機構に与える分子量分布の影響の解明
- 研究概要:高分子材料において、分子量分布(分子鎖長分布)は材料物性を決定する最も重要な分子パラメータの一つです。我々の日常生活で多く利用されているポリエチレン(PE)は分子鎖が部分的に結晶化する結晶性高分子に分類され、分子量分布の平均値や分散度の違いで結晶度や結晶厚など結晶構造が著しく変化し、結果として材料物性に大きな違いが現れます。従来の研究においても、分子量分布の形状と結晶構造の関係についてはさまざまな報告が行われてきましたが、具体的にどの分子量成分が、どのように結晶構造の形成に影響を与えているかを理解することができませんでした。本研究では、重水素化プローブ法という技術を用いることで、特定の分子量成分の結晶化挙動を独立かつ直接に観察します。具体的には、母材として用いる分子量分布が広い軽水素化PEに対して、特定の分子量の重水素化PEを微量添加することで、特定の分子量成分のみが重水素化された試料を調製します。分光測定を用いることで軽水素化PEと重水素化PEを別々に検知することができるため、特定の分子量成分の結晶化挙動を直接観察することができ、結晶化機構に対する分子量分布の影響を解明することが期待されます。
令和3年10月26日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/10/26-1.html環境・エネルギー領域の高田助教の研究課題が泉科学技術振興財団の研究助成に採択
公益財団法人 泉科学技術振興財団の研究助成に環境・エネルギー領域の高田 健司助教の研究課題が採択されました。
泉科学技術振興財団では、科学技術の振興を図り、もって社会経済の発展に寄与することを目的として、高度機能性材料及びこれに関連する科学技術の基礎研究分野における真に独自の発想に基づく新しい研究に対して助成を行っています。
*詳しくは、泉科学技術振興財団ホームページをご覧ください。
■研究者名
環境・エネルギー領域 高田 健司助教
■採択期間
令和3年10月~令和4年9月
■研究課題名
高靭性バイオポリアミドを用いた自己支持性ナノ薄膜の作製と有機ELデバイスへの応用
■研究概要
眼鏡やディスプレイパネルに用いられるアクリル樹脂やポリカーボネートなどの透明樹脂は、有機ガラスと呼ばれ、様々な材料化の研究が行われています。一方で、材料の透明性の高さと力学物性(破壊強度、弾性率、靭性)はトレードオフの関係であり、高い透明性を維持しながらも高い力学強度を発揮する材料の開発は急務の課題でした。当研究課題では、これまでに開発したバイオ由来トルキシル酸という特殊な構造を持つポリアミドが透明な非晶性高分子でありながら極めて高い靭性を示すという研究成果を発展させ、これらの薄膜化の技術の確立とそれを用いたデバイス化の検討を行うことでバイオベース発光有機ELデバイスの試作検討を目的としています。
■採択にあたって一言
本研究課題を採択頂き大変嬉しく存じます。泉科学技術振興財団、および本助成の選考委員会の皆様に深く感謝申し上げます。近年、様々なバイオ由来材料が注目されている中で当研究が採択されたことは、それだけ重要な課題であるとご判断いただけたものと存じます。また、本研究に関して多大なアドバイスをいただいた金子達雄教授はじめ、様々な知見を頂いた研究室の皆様、および研究協力者の方々にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。これを励みに研究を加速できればと思います。
令和3年10月7日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/10/7-1.html環境・エネルギー領域の小矢野教授がSSH指定校の福島高校でオンライン講演会を実施
9月24日(金)、環境・エネルギー領域の小矢野 幹夫教授が、文部科学省「SSH(スーパーサイエンスハイスクール)」指定校である福島市の県立福島高等学校において、SS(スーパーサイエンス)部の1学年26名を対象に、オンラインによる講演会を行いました。
文部科学省のホームページはこちら
福島高校のSSHニュースはこちら
今回の講演は、「熱電変換の物理と最先端のエネルギー変換の研究」というテーマで行われました。
導入部分では、SDGsの観点から、熱電変換の研究がエネルギー問題にどのように貢献できるかについての説明がありました。続いて、物質の両端に温度差を与えると電位差が生じる「ゼーベック効果」を利用して、熱を電気エネルギーに変換する技術について、解説が行われました。
生徒の皆さんは、熱電材料の金属組成を変えることで、より高い変換効率を目指す研究開発が盛んに行われてきたことを学ぶとともに、有毒または希少な元素を含まない、環境に優しい次世代の熱電材料の開発の重要性についても理解を深めました。
また、身の周りにある熱を"収穫(ハーベスト)"して電気エネルギーに変換する「エネルギーハーベスティング」の考え方にも触れ、エネルギーの捉え方に新たな視点を持ったようでした。
最後に、小矢野教授から生徒の皆さんに向けて、「自身の知的好奇心と向き合い、ぜひ大学院進学というキャリアプランも考えてみてほしい」とメッセージを送りました。
講演後には質疑応答が活発に行われ、生徒の皆さんからは、「講義の中で化学物質がたくさん出てきたので、化学の分野ももっと勉強してみたい」、「効率を改善する方法がいくつも研究されており、自分の研究でも一つで満足しないようにしたい」、「学者の交友関係、進路の考え方、研究への向き合い方を学ぶことができた」といった前向きな感想があり、向学心の高さがうかがえる講演会となりました。
![]() 講演を行う小矢野教授 |
![]() 受講の様子(写真:福島高校提供) |
![]() 質疑応答の様子 |
令和3年9月29日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/09/29-2.html環境・エネルギー領域の大平教授の研究課題が「NEDO先導研究プログラム/新技術先導研究プログラム」に採択
環境・エネルギー領域の大平 圭介教授が提案した研究課題が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「NEDO先導研究プログラム/新技術先導研究プログラム(エネルギー・環境新技術先導研究プログラム)」に採択されました。
「NEDO先導研究プログラム/新技術先導研究プログラム」は、2030年頃以降の社会実装を見据えた革新的な技術・システムについて、原則、産学連携の体制で先導研究を実施し、革新性・独創性があり、将来的な波及効果が期待できる技術シーズの発掘及び国家プロジェクト化等への道筋をつけることを目標とします。
*詳しくは、NEDOホームページをご覧ください。
■研究課題名
新概念結晶シリコン太陽電池モジュールの開発
■研究概要
2050年のカーボンニュートラルに向けて、主力電源の一翼を担うことが期待される太陽光発電において、太陽電池モジュールの劣化抑止と長寿命化は、最重要課題の一つです。また、寿命を迎えた太陽電池モジュールの大量廃棄時代に備え、部材の分別廃棄やリサイクルを容易にすることも、喫緊の課題です。本研究では、結晶シリコン太陽電池モジュールの革新的な構造として、封止材を用いないモジュールの開発に取り組みます。封止材を無くすことで、紫外光照射による封止材の黄変、封止材からの酸発生による電極の腐食、封止材を介したナトリウム移動にともなう電圧誘起劣化などに起因する発電性能低下を根本的に解決できます。さらに、太陽電池セルが封止材で接着されていないため、故障したモジュールの修理・再利用が可能となるばかりでなく、廃棄時の分解・分別や、部材リサイクルも容易となります。本研究は、新潟大学、青山学院大学、岐阜大学と共同で実施します。
令和3年5月14日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/05/14-4.html応用物理学領域の麻生助教と環境・エネルギー領域の桶葭准教授の研究課題が旭硝子財団の研究助成に採択
公益財団法人 旭硝子財団の研究助成「物理・情報分野 研究奨励」に応用物理学領域 麻生 浩平助教、「化学・生命分野 若手継続グラント」に環境・エネルギー領域 桶葭 興資准教授の研究課題が採択されました。
旭硝子財団は、次世代社会の基盤を構築するような独創的な研究への助成事業を通じて、人類が真の豊かさを享受できる社会および文明の創造に寄与しています。
「研究奨励」プログラムでは、若手研究者による基礎的・萌芽的な研究が支援されます。また、「若手継続グラント」プログラムでは、過去3年間に同財団の「研究奨励」プログラムを終了した若手研究者の中から意欲と提案力のある将来有望な研究者が選抜され、研究が支援されます。
*詳しくは、旭硝子財団ホームページをご覧ください。
「物理・情報分野 研究奨励」
【研究者名】応用物理学領域 麻生 浩平助教
■採択期間
令和3年4月1日~令和5年3月31日
■研究課題
固体内イオン伝導の解明に向けた電子顕微鏡とデータ科学による動的解析
■研究概要
リチウムイオン電池では、充放電に伴って電池内部をリチウムイオンが移動していきます。しかし、イオンがどのように移動していくのかは未だによく分かっていません。そこで本研究では、ナノメートル程度の空間スケール、かつ従来よりも短い時間スケールでリチウムイオンのダイナミクスを可視化することを目指します。実験手法として、電池を動作させて電気特性を測定しながら電池の構造を観察する、オペランド電子顕微鏡法を用います。オペランド電子顕微鏡像は大量の画像からなる動画として得られるため、手動での解析は困難です。そこで、動画からイオンの移動に関わる情報のみを抽出するために、データ科学の手法を活用します。リチウムイオンは電池内部でどのように動いていくのかという問いに対して、これまでにない実験的な知見を与えられると期待しています。
■採択にあたって一言
旭硝子財団、ならびに選考委員の皆様に心から感謝いたします。本研究を進めるにあたり数々のご協力を頂きました研究室の方々、ナノマテリアルテクノロジーセンターの皆様、および共同研究者の皆様方に感謝申し上げます。
「化学・生命分野 若手継続グラント」
【研究者名】環境・エネルギー領域 桶葭 興資准教授
■採択期間
令和3年4月1日~令和6年3月31日
■研究課題名
多糖の非平衡環境下における時空間マター
■研究概要
ソフトマテリアルの散逸構造はシンプルな数式で表現されるが、過渡的現象の議論にとどまっており、材料化には困難を極めています。これに対し本研究では、多糖の非平衡環境下における界面現象を時空間的に解明します。これによって、生体組織の幾何学構造形成に倣ったマテリアルデザインが拓かれると同時に、高分子科学、コロイド科学、流体科学などを背景としたバイオミメティクス戦略の展開が期待できます。
■採択にあたって一言
採択頂き大変嬉しく存じます。旭硝子財団、および本助成の選考委員会の皆様に深く感謝申し上げます。また共同研究者の皆様、および研究室の皆様に深く感謝申し上げます。科学と技術の発展に貢献できる様、誠心誠意励んで参ります。
令和3年5月14日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/05/14-2.html