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研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。化学修飾細菌を利用するがん光免疫療法の開発に成功

化学修飾細菌を利用するがん光免疫療法の開発に成功
ポイント
- 天然の紅色光合成細菌の細胞表面を簡便に化学修飾可能な手法を開発
- 作製した化学修飾細菌は、免疫細胞の効果的な賦活化のみならず、高い腫瘍標的能を有し、近赤外光によって様々な機能を発現可能
- 当該化学修飾細菌の特性と近赤外レーザー光を組み合わせた、新たながん光免疫療法を開発
北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)、先端科学技術研究科 物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎准教授の研究グループは、光と化学修飾細菌を使ってマウス体内のがん診断・治療を可能にする技術の開発に成功した(図1)。 |
図1. 化学修飾細菌を利用するがん光免疫療法の概念
近年、低酸素状態の腫瘍内部で選択的に集積・生育・増殖が可能な細菌を利用したがん標的治療に注目が集まっている。しかし、従来のがん細菌療法は、基本的には抗がん剤の運搬という、いわゆる従来型のドラッグデリバリーシステムの概念を出ない。また、薬効も十分であるとはいえない。さらに、従来のがん細菌療法は、抗がん活性を発現するためには、遺伝子工学を用いた微生物の操作・改変が必須である。米国や欧州ではヒトへの臨床試験が行われ第3相試験に進んでいる例もあるが、使用される細菌は、多くの場合、遺伝子組換えによって弱毒化したサルモネラ菌やリステリア菌であり、体内で再び強毒化するリスクを常に伴っている。
本研究では、低酸素状態の腫瘍環境内で高選択的に集積・生育・増殖が可能で、かつ生体透過性の高い近赤外レーザー光*1によって様々な機能を発現する非病原性かつ天然の紅色光合成細菌*2の表面化学修飾法を開発した。また、当該化学修飾細菌の特性を活用することで体内の腫瘍を高選択的に検出し、効果的な免疫細胞(特にT細胞*3)の賦活化、および標的部位のみを効果的に排除することが可能ながん光免疫療法を開発することに成功した。
本研究を実現するために、がん細胞に対する傷害性の高いT細胞を賦活化可能な免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-L1抗体*4)および生体適合性の高いポリエチレングルコール(PEG)脂質から成る機能性高分子複合体と、紅色光合成細菌を生理食塩水中で30分間混合し、洗浄するだけで、免疫賦活化作用と腫瘍標的能を有し、かつ生体透過性の高い近赤外レーザー光によって近赤外蛍光と熱を発現する化学修飾細菌を開発した(図2A)。また、当該細菌のこれらの特性を活用し、近赤外レーザー光照射と組み合わせることで、体内の腫瘍(大腸がん由来)を高選択的に検出し、光発熱作用と免疫の力によって標的部位を効果的に排除することが可能ながん光免疫療法を構築した(図2B、2C)。さらに、マウス大腸がん細胞、マウスマクロファージ細胞、ヒト正常肺細胞を用いた細胞毒性試験、ならびにマウスを用いた生体適合性試験(血液学的検査、組織学的検査など)を行った結果、いずれの検査からも化学修飾細菌そのものが生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。
これらの成果は、今回開発した簡便な細菌の表面化学修飾法が、がん光診断・治療法の基礎に成り得ることを示すだけでなく、界面化学、ナノ・マイクロテクノロジー、光学、微生物工学といった幅広い研究領域における材料設計の技術基盤として貢献することを期待させるものである。
本成果は、2023年8月14日(現地時間)にナノテクノロジー分野の世界最高峰「Nano Today」誌(エルゼビア社発行)のオンライン版に掲載された。なお、本研究は、文部科学省科研費 基盤研究(A)(23H00551)、文部科学省科研費 挑戦的研究(開拓)(22K18440)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 研究成果最適展開支援プログラム (A-STEP)(JPMJTR22U1)、公益財団法人発酵研究所、公益財団法人上原記念生命科学財団、ならびに本学超越バイオメディカルDX研究拠点、本学生体機能・感覚研究センターの支援のもと行われたものである。
図2.(A) 化学修飾細菌の調製方法
(B) がん患部における化学修飾細菌の可視化(近赤外蛍光を検出) (C) 化学修飾細菌の抗腫瘍効果 |
【論文情報】
掲載誌 | Nano Today(エルゼビア社発行) |
論文題目 | Cancer immunotheranostics using bioactive nanocoated photosynthetic bacterial complexes |
著者 | Sheethal Reghu, Seigo Iwata, Satoru Komatsu, Takafumi Nakajo, Eijiro Miyako* |
掲載日 | 2023年8月14日 |
DOI | 10.1016/j.nantod.2023.101966 |
【用語説明】
レーザーとは、光を増幅して放射するレーザー装置、またはその光のことである。レーザー光は指向性や収束性に優れており、発生する光の波長を一定に保つことができる。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
近赤外光を利用して光合成を行う細菌。水の分解による酸素発生は行わない。
免疫を担うリンパ球の一種。活性化したT細胞は、サイトカイン(細胞同士の情報伝達を行うタンパク質の総称)を分泌するヘルパー細胞や、がんや感染細胞を殺傷するキラー細胞などのエフェクター細胞に分化する。
細胞上のPD-1に結合してPD-1とPD-L1あるいはPD-L2との結合を阻害し、T細胞の活性化を維持する抗体のこと。
令和5年8月29日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/08/29-1.htmlMeet up Chubu イベント「超越バイオメディカルDX研究拠点」見学会を開催
7月27日(木)、中部経済産業局および中部経済連合会主催の、連携パートナーを探索するためのオープンイノベーションプラットフォームである『Meet up Chubu』が、本学の「超越バイオメディカルDX研究拠点(eMEDX)」にて開催されました。現地参加とオンラインのハイブリッド形式で行われ、当日は約60名の多種多様な業種・業界の方々にご参加いただきました。
最初にeMEDX拠点長である物質化学フロンティア研究領域の松村 和明教授から施設概要の紹介があり、その後、eMEDX施設内のオンラインツアーをライブ配信で行いました。
続いて、松村教授、同じく物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎准教授の研究紹介が行われました。各セッションの最後には参加者からたくさんの質問があり、活発な意見交換がなされました。
最後に、寺野稔学長からの挨拶では、eMEDXの展望について発言がありました。
eMEDXでは、本学が誇る世界トップレベルのバイオメディカル分野の研究に、スーパーコンピューターを活用したデータ駆動型のDXを組み合わせ、医療・ヘルスケア・メディカルなどに関わる広い分野でのイノベーションを目指すとともに、技術や知識をシェアして共創する「シェアードオープンイノベーション」という新しい考え方に基づき、多種多様な業種・業界の会員企業間のざっくばらんな交流を推進することで、北陸から世界のバイオメディカルを変えるイノベーションを共創していきます。

学長挨拶

松村和明 拠点長・教授

都英次郎 准教授

研究紹介の様子
施設に関するお問い合わせ先 北陸先端科学技術大学院大学 未来創造イノベーション推進本部 担当:山廣、竹田 〒923-1292 石川県能美市旭台1-1 E-mail:emedx@ml.jaist.ac.jp |
令和5年8月10日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2023/08/10-1.html液体金属ナノ粒子を活用するがん光免疫療法の開発に成功

液体金属ナノ粒子を活用するがん光免疫療法の開発に成功
ポイント
- 免疫賦活化作用を有する多機能性の液体金属ナノ粒子の開発に成功
- 当該液体金属ナノ粒子がEPR効果により腫瘍に集積し、マウスに移植したがんの可視化と、免疫賦活化ならびに光熱変換によるがん治療が可能であることを実証
- 当該ナノ粒子と近赤外光を組み合わせた新たながん診断・治療技術の創出に期待
北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)、先端科学技術研究科 物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎准教授の研究グループは、液体金属ナノ粒子*1を活用した新しいがん光免疫療法の開発に成功した(図1)。 |
ガリウム・インジウム(Ga/In)合金からなる室温で液体の金属(液体金属)は、高い生体適合性と優れた物理化学的特性を有することが知られており、とりわけナノ粒子化した液体金属をバイオメディカル分野に応用する研究に大きな注目が集まっている。都准教授の研究チームでも、免疫賦活化作用のある物質を液体金属に組み合わせ、がん患部に選択的に送り込むことができれば、免疫による高い抗腫瘍作用の発現が期待できるだけでなく、生体透過性の高い近赤外光*2を用いることで、患部の可視化や光熱変換を利用した、新たながんの診断や治療が実現できるのではないかと考え、研究をスタートさせた。
図1. 近赤外光が液体金属ナノ粒子に当たり、免疫細胞
(T細胞と樹状細胞)を活性化している様子(イメージ)
研究チームは、液体金属をがん患部まで送り、免疫細胞を賦活化させるために、液体金属表面に免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-L1抗体*3)、免疫調整薬(イミキミド*4)、蛍光試薬(インドシアニングリーン*5)、ポリエチレングリコール-リン脂質複合体*6を吸着させたナノ粒子の作製を試みた。Ga/In液体金属、イミキミド、インドシアニングリーン、ポリエチレングリコール-リン脂質複合体の混合物に超音波照射後、抗PD-L1抗体を添加し、一晩培養するだけで、球状ナノ粒子の構造を水中で安定的に維持可能な簡便なナノ粒子を形成できることを見出した。この方法で調製した液体金属ナノ粒子は、10日以上の粒径安定性を有していること、細胞に対し高い膜浸透性を有し毒性が無いこと、近赤外光照射により発熱が起こることが確認できたため、がん患部の可視化と治療効果について試験を行った。
大腸がんを移植して1週間後のマウスに、液体金属ナノ粒子を投与し、24時間後に740~790 nmの近赤外光を当てたところ、がん患部だけが蛍光を発している画像が得られ、当該ナノ粒子がEPR効果*7によりがん組織に取り込まれていることが分かった(図2A)。そこで、当該ナノ粒子が集積した患部に対して808 nmの近赤外光を照射したところ、免疫賦活化と光熱変換による効果で14日後には、がんを完全に消失させることに成功した(図2B)。
図2.(A) 液体金属ナノ粒子の標的腫瘍内における蛍光特性
(B) 液体金属ナノ粒子による抗腫瘍効果(腫瘍は完全消失) |
さらに、液体金属ナノ粒子の細胞毒性と生体適合性を評価した。2種類の細胞[マウス大腸がん由来細胞(Colon-26)、ヒト胎児肺由来正常線維芽細胞(MRC5)]を培養する培養液中に、液体金属ナノ粒子を、添加量を変えて投与・分散させ、24時間後に細胞内小器官であるミトコンドリアの活性を指標として細胞生存率を測定した結果、細胞生存率の低下は見られず、細胞毒性はなかった。また、液体金属ナノ粒子をマウスの静脈から投与し、生体適合性を血液検査(1週間調査)と体重測定(約1ヵ月調査)により評価したが、いずれの項目でも液体金属ナノ粒子が生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。
これらの成果は、今回開発した液体金属ナノ粒子が、がん診断・免疫療法の基礎に成り得ることを示すだけでなく、ナノテクノロジー、光学、免疫学といった幅広い研究領域における材料設計の技術基盤として貢献することを十分期待させるものである。
本成果は、ドイツの化学・生物系トップジャーナル「Advanced Functional Materials」誌(Wiley社発行)に7月28日(現地時間)に掲載された。なお、本研究は、文部科学省科研費 基盤研究(A)(23H00551)、文部科学省科研費 挑戦的研究(開拓)(22K18440)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 研究成果最適展開支援プログラム (A-STEP)(JPMJTR22U1)、公益財団法人発酵研究所、公益財団法人上原記念生命科学財団、ならびに本学超越バイオメディカルDX研究拠点、本学生体機能・感覚研究センターの支援のもと行われたものである。
【論文情報】
掲載誌 | Advanced Functional Materials(Wiley社発行) |
論文題目 | Light-Activatable Liquid Metal Immunostimulants for Cancer Nanotheranostics |
著者 | Yun Qi, Mikako Miyahara, Seigo Iwata, Eijiro Miyako* |
掲載日 | 2023年7月28日 |
DOI | 10.1002/adfm.202305886 |
【用語解説】
室温以下あるいは室温付近で液体状態を示す金属のこと。例えば、水銀(融点マイナス約39℃)、ガリウム(融点約30℃)、ガリウム-インジウム合金(融点約15℃)がある。
800~2500 nmの波長の光。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
免疫チェックポイント阻害剤の一つ。がん細胞や抗原提示細胞が発現するPD-L1に結合することによりT細胞上のPD-1との相互作用を阻害する。この結果、T細胞への抑制シグナル伝達が阻害され、T細胞の活性化が維持され、抗腫瘍作用が発現される。
樹状細胞を活性化させることが知られており、早期の基底細胞皮膚がんや特定の皮膚疾患の治療に用いられる薬物。
肝機能検査に用いられる緑色色素のこと。近赤外光を照射すると近赤外蛍光を発することができる。
ポリエチレングリコールとリンを含有する脂質(脂肪)が結合した化学物質。脂溶性の薬剤を可溶化させる効果があり、ドラッグデリバリーシステムによく利用される化合物の一つ。
100nm以下のサイズに粒径が制御された微粒子は、正常組織へは漏れ出さず、腫瘍血管からのみがん組織に到達して患部に集積させることが可能である。これをEPR効果(Enhanced Permeation and Retention Effect)という。
令和5年8月4日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/08/04-1.html物質化学フロンティア研究領域の都准教授らの論文がAdvanced Science誌の扉絵に採択

物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎准教授らの「阿吽の呼吸で癌を倒す!-灯台下暗し:最強の薬は腫瘍の中に隠されていた-」に係る論文が、Advanced Science誌の扉絵に採択されました。
なお、本研究は、科研費基盤研究(A)(23H00551)、科研費挑戦的研究(開拓)(22K18440)、科学技術振興機構(JST) 研究成果最適展開支援プログラム (A-STEP)(JPMJTR22U1)、公益財団法人発酵研究所、公益財団法人上原記念生命科学財団、ならびに本学超越バイオメディカルDX研究拠点、本学生体機能・感覚研究センターの支援のもと行われたものです。
■掲載誌
Advanced Science, Volume 10, Issue20
扉絵掲載日:2023年7月26日
■著者
Yamato Goto, Seigo Iwata, Mikako Miyahara, Eijiro Miyako*
■論文タイトル
Discovery of Intratumoral Oncolytic Bacteria Toward Targeted Anticancer Theranostics
■論文概要
腫瘍組織から強力な抗腫瘍作用のある複数の細菌[A-gyo(阿形)、UN-gyo(吽形)、AUN(阿吽)と命名]の単離に成功しました。なかでもAUN(A-gyoとUN-gyoからなる複合細菌)は、様々な癌腫に対して高い抗腫瘍活性を示すだけでなく、近赤外光を照射すると、標的とする腫瘍内で強い蛍光を発現することが明らかになっています。
扉絵詳細:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.202370131
論文詳細:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.202301679
令和5年7月28日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2023/07/28-1.html阿吽の呼吸で癌を倒す! -灯台下暗し:最強の薬は腫瘍の中に隠されていた-

阿吽の呼吸で癌を倒す!
-灯台下暗し:最強の薬は腫瘍の中に隠されていた-
ポイント
- 腫瘍組織から強力な抗腫瘍作用のある複数の細菌(A-gyo、UN-gyo、AUNと命名)の単離に成功
- なかでもAUN(A-gyoとUN-gyoからなる複合細菌)は、様々な癌腫に対して高い抗腫瘍活性を示すだけでなく、近赤外光を照射すると、標的とする腫瘍内で強い蛍光を発現
北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)、先端科学技術研究科 物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎准教授の研究グループは、マウス体内の腫瘍組織から強力な抗腫瘍作用のある複数の細菌の単離に成功した。 |
近年、低酸素状態の腫瘍内部で選択的に集積・生育・増殖が可能な細菌を利用した癌標的治療に注目が集まっている。しかし、従来の癌細菌療法は、基本的には抗癌剤の運搬という、いわゆる従来型のドラッグデリバリーシステムの概念を出ない。また、薬効も十分であるとはいえない。さらに、従来の癌細菌療法は、抗癌活性を発現するためには、遺伝子工学を用いた微生物の操作・改変が必須である。なお、米国や欧州ではヒトへの臨床試験が行われ第3相試験に進んでいる例もあるが、使用される細菌は、多くの場合、遺伝子組換えによって弱毒化したサルモネラ菌やリステリア菌であり、体内で再び強毒化するリスクを常に伴っている。
一方、腫瘍組織内に細菌が存在していることは古くから知られており、近年の研究では、腫瘍の種類ごとに独自の細菌叢が保有されていることが分かっている。また、このような腫瘍内細菌叢が抗癌剤の補助あるいは阻害の要因になっていることも明らかになっている。しかし、腫瘍内から直接細菌を取り出し、細菌そのものを癌の治療薬として活用する研究は皆無であった。
本研究では、マウス生体内の大腸癌由来腫瘍組織から主に3種類の細菌の単離・同定に成功し、これらの細菌にA-gyo(阿形;Proteus mirabilis*1)、UN-gyo(吽形;Rhodopseudomonas palustris*2)、そしてAUN(阿吽;A-gyoとUN-gyoから成る複合細菌)とそれぞれ命名した(図1)。これらの細菌を、大腸癌を皮下移植した担癌モデルマウスの尾静脈に投与したところ、低酸素状態の腫瘍環境内で高選択的に集積・生育・増殖が可能で、かつ高い抗腫瘍効果を示すことを発見した。とりわけ、AUNは、単回投与にも関わらず、A-gyoとUN-gyoの協奏作用により細胞障害性の免疫細胞を効果的に賦活化し、大腸癌、肉腫(サルコーマ)、転移性肺癌、薬物耐性乳腺癌といった様々な癌種に対して強力な抗腫瘍活性を示すことが明らかとなった(図2A)。また、AUNは、生体透過性の高い近赤外光*3によって標的とする腫瘍内で近赤外蛍光を発現することが分かった(図2B)。さらに、マウスを用いた生体適合性試験(血液学的検査、組織学的検査、細菌コロニーアッセイなど)を行った結果、いずれの検査からもAUNそのものが生体に与える影響は極めて少ないことが分かった。
これらの成果は、今回発見した細菌を用いた癌の診断・治療法の基礎に成り得るだけでなく、細菌学や腫瘍微生物学などの研究領域への新しい概念の創出として貢献することを期待させるものである。
本成果は、学際的オープンアクセスジャーナル「Advanced Science」誌(Wiley社発行)のオンライン版に2023年5月8日に掲載された。なお、本研究は、文部科学省科研費 基盤研究(A)(23H00551)、文部科学省科研費 挑戦的研究(開拓)(22K18440)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 研究成果最適展開支援プログラム (A-STEP)(JPMJTR22U1)、公益財団法人発酵研究所、公益財団法人上原記念生命科学財団、ならびに本学超越バイオメディカルDX研究拠点、本学生体機能・感覚研究センターの支援のもと行われたものである。
図1. AUN(A-gyoとUN-gyoから成る複合細菌)がまさに
"阿吽の呼吸"によって癌細胞を倒している様子(イメージ)
図2. (A) AUNによる抗腫瘍効果(腫瘍は完全消失)
(B) AUNの標的腫瘍内における蛍光特性
【論文情報】
掲載誌 | Advanced Science(Wiley社発行) |
論文題目 | Discovery of Intratumoral Oncolytic Bacteria Toward Targeted Anticancer Theranostics |
著者 | Yamato Goto, Seigo Iwata, Mikako Miyahara, Eijiro Miyako* |
掲載日 | 2023年5月8日 |
DOI | 10.1002/advs.202301679 |
【用語解説】
酸素の存在下および不在下の両方の環境で生存可能な腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌(通性嫌気性菌)。運動性、鞭毛を有する数マイクロメートルの棒状の形態を有する。寒天培地上では、Swarming(群化)により独特の波状のコロニー(白色)を形成する特性がある。
酸素の有無に関わらず生存可能な通性嫌気性の紅色非硫黄細菌に属し、運動性のある数マイクロメートルの棒状のグラム陰性桿菌。また、バクテリオクロロフィルから成る光捕集タンパク質を介した光合成を行う。
800~2500 nmの波長の光。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
令和5年5月8日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/05/08-1.html超越バイオ医工学研究拠点 リサーチコアセミナー「Radicals on chemically modified graphene oxide: How they can be generated and exploited?」

セミナーを下記のとおり開催しますので、ご案内します。
開催日時 | 令和4年9月12日(月) 15:00~16:30 |
会 場 | 知識科学系講義棟2階中講義室(要予約:定員30名) |
講演題目 | Radicals on chemically modified graphene oxide: How they can be generated and exploited? |
講 師 | Dr. Alberto Bianco First Class Director of Research, CNRS |
言 語 | 英語 |
予約申込先 | 北陸先端科学技術大学院大学 超越バイオ医工学研究拠点長 都 英次郎 (E-mail:e-miyako@jaist.ac.jp) |
ナノ複合化細菌を利用したがん光診断・治療技術の開発に成功

ナノ複合化細菌を利用したがん光診断・治療技術の開発に成功
ポイント
- 機能性色素を封入したナノ粒子と天然のビフィズス菌を水溶液中で一晩混合し、洗浄するだけの簡便な方法で、高い腫瘍標的能を有し、近赤外光によって様々な機能を発現するナノ複合化細菌を創出
- 当該ナノ複合化細菌の特性と近赤外レーザー光を組み合わせた、新たながん光診断・治療技術を開発
北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)、先端科学技術研究科 物質化学領域の都 英次郎准教授とラグ シータル大学院生(博士後期課程)は、ナノ複合化細菌を使ってマウス体内のがん細胞の蛍光検出と光発熱治療を同時に可能にする技術の開発に成功した。 |
【研究背景と内容】
近年、低酸素状態の腫瘍内部で選択的に集積・生育・増殖が可能な細菌を利用したがん標的治療に注目が集まっている。なかでもビフィズス菌*1を利用するがん標的治療は、その優れた腫瘍選択性と高い安全性などの特徴から有力な微生物製剤として期待されている。しかし、ビフィズス菌に抗腫瘍作用を発現させるためには、通常、煩雑な遺伝子操作が必要である。また、ビフィズス菌を含む細菌を利用するがん標的治療は、基本的には抗がん剤の運搬という、いわゆる従来型のドラッグデリバリーシステム*2の概念を出ない。
本研究では、機能性色素のインドシアニングリーン*3を封入したポリオキシエチレンヒマシ油*4から成るナノ粒子と天然のビフィズス菌を生理食塩水中で一晩混合し、洗浄するだけで、高い腫瘍標的能を有し、生体透過性の高い近赤外レーザー光*5によって近赤外蛍光と熱を発現するナノ複合化細菌の創出に成功した(図1(a),(b))。また、当該細菌のこれらの特性を活用し近赤外レーザー光照射と組み合わせることで、体内の腫瘍を高選択的に検出し、標的部位を効果的に排除することが可能ながん光診断・治療技術を開発することに成功した(図1(c),(d))。さらに、マウスがん細胞とヒト正常細胞を用いた細胞毒性試験、ならびにマウスを用いた生体適合性試験(血液学的検査、組織学的検査など)を行った結果、いずれの検査からもナノ複合化細菌が生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。
これらの成果は、今回開発した細菌の簡便なナノ複合化技術が、がん光診断・治療法の基礎に成り得ることを示すだけでなく、ナノ・マイクロテクノロジー、光学、微生物工学といった幅広い研究領域における材料設計の技術基盤として貢献することを十分期待させるものである。
本成果は、2022年2月18日にナノサイエンス・ナノテクノロジー分野のトップジャーナル「Nano Letters」誌(アメリカ化学会発行)のオンライン版に掲載された。なお、本研究は、日本学術振興会科研費(基盤研究A)と公益財団法人上原記念生命科学財団の支援のもと行われたものである。
図1.(A) ナノ複合化細菌を利用するがん細胞の蛍光検出と光発熱治療の概念
(B) 機能性色素を封入したナノ粒子との混合前後のビフィズス菌水溶液 (C) がん患部におけるナノ複合化細菌の可視化(近赤外蛍光を検出) (D) ナノ複合化細菌の抗腫瘍効果。蛍光検出されたがん患部に近赤外レーザー光を当てると、 光熱変換による効果によりがんが消失した。 |
【論文情報】
掲載誌 | Nano Letters(アメリカ化学会発行) |
論文題目 | Nanoengineered Bifidobacterium bifidum with Optical Activity for Photothermal Cancer Immunotheranostics |
著者 | Sheethal Reghu, Eijiro Miyako* |
掲載日 | 2022年2月18日にオンライン版に掲載 |
DOI | 10.1021/acs.nanolett.1c04037 |
【関連研究情報】
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)、先端科学技術研究科 物質化学領域の都研究室では、近赤外レーザー光により容易に発熱するナノ材料の特性(光発熱特性)に注目し、これまでに、"三種の神器"を備えた多機能性グラフェン(2020年4月23日 JAISTからプレス発表)、ナノテクノロジーと遺伝子工学のマリアージュ(2020年8月17日 JAISTからプレス発表)、がん光細菌療法の新生(2021年2月16日JAISTからプレス発表)、ナノ粒子と近赤外レーザー光でマウス体内のがんを検出・治療できる!(2021年12月21日JAISTからプレス発表)などの光がん療法を開発している。
【用語説明】
*1 ビフィズス菌
ヨーグルトでおなじみの細菌。主にヒトなどの動物の腸内の小腸下部から大腸にかけて生息する乳酸菌の一種で、いわゆる善玉菌と呼ばれる微生物のことである。整腸作用だけではなく、病原菌の感染や腐敗物を生成する菌の増殖を抑える効果があると考えられている。
*2 ドラッグデリバリーシステム
製剤技術の一つで、疾患部位に必要な薬効成分を届ける技術のこと。
*3 インドシアニングリーン
肝機能検査に用いられる緑色色素のこと。近赤外レーザー光を照射すると近赤外蛍光と熱を発することができる。
*4 ポリオキシエチレンヒマシ油
天然ヒマシ油に由来する、安全性の高い界面活性成分のこと。各種化粧品の可溶化・透明化に使用されている。
*5 近赤外レーザー光
レーザーとは、光を増幅して放射するレーザー装置、またはその光のことである。レーザー光は指向性や収束性に優れており、発生する光の波長を一定に保つことができる。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
令和4年2月21日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2022/02/21-1.htmlナノ粒子と近赤外レーザー光でマウス体内のがんを検出・治療できる! ~ ガンマ線架橋したゼラチン-液体金属ナノ粒子の開発により実現 ~

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国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
ナノ粒子と近赤外レーザー光でマウス体内のがんを検出・治療できる!
~ ガンマ線架橋したゼラチン-液体金属ナノ粒子の開発により実現 ~
ポイント
- 液体金属に生体分子を吸着させた複合体へのガンマ線照射によりコア-シェル型の構造を持つナノ粒子の作製に成功
- ガンマ線架橋したゼラチン-液体金属ナノ粒子がEPR効果により腫瘍に集積し、マウスに移植したがんの可視化と、光熱変換によるがん治療が可能であることを実証
- 当該ナノ粒子と近赤外光を組み合わせた新たながん診断・治療技術の創出に期待
北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)、先端科学技術研究科 物質化学領域の都 英次郎准教授とセキ ウン大学院生(博士前期課程)は、量子科学技術研究開発機構(理事長・平野 俊夫、千葉県千葉市)、高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部(群馬県高崎市)の田口 光正上席研究員(「生体適合性材料研究プロジェクト」プロジェクトリーダー)、木村 敦上席研究員と共同で、量子ビーム(ガンマ線*1)架橋技術を用いて、ガリウム-インジウム合金から成る液体金属*2 表面に様々な生体高分子(ゼラチン、DNA、レシチン、牛血清蛋白質)がコートされ、安定な状態を保つことができるコア-シェル型*3 のユニークな構造を有すナノ粒子の作製に成功した(図1)。得られたゼラチン-液体金属ナノ粒子は、EPR効果*4 によって大腸がんを移植したマウス体内の腫瘍内に集積し、生体透過性の高い近赤外レーザー光*5 により、がん患部の可視化と光熱変換による治療が可能であることを実証した。さらに、マウスがん細胞とヒト正常細胞を用いた細胞毒性試験と生体適合性試験を行い、いずれの検査からもゼラチン-液体金属ナノ粒子が生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。当該ナノ粒子と近赤外レーザー光を組み合わせた新たながん診断・治療技術の創出が期待される。 |
【研究背景と内容】
ガリウム・インジウム(Ga/In)合金からなる室温で液体の金属(液体金属)は、高い生体適合性と優れた物理化学的特性を有することが知られており、とりわけナノ粒子化した液体金属をバイオメディカル分野に応用する研究に大きな注目が集まっている。研究チームでも、液体金属をがん患部に送り込むことができれば、生体透過性の高い近赤外レーザー光を用いることで、患部の可視化や光熱変換を利用した、新たながんの診断や治療が実現できるのではないかと考え、研究をスタートさせた。
液体金属をナノ粒子化するためには煩雑な合成プロセスが必要であり、ナノ粒子化した液体金属の構造や機能を溶媒中で安定的に保持させることは難しい。そこで、研究チームは、液体金属をがん患部まで送り、がん細胞内に取り込ませるために、液体金属表面に生体高分子(ゼラチン、DNA、レシチン、牛血清蛋白質)を吸着させたコア-シェル型ナノ粒子の作製を試みた。Ga/In液体金属と生体分子の混合物に超音波照射することで、コア-シェル型ナノ粒子を形成できることを見出したが、そのままではナノ粒子の構造を水中で安定的に維持させることはできなかった。
この問題を解決するために、ナノ粒子表面の生体高分子がバラバラにならないよう、量子ビーム(ガンマ線)架橋反応を利用すれば、架橋剤などの細胞毒性を有する薬剤を用いることなく、生体高分子の特性を保持したまま安定化できると考えた。この方法でガンマ線架橋したゼラチン-液体金属ナノ粒子は、30日以上の粒径安定性を有していること、細胞に対し高い膜浸透性を有し毒性が無いこと、近赤外レーザー光照射により発熱が起こることが確認できたため、がん患部の可視化と治療効果について試験を行った。
大腸がんを移植して10日後のマウスに、ゼラチン-液体金属ナノ粒子を投与し、4時間後に740~790 nmの近赤外光を当てたところがん患部だけが蛍光を発している画像が得られ、当該ナノ粒子がEPR効果によりがん組織に取り込まれていることが分かった(図2(左))。そこで、当該ナノ粒子が集積した患部に対して808 nmの近赤外レーザー光を照射したところ、光熱変換による効果で26日後には、がんを完全に消失させることに成功した(図2(右))。
さらに、ゼラチン-液体金属ナノ粒子の細胞毒性と生体適合性を評価した。2種類の細胞[マウス大腸がん由来細胞(Colon-26)、ヒト胎児肺由来正常線維芽細胞(MRC5)]を培養する培養液中に、ゼラチン-液体金属ナノ粒子を、添加量を変えて投与・分散させ、24時間後に細胞内小器官であるミトコンドリアの活性を指標として細胞生存率を測定した結果、細胞生存率の低下は見られず、細胞毒性はなかった(図3)。また、ゼラチン-液体金属ナノ粒子をマウスの静脈から投与し、生体適合性を血液検査(1週間調査)と体重測定(約1ヵ月調査)により評価したが、いずれの項目でもゼラチン-液体金属ナノ粒子が生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。
これらの成果は、今回開発した生体高分子のナノ粒子コーティング技術が、革新的がん診断・治療法の基礎に成り得ることを示すだけでなく、ナノテクノロジー、光学、量子ビーム工学といった幅広い研究領域における材料設計の技術基盤として貢献することを十分期待させるものである。
本成果は、2021年12月20日に先端材料分野のトップジャーナル「Applied Materials Today」誌(Elsevier発行)のオンライン版に掲載された。なお、本研究は、日本学術振興会科研費(基盤研究A)及び総合科学技術・イノベーション会議 官民研究開発投資拡大プログラム(Public/Private R&D Investment Strategic Expansion PrograM:PRISM)の支援のもと行われたものである。
図1. ガンマ線を利用した生体分子-液体金属ナノ複合体の合成と当該ナノ粒子を活用した光がん療法の概念。
LM: 液体金属、NIR: 近赤外、FL: 蛍光。
図2. ナノ粒子をがん患部に集積・可視化(左)し、光照射によりがんを治療(右)。
図3. CCK-8法によるゼラチン-液体金属ナノ粒子の細胞毒性評価。
赤:マウスの大腸がん細胞、グレー:ヒトの正常細胞、
RIPA: Radioimmunoprecipitation Buffer(細胞や組織の溶解に
使用される緩衝液、本実験の陽性対照に利用)
【論文情報】
掲載誌 | Applied Materials Today |
論文題目 | Sonication- and γ-ray-mediated biomolecule-liquid metal nanoparticlization in cancer optotheranostics |
著者 | Qi Yun, Atsushi Kimura, Mitsumasa Taguchi, Eijiro Miyako* |
掲載日 | 2021年12月20日にオンライン版に掲載 |
DOI | 10.1016/j.apmt.2021.101302 |
【関連研究情報】
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)、先端科学技術研究科物質化学領域の都研究室では、近赤外レーザー光により容易に発熱するナノ材料の特性(光発熱特性)に注目し、これまでに、"三種の神器"を備えた多機能性グラフェン(2020年4月23日 JAISTからプレス発表)、ナノテクノロジーと遺伝子工学のマリアージュ(2020年8月17日 JAISTからプレス発表)、がん光細菌療法の新生(2021年2月16日JAISTからプレス発表)などの光がん療法を開発している。
量子科学技術研究開発機構(QST)、先端機能材料研究部プロジェクト「生体適合性材料研究」では、量子ビーム微細加工技術による先端医療デバイスの創製の一環として、これまでに、診断や創薬における微量検体の分析性能が数10倍に!(2019年6月25日 QSTからプレス発表)、平面状の細胞シートが立体的に!細胞が自分の力でシートを3次元化(2021年7月14日QSTからプレス発表)などの機能性材料作製技術を開発している。
【用語説明】
*1 ガンマ線
ガンマ線とは、放射性同位元素(コバルト60など)の崩解によって放出される量子ビームの一種。
*2 液体金属
室温以下あるいは室温付近で液体状態を示す金属のこと。例えば、水銀(融点マイナス約39℃)、ガリウム(融点約30℃)、ガリウム-インジウム合金(融点約15℃)がある。
*3 コア-シェル型
コアは核、シェルは殻を意味し、一つの粒子で核と殻の素材が異なるものをこのように呼ぶ。
*4 EPR効果
100nm以下のサイズに粒径が制御された微粒子は、正常組織へは漏れ出さず、腫瘍血管からのみがん組織に到達して患部に集積させることが可能である。これをEPR効果(Enhanced Permeation and Retention Effect)という。
*5 近赤外レーザー光
レーザーとは、光を増幅して放射するレーザー装置、またはその光のことである。レーザー光は指向性や収束性に優れており、発生する光の波長を一定に保つことができる。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
令和3年12月21日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2021/12/21-1.html物質化学領域の松村教授、都准教授、ラジャン助教らの論文がMaterials Today誌の表紙に採択
物質化学領域の松村 和明教授、都 英次郎准教授、ラジャン ロビン助教、研究員のSajid Fazalさん(松村研究室)、学生のNishant Kumarさん(博士後期課程2年、松村研究室)らの総説論文が材料科学の最高峰雑誌の一つであるエルゼビア社刊行のMaterials Today誌の表紙(Inner cover)に採択されました。
■掲載誌
Materials Today, Volume 51
掲載日2021年12月
■著者
Nishant Kumar, Sajid Fazal, Eijiro Miyako*, Kazuaki Matsumura*, Robin Rajan*(*責任著者)
■論文タイトル
Avengers against cancer: A new era of nano-biomaterial-based therapeutics
■論文概要
今回の論文は、抗がん治療に利用される様々なナノ材料、高分子材料を系統的に整理し、抗がん高分子化合物や免疫治療、バクテリア療法にいたるまで幅広い材料化学の観点から抗がん治療の最前線および将来展望をまとめた総説論文です。 表紙では各材料をイメージした戦士達がそれぞれの必殺技を用いてガンに立ち向かう様子を表しています。本発表は、科研費基盤研究(A)および本学の超越バイオ医工学研究拠点 リサーチコアの支援による成果です。
論文詳細:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1369702121003321
表紙詳細:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1369702121004028
令和3年12月16日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/12/16-2.html超越バイオ医工学研究拠点 リサーチコアセミナー「次世代ペプチド創薬によるタフターゲットへの挑戦」

セミナーを下記のとおり開催しますので、ご案内します。
新型コロナウイルス感染症対策のため、ネット配信方式にてご参加いただきます。カメラ付きパソコン、スマホ、タブレットなどからご参加いただけます。
開催日時 | 令和3年12月17日(金)13:30~15:00 |
実施方法 | ハイブリッド方式 |
講演題目 | 次世代ペプチド創薬によるタフターゲットへの挑戦 |
講 師 | 一丸ファルコス株式会社 坂元 孝太郎 氏 |
参加申込 | 下記のお問い合わせ担当へ前日までにご連絡ください。 (参加費無料) 【お問い合わせ】 北陸先端科学技術大学院大学 超越バイオ医工学研究拠点長 都 英次郎 (担当:研究施設支援係 sien@ml.jaist.ac.jp) |
物質化学領域の松村教授、都准教授、ラジャン助教らの論文がMaterials Today誌に掲載
物質化学領域の松村 和明教授、都 英次郎准教授、ラジャン ロビン助教、研究員のSajid Fazalさん(松村研究室)、学生のNishant Kumarさん(博士後期課程2年、松村研究室)らの総説論文が材料科学の最高峰雑誌の一つであるMaterials Today誌に掲載されました。
Materials Today誌は材料科学コミュニティに広く関心のある最も革新的で最先端の影響力のある論文を掲載する、Materials Todayファミリー誌の旗艦誌です。
■掲載誌
Materials Today
掲載日2021年10月31日
■著者
Nishant Kumar, Sajid Fazal, Eijiro Miyako*, Kazuaki Matsumura*, Robin Rajan*(*責任著者)
■論文タイトル
Avengers against cancer: A new era of nano-biomaterial-based therapeutics
■論文概要
今回の論文は、抗がん治療に利用される様々なナノ材料、高分子材料を系統的に整理し、抗がん高分子化合物や免疫治療、バクテリア療法にいたるまで幅広い材料化学の観点から抗がん治療の最前線および将来展望をまとめた総説論文です。本発表は、科研費基盤研究(A)およびJAISTの超越バイオ医工学研究拠点 リサーチコアの支援による成果であり、この分野におけるJAISTのプレゼンスが高く評価された結果だといえます。
論文詳細:https://doi.org/10.1016/j.mattod.2021.09.020
令和3年11月5日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/11/5-1.html物質化学領域の都准教授の論文がAccounts of Materials Research誌の表紙に採択

物質化学領域の都 英次郎准教授の論文が米国化学会(ACS)刊行のAccounts of Materials Research誌の表紙(Front cover)に採択されました。本研究成果は日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究A)の支援のもと実施されました。
■掲載誌
Acc. Mater. Res. 2021, 2, 10, 858-862
掲載日2021年9月9日
■著者
Eijiro Miyako
■論文タイトル
Convergence of Liquid Metal Biotechnologies for Our Health
■論文概要
都研究室では、高い生体適合性と優れた物理化学的特性を有するガリウム・インジウム合金からなる室温で液体の金属(液体金属)の表面化学修飾法の開拓と細胞・生体組織との相互作用に関する研究を進めています(例えば、Nature Commun. 8, 15432, (2017).、Angew. Chem. Int. Ed. 56, 13606, (2017).)。本論文では、高機能性液体金属を用いたヘルスケアデバイスならびに医薬への応用と、それらを統合したバイオテクノロジーの将来展望について述べています。
論文詳細:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/accountsmr.1c00126
表紙詳細:https://pubs.acs.org/toc/amrcda/2/10
令和3年10月26日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/10/26-2.html超越バイオ医工学研究拠点 リサーチコアセミナー「カーボンナノチューブの近赤外蛍光を用いた褐色脂肪組織異常の検出」

セミナーを下記のとおり開催しますので、ご案内します。
新型コロナウイルス感染症対策のため、ネット配信方式にてご参加いただきます。カメラ付きパソコン、スマホ、タブレットなどからご参加いただけます。
開催日時 | 令和3年10月13日(水)13:30~15:00 |
実施方法 | ネット配信方式 |
講演題目 | カーボンナノチューブの近赤外蛍光を用いた褐色脂肪組織異常の検出 |
講 師 | 産業技術総合研究所 ナノ材料研究部門 客員研究員 湯田坂 雅子 氏 |
参加申込 | 下記のお問い合わせ担当へ前日までにご連絡ください。 (参加費無料) 【お問い合わせ】 北陸先端科学技術大学院大学 超越バイオ医工学研究拠点長 都 英次郎 (担当:研究施設支援係 sien@ml.jaist.ac.jp) |
がん光細菌療法の新生

がん光細菌療法の新生
ポイント
- 高い腫瘍標的能を有し、近赤外光によって様々な機能を発現する光合成細菌の発見
- 当該細菌を活用したがん診断・治療技術の創出
北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市)先端科学技術研究科物質化学領域の楊 羲研究員、博士前期課程学生の小松 慧、博士後期課程学生のラグー シータル、都 英次郎准教授らは、光合成細菌を使ってマウス体内のガン細胞の検出と治療を同時に可能にする技術の開発に成功した。 世界的にがんの罹患者数、死亡者数は増加している。体内の高精度ながん細胞検出技術ならびにがん細胞を根絶可能な治療法の開発は、がん医療における究極の目的である。 本研究では、低酸素状態の腫瘍環境内で高選択的に集積・生育・増殖が可能で、かつ生体透過性の高い近赤外レーザー光*1によって様々な機能を発現する非病原性の紅色光合成細菌*2を発見した(図1)。また、当該細菌の特性を活用することで体内の腫瘍を高選択的に検出し、標的部位のみを効果的に排除することが可能な "がん光細菌療法"という新しい概念・技術を創出することに成功した。 本研究で提案する概念・技術は、ナノ・マイクロテクノロジー、光学、微生物工学といった幅広い研究領域に貢献し、将来的に先進医療分野において世界の科学・技術をリード可能な革新的がん診断・治療法に成り得ると期待している。 本成果は、2021年2月15日にナノサイエンス・ナノテクノロジー分野のトップジャーナル「Nano Today」誌(Elsevier発行)のオンライン版に掲載された。なお、本研究成果は日本学術振興会科研費[基盤研究A、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)]の支援のもと行われたものである。 |
![]() 図1. がん光細菌療法の概念。NIR: 近赤外、FL: 蛍光、ROS: 活性酸素種、PA: 光音響。 |
【論文情報】
掲載誌 | Nano Today(Elsevier発行) |
論文題目 | Optically activatable photosynthetic bacteria-based highly tumor specific immunotheranostics |
著者 | Xi Yang, Satoru Komatsu, Sheethal Reghu, Eijiro Miyako* |
掲載日 | 2021年2月15日にオンライン版に掲載 |
DOI | 10.1016/j.nantod.2021.101100 |
【関連研究情報】
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)、先端科学技術研究科物質化学領域の都研究室では、近赤外レーザー光により容易に発熱するナノ材料の特性(光発熱特性)に注目し、これまでに、"三種の神器"を備えた多機能性グラフェン(2020年4月23日 JAISTからプレス発表)、ナノテクノロジーと遺伝子工学のマリアージュ(2020年8月17日 JAISTからプレス発表)などの光がん療法を開発している。
【用語解説】
*1 近赤外レーザー光
レーザーとは、光を増幅して放射するレーザー装置、またはその光のことである。レーザー光は指向性や収束性に優れており、発生する光の波長を一定に保つことができる。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
*2 紅色光合成細菌
近赤外光を利用して光合成を行う細菌。水の分解による酸素発生は行わない。
令和3年2月16日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2021/02/16-1.htmlNEDO「官民による若手研究者発掘支援事業」に2件の研究開発テーマが採択
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「官民による若手研究者発掘支援事業」に本学から以下の2件の研究開発テーマが採択されました。
「官民による若手研究者発掘支援事業」は、実用化に向けた目的指向型の創造的な基礎又は応用研究を行う大学等に所属する若手研究者を発掘し、若手研究者と企業との共同研究等の形成を促進するプロジェクトです。次世代のイノベーションを担う人材を育成するとともに、我が国における新産業の創出に貢献することを目的として実施します。
本事業のうち「共同研究フェーズ」は、研究者が企業と共同研究等の実施に係る合意書を締結し、企業から大学等に対して共同研究等費用が支払われることを条件として、実用化に向けた研究を助成するもので、事業期間は最大5年です。
また、「マッチングサポートフェーズ」は、企業との共同研究等の実施を希望する研究者が実施する、産業界が期待する研究を助成するもので、事業期間は最大2年です。
*詳しくは、NEDOホームページをご覧ください。
「官民による若手研究者発掘支援事業 共同研究フェーズ」
- 研究開発テーマ名:イオン注入を用いた裏面電極型Siヘテロ接合太陽電池の製造技術開発
「官民による若手研究者発掘支援事業 マッチングサポートフェーズ」
- 研究開発テーマ名:全自動花粉交配マシンの創出
令和2年12月2日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2020/12/02-1.htmlナノテクノロジーと遺伝子工学のマリアージュ -ガン幹細胞制御技術に向けて-

ナノテクノロジーと遺伝子工学のマリアージュ
-ガン幹細胞制御技術に向けて-
ポイント
- ナノテクノロジーと遺伝子工学を利用し、細胞やマウス体内のガン幹細胞性を制御することに成功
北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)、先端科学技術研究科物質化学領域の都 英次郎准教授の研究グループは、ウシの角に似た炭素分子「カーボンナノホーン」(CNH)*1と遺伝子工学を使ってマウス体内のガン幹細胞性を制御する技術の開発に成功した。
再発と転移を繰り返す治療抵抗性のガン幹細胞を体内から排除可能な治療法が望まれている。本研究では、生体透過性の高い近赤外レーザー光*2でCNHが容易に発熱する性質(光発熱特性)*3と52℃以上の温度になるとカルシウムイオンを細胞内に取り込むTransient Receptor Potential Vanilloid 2(TRPV2)*4というタンパク質に着目した。遺伝子工学的手法によりTRPV2を導入したガン細胞にCNHの光発熱特性を作用させたところ、細胞内に過剰のカルシウムイオンが流入し、標的とするガン細胞が選択的かつ効果的に死滅することが明らかとなった(図1)。また、マウスを用いた実験で本手法がガン幹細胞性の制御に有用であることも分かった。本手法を利用すれば体外からレーザー光を照射し、その熱で患部を狙い撃ちできるほか、治療の難しいガン幹細胞の予防・治療法にも道が開けると期待している。 本成果は、2020年8月17日に英国科学誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載された。なお、本研究成果は日本学術振興会科研費[基盤研究A、基盤研究B、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)]の支援のもと、国立研究開発法人産業技術総合研究所と行われた共同研究によるものである。 |
図1. 機能性CNHとTRPV2によるガン細胞殺傷メカニズム
【論文情報】
掲載誌 | Nature Communications |
論文題目 | Photothermogenetic inhibition of cancer stemness by near-infrared-light-activatable nanocomplexes |
著者 | Yue Yu, Xi Yang, Sheethal Reghu, Sunil C. Kaul, Renu Wadhwa, Eijiro Miyako* |
掲載日 | 2020年8月17日にオンライン版に掲載 |
DOI | 10.1038/s41467-020-17768-3 |
【用語説明】
*1 カーボンナノホーン(CNH)
直径は2~5 nm、長さ40~50 nmで不規則な形状を持つ。数千本が寄り集まって直径100 nm程度の球形集合体を形成している。とりわけ、薬品の輸送用担体として期待されており、バイオメディカル分野で注目を集めている。
*2 近赤外レーザー光
レーザーとは、光を増幅して放射するレーザー装置、またはその光のことである。レーザー光は指向性や収束性に優れており、発生する光の波長を一定に保つことができる。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
*3 光発熱特性
数多くあるナノカーボン材料の特性の一つであり、レーザー光やカメラのフラッシュにより容易に発熱する特性のこと。
*4 Transient Receptor Potential Vanilloid 2(TRPV2)
細胞膜に存在するタンパク質の一種。52℃以上の温度によって活性化し、細胞内へカルシウムイオンを流入する。
令和2年8月17日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2020/08/17_2.html