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研究

教員インタビュー(この人に聞く)

由井薗 隆也 准教授

アイデア発想法+共同作業支援技術でつくるイノベーション基盤

由井薗 隆也 准教授

ヒューマンライフデザイン領域 由井薗 隆也 准教授 Yuizono Takaya

1999年鹿児島大学大学院理工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。同大助手、島根大学講師、助教授を経て、 2006年からJAIST准教授。グループウェアとネットワークサービス研究会幹事。著書に『アイデア発想法と共同作業支援』(共著・共立出版・2014)など。

今やあらゆる知識がインターネット上に溢れている時代です。これに対し、ヒューマンライフデザイン領域の由井薗隆也准教授は、より高次の視点から「知識をつくる知識」の研究に取り組んでいます。
焦点を当てるのは「Creativity」「Collaboration」「Culture」の3つの「C」。すなわち、知識をいかにしてつくるか、そのために人々がどのように協力するか、そして国・文化・学術領域を超えて共通する知識とは何かという視点から、知識創造支援グループウェアの開発を行っています。



人間を賢くするコラボレーション技術の理解・開発を目指す

学生時代の恩師に紹介してもらった梅棹忠夫の著書『知的生産の技術』に触発されて、創造的な知的生産を支援したいと考えるようになりました。それが今につながる研究のモチベーションです。当時は大学にコンピュータネットワークが普及し始めていた時代です。「人間は社会的動物である」と言われますが、ネットワーク上での人々の協力作業を支援したいとも思いました。 コンピュータによってあらゆることを自動化させる人工知能の研究に対し、私の研究ではコンピュータを人間が新しい知識をつくるための道具、またはメディアとして捉えます。 人工知能は演繹帰納を中心に研究が進められてきた歴史があり、近年はビッグデータにより帰納的アプローチも可能になっています。これに対して、人間には創造的なイマジネーションがあります。この力こそ人間の知的活動の源泉であり、イノベーションを生み出す土台となります。
コンピュータネットワーク上に構築されるイノベーション環境を考える上で重要なのは、「発想法」(Creativity)と、グループウェアなど「場づくり」(Collaboration)を考慮した情報システムです。またグローバル化の進展とともに、知識の相互理解を図る「異文化協力」(Culture)も求められます。私たちの研究室では、これら3つのCを基本テーマとし、人間の創造的な活動を支援する研究を行っています。
研究方針としては、どのテーマにも共通することですが、新たに開発・提案したシステムや会議方法を実際に人々に使ってもらい、きちんと評価する科学的なアプローチを重視しています。

イノベーション環境(IT中心)
「アイデア発想法と共同作業支援」図1.2を一部修正



発想支援(Creativity)~創造的な会議技法を支援する情報システムの研究~

発想法として広く知られているのが、紙ベースで考案されてきたKJ法やブレーンストーミングなどの会議技法です。私自身は、学生時代から一貫してKJ法を参考にした発想支援グループウェアの研究に従事してきました。
これまでに、発想法を支援するテクノロジーとして、コンピュータの画面をつないで複数のマウスで同時に操作できるシステムを組み、大画面共同作業環境を実現しました。このシステムを使って行った実験では、アイデア数が多く出ると結果が良くなる、また音声会話よりテキストチャットによるコミュニケーションを行った方が生産量が増える、という結果が出ています。ソーシャルメディアの時代となった現在は、あるテーマに対して1万人の人が同時に意見を出すことも可能です。将来的にはより大規模な共同作業環境で、情報技術とKJ法のような人間的な感性との融合を考えていきたいです。

アイデア発想のための電子会議
アイデア発想のための電子会議
Groupware for a New Idea Generation

情報技術だけでなく社会技術も研究テーマとして扱っています。たとえば、人を楽しませるゲーム的な要素をゲーム以外の分野に応用する「ゲームフィケーション」という考え方が注目を集めていますが、私たちもブレーンストーミングの支援システムにゲームフィケーションを取り入れる研究を進めています。ブレーンストーミングのプロセスで、仲間の意見を使って意見を出すと加点される仕組みを導入すると、人間的な「楽しい」という感情がモチベーションとなって、集団でのアイデア出しが活性化されるのです。



場づくり(Collaboration)~チーム内のアイデアづくりを活性化する場の研究~

ヒューマンライフデザイン領域のルーツである知識科学研究科の初代科長・野中郁次郎先生は、組織的な知識創造のプラットフォームとして「場」が重要であるとしています。私たちはそうした場をソーシャルメディア上に設計する研究を進めています。
その一貫として、野中先生が日本企業の知識ダイナミクスを説明したSECIモデルの考えをベースに、研究室のゼミを電子化した環境で行っていた時期があります。
知識経営において重要なのは、「誰が何を知っているか」を知ることです。こうした視点から、雑談データを用いたKJ法の研究に取り組みました。ゼミのメンバーは、テキストチャットで発話する際、これは“アイデア”、これは“質問”などと示す意図データを追加します。こうして収集したチャットデータをもとに、グループの中で誰が何の知識を持っているのかの抽出が可能となっています。

進捗報告形式ゼミナール
進捗報告形式ゼミナール:週1回
All student report their weekly activity.



異文化協力(Culture)~文化背景の異なる知識の相互理解を促す〜

人の価値観は、その人が属している社会や文化によって多様です。人工知能として特定の知性をつくった場合、そうした多様性を受け入れることができるでしょうか。
グローバル化した現代社会で人々が協力して創造的な活動を行うには、さまざまな国や文化に属する人、あるいは異なる専門分野を持つ人々の相互理解が求められます。多様な文化圏からやってきた留学生が在籍するJAISTは、異文化協力に関わる研究に最適な環境です。当研究室でも、学生が第2言語を使った場合のコラボレーションや、言語の壁を越えた絵文字チャットに関する研究テーマに取り組んでいます。
人間の知性の延長上には文化があります。たとえば石川には石川のローカルな知識があります。地元の協力を得ながら、地域発のイノベーションの創出を支援したいとも考えています。



イノベーションの基盤づくりに挑戦 多文化が共生する研究環境

コンピュータの演繹的、帰納的な処理には、人間の能力はとうてい及びません。しかし、データが社会的な倫理に叶っているか、あるいは人の役に立つかなどの価値を発見することは、コンピュータにはできない人間の創造的な仕事です。そうした点で、私たちが挑戦できることはまだまだたくさんあります。また「知識のつくり方の知識」は、時代が変わっても変わらない知識です。私たちが追究しているのは、社会変化に適応できるイノベーション基盤と言えるでしょう。
当研究室は日本人学生、留学生、文系、理系の学生が所属している環境で、研究テーマは各人が主体的に決めます。
学生には、目的意識を持ち、常に自分の能力を最大限伸ばすことを意識してほしいと思っています。特に博士課程に進む学生には、新しい学術領域に挑戦するマインドを持つことを期待します。
コンピュータ支援による共同作業の研究は、コンピュータ・システムなどの技術的研究のほか、社会心理学、認知科学、知識経営、技術経営など幅広い人間理解の領域にまたがる学際的な研究分野です。様々な学術分野、あるいは文化のバックグランドをもち、研究にチャレンジする意欲に溢れる人材を求めています。

平成28年11月掲載

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