研究活動の検索
研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。応用物理学領域の村田研究室の論文がThe Journal of Physical Chemistry Letters誌の表紙に採択
応用物理学領域の江口 敬太郎助教、村田 英幸教授の論文が米国化学会(ACS)刊行のThe Journal of Physical Chemistry Letters誌の表紙(Front cover)に採択されました。
■掲載誌
J. Phys. Chem. Lett. 2021, 12, 38, 9407-9412
掲載日2021年9月23日
■著者
Keitaro Eguchi* and Hideyuki Murata*
■論文タイトル
Evolution of the Ionization Energy in Two- and Three-Dimensional Thin Films of Pentacene Grown on Silicon Oxide Surfaces
■論文概要
分子薄膜が2次元構造から3次元構造に成長するにつれて、分子薄膜のイオン化エネルギーが小さくなることが理論計算により予測されていますが、実験的には確認されていませんでした。本研究では、光電子収量分光法を用いて2次元と3次元構造におけるペンタセン薄膜のイオン化エネルギーを測定し、ペンタセンを20層積層した3次元のペンタセン薄膜では、2次元のペンタセン薄膜に比べて、イオン化エネルギーが約0.2 eV小さくなることを初めて実証しました。
論文詳細:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jpclett.1c02723
表紙詳細:https://pubs.acs.org/toc/jpclcd/12/38
令和3年10月6日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/10/6-1.html材料の柔らかさを活かした次世代ロボットの開発


材料の柔らかさを活かした次世代ロボットの開発
ソフトロボット研究室 Laboratory on Soft Robotics
教授:ホ アン ヴァン(HO Anh-Van)
E-mail:
[研究分野]
ロボティクス
[キーワード]
ソフトロボティクス、柔軟な触覚装置
研究を始めるのに必要な知識・能力
自然の物事と現象を解明することにより、柔軟物を積極的に利用した新機能の機構を開発する本研究室は、分析力や実践力を求め、機能材料の力を借りて技術課題を解決する想像力を重視しています。また、特定の分野・知識を問わずに、ものづくりに興味を持つ学生を歓迎します。
この研究で身につく能力
・機械設計、電子回路設計、加工方法 ・プログラミング、制御 ・計算、解析 |
・提案能力 ・コミュニケーション能力、論文作成力 ・グローバルな思考、起業魂 |
【就職先企業・職種】 機械設計会社、電機メーカ、大学等
研究内容
概要:
自然界のすべての現象には、何らかの形で必ずダイナミクスが関与しています。このダイナミクスを理解できれば、その現象を生じさせるために、メカニズムがどのように進化してきたかを理解することが可能になります。また、そのメカニズムをロボットの駆動装置または感覚装置に応用することで、新しい機構を創出できると考えられます。本研究室の長期研究計画・内容については以下の図をご参照ください。
内容:
本研究では柔軟物とその形態制御を用いてセンシング装置・アクチュエーター・知能は以下のようなテーマで行われています。
【短期のテーマ】
① | ![]() |
② | ![]() |
③ | しわのメカニズムにヒントを得た、柔軟性を有するアクチュエータを用いて柔軟物を変形させることによって、同一のセンサのみでも異なるセンシング能力が得られる能動的な触覚センサの開発を目指します。![]() |
【長期のテーマ】
④ 柔軟物を掴めるソフトロボットハンドの開発
⑤ ラピッドプロトタイプ技術の開発
⑥ 柔軟な思考のあるロボットの開発 等
主な研究業績

- Van Ho et al., IEEE Transactions on Robotics, Vol. 27, No. 3, pp.411-424, 2011
- Van Ho et al., IEEE Sensors Journal, Vol. 13, No. 10, pp. 4065-4080, 2013,
- Van Ho et al., IEEE Robotics and Automation Letter, Vol. 1, Issue 1, pp. 585-592, 2016
使用装置
3Dプリンター、電動直動ステージ、6軸力覚センサ、触覚提示装置、小型NC加工機、高速度カメラ
研究室の指導方針
修士課程、博士課程に関わらず、本研究室に右側の図が示すような「研究活動のサイクル」や「3Cの研究者」を身につけた学生を育成します。そのため、毎週のミーティングで学生の進捗・成長を積極的にフォローします。
研究活動において、各メンバーの発想・アイデアを尊重にして、PDCA(Plan・Do・Check・Action)を通じて具体的な実現方法が見つかるまで指導します。
学生のキャリアパスの選択を全力でサポートします。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/vanho/index.html
表面・界面の理解に基づいたナノマテリアル開発


表面・界面の理解に基づいた
ナノマテリアル開発
先端ナノ材料科学研究室
Laboratory on Advanced Nanomaterials Science
教授:高村 由起子(YAMADA-TAKAMURA Yukiko)
E-mail:
[研究分野]
材料科学、材料工学、表面科学
[キーワード]
ナノマテリアル、二次元材料、薄膜成長、走査プローブ顕微鏡、放射光実験
研究を始めるのに必要な知識・能力
我々の研究室で行っている研究に向いているのは、ナノマテリアルの表面や界面で原子が並んでいる様子を見てみたい、という好奇心が強く、とにかく実験するのが好き、という方です。
この研究で身につく能力
最先端の装置、しかも世界に一台しかないような特殊な装置、を自分で操作して一定の期間内に成果を出すことを要求されますので、自ずとそのような装置の操作に必要な慎重さと大胆さが養われます。また、数多くの実験をこなすことで、効率的な実験計画の立て方が身につくのと同時に、装置の不具合などで実験が思い通りに進まない、といった経験から、想定外の事態に対応する能力も養われます。実験で得られた結果などについて自分でまとめ、考え、理解・学習する能力だけではなく、先輩や教員と一緒に議論することによって、説明する力、論理的に考える力が養われます。
【就職先企業・職種】 電気・電子、機械、医療機器メーカーのエンジニア職、研究職
研究内容

研究室での実験風景
現代の産業の基幹を支える薄膜材料の高品質化には、薄膜-基板界面の高度な制御が欠かせません。特に超薄膜やナノ構造体を対象としたナノマテリアル研究では、表面・界面が全体に占める割合が高くなり、表面・界面構造が成長や機能発現に果たす役割が重要となってきます。本研究室では、新奇ナノマテリアルには表面・界面の理解と高度な制御が必要であるとの認識から、表面・界面の詳細な分析とその制御に基づいたナノマテリアル開発を目指します。より具体的には、薄膜及びナノ構造成長表面のその場観察と異種材料界面構造の解析から得られる知見を有効に成長過程に還元するために、不純物混入の少ない超高真空における薄膜成長に取り組み、電子等のプローブと検出器を導入した装置を使用します。このユニークな装置を用いた薄膜成長とその場観察、放射光施設における表面・界面構造の解析と第一原理計算を組み合わせ、新しいナノマテリアルの創成とその構造・性質の解明に挑みます。
原子層厚みの究極のナノマテリアル、ケイ素版グラフェン「シリセン」の研究
シリコンウェハー上にエピタキシャル成長させた二ホウ化物薄膜表面を、光電子分光を専門とする研究室と第一原理計算を専門とする研究室と共同で詳細に調べている過程でシリセンを思いがけず発見することができました。この成果は国内外の大学や研究機関との共同研究に発展し、最近では、絶縁性の二次元材料である六方晶窒化ホウ素とシリセンを重ねることに成功しました。
二次元フラットバンドマテリアルの研究
ゲルマニウムウェハー上にエピタキシャル成長させた二ホウ化物薄膜を詳細に調べると、上記のシリセンの場合の蜂の巣構造とは異なる二次元的な結晶構造を持つGe層が形成されていました。また、我々の理論研究から、同様の結晶構造を持つ二次元材料の電子状態に「フラットバンド」の発現が期待できることが明らかとなりました。フラットバンドは物質に強磁性や超伝導を付与することがあり、現在、実験と計算の両面から研究を進めています。
カルコゲナイド系二次元材料の研究
セレン化ガリウム(GaSe)は、非線形光学特性を持つ層状物質として古くから研究されてきました。積層多形はこれまで何種類か報告されていましたが、我々の研究室の学生が、結晶多形を新たに発見しました。この従来とは異なる結晶構造を持つGaSe がどんな性質を持つのか、実験と計算の両面から調べています。
主な研究業績
- First-principles study on the stability and electronic structure of monolayer GaSe with trigonal-antiprismatic structure, H. Nitta, T. Yonezawa, A. Fleurence, Y. Yamada-Takamura, and T. Ozaki, Physical Review B 102, 235407 (2020).
- Emergence of nearly flat bands through a kagome lattice embedded in an epitaxial two-dimensional Ge layer with a bitriangular structure, A. Fleurence, C.-C. Lee, R. Friedlein, Y. Fukaya, S. Yoshimoto, K. Mukai, H. Yamane, N. Kosugi, J. Yoshinobu, T. Ozaki, and Y. Yamada-Takamura, Physical Review B 102, 201102(R) (2020).
- Van der Waals integration of silicene and hexagonal boron nitride, F. B. Wiggers, A. Fleurence, K. Aoyagi, T. Yonezawa, Y. Yamada-Takamura, H. Feng, J. Zhuang, Y. Du, A. Y. Kovalgin and M. P. de Jong, 2D Materials 6, 035001 (2019).
使用装置
超高真空走査プローブ顕微鏡、超高真空薄膜成長装置、薄膜材料結晶性解析X線回折装置、X線光電子分光装置、国内外の放射光施設、本学の超並列計算機
研究室の指導方針
我々の研究室では、迷ったらどんどん手を動かして、実験や計算をしてみることを学生さんに勧めています。実際にその実験や計算に従事している学生さんにしか思いつけない、新しいアイデアというのが必ずあります。アイデアとやる気とスキルがあったら、まずは、とことんやってみましょう。教員と先輩ができる限りのサポートをいたします。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/yukikoyt/groupHP/Home.html
光を知り、光で分析する ~分光学への誘い~


光を知り、光で分析する ~分光学への誘い~
基礎物理化学・超微量ラマン分光分析研究室
Physical Chemistry, Ultrasensitive Raman Spectroscopy Laboratory
准教授:山本 裕子(YAMAMOTO Yuko S.)
E-mail:
[研究分野]
物理化学境界領域・超微量ラマン分光、量子光学
[キーワード]
ラマン分光学、表面増強ラマン散乱、ナノマテリアル
研究を始めるのに必要な知識・能力
「光について学びたい」「光について詳しくなりたい」「光を使った分析手法を身につけたい」など、「光」あるいは「分光学」に興味を持ち学ぶ意欲があること。これが当研究室で研究を始めるにあたって必要な能力(意欲) です。実現に必要な知識や、技術の修得の仕方は教えます。
大発見したい・ノーベル賞を取りたい・大きな成果を上げたいなどの大きな野望を持つ学生さん・社会人学生さんも大歓迎です。
この研究で身につく能力
光を使った各種分析手法について、基礎~応用までが一貫して身につきます。特に、①ラマン分光法・超微量ラマン分光法(表面増強ラマン散乱, Surface-enhanced Raman scattering)、②紫外可視吸収分光法などの各種吸収分光法。また、可視光レーザーの取り扱いや、光学顕微鏡やミラー・レンズなど各種光学部品の取り扱い・装置の組み立て、分光器の基礎知識や取り扱い方も身につけることができます。
【就職先企業・職種】 化学系企業、起業等
研究内容
私たちは、光を使った検出方法を軸としながら世界最先端の研究を進めています。光検出は、マテリアル研究を行う上で最も基本的かつ重要な手法のひとつです。

図. 表面増強ラマン散乱法測定の概略図
1.強結合 新しい光学現象を生み出すナノスケール創成場
1970年代に、表面増強ラマン散乱 (Surface-enhanced Raman scattering,SERS) という現象が発見されました。これは、物質に光を当てたときにごくわずかに現れる「ラマン散乱光」が飛躍的に増強する現象のことです。SERS効果は当初、銀のナノ構造体表面で発見されました。そして、発見から50年経ち、なぜラマン散乱効果が飛躍的に増強するのか、そのメカニズムがおおよそ明らかになりました。
私たちは2014年に、ラマン散乱効果が飛躍的に増強する「ホットスポット」では「強結合」という現象が起きており、この「強結合」状態が別の新しい光学現象をも生み出していることを発見しました。
ホットスポットは、ナノ世界の光が作り出す未知のフロンティアの一つです。その発見以来、私たちは銀ナノ粒子がつくるホットスポットでの強結合をさらに深く、詳しく調べ、数々の新現象を発見し続けています。
2.超微量ラマン分光(表面増強ラマン散乱, SERS)
上記の通り、SERSは1970年代に発見され既に50年経っています。しかし未だ目立った実用化例がないことから「Sleeping Giant (眠れる巨人)」と呼ばれています。一方で SERSは人のこころをどこか魅了するのでしょう、巨人を眠りから覚まそうと SERS研究へ新規参入してくる研究者は後を絶ちません。
私たちの研究グルーブでは、銀ナノコロイド粒子を使って SERSを研究しています。銀ナノコロイド粒子は1997年に初めて1分子だけのSERS測定に成功した、極めて重要な実験系です。
その銀ナノコロイド粒子を使って、私たちの研究グループメンバーの一人が2024年に「希土類元素のSERS」という新しい研究分野の開拓に成功したので、次に説明します。
3.希土類元素とSERS
希土類元素(レアアース) は原子番号57番~71番に位置する非常に重い元素で、地球上にほとんど存在しないことから希土類元素と呼ばれています。希土類元素は最外殻の電子配置が互いに似通っているため、化学的な手法でその種類を同定することが難しい問題があります。
当研究室では2024年、希土類元素を含むキレート分子の SERSを測定することで、間接的に希土類元素であるLa(ランタン) とGd(ガドリニウム) を互いに識別することに成功しました。これは世界的に見て非常にユニークかつ重要な研究成果です。とても難しい研究ですが、研究に新たに参画する挑戦者をお待ちしています。
4.金属材料と電気化学
当研究室ではまた、物理化学分野、特に金属材料科学と電気化学の境界領域での研究もスタートしています。まだ詳しくお伝えすることができませんが、世界に大きなインパクトを与える大きな研究成果を期待しながら日々研究を続けています。
参考文献・これまでの研究業績や論文にご興味がある方は、お気軽に指導教員までメール( )または指導教員室M4-40へお越しください。論文の別刷(論文のコピーのこと)を差し上げます。
主な研究業績
- Jin Hao, Tamitake Itoh and Yuko S. Yamamoto, “Classification of La3+ and Gd3+ rare earth ions using surface-enhanced Raman scattering”, Journal of Physical Chemistry C, 128, 5611 (2024)
- Tamitake Itoh and Yuko S. Yamamoto, “Basics and Frontiers of Electromagnetic Mechanism of SERS Hotspots” In Book: Procházka, M., Kneipp, J., Zhao, B., Ozaki, Y. (eds) “Surface- and Tip-Enhanced Raman Scattering Spectroscopy” Springer, Singapore (2024)
- 山本裕子 , “ プラズモンと分子の電磁相互作用の基礎 ”, 応用物理学会フォトニクスニュース , 9(2), 68-72 (2023)
使用装置
表面増強ラマン顕微鏡(自作)
ラマン顕微鏡
紫外可視吸収測定器
密度汎関数(DFT)計算装置
研究室の指導方針
世界トップレベルで基礎研究を行うための、自由闊達な研究環境を提供しています。当研究室にはコアタイムがありません。各自が自由な時間で研究を組み立てており、そのスタイルを奨励しています。研究室内のメンバーとの情報交換・互いの進捗の確認は、週一回の全体ミーティングおよび輪講セミナーにて行います。そのため、自律的にしっかりと研究生活を組み立てられるタイプの学生の方に適した環境です。
自らの研究成果を世に発信するため、年1回程度の学会発表を推奨しています。研究テーマの設定は、指導教員が提示する研究テーマを参考に、個々の学生さんの興味範囲・方向性を取り入れつつ最大限希望に添う形で行います。基本的に、研究成果は国際論文(英語)という形で世に広く発表することを目指していきます。プロの研究者を志望する方にお勧めです。
もちろん、指導教員による個別指導を随時行います。指導教員の持つ知識や経験をどんどん活用してください。
“量子スピンのダイナミクス”を計測・制御して応用へ繋げる


“量子スピンのダイナミクス”を
計測・制御して応用へ繋げる
量子センシング・イメージング研究室
Laboratory on Quantum Sensing and Imaging
准教授:安 東秀(AN, Toshu)
E-mail:
[研究分野]
量子スピンセンシング・イメージング、ナノMRI
[キーワード]
量子技術、ダイヤモンドNV中心、スピントロニクス、スピン波、プローブ顕微鏡、マイクロ波、共焦点顕微鏡
研究を始めるのに必要な知識・能力
固体物理、材料物性の基礎知識を習得していることが望ましいです。基礎を身につける勤勉さと新しいことにチャレンジする意欲。
この研究で身につく能力
研究活動を通して、自分で問題を設定し、これを解決し、他人や社会に成果を発信する能力を身につけます。このために、先ず、簡単な実験を通して自分で実験データの取得、装置の改良、解析、データのまとめ、研究発表ができる能力を育成します。その後、自分で新しくチャレンジングなテーマを設定し、これを解決してゆくことに取り組みます。その際には、他人と協調して研究を行うこと、英語文献の読解力や英語によるコミュニケーション力が必要で、これらの能力を身に付けることも重視します。
【就職先企業・職種】
研究内容

図1.電子や原子核の持つスピン自由度、電子スピン共鳴、スピン流

図2.ダイヤモンド中のNV中心と磁気共鳴スペクトル
電子の内部自由度であるスピンのダイナミクスを利用した新しい現象を探索し、これを応用したデバイスやセンサーを実現することを目指します。そのための基礎となるスピンダイナミクスの高感度センシングと高分解能イメージングの計測技術を重視して研究に取り組んでいます(図1)。
①ダイヤモンドNV中心を用いたナノ磁気センシング

図3.表面スピン波とダイヤモンドNV中心のスピン変換

図4.走査ダイヤモンドNV中心スピン顕微鏡
近年、ダイヤモンド中の窒素-空孔複合体中心(NV 中心)に存在する単一スピンは、高性能なスピンセンサーとして有用であることが判り(図2)、NV中心を利用したナノスピン(磁気)センシング(図3)・イメージング(図4)が注目されています。この NV 中心を走査プローブとした高感度・高分解能スピンセンサーを開発し、単一電子スピン、単一核スピンのダイナミクスをセンシングすることを目指します。
主な研究業績
- Yuta Kainuma, Kunitaka Hayashi, Chiyaka Tachioka, Mayumi Ito, Toshiharu Makino, Norikazu Mizuochi, and Toshu An "Scanning diamond NV center magnetometer probe fabricated by laser cutting and focused ion beam milling" Journal of Applied Physics 130, 243903 (2021)
- Dwi Prananto, Yuta Kainuma, Kunitaka Hayashi, Norikazu Mizuochi, Ken-ichi Uchida, and Toshu An "Probing Thermal Magnon Current Mediated by Coherent Magnon via Nitrogen-Vacancy Centers in Diamond" Phys. Rev. Applied 16, 064058 (2021).
- D. Kikuchi, D. Prananto, K. Hayashi, A. Laraoui, N. Mizuochi, M. Hatano, E. Saitoh, Y. Kim, C. A. Meriles, T. An, Long-distance excitation of nitrogen-vacancy centers in diamond via surface spin waves, Applied Physics Express, 10, 103004 1-4 (2017).
使用装置
磁気共鳴計測・制御装置(自作)、FPGA、LabVIEWによる電子制御
走査マイクロ波顕微鏡(自作)
共焦点光学的磁気共鳴顕微鏡(自作)
水晶振動子型AFMプローブ顕微鏡(自作)
超高真空・極低温走査スピン顕微鏡(自作)
研究室の指導方針
本研究室では、スピンのダイナミクスを利用してセンサーやデバイスへの応用へ繋げることを目標に、材料物性の基礎を理解し(“確かな知識”)、課題を自ら設定し(“自由な発想力”)、解決してゆく能力を育成します。毎日の研究において議論の場を多く設定し、コミュニケーション能力を高めます。課題を解決する手段としての新規計測手法の開発と工学的技術の取得にも取り組みます。意欲溢れる皆さんが研究に参加し、“わくわくする”研究の醍醐味に触れ、将来の活躍の基礎を確立する場を提供したいと考えています。
[研究室HP] URL: https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/toshuan-www/index.html
電子顕微鏡とデータ科学の融合による新奇ナノ物性の探索


電子顕微鏡とデータ科学の融合による
新奇ナノ物性の探索
ナノ物性顕微探索研究室
Laboratory on Microscopic Nano-characterization
教授:大島 義文(OSHIMA Yoshifumi)
E-mail:
[研究分野]
電子顕微鏡、表面界面物性、ナノ物質
[キーワード]
オペランド観察、新計測技術、データ科学
研究を始めるのに必要な知識・能力
研究は、新しい何かを発見することです。そのなかでいちばん重要なのは「あきらめない」という強い気持ちです。能力としては、数学と物理の基礎知識を持っていることが望ましいです。
この研究で身につく能力
[基礎]:実験・学習・議論をとおして、固体物理学に対する深い理解が身につきます。
[技術]:電子顕微鏡、真空装置、3D-CADソフトの使い方を学びます。
また、Pythonプログラミングによるデータ解析を学びます。いずれも基礎から始めることができます。
[その他]:定期ミーティングでの発表をとおして、自分の研究を他者に分かりやすく伝えるスキルを学びます。
【就職先企業・職種】 電気・材料メーカー、材料分析会社、大学の技術職員など
研究内容

図1 (a) 実験の模式図。試料を保持するための装置 (試料ホルダー) は研究室で独自に開発しました。白金原子鎖の (b) コンダクタンス、(c) 剛性が測定できました。(d) 電子顕微鏡像。白金は暗く見えています。AとBにおいて、左右の白金を橋渡ししているのが単原子鎖です。

図2 (a) 金ナノロッドの電子顕微鏡像。奥行き方向にならぶ金原子の列が明るい点として見えています。(b) 従来手法で測定した原子変位と (c) データ科学で処理した原子変位。原子が正常な位置から左にずれるほど暗い青色、右にずれるほど明るい黄色で示されます。
本研究室では、ナノ材料がしめす新しい現象を探索しています。そのために、次のような研究に励んでいます。
☑ 電子顕微鏡によるナノ~原子スケールでの材料観察
☑ 材料の力や電気化学特性を測定できる新しい装置の開発
☑ データ科学の応用によって電子顕微鏡像から重要な情報を抽出
具体的な研究例を以下に示します。
よく伸びる白金原子の鎖状物質
電子顕微鏡のなかで材料を動かしながら、材料の電気伝導度、剛性、原子のならびを同時に測定できる特殊な試料ホルダーを自作しました1。このホルダーを用いて、幅が原子1個、長さが原子2~5個の白金鎖状物質の特性を調べました (図1)2。生活のなかで目にするふつうの白金は、原子が3次元的に結合しており、わずか数%しか伸びません。しかし、鎖状物質はもとの状態から+24%まで伸びました。1次元の単原子鎖にすることで、白金の結合特性が大きく変わることを発見しました。
データ科学による原子配列の解析
原子の正常な位置からのずれ(原子変位)を測定しました3。 従来の方法では、変位量が小刻みに変化して見えます (図2b)。これは原子変位の情報ではなく、解析のじゃまをするノイズ成分です。そこで、データ科学手法のガウス過程回帰を用いることで、原子変位の情報を抽出することに成功しました (図2c)。測定可能な最小の原子変位は0.7pm(ピコメートル、1兆分の1メートル)ときわめて小さく、材料のなかで生じる2.4pmの原子変位を検出することに成功しました。
主な研究業績
- J. Zhang, et al., Nanotechnology 31 (2020) 205706
- J. Zhang, et al., Nano letters 21 (2021) 3922
- K. Aso, et al., ACS Nano 15 (2021) 12077
使用装置
☑ 超高真空透過型電子顕微鏡
☑ 高度な物性測定をおこなうための電子顕微鏡ホルダー
☑ 3D-CADやデータ解析がおこなえるワークステーションPC
研究室の指導方針
研究室ミーティングを毎週おこなっています。担当の学生が、研究の進捗状況や、興味をもった論文について紹介し、みんなでディスカッションします。担当の頻度はおよそ3週間に1回です。固体物理を学ぶための読書会もあります。学生のあいだでの学びあい・教えあいや、ディスカッションを推奨しています。コミュニケーション能力を高めるために、国内外の学会で発表することも推奨しています。博士学生は、自らの研究に集中して科学雑誌に論文を投稿できるよう、最大限サポートします。
[研究室HP] URL:https://www.jaist-oshima-labo.com/
有機半導体の基礎研究と光エレクトロニクスへの応用


有機半導体の基礎研究と光エレクトロニクスへの応用
有機オプトエレクトロニクス研究室
Laboratory on Organic Optoelectronics
教授:村田 英幸(MURATA Hideyuki)
E-mail:
[研究分野]
有機EL・可視光無線通信・導電性材料
[キーワード]
有機EL素子の劣化機構解明、可視光無線通信用光アンテナ、導電性ペースト用フィラー
研究を始めるのに必要な知識・能力
出身学部が化学系の場合、有機化学や物理化学、物理系なら量子力学や固体物理学のいずれかの基礎知識が研究内容を理解するために必要です。専門知識は研究室に入ってから修得します。従って、学ぶ努力を継続する熱意と実行力が最も重要です。高校レベルの英語力は必要です。
この研究で身につく能力
研究室での研究活動を通じて自己研鑽を積み、自分で考えて自律的に行動できる研究者を育成することを目標としています。研究者として普遍的に重要な3つの能力が身につきます。
(1)研究を実践するために必要な専門知識を独習する能力
(2)設定した目標を達成するための計画立案能力
(3)研究成果の“価値”を伝えるためのコミュニケーション能力。
また、研究室の留学生との交流や国際共同研究、海外での学会発表などを通じて、国際的なセンスを磨く機会も多くあります。担当する研究テーマや努力の程度によって身につく専門知識は異なりますが、次の専門知識が得られます。
・光化学(励起状態のダイナミクス)、固体物性論(電荷注入と移動)、デバイス物理(有機デバイスの動作機構)
【就職先企業・職種】 総合電機メーカー、電機・電子機器・精密機器メーカー、印刷業、素材産業(化学、非鉄金属)
研究内容
村田研究室では、有機半導体に関する基礎研究の成果を、有機発光ダイオード(OLED)や可視光無線通信用の光アンテナなど、実用的なデバイス開発につなげることを行っています。民間企業との共同研究では、OLEDの精密な評価装置や有機半導体材料の真空昇華精製装置を開発しています。金沢市との共同研究では、金沢金箔を原料とした導電性ペースト用フィラー材料の開発を行っています。これら有機半導体デバイスの基礎研究を通じた社会貢献が目標です。
有機ELの劣化機構解析
有機ELディスプレイは高画質、低電力、薄型軽量、フレキシブルを特長とし、すでにテレビや携帯電話などで実用化されています。有機EL分野では、青色発光材料の耐久性向上が課題となっています。素子の長寿命化は、村田研究室の得意とするところであり、青色発光材料の劣化メカニズムを解明するとともに、高耐久性の青色発光有機EL材料を探索しています。また、精密な電子デバイスの作製から緻密な評価まで、一貫して研究を進める体制を整えており、これも私たちの強みとなっています。変位電流測定と電流ー電圧ー発光輝度特性を連続して高精度に測定できる新しい評価装置の開発にも成功しました。
金沢金箔を原料とする導電性ペースト用金属微粒子の開発
本研究では、金箔の新しい用途開拓を目指して、金箔を原料とする微粒子(金消粉)の導電性フィラーとしての応用を検討しています。これまでに、金消粉が導電性フィラーとして優れた材料であることを見出しました。そこで最近では、導電性フィラーの低コスト化に取り組んでいます。
可視光無線通信用の光アンテナの開発
可視光を使った無線通信は、近距離通信での活用が注目されています。我々は蛍光色素の特徴を生かした光無線通信用光アンテナの開発に挑戦しています。フェルスター型エネルギー移動(FRET)を光アンテナの発光材料に用いることで従来の光アンテナよりもはるかに高い利得と広い伝送帯域幅を実現し、より高速なデータ転送を実現しました。
主な研究業績
- C. He, S. Collins, H. Murata, Fluorescent antenna based on Förster resonance energy transfer (FRET) for optical wireless communications, Optics Express, 32, 17152 (2024).
- D. C. Le, D. D. Nguyen, S. Lloyd, T. Suzuki, H. Murata, Degradation of fluorescent organic light emitting diodes caused by quenching of singlet and triplet excitons, Journal of Materials Chemistry C, 8, 14873 (2020).
- V. Vohra, K. Kawashima, T. Kakara, T. Koganezawa, I. Osaka, K. Takimiya, H. Murata, Efficient inverted polymer solar cells employing favourable molecular orientation, Nature Photonics, 9, 403 (2015).
使用装置
真空蒸着装置(高真空対応2台、超高真空対応1台)
デバイス作製用グローブボックス
半導体評価システム
有機デバイス評価システム
逆光電子分光装置
研究室の指導方針
4年生までの学部教育が専門知識修得のための基礎を習得する場であるのに対して、大学院はさらに高度な知識を修得しながら、それを駆使して“研究を実践する場”であると考えています。研究がうまくいかず壁に突き当たったとしても、正面から向き合い試行錯誤して、困難を乗り越える経験をすることが最も重要です。最近は困難を回避しようとする人が多いように感じます。成功体験は今の自分に自信を与えますが、失敗の克服は新しい自分への飛躍をもたらします。一緒に困難を乗り越える体験をしてみませんか。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/murata/index.html
画像処理と電子顕微鏡を組み合わせて原子レベルでの物質の不思議を発見する


画像処理と電子顕微鏡を組み合わせて
原子レベルでの物質の不思議を発見する
ナノ物性顕微探索研究室
Laboratory on Microscopic Nano-Characterization
講師:麻生 浩平(ASO Kohei)
E-mail:
[研究分野]
原子スケール材料解析
[キーワード]
無機材料、固体物性、ナノ物質、ナノ計測、計測技術、画像処理、電子顕微鏡
研究を始めるのに必要な知識・能力
研究テーマと真剣に向き合う意思、周囲の声を聞き入れる素直さ、研究を進める日々を楽しむ気持ちが大切です。固体材料、電子顕微鏡、画像処理、確率統計のいずれかへの興味があると良いです。知識があればなお良いですが、必須ではありません。
この研究で身につく能力
一連の研究(材料の知識獲得、電子顕微鏡の操作技術、Pythonによる画像処理、結果の解釈、文章化、自研究室や他研究室とのディスカッション、成果としてのまとめ)を通じて、各項目の技術と知識、および研究をやり通す経験が身につきます。
一般的な技術としては、自分の考えを掘り下げて分かりやすく表現できるよう、文章力の向上に重点を置きます。進捗報告会など、日々の研究に関する交流を文章によって行います。将来的に、企業や大学において書類をまとめる際や、近年成長が目覚ましい生成AIを思い通りに動かすうえで、文章力は重要だと考えています。
【就職先企業・職種】 電気・材料メーカー、材料分析会社、大学の研究者や技術職員など
研究内容
原子レベルで起こる物質の不思議なふるまいを発見するために、画像処理と電子顕微鏡を駆使した手法開発を進めています。電子顕微鏡データは、そのままでは単なる数値の配列です。画像処理による解析を通して初めて、粒子サイズ、結晶構造、原子位置といった有益な情報が得られます1,2。また、最近では、動作中のデバイスの動画観察にも取り組んでいます3。時刻ごとの多数の画像で構成される動画を効率的に解析するうえでも、画像処理は欠かせません。
具体的な研究テーマとして、以下が挙げられます。
1. リチウムイオン電池材料の動作下ナノ解析
2. ナノ粒子を統計的・3次元的に解析する手法開発
3. 原子位置を精密解析する手法開発1−3
ここでは3に絞って紹介します。
原子位置を精密解析する手法開発
図1aは、棒状の金ナノ粒子の電子顕微鏡像です。像で明るく見える点は、奥行き方向にならぶ金原子の列です。一見すると、輝点は画像内で規則正しく並んでいるように見えますが、これが本当かを解析しました。
規則正しい周期位置からの原子のずれ、つまり原子変位を測定しました。従来の方法では、変位量が小刻みに変化して見えます (図1b)。これは原子変位の情報ではなく、解析の邪魔をする統計ノイズ成分です。
そこで、信号処理手法のひとつであるガウス過程回帰を用いることで、原子変位の情報を抽出することに成功しました(図1c)。測定可能な最小の原子変位は0.7 pm(ピコメートル、1兆分の1メートル)ときわめて小さく、材料のなかで生じる2.4 pmの原子変位を検出することに成功しました。
解析によって、粒子の先端部分に位置する原子列は、軸に沿って外側へと変位していることが発見されました。考察の結果、棒状粒子の先端と胴体で曲率が異なるため表面張力に差が生じ、局所的な変位が生じると示唆されました1。
図1 (a) 金ナノロッドの電子顕微鏡像。奥行き方向にならぶ金原子の列が明るい点として見えています。(b) 従来手法で測定した原子変位と (c) データ科学で処理した原子変位。原子が正常な位置から左にずれるほど暗い青色、右にずれるほど明るい黄色で示されます。
主な研究業績
- K. Aso, J. Maebe, XQ. Tran, T. Yamamoto, Y. Oshima, and S. Matsumura, “Subpercent Local Strains due to the Shapes of Gold Nanorods Revealed by Data-Driven Analysis”, ACS Nano 15 (2021) 12077
- K. Aso, H. Kobayashi, S. Yoshimaru, XQ. Tran, M. Yamauchi, S. Matsumura, and Y. Oshima, “Singular behaviour of atomic ordering in Pt–Co nanocubes starting from core–shell configurations”, Nanoscale 14 (2022) 9842
- J. Liu, J. Zhang, K. Aso, T. Arai, M. Tomitori, and Y. Oshima, “Estimation of local variation in Young’s modulus over a gold nanocontact using microscopic nanomechanical measurement methods”, Nanotechnology 36 (2025) 015703
使用装置
走査透過電子顕微鏡、解析用ワークステーションPC、集束イオンビームつき走査電子顕微鏡、電子顕微鏡用特殊ホルダー、電気化学測定装置、グローブボックス
研究室の指導方針
共同研究を活発に行っています。責任をもって自らの研究を進め、研究協力者も納得できる成果を挙げれば、自信につながります。加えて、自らの好みや賛否にとらわれず、多種多様な考えを受け止める幅広い視野が育まれます。個々の研究内容については、日常的に議論をおこない、必要があれば柔軟に軌道修正します。当初は想像しなかった面白いテーマが見つかるのも魅力です。学生の皆さんが大学院を終えるとき、研究を通して「ベストを尽くし、満足いく成果を挙げ、入学当初は想像もできない良い未来を迎えられた」と思えるよう、最大限サポートします。
[研究室HP] URL:https://www.jaist-oshima-labo.com/
半導体ナノワイヤを舞台としたスピントロニクス研究


半導体ナノワイヤを舞台とした
スピントロニクス研究
ナノワイヤ X スピンデバイス研究室
Laboratory on Nanowires X Spin Devices
准教授:赤堀 誠志(AKABORI Masashi)
E-mail:
[研究分野]
半導体エピタキシャル成長、半導体ナノ構造、半導体スピントロニクス
[キーワード]
化合物半導体、強磁性体、微細加工、エレクトロニクス、スピントロニクス、半導体物性、低温物性
研究を始めるのに必要な知識・能力
本研究室で研究を始めるにあたって大事なのは、リアルに「もの」を扱うのが好きであることだと考えています。また、物理学(特に電磁気学、量子力学)の知識はあった方がよく、この他に半導体・固体物理、化学、プログラミングの知識があると研究を進める上で役に立つと考えています。
この研究で身につく能力
本研究室の研究では様々な装置を使います。それらの正しい使用法は論理的思考に基づいて考えられています。したがって、それらを理解し、自ら実践することにより、論理的な思考力が養われると考えています。また、実験的研究にはトラブルがつきもので、想定通りには結果が得られず、上手く進まないことも多々あります。ですが、トラブルの状況や得られている結果に関して、周りと協力しながら分析・考察し、研究が上手く進むように努力することにより、解決すべき課題を発見する力、そして発見した課題を解決する力が養われると考えています。
【就職先企業・職種】 電機・精密機械、IT・通信、素材
研究内容

図1.スピン電界効果トランジスタ

図2.トップダウン手法によるナノワイヤ、
ポイントコンタクト

図3.ボトムアップ手法によるナノワイヤ

図4.電気化学プロセスによるコアシェルナノワイヤ

図5.MnAs/InAs 複合構造

図6.非局所測定
従来のエレクトロニクスでは、チャージ(電荷)の制御により情報処理が行われてきました。これに対してスピントロニクスは、チャージだけでなくスピン(磁性)を制御することにより情報処理を行っていくものです。国際デバイスおよびシステムロードマップにおいても、スピントロニクス素子は重要な次世代デバイスの一つとして位置付けられています。半導体を用いる代表的なスピントロニクス素子は、InAs・InGaAs・InSb・InGaSbなど大きなスピン軌道結合を有する半導体と強磁性体との複合構造からなるスピン電界効果トランジスタです(図1)。この素子においては、半導体ナノワイヤを採用することにより、スピン軌道結合と弾性散乱によるスピン緩和が抑制されると期待されています。そこで本研究室では、以下に示すような、半導体ナノワイヤ構造および半導体- 強磁性体複合構造に関する実験的研究を行っています。
①半導体ナノワイヤ構造の作製
電子ビーム露光とエッチング加工を組み合わせたトップダウン手法(図2)と、分子線エピタキシャル成長を用いたボトムアップ手法(図3)に関する研究を進めています。トップダウン手法では高品質な半導体ヘテロ接合を用いることが可能ですが、コヒーレントな伝導のためにはエッジ形状の最適化や加工ダメージの抑制などの課題があります。ボトムアップ手法では半導体ヘテロ構造の利用は困難ですが、成長条件の最適化によりトップダウン手法では困難な良好な形状・微小な寸法を実現できる可能性があります。
②半導体- 強磁性体複合構造の作製
電気化学プロセスによる半導体(ZnO)/ 強磁性体(Co、Ni)コアシェルナノワイヤの形成(図4)や、分子線エピタキシャル成長による半導体(InAs) / 強磁性体(MnAs) 複合構造の形成(図5)に関する研究も行っています。これらの方法では連続的に半導体/ 強磁性体界面を形成するため、強磁性体から半導体へのスピン注入効率向上が期待されます。
③作製した構造の電気的評価・解析
超伝導マグネット付クライオスタットなどを用いて、低温・強磁場環境下での電気的評価・解析を進めています。面内磁場中での非局所配置における抵抗測定(図6)などにより、スピン注入・輸送・検出に関する知見を獲得することが可能です。これら知見を基に、未踏のスピン電界効果トランジスタの実現を目指します。
主な研究業績
- S. Komatsu, M. Akabori: “Spin-filter device using Zeeman effect with realistic channel and structure parameters” Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 63, pp. 02SP14-1-5 (2024).
- Md. T. Islam, Md. F. Kabir, M. Akabori: “Low-temperature grown MnAs/InAs/MnAs double heterostructure on GaAs (111)B by molecular beam epitaxy” Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 63, pp. 01SP40-1-5 (2024).
- K. Teramoto, R. Horiguchi, W. Dai, Y. Adachi, M. Akabori, S. Hara: “Tailoring Magnetic Domains and Magnetization Switching in CoFe Nanolayer Patterns with Their Thickness and Aspect Ratio on GaAs (001) Substrate” Physica Status Solidi B, Vol. 259, pp. 2100519-1-9 (2022).
- D. Q. Tran, Md. E. Islam, K. Higashimine, M. Akabori: “Self-catalyst growth and characterization of wurtzite GaAs/InAs core/shell nanowires” J. Crystal Growth, Vol. 564, pp. 126126-1-7 (2021).
使用装置
成膜装置(分子線エピタキシャル成長装置、原子層堆積装置、真空蒸着装置、スパッタ装置)
微細加工装置(電子ビーム露光装置、電界電離ガスイオンビーム装置、反応性イオンエッチング装置)
電気化学プロセス装置
電気計測装置(デバイスアナライザ、ホール効果測定装置、ロックイン計測システム)
極低温・強磁場装置(超伝導マグネット付He4クライオスタット、He3クライオスタット、希釈冷凍機)
研究室の指導方針
本研究室では、様々な装置を使って、半導体や強磁性体など「もの」をつくるところから、主に電気的評価・解析によりつくった「もの」を調べるところまで一貫して実験的研究を行います。まずテーマの近い学生でチームをつくり、毎日チームミーティングをしてもらうとともに、週一でスタッフを交えた全体ミーティングを行って、コミュニケーション力・プレゼンテーション力・判断力の育成・向上を図ります。また、全体ミーティングと同じ日に勉強会も行い、半導体・固体物理分野の知識習得や基礎学力の向上を図ります。
[研究室HP] URL:https://www.jaist-akabori-lab.com/
ナノ粒子工学:機能材料の創製から応用まで


ナノ粒子工学:機能材料の創製から応用まで
ナノ粒子工学研究室 Laboratory on Nanoparticle Engineering
教授:前之園 信也(MAENOSONO Shinya)
E-mail:
[研究分野]
ナノ材料化学、ナノ材料物性、コロイド化学
[キーワード]
半導体ナノ粒子、磁性体ナノ粒子、金属ナノ粒子、バイオ医療、エネルギー変換、センシング
研究を始めるのに必要な知識・能力
基礎学力、コミュニケーション能力、知的好奇心、柔軟な思考
この研究で身につく能力
修士課程では、(1) ナノ材料の化学合成技術、(2) 各種分析機器(透過型電子顕微鏡、X 線回折装置、X 線光電子分光、組成分析装置など)の操作スキル、(3) 基礎学問の知識(無機材料化学、結晶学、コロイド化学、固体物性など)、(4) ナノ材料に関する先端専門知識を身につけて頂きます。博士課程では、1-4に加え、英語によるプレゼンテーション能力、英語論文執筆能力、研究課題設定能力、共同研究遂行能力など、研究者に必要なあらゆる能力を身につけて頂きます。
【就職先企業・職種】 製造業(化学、精密機器、電気機器、ガラス・土石製品、繊維製品、その他製品など)
研究内容
物質をナノメートルサイズまで細かくしていくと、種々の物性がサイズに依存する新奇な材料となります。このような新奇材料を一般に「ナノ材料」と呼びますが、我々はその中でも特に「ナノ粒子」に興味を持ち、ナノ粒子に関する基礎から応用に亘る研究を行っています。半導体、磁性体、金属などのナノ粒子を化学合成し、その表面をさまざまな配位子によって機能化し、さらにそれらナノ粒子の高次構造を制御することによって、バイオ・医療分野あるいは環境・エネルギー分野で新たな応用を開拓することを目指しています。
1.磁性体ナノ粒子の合成とバイオ医療分野への応用
超常磁性体のナノ粒子を独自の方法によって合成し、その表面を自在に修飾することによって、バイオ医療分野での様々な応用の道を開拓しています。具体的には、細胞やタンパクの磁気分離、MRI 造影剤、ドラッグデリバリーシステムなどのナノ磁気医療に応用するための技術開発を行っています。
2.半導体ナノ粒子の合成とエネルギー変換素子への応用
狭ギャップ化合物半導体から広ギャップ酸化物半導体のナノ粒子まで、幅広い種類の半導体ナノ粒子を化学合成し、それらを用いて低炭素社会の実現を志向したナノ構造エネルギー変換素子の創製に関する研究を行っています。特に、ナノ構造熱電素子や光機能素子などに興味を持っています。
3.金属ナノ粒子を用いたバイオセンシング技術の開発
近年、金ナノ粒子を用いた様々なバイオセンサが開発され、簡便かつ迅速に DNA 配列検出やタンパク質機能解析などが可能となってきています。我々は、ナノ粒子プローブを用いたバイオセンシング技術の更なる高度化を目指し、異種金属元素からなるヘテロ構造ナノ粒子や合金ナノ粒子のプローブの開発を進めています。
主な研究業績
- T. S. Le, M. Takahashi, N. Isozumi, A. Miyazato, Y. Hiratsuka, K. Matsumura, T. Taguchi, and S. Maenosono, “Quick and Mild Isolation of Intact Lysosomes Using Magnetic-Plasmonic Hybrid Nanoparticles”, ACS Nano 16 (2022) 885
- J. Hao, B. Liu, S. Maenosono, and J. Yang, “One-Pot Synthesis of Au-M@SiO2 (M = Rh, Pd, Ir, Pt) Core-Shell Nanoparticles as Highly Efficient Catalysts for the Reduction of 4-Nitrophenol”, Sci. Rep. 12 (2022) 7615
- T. S. Le, S. He, M. Takahashi, Y. Enomoto, Y. Matsumura, and S. Maenosono, “Enhancing the Sensitivity of Lateral Flow Immunoassay by Magnetic Enrichment Using Multifunctional Nanocomposite Probes”, Langmuir 37 (2021) 6566
使用装置
透過型電子顕微鏡 (TEM) 超伝導量子干渉磁束計 (SQUID)
過型電子顕微鏡 (STEM) 動的光散乱測定装置 (DLS)
X 線回折装置 (XRD) 共焦点レーザー顕微鏡 (CLSM)
X 線光電子分光装置 (XPS) 核磁気共鳴装置 (NMR)
研究室の指導方針
就職希望者には、基礎・専門知識はもちろん、コミュニケーション能力、英会話力、論理的思考力および柔軟な対応力を涵養し、不確実性の時代を生き抜くことができる人材となってもらうための指導を行います。企業経験を活かした実践的就職指導も行っています。
博士後期課程への進学希望者については、先端的かつ国際的な研究環境を提供することによって、将来的に大学教員や企業研究者として活躍できるグローバル研究人材を育成します。
[Website] URL:https://www.jaist.ac.jp/~shinya/
エレクトロニクスの機能的多様化を目指す化合物半導体デバイス技術


エレクトロニクスの機能的多様化を目指す
化合物半導体デバイス技術
化合物半導体エレクトロニクス研究室
Laboratory on Compound Semiconductor Electronics
教授:鈴木 寿一(SUZUKI Toshi-kazu)
E-mail:
[研究分野]
化合物半導体エレクトロニクス
[キーワード]
化合物半導体デバイス、異種材料融合技術、超高速デバイス、省エネルギーデバイス、デバイス計測技術
研究を始めるのに必要な知識・能力
必要な知識・能力ということではありませんが、ものごとの本質を理解したいという意欲、数学や物理学の基礎力とそれを支える論理性は、研究を進める際に重要であると考えています。
この研究で身につく能力
化合物半導体電子デバイスの作製技術および測定解析技術を身に付けながら、デバイス内の電子の挙動を物理的に考察して理解することができるようになると思います。こうした能力は、将来エレクトロニクスの広い分野で活躍するための素地となると考えています。また、産学連携を通じて産業界の問題意識を感じてもらうことも期待しています。さらに、日本語および英語によるプレゼンテーション能力の向上も目指します。
【就職先企業・職種】 総合電機、半導体・電子部品、半導体製造装置、通信機器、輸送機器、自動車
研究内容

化合物半導体高速トランジスタ

デバイスの周波数応答特性

異種材料基板上化合物半導体デバイス

異種材料閉じ込めによる二次元電子状態
<エレクトロニクスの機能的多様化に向けて>
現在のディジタルエレクトロニクスの主役であるSiデバイスは、微細化による性能向上を続けてきました。しかし、こうした「More Moore」の軸に沿った進歩の限界が意識されるようになっています。今後のエレクトロニクスの発展のためには、「More than Moore」の視点に基づく機能的多様化が必要であり、それに向けて重要な役割を果たすのが化合物半導体デバイスです。
<化合物半導体とは?>
III-V 族を中心とした化合物半導体は多彩な材料系であり、これまでもSi では不可能な様々な機能を有するデバイスに応用されてきました。特に、高い電子移動度と高い電子飽和速度を有する化合物半導体は高速電子デバイス応用に、また、直接遷移型の化合物半導体は光デバイス応用に好適であるため、化合物半導体を用いたデバイスは、高速アナログ・ミックスドシグナルエレクトロニクス、光エレクトロニクス分野で利用されてきました。これまで、GaAs 基板上格子整合材料が化合物半導体の第一世代として、InP 基板上格子整合材料が第二世代として大きな役割を果たしてきましたが、今後は、高In 組成InGaAs、InAs、Sb 系材料などのナローギャップ化合物半導体と、GaN、AlN などのワイドギャップ化合物半導体の重要性が高まると考えられます。これらナローギャップ半導体は中赤外光に対応するエネルギーギャップを、ワイドギャップ半導体は紫外光に対応するエネルギーギャップを有しており、それぞれの波長域における光デバイス応用に重要です。また、電子有効質量は概ねエネルギーギャップと比例関係にあり、ナローギャップ化合物半導体は小さい電子有効質量を有しています。電子有効質量が小さければ、高い電子移動度と高い電子飽和速度が得易いため、ナローギャップ半導体は超高速デバイス応用に有用です。ただし、高耐圧化に適したワイドギャップ半導体に対し、ナローギャップ半導体の耐圧は低く、充分なパワー性能を得ることが困難です。一方、GaN は電子有効質量が大きく、この点ではデバイス高速化に有利ではないように思われますが、大きい光学フォノンエネルギーと特有のバンド構造により、電子移動度こそ低いものの、高い電子飽和速度を有しているため、高速性能とパワー性能を併せ持ったデバイスへの応用が期待されます。
<本研究室の取り組み>
こうした特長を有する化合物半導体を適材適所にデバイス応用することは、エレクトロニクスの機能的多様化に向けて極めて重要です。さらに、化合物半導体と異種材料を融合集積する技術によって、より高度な機能的多様化の可能性も期待できます。こうした背景のもと、本研究室では、ナローギャップ/ ワイドギャップ化合物半導体エレクトロニクスの研究に取り組んでいます。次世代の超高速デバイスや省エネルギーデバイスを目指し、ナロー/ ワイドギャップ化合物半導体デバイス技術とそれらの異種材料融合技術の研究を進めながら、デバイス動作を深く理解するためのデバイス計測技術も開拓しています。
主な研究業績
- Low-frequency noise in AlTiO/AlGaN/GaN metal-insulator-semiconductor field-effect transistors with non-gate-recessed or partially-gate-recessed structures, D. D. Nguyen, Y. Deng, and T. Suzuki, Semicond. Sci. Technol. 38, 095010 (2023).
- Mechanism of low-temperature-annealed Ohmic contacts to Al-GaN/GaN heterostructures: A study via formation and removal of Ta-based Ohmic-metals, K. Uryu, S. Kiuchi, T. Sato, and T. Suzuki, Appl. Phys. Lett. 120, 052104 (2022).
- Electron mobility anisotropy in InAs/GaAs(001) heterostructures, S. P. Le and T. Suzuki, Appl. Phys. Lett. 118, 182101 (2021).
使用装置
分子線エピタキシー装置
電子線・紫外線リソグラフィー装置
パラメータアナライザ
ネットワークアナライザ
ダイナミックシグナルアナライザ
研究室の指導方針
・理学の心で工学を。ものごとの本質を理解することを大切にします。
・少しづつであっても、自分でよく考え、納得しながら前進することが重要であると考えています。
・学生と教員がよき共同研究者となり、お互いに成長することを目指します。
・毎週行う研究報告会・日本語輪講・英語輪講を通じ、エレクトロニクス分野で活躍するための基礎を固めます。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/nmcenter/labs/suzuki-www/
ナノバイオテクノロジー


ナノバイオテクノロジー
ナノバイオ研究室 Laboratory on Nanobiotechnology
講師:高橋 麻里(TAKAHASHI Mari)
E-mail:
[研究分野]
ナノ材料科学、細胞生物学
[キーワード]
ナノ粒子、バイオ医療応用
研究を始めるのに必要な知識・能力
探求心があり、努力することを厭わず、向上心がある方ならバックグランドが違っていても研究を楽しむことができます。研究テーマに対して、自分がこの研究を進めるんだという主体的な立場にたつことが必要です。共同研究をすることが多いため、協調性やコミュニケーション能力も必要となります。
この研究で身につく能力
ナノ粒子の合成法、構造・特性評価及び解析方法に関する幅広い知識。金属・磁性・半導体材料とナノ粒子にすることで現れる特徴的な性質に関する一般的な知識。細胞生物学に関する一般的な知識。新たな課題に対して取り組むチャレンジ精神。
【就職先企業・職種】 製造業(化学、精密機器、ガラス・土石製品、繊維製品、その他製品など)
研究内容
ナノ粒子のバイオ医療応用に関する注目は年々高まっています。私達は金属・半導体・磁性体をナノサイズにすることで現れるバルクとは異なる性質を利用して、ナノ粒子のバイオ医療応用に関する研究を行っています。応用先は様々ですが、主に下記に示す3つの内容に力を入れており、それぞれの用途に合わせたナノ粒子の合成から構造解析、特性評価、応用までの一連の流れを一人の学生が担当して研究を進めます。
1. 磁性体ナノ粒子を用いた細胞内小器官の磁気分離
正常細胞と機能欠損細胞から細胞内小器官を分離し、タンパク質を解析し比較することは、疾患の分子機構の解明において重要です。超常磁性体ナノ粒子を合成し、表面を生体分子で機能化した粒子を用い、細胞内小器官を迅速かつ温和に磁気分離し、生化学的手法による解析を行います。種々の細胞内小器官の磁気分離法の構築や機能欠損細胞のタンパク質解析を通して、最終的には創薬分野への貢献を目指します。
2. 磁気粒子分光を用いたイムノアッセイ
人生100年時代と言われる現代、私達が健康に長生きするためには、疾病の早期発見のための診断技術・精度の向上がますます重要となります。磁気粒子分光(MPS)を用いたイムノアッセイ(抗原抗体反応を用いた抗原の検出)では、種々の磁性体ナノ粒子を合成しMPSで評価し、感度が高いプローブを複数選択することで同時多抗原検出を目指します。
3. アップコンバージョンナノ粒子による光遺伝学的研究
アップコンバージョンナノ粒子とは、波長が長い入射光を照射した際に波長が短い発光を示す蛍光体ナノ粒子です。光遺伝学とは光受容タンパク質を遺伝学的に細胞に発現させ、光で細胞の応答を制御する技術で、この2つを組わせることで、光による生体組織の制御を行う研究をしております。
主な研究業績
- D. Maemura, T. S. Le, M. Takahashi, K. Matsumura, and S. Maenosono: "Optogenetic Calcium Ion Influx in Myoblasts and Myotubes by Near-Infrared Light Using Upconversion Nanoparticles" ACS Appl. Mater. Interfaces 15 (2023) 42196
- T. S. Le, M. Takahashi, N. Isozumi, A. Miyazato, Y. Hiratsuka, K. Matsumura, T. Taguchi, S. Maenosono: "Quick and Mild Isolation of Intact Lysosomes Using Magnetic–Plasmonic Hybrid Nanoparticles" ACS Nano 16 (2022) 885
- T. S. Le, S. He, M. Takahashi, Y. Enomoto, Y. Matsumura, and S. Maenosono: "Enhancing the Sensitivity of Lateral Flow Immunoassay by Magnetic Enrichment Using Multifunctional Nanocomposite Probes" Langmuir 37 (2021) 6566
使用装置
透過型電子顕微鏡(TEM) 超伝導量子干渉磁束計(SQUID)
走査透過型電子顕微鏡(STEM) 動的光散乱測定装置(DLS)
X線回折装置(XRD) 共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)
X線光電子分光装置(XPS) 核磁気共鳴装置(NMR)
研究室の指導方針
常に新しい内容の研究を行っており、研究内容に関しては教員が学生へ毎回指示を与えるのではなく、学生自身にも実験と論文調査から次の方向性を決めるといった、一緒に研究を進めていくスタンスで研究を行います。その過程で卒業後の進路(就職希望か進学希望)に合わせて必要な基礎知識と研究力が身につくように指導します。また、分野外の方でも最前線の研究が行えるように効率的な努力の仕方や学習法を身に着けられるように指導しますので、心配なことや研究に関する疑問等は積極的に相談してください。そのためにはコミュニケーション能力も重要であり、卒業後の社会人にとって必要不可欠なスキルが身につくようにサポートします。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/~shinya/
学生のXUさんがEM-NANO 2025においてStudent Awardを受賞
学生のXU, Yuanzheさん(博士後期課程3年、ナノマテリアル・デバイス研究領域、大島研究室)が、The 10th International Symposium on Organic and Inorganic Electronic Materials and Related Nanotechnologies(EM-NANO 2025)において、Student Awardを受賞しました。
EM-NANO 2025は、有機・無機エレクトロニクス材料とナノテクノロジーに関する国際シンポジウムで、令和7年6月11日~14日にかけて、福井県福井市のAOSSA(福井県県民ホール)にて開催されました。
同シンポジウムでは、全体講演(Plenary lectures)や招待講演、特別セッションのほか、開催10回目を記念する式典も行われ、エレクトロニクス分野における最新の研究成果について活発な議論が行われました。
※参考:EM-NANO 2025
■受賞年月日
令和7年6月14日
■研究題目、論文タイトル等
Microscopic study of Kanazawa gold leaves
■研究者、著者
Yuanzhe Xu, Satoshi Ichikawa (大阪大学) , Kohei Aso, Hideyuki Murata, Yoshifumi Oshima
■受賞対象となった研究の内容
超薄膜(約100~200 nm)である金沢金箔の組織変化を調査しました。常温で処理されたにもかかわらず、焼鈍や熱間圧延を行わなくても、面心立方(FCC)金属において強い{001}テクスチャが形成されることは、長年の謎でした。今回、EBSDとTEMを用いて、No. 4金箔において[101]方向に沿って幅約100nmのスリップバンドが形成され、{011}-<011>スリップシステムと一致することを発見しました。この滑り系はFCC金属では稀な現象であり、超薄膜による活性化が原因と考えられます。この現象と交差滑り活動が、ハンマー加工中の{001}組織の形成を促進しています。
■受賞にあたって一言
It is a great honor to receive the "Student Award" at EM-NANO2025. I am truly encouraged by this recognition from the committee, which strengthens my determination to further explore the unique deformation mechanisms of Kanazawa gold leaf. As this research is closely tied to the cultural and scientific heritage of Kanazawa and the Hokuriku region, receiving this award at a local conference is especially meaningful to me. This achievement would not have been possible without the invaluable support and guidance of my supervisor, Prof. Yoshifumi Oshima, and the generous assistance of Specially Appointed Professor Satoshi Ichikawa from the Research Center for Ultra-High Voltage Electron Microscopy, Osaka University. I would also like to thank Senior Lecturer Kohei Aso and all the laboratory members for their generous support in both research and daily life.
令和7年7月17日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2025/07/17-2.html学生のXIONGさんがEM-NANO 2025においてStudent Awardを受賞
学生のXIONG, Weiさん(博士後期課程3年、ナノマテリアル・デバイス研究領域、大島研究室)が、The 10th International Symposium on Organic and Inorganic Electronic Materials and Related Nanotechnologies(EM-NANO 2025)において、Student Awardを受賞しました。
EM-NANO 2025は、有機・無機エレクトロニクス材料とナノテクノロジーに関する国際シンポジウムで、令和7年6月11日~14日にかけて、福井県福井市のAOSSA(福井県県民ホール)にて開催されました。
同シンポジウムでは、全体講演(Plenary lectures)や招待講演、特別セッションのほか、開催10回目を記念する式典も行われ、エレクトロニクス分野における最新の研究成果について活発な議論が行われました。
※参考:EM-NANO 2025
■受賞年月日
令和7年6月14日
■研究題目、論文タイトル等
Interlayer fracture of multilayer MoS2 evaluated by in situ transmission electron microscopy
■研究者、著者
Wei XIONG, Lilin XIE, Yoshifumi OSHIMA
■受賞対象となった研究の内容
引張変形中の多層MoS₂ナノシートの破断プロセスをin situ透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、新たな層間破断メカニズムを明らかにしました。亀裂は異なる層のジグザグ状の縁に沿って伝播し、層間相互作用と摩擦の弱さにより段差構造を形成していました。この結果は、MoS₂の層間結合に関する従来の計算シミュレーションなどに一石を投じており、ナノエレクトロニクスやフレキシブルデバイス応用における二次元材料の機械的特性と信頼性に関する新たな知見を提供するものです。
■受賞にあたって一言
It is my great honor to receive the "Student Award" at EM-NANO 2025. The recognition from the EM-NANO 2025 committee for my research and presentation has greatly encouraged me to continue exploring the intrinsic properties of 2D materials. I feel fortunate to have successfully built a stable platform for atomic-resolution in situ tensile experiments. However, this achievement would not have been possible without the invaluable support and guidance of my supervisor, Prof. Yoshifumi Oshima, to whom I would like to express my deepest gratitude. I would also like to thank Dr. Lilin Xie, whose research provided both confidence and convenience during my work. In addition, I sincerely appreciate the help and support from Senior Lecturer Kohei Aso and all the laboratory members, both in my research and daily life.
令和7年7月17日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2025/07/17-1.html令和7年度 第1回 超越量子未来アリーナ ネオ・エクセレントコアセミナー
セミナーを下記のとおり開催しますので、ご案内します。
日 時 | 令和7年7月16日(水) 15:00~16:00 |
場 所 | 知識科学系講義棟 2階 中講義室 |
講演者 | LAU, Hon Wai 氏 Visiting Researcher, OIST |
講演題目 | Exploring the power of quantum resources in machine learning and communication ※講演要旨は別添フライヤーのとおり |
使用言語 | 英語 |
お問合せ先 | 超越量子未来アリーナ 教授 リム 勇仁(E-mail:ylim ![]() |
● 参加申込・予約は不要です。直接会場にお越しください。
出典:JAIST イベント情報https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/event/2025/07/09-1.html令和7年度 第1回 先端国際・社会変革推進本部セミナー「走査トンネル顕微鏡を用いた量子スピン計測及び制御」
下記のとおりセミナーを開催しますので、ご案内します。
日 時 | 令和7年6月9日(月)15:30~16:30 |
場 所 | マテリアルサイエンス系講義棟 1階 小ホール ※オンライン配信あり ※オンラインでの参加をご希望の方は、下記お問い合わせ先にご連絡ください。 |
講演者 | 東京大学物性研究所 土師 将裕 助教 |
講演題目 | 走査トンネル顕微鏡を用いた量子スピン計測及び制御 |
使用言語 | 日本語 |
お問合せ先 | 北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアル・デバイス研究領域 准教授 安 東秀 (E-mail:toshuan ![]() |
● 対面参加の場合、参加申込・予約は不要です。直接会場にお越しください。
出典:JAIST イベント情報https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/event/2025/06/04-1.html