研究活動の検索
研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。【12/8(金)開催】International Symposium on Materials Informatics 2023
| 開催日時 | 令和5年12月8日(金)13:00~20:00 |
| 場 所 | JAISTイノベーションプラザ2F シェアードオープンイノベーションルーム (要予約:定員30名程度) |
| 講師・ 講演題目 |
Prof. BUSICO, Vincenzo Full Professor of University of Naples Federico II 「Integrated experimental and computational studies in polyolefin science and technology at the Federico II University of Naples (Italy): an account of the latest results」 Dr. CHAMMINGKWAN, Patchanee Senior Lecturer of Japan Advanced Institute of Science and Technology (JAIST) 「Unleashing efficiency in heterogeneous olefin polymerization research through experimental design」 Dr. THAKUR, Ashutosh Scientist of CSIR-North East Institute of Science and Technology 「Realizing multifaceted roles of functional polymers from polyolefin catalysts development to electrochemical energy applications」 Prof. HONGO Kenta Associate Professor of Japan Advanced Institute of Science and Technology (JAIST) 「Data-driven materials search combined with materials simulations」 Dr. ANTINUCCI, Giuseppe Researcher of University of Naples Federico II 「MgCl2-supported Ziegler-Natta Catalysts: "And yet it moves"」 Dr. TAKASAO, Gentoku Postdoctral Fellow of King Abdullah University of Science and Technology Mr. DA SILVEIRA , Joao Marcos Master's student of Japan Advanced Institute of Science and Technology (JAIST) 「Computational and data-driven approaches in catalyst design」 Prof. WADA, Toru Assistant Professor of Japan Advanced Institute of Science and Technology (JAIST) 「X-ray total scattering on the molecular structure of methylaluminoxane」 |
| 言 語 | 英語 |
| 参加申込 | 下記の担当へ11/27までにお申し込みください。 (懇親会会費5,000円) 【申込・お問合せ】 北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルズインフォマティクス国際研究拠点長 谷池 俊明(taniike@jaist.ac.jp) |
学生の坪原さんが世界農業遺産国際スタディ・プログラムに参加
学生の坪原真旺さん(博士前期課程2年、サスティナブルイノベーション研究領域、小矢野・宮田研究室)が石川県主催の世界農業遺産国際スタディ・プログラムに参加しました。
令和5年度より、石川県内の大学生を対象に、県と国連大学が共同で開始した同プログラムは、「能登の里山里海」が世界農業遺産(GIAHS)に認定され、その認定効果が地域活性化に結び付いており、「石川モデル」として国内外から高い評価を受ける同県の特徴を活かし、世界農業遺産をテーマに国際的な視点で学習し、学生それぞれが自身の専攻分野の知識を活かして石川県の地域活性化等についての提案を検討し、成果発表としてプレゼンテーションするという研修プログラムです。これにより、国際的な視点を持って地域に貢献する若者を輩出するとともに、県内で学ぶことの魅力向上を図るもので、坪原さんは書類および面接選考を通過し、プログラムのメンバーに選ばれました。
同プログラムは7月~10月にかけて実施され、国連大学職員による、世界農業遺産や能登の里山里海に関する講義の受講や、能登地域の方々から、さまざまな取り組みや現状の課題などについてお話を伺う能登視察研修に参加し、その後、イタリアにある世界農業遺産の認定機関である国連食糧農業機関(FAO)の本部を訪問、能登についての紹介や、学生が考案した能登地域の活性化策などについて、英語でプレゼンテーションを行ったほか、関連機関である国連世界食糧計画(WFP)、国際農業開発基金(IFAD)の本部や、イタリアの世界農業遺産認定地を訪問し、さらに学習を深めました。また、プログラムの最後には成果発表会が開かれ、これまでの学習成果や、それをもとに考えた能登地域の活性化についての提案を発表し、世界農業遺産を活用した地域活性化策などについて意見交換を行いました。
■坪原さんより一言
普段、入ることができない国連の敷地や職員さんと話すことによって、環境問題やSDGsなどを肌で感じ、考えるきっかけができました。また、英語を実践的に使うことによって、プレゼンの能力向上や実力を試すことができたので、今後の研究に活かしたいと思います。
※詳しくは、石川県ホームページ「世界農業遺産国際スタディ・プログラム」をご覧ください。

国連でプレゼンテーションをしている様子
令和5年11月16日
科学技術振興機構のさくらサイエンスプログラムを実施
物質化学フロンティア研究領域の長尾祐樹教授のマレーシアとの交流計画が科学技術振興機構(JST)の「国際青少年サイエンス交流事業 さくらサイエンスプログラム」に採択されたことを受け、10月5日~10月14日の日程でマレーシア工科大学本校、マレーシア日本国際工科院(MJIIT)、マレーシア工科大学マラッカ校及びマレーシアパハン大学から12名の教員・研究者・大学院生を本学に受け入れました。
「国際青少年サイエンス交流事業 さくらサイエンスプログラム」は、産学官の緊密な連携により、諸外国・地域の青少年を我が国に招へいし、我が国の青少年との科学技術分野の交流を行う事業です。これを通して、
①科学技術イノベーションに貢献しうる優秀な人材の養成・確保
②国際的頭脳循環の促進
③日本と諸外国・地域の教育研究機関間の継続的連携・協力・交流
④科学技術外交にも資する日本と諸外国・地域との友好関係の強化
に貢献し、ひいては、日本及び世界の科学技術・イノベーションの発展に寄与することを目的とします。
参考:https://ssp.jst.go.jp/outline/detail/
本学はアジア諸国の大学・研究機関との学術的交流を強く推進しているところであり、将来的に優秀な学生を受け入れるためにマレーシアにおける大学・研究機関においても交流を進めています。
本交流の趣旨はマレーシアの環境・エネルギーに関する技術交流を核に、国際共著論文成果に繋がる大学間連携を強化することができるように計画されました。本学教員による研究指導等を実施し、最終日には成果報告会が行われました。また、金沢のひがし茶屋街での金箔体験や、ゆのくにの森での蒔絵体験を通して日本的な文化や美にも触れ、さらに、東京の日本科学未来館を訪問して日本の多様な先端科学技術を紹介しました。
本交流プログラムはこれらの経験を通して招聘者の将来の日本への留学を促し、本学が招聘者の母国やアジアの科学技術の進歩や発展に貢献することを目指しています。
■実施期間
令和5年10月5日~令和5年10月14日
■研究テーマ
環境・エネルギーに関する技術交流
■本交流について一言
本計画をサポートいただきましたJSTに御礼申し上げます。また、本学受入教員の松見教授、前園教授、西村准教授、本郷准教授、実験や事務手続等をサポートして下さった安准教授をはじめとする10名以上の教職員や学生の皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました。引き続きマレーシアとの交流の発展にお力添えをお願い致します。

金沢で金箔体験

ゆのくにの森での蒔絵体験

計算科学チュートリアル

日本科学未来館を訪問
令和5年10月17日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2023/10/17-1.htmlサスティナブルイノベーション研究領域の宮田講師が日本熱電学会の進歩賞を受賞
サスティナブルイノベーション研究領域の宮田全展講師が一般社団法人日本熱電学会の進歩賞を受賞しました。
日本熱電学会では、熱電工学、熱電科学、及び熱電技術、並びに関連分野における発明、発見、研究と開発、並びに同学会の発展に顕著な功績があったと認められる同学会会員に対して、その功績を讃え表彰を行っています。
本研究では、実験とスーパーコンピューターを活用したシミュレーションを協奏的に行うことで、希少元素を含まない新しい硫化物・リン化物熱電材料の創製と、革新的な材料設計指針を確立することに成功しました。それら一連の研究成果が、同学会において、熱電工学、熱電科学、及び熱電技術、関連分野における発見、研究と開発、並びに同学会の発展に顕著な功績であったことが認められ、この度の受賞となりました。
※参考:日本熱電学会
■受賞年月日
令和5年9月25日
■研究題目
実験と第一原理計算による新奇硫化物・リン化物熱電材料のマテリアルデザイン
■研究者、著者
宮田全展
■受賞対象となった研究の内容
本研究では、実験とスーパーコンピューターを駆使したシミュレーション計算により、高い性能(出力因子)を示す新しい硫化物熱電材料を創製し、そのメカニズムを明らかにしました。さらに、JAIST生まれのシミュレーション計算コードOpenMXと、電子輸送計算コードBoltzTraPをつなぐ汎用インターフェースプログラムを開発し、世界に先駆けて800種類を超える硫化物熱電材料の大規模計算を行うことで、熱電性能を最大化する設計指針を確立しました。本研究で開発されたインターフェースプログラムはOpenMXの公式計算オプションとして実装されています。
(OpenMX Ver. 3.9 ユーザーマニュアル)
実験とスーパーコンピューターによる高精度なシミュレーション計算により、新しい高性能熱電材料の候補物質群として、リン化物が高いポテンシャルを持つことを詳細に明らかにし、中でもAg(銀)-P(リン)化合物中のAg原子が特殊な振動をすることで、熱伝導を大きく抑制し、極めて低い格子熱伝導率を示すメカニズムを明らかにしました。そして、リン化物のみならず、広く無機材料について、熱伝導において重要なフォノン(原子振動の伝搬を仮想の粒子の運動として取り扱う概念)において、比熱・音速・緩和時間に相関関係があることを発見し、フォノンの観点から熱電材料の新しい評価指針を確立しました。
株式会社白山、石川県工業試験場を中心とした産官学連携により、Mg(マグネシウム)とSi(シリコン)を主成分とした環境にやさしい熱電材料の高性能化の材料設計指針を、実験とスーパーコンピューターによるシミュレーションより確立し、材料の高性能化に貢献しました。
■受賞にあたって一言
この度は、日本熱電学会の優秀ポスター賞、優秀講演賞に続き、進歩賞を賜りまして誠に光栄でございます。これも本学の小矢野幹夫教授、東大物性研の尾崎泰助教授、石川県工業試験場の豊田丈紫氏、株式会社白山の内田健太郎氏をはじめとした、数えきれないほどの共同研究者の先生方との研究・ディスカッションのお陰でございます。また、本研究は科研費(若手研究JP20K15021)をはじめとした数々の研究助成、本学の大規模計算機KAGAYAKIによって実施されました。この場を借りて、深く感謝御礼申し上げます。今後も学術・社会により一層の貢献ができるよう、研究・教育活動に邁進いたします。
令和5年10月16日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2023/10/16-1.html学生の中島さんが日本太陽光発電学会第20回「次世代の太陽光発電システム」シンポジウムにおいてInnovative PV奨励賞を受賞
学生の中島寛記さん(博士後期課程3年、サスティナブルイノベーション研究領域、大平研究室)が第20回「次世代の太陽光発電システム」シンポジウム(第3回日本太陽光発電学会学術講演会)においてInnovative PV奨励賞を受賞しました。
日本太陽光発電学会は、太陽光発電に関連する学術分野の研究の促進ならびに成果の普及に関する事業を行い、将来の脱炭素社会の実現とその発展に寄与することを目的としています。
同シンポジウムは、国内の太陽光発電にかかわる研究者や技術者が一堂に会し、分野の垣根なく議論する場として開催されています。
Innovative PV奨励賞は、同シンポジウムにおいて発表された、太陽光発電ならびにその関連分野の発展に貢献しうる優秀な講演論文を発表した35歳以下の同会若手会員に対し授与されるものです。
※参考:日本太陽光発電学会ホームページ
■受賞年月日
令和5年8月31日
■論文タイトル
硝酸アルミニウム酸化処理により形成した p+反転層のピラミッドテクスチャ n 型結晶 Si 表面での有効性
■研究者、著者
中島 寛記、Huynh Thi Cam Tu、大平 圭介
■受賞対象となった研究の内容
n型結晶Si太陽電池のp+エミッタ層に利用されているB拡散層の形成には、1000 °C程度の高温加熱処理が必要となり、これが太陽電池製造のスループットを低下させている。さらに、Si中に拡散したBは、欠陥準位を形成し、太陽電池特性の劣化を引き起こす。そこで、本研究では、Si基板を硝酸アルミニウムの水溶液に浸漬するだけという非常に簡便なプロセスで、Si基板表面に超極薄のAlドープSiOx膜を形成し、その膜によって誘起されるp+反転層が、n型結晶Si太陽電池のエミッタ層として機能することを実証した。本公演では、AlドープSiOx膜に誘起された負の固定電荷がピラミッドテクスチャ形状を有するSi表面で増強され、良好な表面パッシベーション性能と太陽電池セル特性が得られたことについて報告し、簡便な湿式処理だけで、高効率・低コストの結晶Si太陽電池を製造できる可能性を示した。
■受賞にあたって一言
この度は、日本太陽光発電学会Innovative PV奨励賞に選定いただきましたこと大変光栄なことと感じております。今後も本技術の実用化を目指し、研究に邁進する所存です。日頃よりご指導いただいております大平圭介教授、HUYNH, Tu Thi Cam特任助教をはじめとした大平研究室の皆様に心より感謝申し上げます。なお、本研究は、JST次世代研究者挑戦的研究プログラムの助成を受けて実施されたものです。この場をお借りして御礼申し上げます。
令和5年9月22日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2023/09/22-1.htmlMoS2ナノリボンのエッジが示す特異な力学特性の観測に成功
MoS2ナノリボンのエッジが示す特異な力学特性の観測に成功
ポイント
- 雷、加速度、ガス、臭気などの環境電磁界を計測するセンサーの開発に必要な要素技術として、機械共振器がある。
- ナノスケールの超薄型機械共振器として期待されている、単層2硫化モリブデン(MoS2)・ナノリボンのヤング率測定に成功した。
- リボン幅が3nm以下になると、ヤング率がリボン幅に反比例して増加する特異な性質を発見した。
- リボンのエッジ部分における原子配列の座屈がエッジの強度を高める要因であることを、計算科学手法を用いて解明した。
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市)ナノマテリアル・デバイス研究領域の大島義文教授は、サスティナブルイノベーション研究領域の前園涼教授、本郷研太准教授、鄭州大学物理学院の刘春萌講師、張家奇講師らと、独自に開発した顕微メカニクス計測法を用いて、リボン状になった単層2硫化モリブデン(MoS2)膜の力学性質を調べ、リボンのエッジ部分の強度が、リボンの内部より高いことを明らかにした。 単層MoS2ナノリボンは、ナノスケールの超薄型機械共振器への応用が期待されているが、その力学性質の解明が課題となっている。ナノリボンの力学性質について、そのエッジ部分の影響が予想されており、第一原理計算による予測値は報告されているが、明確な結論が得られていない。本研究では、世界唯一の手法である「顕微メカニクス計測法」を用いて、単層MoS2ナノリボンの原子配列を観察しながら、そのばね定数を測定することに成功した。解析の結果、エッジがアームチェア構造である単層MoS2ナノリボンのリボン幅が3nm以下になると、ヤング率が増加することを発見した。リボン幅の減少とともにエッジ構造の物性への寄与が大きくなるため、この結果は、エッジ強度が内部に比べて高いことを示す。 このエッジ構造を第一原理計算で調べたところ、エッジにおいてモリブデン(Mo)原子が座屈しており、硫黄(S)原子へ電荷が移動していることが示唆された。このことから、両原子間に働くクーロン引力の増加が、エッジ強度を高めることに寄与したと説明できる。 |
【研究の背景】
シリコンをベースとした半導体デバイスを凌駕する新奇ナノデバイスの開発、あるいは、加速度、ガス、雷などの環境電磁場を測定するセンサーの開発が精力的に行われている。このような開発に必要な要素技術として、機械共振器[*1]がある。従来、高い剛性を持ち、かつ、高品位な結晶が得られることから水晶が機械共振器として用いられてきたが、近年、ナノスケールの超薄型機械共振器が求められており、その有力候補として単層2硫化モリブデン(MoS2)のナノリボン(ナノメートルサイズの幅に切り出した帯状物質)が挙げられている。しかし、単層MoS2ナノリボンの力学性質は、明らかになっていない。その理由として、物質の力学特性を理解するためには、力学的応答を測定すると同時に材料の結晶構造や形状を観察する必要があるが、そのような観察手法が確立されていないことが挙げられる。
従来手法では、原子配列を直接観察できる透過型電子顕微鏡(TEM)にシリコン製カンチレバーを組み込んだ装置を用いて、カンチレバーの曲がりから測定対象材料に加えた力を求め、それによって生じた変位をTEM像で得ることで、ヤング率(変形しやすさ)を推量している。しかし、この測定法は、個体差があるカンチレバーのばね定数を正確に知る必要があり、かつ、サブオングストローム(1オングストローム(1メートルの100億分の1)より短い長さのスケール)の精度で変位を求める必要があるため、定量性が十分でないと指摘されている。
【研究の内容】
大島教授らの研究グループは、2021年、TEMホルダーに細長い水晶振動子(長辺振動水晶振動子(LER)[*2])を組み込んで、原子スケール物質の原子配列とその機械的強度の関係を明らかにする「顕微メカニクス計測法」[*3]を世界で初めて開発した。この手法では、水晶振動子の共振周波数が、物質との接触による相互作用を感じることで変化する性質を利用する。共振周波数の変化量は物質の等価バネ定数に対応しており、その変化量を精密計測すればナノスケール/原子スケールの物質の力学特性を精緻に解析できる。水晶振動子の振動振幅は27 pm(水素原子半径の約半分)と微小なため、TEMの原子像がぼやけることはない。この手法は、上述した従来手法の問題点を克服するものであり、結果として高精度測定を実現した。
本研究では、この顕微メカニクス計測法を用いて、単層MoS2ナノリボンの力学性質を測定した。特に、アームチェア構造のエッジを持つMoS2ナノリボンに着眼し、そのヤング率の幅依存性について調べた。
具体的には、単層MoS2ナノリボンは、MoS2多層膜の端にタングステン(W)チップを接触させ、最外層のMoS2層を剥離することで作製した(図1)。図2に示す2枚は、それぞれ、同じ単層MoS2ナノリボンを断面から観察したTEM像(2-1)と平面から観察したTEM像(2-2)であり、単層MoS2ナノリボンが、MoS2多層膜とWチップ間に担持した状態にあることが確認できる(図3のイラストを参照)。また、エッジ構造は、平面から観察したTEM像のフーリエパターンから判定でき、アームチェア構造であることが分かった。この平面から観察したTEM像から、ナノリボンの幅と長さを測定し、それに対応する等価ばね定数をLERの周波数変化量から求めることで、このナノリボンのヤング率を得た。図3右側のグラフは、異なるリボン幅に対するヤング率をプロットした結果である。
同グラフから、リボン幅が3 nm以上では、ヤング率は166 GPa前後でほぼ一定であり、一方、リボン幅が2.4 nmから1.1 nmに減少すると、ヤング率は179 GPaから215 GPaに増加することがわかった。リボン幅の減少とともに物性へのエッジ構造の寄与が大きくなることを考慮すると、この結果は、エッジ強度が内部に比べて高いことを示す。
さらに、このアームチェア構造を第一原理計算で調べ、アームチェア・エッジにおいてモリブデン(Mo)原子が座屈し、硫黄(S)原子へ電荷が移動しているという結果を得た。このことから、両原子間に働くクーロン引力が増加することによりエッジ強度が高くなったと説明できた。
本研究成果は、2023年9月11日に科学雑誌「Advanced Science」誌のオンライン版で公開された。
【今後の展望】
現在、雷、加速度、ガス、臭気などの環境電磁界を計測するセンサーの開発が精力的に行われている。このようなセンサーの開発に必要な要素技術の一つが機械振動子である。本研究の成果は、ナノスケールの超薄型機械的共振器の設計を可能にする。近い将来、これを用いたナノセンサーがスマートフォンや腕時計などに組み込まれ、個人がスマートフォンで環境をモニタリングしたり、匂いや味などの情報を数値としてとらえ、自由に伝えることができる可能性がある。

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図1.MoS2多層膜の端にタングステン(W)チップを接触し、最外層の単層MoS2膜を剥離する過程を示したイラスト
図2.同じ単層MoS2ナノリボンを断面から観察したTEM像(2-1)と平面から観察したTEM像(2-2)
図3.(左)単層MoS2ナノリボンが、MoS2多層膜とWチップ間に担持した状態を示すイラスト、
(右)アームチェアエッジの単層MoS2ナノリボンに対するヤング率のリボン幅依存性を示すグラフ |
【論文情報】
| 掲載誌 | Advanced Science(Wiley社発行) |
| 論文題目 | Stiffer Bonding of Armchair Edge in Single‐Layer Molybdenum Disulfide Nanoribbons |
| 著者 | Chunmeng Liu, Kenta Hongo, Ryo Maezono, Jiaqi Zhang*, Yoshifumi Oshima* |
| 掲載日 | 2023年9月11日 |
| DOI | 10.1002/advs.202303477 |
【用語説明】
[*1] 機械共振器
材料には、ヤング率、その形状(縦、横、長さ)、質量によって決まる固有振動があり、これを共振周波数と呼ぶ。この共振周波数は、他の材料と接触したり、あるいは、ガス吸着などによる質量変化に応じてシフトする。そのため、この変化から、接触した材料の等価ばね定数や吸着したガスの質量を評価できる。このような評価法を周波数変調法という。本研究でも、周波数変調法によって、単層MoS2ナノリボンのばね定数を算出している。
[*2] 長辺振動水晶振動子(LER)
長辺振動水晶振動子(LER)は、細長い振動子(長さ約3 mm、幅約0.1 mm)を長辺方向に伸縮振動させることで、周波数変調法の原理で金属ナノ接点などの等価バネ定数(変位に対する力の傾き)を検出できる。特徴は、高い剛性(1×105 N/m )と高い共振周波数(1×106 Hz )である。特に、前者は、化学結合の剛性(等価バネ定数)測定に適しているだけでなく、小さい振幅による検出を可能とすることから、金属ナノ接点を壊すことなく弾性的な性質を得ることができ、さらには、原子分解能TEM 像も同時に得られる点で大きな利点をもつ。
[*3] 【参考】「世界初! 個々の原子間の結合強度の測定に成功―強くて伸びる白金原子の鎖状物質―」(2021年4月30日 JAISTからプレスリリース)
https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2021/04/30-1.html
令和5年9月19日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/09/19-1.html人間情報学研究領域のホ准教授らが国際会議RSS2023においてBest System Paper Awardの Finalistに選出
人間情報学研究領域のホ アン ヴァン准教授、修了生のBUI, Son Tienさん(令和5年3月博士後期課程修了、ホ研究室)および河野 晋也さん(令和5年3月博士前期課程修了、ホ研究室)が国際会議Robotics : Science and Systems(RSS)2023において発表した論文が、Best System Paper AwardのFinalistに選出されました。
RSSは、ロボティクス分野で権威あるトップカンファレンスの一つです。第19回となった今回は、令和5年7月10日から14日にかけて、韓国テグにて開催されました。
*参考:RSS2023
■年月日
令和5年7月14日
■研究題目、論文タイトル等
ROSE: Rotation-based Squeezing Robotic Gripper toward Universal Handling of Objects
■研究者、著者
Son Tien Bui, Shinya Kawano, Van Anh Ho
■対象となった研究の内容
本研究で提案したバラの花の機能と美しさに着想を得たROSE(ROtation-based-Squeezing grippEr)ロボットハンド(以下、ROSEロボットハンド)は、大面積接触と閉じた構造を特徴とし、より優しい把持接触と汎用的な把持性能を実現した。具体的に、ROSEロボットハンドでは、柔らかい素材であるソフトマテリアルを使用したスキンを作成し、樹脂製の軸部分の回転により動作するシンプルな機構を提案した。これにより、把持物を傷つけず、かつ制御の複雑さを軽減することに成功した。また、少量のソフトマテリアルと樹脂素材を用いた回転部分を3Dプリントにより形成することで安価に製作できる。さらに、ROSEロボットハンドの空間を閉じようとする動作により、単純な把持のみならず掴む動作も行えるため、把持対象が限定されない。
■選出にあたって一言
この度、RSSのようなトップ国際会議にBest System Paperファイナリストとして選ばれたのは、大変光栄です。この研究に貢献してきたHo研究室の修了生や現在のメンバーなどに感謝いたします。

令和5年8月3日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2023/08/03-1.html"ROSE"ハンド:バラの花から着想を得た包み込むように掴むロボットハンドを開発
"ROSE"ハンド:バラの花から着想を得た包み込むように掴むロボットハンドを開発
ポイント
- バラの花から着想を得て、物を包み込むように掴むソフトロボットハンドを開発した。
- ロボットハンドとして十分な把持力を持ちながら、素材にソフトマテリアルを使用することで把持物やその周辺を傷つけずに掴むことが可能である。
- ロボットハンド制御の複雑性を軽減させたシンプルな構造かつ優れた耐久力を持っており、多様な用途に使用できるため、幅広い分野での社会実装が期待される。
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市)人間情報学研究領域のホ アン ヴァン(Ho Anh Van)准教授は、バラの花から着想を得て、物を包み込むように掴み、かつ汎用性に優れたソフトロボットハンドを開発した。開発したロボットは、簡素化された制御機能と優れた耐久性を有しており、今後、農業分野における収穫作業代替ロボットとしての普及だけでなく、幅広い分野への応用が期待される。 |
【研究の背景と目的】
昨今、様々な分野でソフトハンドロボットが導入されている。特に、農業分野においては、ロボットハンドによる収穫作業の自動化が進められており、「農作物を傷つけずに収穫する」ための有用な手段として注目されている。
農業用のロボットハンドとしては、デリケートな農作物を把持することが可能なものがすでに開発されているが、イチゴやモモといった特にデリケートな農作物を対象とした把持の結果は芳しくない。また、ロボットハンドの普及が進まない原因の一つとして、ロボットが高価であることが挙げられる。ソフトロボットを含めたこれまでのロボットハンドは、対象物に特化した専用のロボットハンドとして開発されており、それに加えて、高度なセンシングや制御を必要としている。そのため、開発コストが高まることでロボットハンドの価格が上昇し、導入コストに影響していると考えられる。
本研究では、これらの課題を解決するため、"低価格であり、収穫物を傷つけない優しい把持が可能で、十分な力を持つロボットハンド"をコンセプトに、新しい農業用ロボットハンドの開発を目指した。さらに、農業だけでなく他分野での活用を視野に入れた、対象物を選ばず、また把持物とその周辺を傷つけずに把持することができるロボットハンドの実現を目指した。
【研究の内容】
■アイデア:
設計概念として、1)収穫物を傷つけないためにソフトマテリアルを用いる、2)ロボットハンドの制御を簡素化する、3)製作コストを低くする、4)対象物を選ばず汎用性に優れた把持を実現する、ことを目指した。以上を踏まえ、本研究で提案したバラの花の機能と美しさに着想を得たROSE(ROtation-based-Squeezing grippEr)ロボットハンド(以下、ROSEロボットハンド)は、大面積接触と閉じた構造を特徴とし、より優しい把持接触と汎用的な把持性能を実現した(図1、2)。
具体的に、ROSEロボットハンドでは、柔らかい素材であるソフトマテリアルを使用したスキンを作成し、樹脂製の軸部分の回転により動作するシンプルな機構を提案した。これにより、把持物を傷つけず、かつ制御の複雑さを軽減することに成功した。また、少量のソフトマテリアルと樹脂素材を用いた回転部分を3Dプリントにより形成することで安価に製作できる。さらに、ROSEロボットハンドの空間を閉じようとする動作により、単純な把持のみならず掴む動作も行えるため、把持対象が限定されない。

図1:開発したROSEロボットハンド

図2:設計概念
■特徴:
図2のように、ROSEロボットハンドの先端は半球の頂点を押し込み、窪ませた様な形状をしている。この窪みの底を軸とし、外側のスキンとこの軸を逆方向に回転させることでスキンにねじれを発生させ、それが窪んだ空間を閉じるように動作し把持を可能としている。従来の人の指を模倣したようなソフトロボットハンドでは適切な姿勢制御が必要であるが、ROSEロボットハンドは大面積接触と閉じた構造により、様々な対象物の把持を可能としている。特に、従来のロボットハンドでは困難であった油に浸した対象物の把持が可能であることが実験で示された(図3)。

図3:オリーブオイルタンクから浸したゆで卵の把持の様子
■動作ビデオ(YouTubeへリンク):https://youtu.be/E1wAI09LaoY
■他の技術との差:
前述したように、農業用ロボットハンドの課題の一つとして、収穫物を傷つけず、かつ潰さずに収穫することが挙げられる。この課題を解決するために様々な農業用ロボットハンドが開発されているが、特定の農作物の収穫に限られたものが多く、高価な導入コストという問題までは完全に解決できていない。
一方、このROSEロボットハンドは、対象物を選ばない把持が特徴である。通常のソフトロボットハンドは制御が難しいが、ROSEロボットハンドはそのシンプルな機構によりこの種の課題を解決した。例えば、農業用ロボットハンドでは、主に人の指を模したロボットハンドが多く使用されるが、把持の際に対象物の形状や柔らかさなどによって制御を工夫しなければならない。ROSEロボットハンドは、空間を閉じる動作により包み込むような把持を行うため、対象物によって制御を変える必要がなく、対象物を選ばずに把持することが可能である。結果として、導入コストの軽減につながると考えられる。
また、ROSEロボットハンドは、耐久性に優れている。耐久実験として、「把持対象物の上空からスタート→対象物まで下降→把持→持ち上げ→再び元の対象物があったところまで下降→把持解除→スタート地点へ戻る」という一連の流れを繰り返し行った。その結果、40万回の把持動作に成功した。それ以降は、スキンが破損したものの把持力の低下は見られなかった(図4a)。
さらに、把持した状態での引張強さを測定指標とし、把持力の測定を行った。ROSEロボットハンドが物体を掴み、保持し続けたままで、ROSEロボットハンドにかかる垂直方向の荷重を増加させ、破損するまでの荷重を計測した。その結果、平均400Nの荷重に耐えられることが分かり、耐久性が十分であることが確認できた(図4b)。
このように、従来のソフトロボットハンドの課題の一つとして挙げられる耐久性も十分に備えており、ROSEロボットハンドは他の技術と差別化できる優れたソフトロボットハンドである。

図4:(a)繰り返し動作による耐久実験の様子
(b)把持力の測定の様子

本研究成果は、2023年7月10日から14日まで韓国で開催の国際会議Robotics: Science and Systems (RSS2023)で発表された。
なお、本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)・戦略的創造研究推進事業さきがけ「IoTが拓く未来」研究領域(JPMJPR2038) (研究課題「タッチIoT : 触れるインターネット実現のための肌感覚送受信機の開発」)の支援を受け行った。
【波及効果・今後の展開】
従来のロボットハンドは把持が対象物に特化しており、精緻であるが汎用性に優れていなかった。これは、対象物や周辺に危害を加えないために必要不可欠な要素として、対象物によって特定のセンシングや制御を設定していたためでもある。しかし、昨今のソフトロボティクス研究の発展により、新たな機構を持つソフトロボットハンドが開発されている。ソフトロボットハンドは、柔らかい素材や空気などを使用した機構などが多く、制御面の工夫が強みである。ROSEロボットハンドもその一つであり、他のソフトロボットハンド同様に、今後需要が増加していくと考えられる。
ここで、本提案技術が想定する製品・サービスとして、次の二つを挙げる。第一に、果物の種類を選ばずに収穫作業を代替するロボットである。第二に、被介護者のQOL(Quality of life)を向上させるための生活支援介護ロボットである。本提案技術の汎用性を基に、幅広い分野でこれらの製品と新たなサービスを提供することで、ソフトロボットハンドの普及促進が期待される。
【論文情報等】
| 題目 | ROSE: Rotation-based Squeezing Robotic Gripper toward Universal Handling of Objects |
| 著者 | Son Tien Bui, Shinya Kawano, Van Anh Ho |
| 国際会議名 | Robotics: Science and System(RSS2023) |
| 会議発表日 | 2023年7月13日 |
| 論文掲載URL | https://roboticsproceedings.org/rss19/p090.html |
| DOI | 10.15607/RSS.2023.XIX.090 |
令和5年7月14日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/07/14-1.htmlサスティナブルイノベーション研究領域の高田助教が新化学技術推進協会 新化学技術奨励賞を受賞
サスティナブルイノベーション研究領域の高田 健司助教が公益社団法人新化学技術推進協会(JACI)の第12回新化学技術研究奨励賞を受賞しました。
JACIでは、産学官交流連携活動の一環として、新化学技術研究奨励賞を設けています。本奨励賞は、化学産業界が必要とする技術課題を設定し、その実現に貢献することができる若手研究者の独創的な萌芽的研究テーマを発掘・奨励する目的で毎年公募しています。
※参考:JACIホームページ
■受賞年月日
令和5年6月26日
■研究題目
「バイオアラミドの水溶化/水不溶化を利用したバイオコンポジット材料の創成」
■研究概要
本研究では、バイオ由来でありながら驚異的な力学強度を示す桂皮酸二量体由来のポリアミド(バイオアラミド)の水溶性をコントロールすることで他の水溶性樹脂と複合化(コンポジット化)して、さらに強い材料を作ることを目的としています。本研究の達成によってバイオ分子である桂皮酸や水溶性天然高分子をベースとした新しい材料への展開が期待できます。
■受賞にあたって一言
本研究課題に関して受賞できたこと大変光栄に存じます。新化学技術推進協会および本奨励賞の選考委員の皆様に深く感謝申し上げます。本研究成果により得られる材料が新時代のイノベーションを切り拓けるよう邁進してまいります。また、研究に関して多くのディスカッションとアドバイスをいただいた金子達雄客員教授はじめ、本研究提案のインスピレーションを与えていただいた研究室の皆様、および研究協力者の方々にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。
令和5年7月4日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2023/07/07-3.html金沢大学・北陸先端科学技術大学院大学 第1回共同シンポジウムを開催
令和5年6月26日(月)、本学小ホールにおいて、金沢大学・北陸先端科学技術大学院大学 第1回共同シンポジウムを開催しました。
金沢大学と本学は、融合科学共同専攻における分野融合型研究を推進してきましたが、本年度より、融合科学共同専攻にとどまらず、両大学間の共同研究の発展と促進を目指し、共同シンポジウムを開催することといたしました。
第1回である今回は、「エネルギー関連材料・デバイスにおける最新研究の展開」をテーマに開催し、寺野 稔学長による開会挨拶後、本学 サスティナブルイノベーション研究領域 大平圭介教授、金沢大学 理工研究域 機械工学系 辻口拓也准教授、金沢大学 ナノマテリアル研究所 當摩哲也教授、本学 融合科学共同専攻長 松見紀佳教授にそれぞれエネルギー関連の最新研究についてご講演いただき、金沢大学 和田隆志学長の挨拶をもって閉会となりました。
本シンポジウムが、今後の両大学間の共同研究の発展と促進を目的としていることから、各講演者は、自身の研究内容の説明に加えて、「どのような研究分野との共同研究が可能か」という点も併せて講演されました。
オンライン配信とのハイフレックス形式にて開催しました本シンポジウムには、両大学より多くの方が参加され、質疑応答の時間には研究者間による活発な意見交換が行われました。次回は金沢大学を会場として開催される予定であり、本シンポジウムが今後両大学間の共同研究発展の端緒となるよう推進して参ります。

開会の挨拶をする寺野学長

講演① 「シリコン系太陽電池の高性能・低コスト・長寿命化技術の開発」
大平圭介 教授(本学 サスティナブルイノベーション研究領域)

講演② 「ギ酸を中心とした循環型社会の構築に向けた要素技術開発」
辻口拓也 准教授(金沢大学 理工研究域 機械工学系)

講演③ 「軽くて柔らかい有機材料を用いた太陽電池の長寿命化と実用化」
當摩哲也 教授(金沢大学 ナノマテリアル研究所)

講演④ 「次世代型蓄電池の開発を目指した部材開発」
松見紀佳 教授(本学 融合科学共同専攻長)

閉会の挨拶をする金沢大学 和田学長
令和5年6月28日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2023/06/28-1.html第1回 金沢大学・北陸先端科学技術大学院大学 共同シンポジウム
| 開催日時 | 令和5年6月26日(月)13:30~17:00 |
| 会 場 | マテリアルサイエンス系講義棟1階 小ホール ※Webexにて同時配信(ハイフレックスにて開催) |
| 対 象 | 両大学の教職員・学生 |
| テーマ | エネルギー関連材料・デバイスにおける最新研究の展開 |
| プログラム | 13:30~ オープニング(共同シンポジウムの趣旨説明等) 13:40~ 開会挨拶 北陸先端科学技術大学院大学 寺野学長 13:45~14:25 ≪講演1≫ 講演者:大平圭介 教授(本学 サスティナブルイノベーション研究領域) 講演タイトル:シリコン系太陽電池の高性能・低コスト・長寿命化技術の開発 14:30~15:10 ≪講演2≫ 講演者:辻口拓也 准教授(金沢大学 理工研究域 機械工学系) 講演タイトル:ギ酸を中心とした循環型社会の構築に向けた要素技術開発 15:10~15:30 休憩 15:30~16:10 ≪講演3≫ 講演者:當摩哲也 教授(金沢大学 ナノマテリアル研究所) 講演タイトル:軽くて柔らかい有機材料を用いた太陽電池の長寿命化と実用化 16:15~16:55 ≪講演4≫ 講演者:松見紀佳 教授(本学 融合科学共同専攻長) 講演タイトル:次世代型蓄電池の開発を目指した部材開発 16:55~17:00 閉会挨拶 金沢大学 和田学長 |
| 参加申込 | 下記申込み用フォームからお申込みください https://forms.gle/eUG4xNHfKwfutWNq8 ※会場での参加、オンライン参加ともに申込みが必要です ※オンライン参加の方には、アクセス用のURLをご連絡いただいたメールアドレス宛に後日送付いたします。 【本件問合せ先】 研究推進課 学術研究推進係 内線:1907/1912 E-mail:suishin@ml.jaist.ac.jp |
サスティナブルイノベーション研究領域セミナー「機能性高分子微粒子とグリーンテクノロジー」
| 日 時 | 令和5年6月15日(木)13:00~15:00 |
| 場 所 | マテリアルサイエンス研究棟4棟8階 中セミナー室 |
| 講演題目 | 機能性高分子微粒子とグリーンテクノロジー |
| 講演者 | 信州大学 学術研究院(繊維学系) 准教授 鈴木 大介 氏 |
| 言 語 | 日本語 |
| お問合せ先 | 北陸先端科学技術大学院大学 共通事務管理課共通事務第三係 (E-mail:ms-secr@ml.jaist.ac.jp) |
● 参加申込・予約は不要です。直接会場にお越しください。
出典:JAIST イベント情報https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/event/2023/05/29-1.html名古屋国際学園(名古屋インターナショナルスクール)の生徒が来学 -SDGs特別授業&施設見学-
5月18日(木)、名古屋国際学園(名古屋インターナショナルスクール)の9年生(中学3年生相当)41名が来学し、SDGsに関する特別授業を受けました。
授業に先立ち、グローバルコミュニケーションセンターの元山琴菜講師から歓迎の挨拶があり、幅広い研究領域があることや、留学生・外国人教員の比率が高いといった本学の特色について紹介がありました。
その後、サスティナブルイノベーション研究領域の宮田全展講師によるSDGsの観点からのエネルギー変換に関する特別授業を開講しました。異なる金属間の電圧を温度差に変換するペルティエ効果と呼ばれる現象の科学実験もあり、生徒たちはペルティエ効果によって水が一瞬にして凍る様子に驚いていました。
続く施設見学では、本学の留学生による解説のもと、貴重図書室の『解体新書』(杉田玄白著)や情報社会基盤研究センターの大規模並列計算機「KAGAYAKI」、JAISTギャラリーのパズルを興味深く見ていました。留学生と生徒が、互いの出身国について紹介しあう場面も見られました。
今回の訪問は、SDGsの達成に寄与する科学技術について学ぶとともに、国際色豊かな大学院の雰囲気を体験する有意義な機会となったようです。

本学の紹介

科学実験を見つめる
名古屋国際学園の生徒

貴重図書室の見学

大規模並列計算機
「KAGAYAKI」の見学
令和5年5月22日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2023/05/22-1.htmlサスティナブルイノベーション研究領域の大平教授の研究課題が「NEDO先導研究プログラム」に採択
サスティナブルイノベーション研究領域の大平 圭介教授の研究課題が、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2023年度「NEDO先導研究プログラム」のエネルギー・環境新技術先導研究プログラムに採択されました。
NEDO先導研究プログラムは脱炭素社会の実現や新産業の創出に向けて、〔1〕エネルギー・環境分野(エネルギー・環境新技術先導研究プログラム)、〔2〕新産業創出に結びつく産業技術分野(新産業・革新技術創出に向けた先導研究プログラム)において、2040年以降(先導研究開始から15年以上先)の実用化・社会実装を見据えた革新的な技術シーズを発掘・育成し、国家プロジェクトを含む産学連携体制による共同研究等につなげていくことを目的として、先導研究を実施するものです。
NEDOは〔1〕および〔2〕について公募を実施し、応募件数139件中25件のテーマを採択しました。
*参考:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
■研究課題名
次世代型超高効率太陽光パネルの実現に向けた要素技術の研究開発
■研究テーマ名
リサイクル容易な曲面・超軽量結晶Si太陽電池モジュールの開発
■研究期間
2023年5月~2026年3月
■研究概要
本研究では、封止材を用いない、あるいは剥離可能な封止材を用いた新概念結晶Si太陽電池のモジュールの開発に取り組みます。モジュールに使用する各部材が接着されていないため、廃棄の際の分解・分別や、部材リサイクルが容易となります。さらに、耐荷重や形状の問題で設置が難しかった建材への太陽光発電導入につながるよう、軽量化と曲面加工が可能となるモジュールの実現も目指します。本研究は、京セラ、新潟大学、青山学院大学、岐阜大学と共同で実施します。
■採択にあたって一言
近未来に予測されている太陽電池モジュールの大量廃棄時代に備え、廃棄や部材リサイクルの問題への対応が急務となっています。しかし、廃棄・リサイクルに適した太陽電池モジュールの開発は、あまり活発に行われていません。本研究を通して、太陽電池モジュールの構造を根本から見直し、新たなスタンダードとなるようなモジュールを実現したいと思います。
令和5年5月18日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2023/05/17-1.html協調ロボットの未来:広範囲触覚・近接センシングの簡易な実現に成功
協調ロボットの未来:広範囲触覚・近接センシングの簡易な実現に成功
ポイント
- 周囲の環境や人に対する安全な動作を実現するための近接覚と、利用者に対して安心感を提供する触覚、2つの感覚を備えたセンシングロボットアームの開発に成功した。
- 広範囲なセンシング機能を備えていながら、複雑な配線がなく、シンプルかつ耐久性の高い設計を実現した。
- センシング装置におけるデジタルツインを構築することによって、データ駆動型のセンシング機能を備えることができ、Sim2Real[用語説明]の効果を高めることにも成功した。
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市)人間情報学研究領域のホ アン ヴァン(Ho Anh Van)准教授は、視覚による触覚・近接検知装置を備えたロボットアームの開発に成功した。これにより、ロボットと人間とのインターフェースに関して、人工知能(AI)を活かした人間とCyber-Physical System (CPS) [用語説明]環境における、新たな価値を創出する研究につながることが期待される。 |
【研究の背景と目的】
これまでの産業用ロボットの考え方では、人間とロボットは作業領域が明確に分離されており、ロボットは人間の安全半径内に立ち入ることが許されなかった。これは、第一義的には人間を危険から守るためだが、一方で、産業用ロボットの安全性に関する技術・研究の発展を阻害していた側面がある。安全性の確保は、最低限のセンシング技術と簡易なフェイルセーフ機能で十分とされ、研究開発のリソースは、より製品の競争力を高めるためのロボットの高速化・高精度化に注ぎ込まれてきた。しかしながら、近年の我が国における労働力不足や長引くコロナ禍による新しい生活様式の中で、これまで人間の手で行ってきた作業をロボットで代替しようとする動きが急速に高まってきている。さらに、全ての人が健康的な生活を送ることができる社会を目指すSDGsの大きな流れが加わり、現在ロボット技術に人間との調和、つまりロボットが人間と共存し、さらに人間とコラボレーションすることが強く求められている。
例えば、ロボットが人間をサポートする技術として、アームで人間を支える介護ロボットでは、介護サービスの提供を受ける人間が安心感を得られる触覚センシングの活用が検討されている。触覚は、人間同士の触れ合いにおいては愛情や信頼、思いやりを伝える重要な感覚である。しかし、ロボットの触覚技術は長年研究されてきているが、視覚技術の研究と比較すると未だ応用例は極めて少ない。また、同時に周囲の人間や環境に対する安全性を確保するためには、ロボットが周辺状況を高い精度で検知する必要があるが、特に外付けのカメラを利用する場合に、アームや利用者によって遮蔽される領域が多く、アームの近接領域の検出が困難となっている。
このような問題点に鑑み、今回、利用者が安心感を得られる接触と、安全な動作を実現する近接の両方の感覚を兼ね備えたロボットアームの技術を提案した。本研究において実現される近触覚・接覚のセンシング技術では、人間を含む周囲の環境を認識し、自立的な判断行動が可能となるロボットアームを開発することで、衝突回避等の安全性だけではなく、接触が許容される状況の判断および接触を通じた安心感の提供といった機能を有する、人工知能(AI)を搭載した協働ロボットの実現を目指す(図1)。

図1:本研究の位置付け
【研究の内容】
本研究では、低コストかつシンプルな構造を有する柔軟な触覚装置と、人間との接触を即時に検知することで、人間の行動を推定しながら人間と調和するロボットを実現した。このロボットは、人間の皮膚を模した柔軟なスキン上の複数の接触点へ加えられた力を、ロボットアームの両端に設置されたカメラが、スキンの変形の状態をリアルタイムで測定する技術によって実現した。さらに、透明なシリコンゴムと薄い柔軟な高分子分散液晶(PDLC)フィルムを組み合わせることで、柔軟なスキンの透明性をアクティブに切り替えることが可能となった(図2)。利用するPDLCフィルムは、外部から小さな電圧を印加することにより、透明/不透明を切り替えることができる。この透明/不透明の切り替えでは、近接覚と触覚の二つのモードを備え、またそのモードをシームレスに切り替えることができる。

図2:設計概念
(図2)
(右)近接覚モード(PDLCが透明):スキン内部の2台のカメラは、スキン近傍の外部オブジェクトを検知できる。
(左)触覚モード(PDLCが不透明):これまでの研究成果と同様、2台のカメラが接触または相互作用下でのスキンの歪みを検知し、触覚または力のセンシングが可能となる。
本研究で使用したロボットアームは、柔軟なスキンの内側に格子状のマーカーを備え、スキン内部に2台の小型カメラを配置している。スキンの透明性の能動的な切替えにより、近接覚と広範囲の触覚をセンシングする独創性の高い手法である。圧力センサを用いずカメラによるマーカーの変位から外力を算出することから、配線の複雑さやオクルージョン (光学遮蔽)などをほぼ完全に無くすことに成功しており、高いセンシング精度と耐久性を実現した。さらに、各モジュールの内圧を変えることでスキンの柔らかさを調整し、スキンに触れた人間に対する触感についても、制御可能である。さらに、深層学習を通じて多様な近接・接触動作・状況を予め学習させることで、人間と調和し、人間との複雑な近接・接触を実現する潜在的に高い適応性を持つと期待される。
図3:各動作モード
<参考動画>
動作ビデオ1:https://youtu.be/NN2u8YBLITY
動作ビデオ2:https://youtu.be/m8QzvDx_vpc
今日、ロボットは、いわゆる物理的な人間とロボットの相互作用(pHRI;physical Human-Robot Interaction)シナリオのように、安全半径の外で動作しつつ、人間と同じワークスペースを共有し(共存)、さらには人間と相互作用(コラボレーション)する必要がある。pHRIでは、ロボットは衝突の可能性を回避するだけでなく、避けられない物理的接触と意図的な物理的接触の両方を安全かつ信頼できる方法で対応することが期待されている。これを達成するために、深度カメラと力/トルクセンサーの組み合わせが提案されているが 、これは、外部カメラを使用するために、先述した視覚の遮蔽の問題を有している。近年、マルチモーダル知覚(触覚、近接など)を備えた大規模センサースキンが開発されたが、センサーネットワークのデータ取得と処理が複雑であるため、微調整が困難であり、衝突等の突発的な事故への応答が遅くなる可能性がある。
本研究は、ロボットの周りの多様な近接や接触動作・状況などをたった2台のカメラで検知することが可能なシンプルな構造をしており、信頼性を持つpHRIの実装方法となり得る。また、Sim2Realのプロセスで、実物の特性を再現できるデジタルツインにおいて、必要なデータ収集や学習などをシミュレーション環境で実施し、学習の結果を、実物に反映させることができ、今後の研究・開発の時間を大幅に縮小することも期待される。
本研究成果は、2023年2月28日にIEEE(米国電気電子学会)が発行する学術雑誌「IEEE Transactions on Robotics」のオンライン版に掲載された。また、2023年4月3日から7日までシンガポールで開催の、国際会議IEEE-RAS International Conference on Soft Robotics (RoboSoft 2023)で発表された。
なお、本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)・戦略的創造研究推進事業さきがけ「IoTが拓く未来」研究領域(JPMJPR2038)の支援を受け行った。
【今後の展開】
本研究によって、今後の展開が期待される製品・サービスとして、次の二つが挙げられる。一つ目は、利用者がより多くの事を自分自身でできるように支援し、さらに利用者に加え、周りの状況も考慮したロボットアームを備えた車椅子への活用である。二つ目に、サービスの提供を受ける利用者に安心感や大事にされているという感覚、思いやりなどを伝えることができる介護ロボットである。将来的に、これらの製品が介護保険等の給付対象として認可されることで普及促進へと繋がることが期待される。
【論文情報等】
| (1) | |
| 題目 | Simulation, Learning, and Application of Vision-Based Tactile Sensing at Large Scale |
| 雑誌名 | IEEE Transactions on Robotics |
| 著者 | Quan Khanh Luu, Nhan Huu Nguyen, and Van Anh Ho |
| 掲載日 | 2023年2月28日 |
| DOI | 10.1109/TRO.2023.3245983 |
| (2) | |
| 題目 | Soft Robotic Link with Controllable Transparency for Vision-based Tactile and Proximity Sensing |
| 国際会議名 | the 6th IEEE-RAS International Conference on Soft Robotics (RoboSoft 2023) |
| 著者 | Quan Luu, Dinh Nguyen, Nhan Huu Nguyen, anh Van Anh Ho |
| 発表日 | 2023年4月6日 |
【用語解説】
コンピュータ内のシミュレーション等で学習したモデルを現実世界に用いるという強化学習の手法。
実世界(フィジカル)におけるデータを収集し、サイバー世界でデジタル技術などを用いて分析・知識化を行い、それをフィジカル側にフィードバックすることで、産業の活性化や社会問題の解決を図っていく仕組み。
令和5年4月12日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/04/12-1.html人間情報学研究領域のホ准教授のインタビュー記事がJST「サイエンスウィンドウ」に掲載されました
人間情報学研究領域のホ アン ヴァン准教授のインタビュー記事が、科学技術振興機構(JST)が運営するウェブマガジン「サイエンスウィンドウ」に掲載されました。
ホ准教授が取り組む、シリコンなどの柔らかい素材を使用した"ソフトロボット"の研究内容のほか、研究者としてのキャリアや、本学の研究環境についても紹介されています。ぜひご覧ください。
インタビュー記事はこちら(外部リンク)
JST Science Portal「サイエンスウィンドウ」特集記事【海を越えてきた研究者たち】
柔らかいロボットで人と協働する社会を
https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/sciencewindow/20230215_w01/index.html
「サイエンスウィンドウ」は、科学技術振興機構(JST)が運営する、魅力あふれる科学の取り組みを分かりやすく紹介するWebマガジンです。多くの方にとって科学技術が身近なものになるよう、科学と暮らしの関係にフォーカスした情報をタイムリーに発信しています。
令和5年2月17日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2023/02/17-1.html

