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研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。学生の米澤さんが笹川科学研究助成に採択
学生の米澤 隆宏さん(博士後期課程3年、応用物理学領域、高村研究室)が公益財団法人・日本科学協会笹川科学研究助成に採択されました。
笹川科学研究助成は、課題の設定が独創性・萌芽性をもつ研究、発想や着眼点が従来にない新規性をもつ若手の研究を支援しています。
■採択期間
2019年4月1日~2020年2月10日
■研究課題
界面状態の理解に基づく半導体/絶縁体基板上へのシリセン成長と物性・形成機構の解明
■研究概要
Siの二次元結晶である「シリセン」は理論的に新奇量子現象の発現やそれを利用した次世代電子デバイスへの応用が期待されていますが、合成報告されたシリセンの殆どが金属基板を用いているため、シリセン自体の物性の殆どが未解明のままとなっています。本研究では半導体/絶縁体基板上へのシリセン合成を試み、電子線/X線を用いた分析や原子分解能顕微鏡観察、計算による解析などの多角的な評価を通じて、シリセンの物性・形成機構の解明を目指します。
■採択にあたって一言
私のシリセンに関する研究が伝統のある笹川科学研究助成に採択されたことを大変嬉しく思います。シリセンの物性解明、実用化に向け、本助成を通し、その取り組みを一層と加速したく思います。本研究課題を採択して下さった公益財団法人日本科学協会に心より感謝申し上げます。また、本研究を進めるにあたり多くのご助言を頂きました主指導教員の高村由起子准教授、アントワーヌ・フロランス講師、研究室のメンバー及びスタッフの方々にも深く感謝致します。
令和元年5月10日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2019/05/10-1.htmlシリセンと六方晶窒化ホウ素の積層構造を実現 -シリセンの性質に影響しない絶縁性酸化防止膜の実証-
シリセンと六方晶窒化ホウ素の積層構造を実現
-シリセンの性質に影響しない絶縁性酸化防止膜の実証-
ポイント
- シリセンはケイ素版グラフェンと言える原子層物質。このシリセンと絶縁性の原子層物質である六方晶窒化ホウ素の積層構造を二ホウ化物薄膜上で実現。
- 世界で初めて、絶縁性の六方晶窒化ホウ素シートにより、シリセンの構造や電子状態に影響を及ぼすことなく、大気中での酸化防止に成功した。
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北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)(学長・浅野 哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科応用物理学領域のアントワーヌ・フロランス講師、高村 由起子准教授らは、トゥウェンテ大学、ウォロンゴン大学と共同で、シリセンと六方晶窒化ホウ素(hBN)の積層構造を二ホウ化ジルコニウム薄膜上に形成し、シリセンの構造と電子状態を乱さずに、大気中で一時間以上の酸化防止が可能であることを世界で初めて実証しました。 |

<今後の展開>
六方晶窒化ホウ素(hBN)がシリセンの電子的特性に影響せずに良好な界面を形成することが実験的に明らかとなり、加えて、一原子層厚みにも関わらず、短時間とはいえ大気中での酸化防止効果があることが実証されました。今後は、このhBNシート上にさらに厚く保護層を形成することでシリセンを大気中で安定的に取り扱うことが可能になり、従来困難であった大気中での評価や加工、ひいてはデバイス作製へと発展することが期待できます。
<論文>
"Van der Waals integration of silicene and hexagonal boron nitride" (シリセンと六方晶窒化ホウ素のファン・デル・ワールス積層)
DOI: https://iopscience.iop.org/article/10.1088/2053-1583/ab0a29/
F. B. Wiggers, A. Fleurence, K. Aoyagi, T. Yonezawa, Y. Yamada-Takamura, H. Feng, J. Zhuang, Y. Du, A.Y. Kovalgin and M. P. de Jong
2D Materials 6, 035001 (2019).
平成31年4月8日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2019/04/08-1.htmlモデル動物が群れをつくるメカニズムを解明
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モデル動物が群れをつくるメカニズムを解明
滋賀医科大学神経難病研究センターの杉 拓磨助教、西村 正樹教授、九州大学の伊藤 浩史准教授、北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科/生命機能工学領域の永井 健講師は、動物集団が群れをつくる際のメカニズムを解明しました。これにより将来的に渋滞時や災害時の群衆の効率的な流動制御や、ロボットの群知能制御などへつながることが期待されます。この研究成果は、平成31年2月18日に英国科学誌「Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)」に掲載されました。
<ポイント>
- 生物学でよく使われる線虫という動物がたくさん集まるとネットワーク状に群れることを発見。
- 線虫の群れと、人、鳥、魚の群れは共通するメカニズムで形成されることを強く示唆。
<概要>
- 半世紀近く世界中で研究されているモデル動物の線虫C. エレガンスが、集団でネットワーク状の群れをつくることを発見。世界で初めてモデル動物の集団行動の実験システムを開発。
- 人、鳥、魚の群れ形成メカニズムの理論的研究で用いられてきた数理モデルをもとに数値シミュレーションを行った。
- その結果、①ぶつかった線虫が移動方向をそろえることと②線虫1個体が弧を描くように動くことが、線虫の不思議なネットワークをつくる鍵であることを明らかにした。
- 渋滞時や災害時の人の集団行動の解析やロボットの群知能の効率的制御につながることが期待できる。
<内容詳細>
【研究背景と経緯】
夕暮れどきに浮かぶ鳥の群れや水族館のイワシの群れなど、大量の動物による組織的な行動は多くの人を魅了します。また駅などの混雑時や渋滞時の人の群衆を効率的に流動させることは重要な問題です。これまで、群れ形成について理論研究が盛んに行われ、様々な群れに共通する形成メカニズムの存在が予言される一方、実験的な証明はほとんどありませんでした。これは、野外の鳥や魚の大規模な群れを実験室に再現することが不可能という、ある意味、当然の理由によるものでした。
土壌に生息する線虫C. エレガンス(図1a)は、モデル動物として半世紀近く研究され、細胞死機構の発見や緑色蛍光タンパク質の動物応用などで数々のノーベル賞の対象となりました。われわれは、線虫の体長はわずか1 mm弱であるため、仮に一度に大量飼育できれば、コンパクトな群れ形成の解析システムを作れるのではないかと考えました。さらにモデル動物としての利点である変異体を用いた解析ができることから、過去の理論的研究で提案されたメカニズムを実験的に検証できると考えました。
滋賀医科大学の杉 拓磨助教、西村 正樹教授、九州大学の伊藤 浩史准教授、北陸先端科学技術大学院大学の永井 健講師は、線虫C. エレガンスを大量飼育する方法を確立し、集団によりネットワーク状に群れをつくることを発見しました(図1)。実験と数理シミュレーションを組み合わせた解析の結果、①隣接する線虫同士が相互作用し移動方向をそろえることと②線虫1個体が弧を描くように動くことがこの群れの形成条件であることを明らかにしました(図2)。このメカニズムは人や鳥、魚の群れ形成の理論的研究から提唱されてきたものと類似していることから、本研究は、群れ形成の根底に共通のメカニズムがあることを実験で強く示唆した初めての例となります。
【研究内容】
線虫の飼育では通常、寒天培地上に塗布した大腸菌を餌として与えますが、この従来法では餌が枯渇すると線虫の増殖は止まってしまい、大量の線虫を得ることはできません。そこで本研究では、技術的ブレークスルーの1つとして、栄養に富む「ドッグフード」を線虫の餌として利用することにより、餌の枯渇なく、大量の線虫C. エレガンスを飼育することが可能になりました。そして驚くべきことに線虫集団はガラス表面(図1b)、プラスチック表面(図1c)、寒天培地表面(図1d)でネットワーク状に群れることを発見しました。この群れ形成の意味は、1個体では乾燥状態で干からびてしまう線虫が集団で群れることにより、表面張力により水を保持し、乾燥への耐性を獲得することにあると考えられます。
次に、1個体レベルと集団レベルの線虫の観察から、図2に記載の①と②が特徴的な線虫の運動であると示されました。この単純な物理的条件は過去の人や鳥、魚の群れの理論的研究から予想されたメカニズムと類似していることから、過去のこれらの研究をもとに数理モデルを作成しました。このモデルはシミュレーションにおいて線虫のネットワーク状の群れを再現しました。
つづいて、実験とシミュレーションで数理モデルのパラメータを変えた場合のそれぞれの結果の整合性を確認し、モデルの正確性を検証しました。まず上述①と②の条件(図2)に焦点をあて、線虫周囲の湿度を変えることにより相互作用の強さを変えることや(図3)、描く弧の大きさが小さい線虫変異体を用いた実験を行いました(図3)。その結果、数理モデルのシミュレーションと実験結果はよく一致しました。さらに神経科学分野の最先端テクノロジーであるオプトジェネティクス(p4参照)を用いた実験結果も再現されました。以上の実験とシミュレーションを用いた検証から、上述2条件(図2)が線虫集団による群れ形成の基本メカニズムであると結論づけました。
【今後の展開】
本研究は、人や鳥、魚などの動物集団の群れ形成に共通するメカニズムの存在を初めて実験的に示しました。今後、まずこの独自のモデル動物を用いた実験システムを用いて、さらに数理モデルの正確性を高める予定です。このようなモデルは、避難時や渋滞時の人の動きの解析につながります。実際、国内においても企業と大学が連携して、魚の群れが協調して行動する仕組みを自動運転技術に応用し、渋滞緩和に活かすための共同研究を実施しています。また、災害時や祭典での群衆の渋滞における圧死を避けるための緊急避難方法の解析は類似のモデルを用いて行われており、今後、本研究により数理モデルによる予測精度が向上すれば、効率的な避難方法の提案などにつながります。人間以外にも羊や魚の群れの効率的な制御を行うことにより、畜産や漁業などにも有用な知見を与えることも期待できます。
また、世界中で盛んなロボット開発では、ロボット単体では困難な作業を集団で行わせるため、群知能と呼ばれるアルゴリズムの開発が進められています。例えば、スイスの会社は超小型群ロボットKilobotを開発し、群制御を通して、がれき中の生存者探索や汚染物質除去などを実現しようとしています。本研究は、これらの研究分野とも密接に関連していくことが期待されます。
【参考図】



【論文情報】
| 論文名 | C. elegans collectively forms dynamical networks |
| 著者名 | Takuma Sugi*, Hiroshi Ito*, Masaki Nishimura, Ken H. Nagai* (*は責任著者) |
| 雑誌名,巻号,DOI | Nature Communications (2019年2月18日 (日本時間) 付 電子版), doi:10.1038/s41467-019-08537-y |
【研究資金情報】
- 科学研究費補助金 基盤研究(B)、若手研究(B)、新学術領域研究
- 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業「さきがけ」
- 持田記念医学薬学振興財団
【用語説明】
- 線虫C. エレガンス
土壌に生息する非寄生性の線虫で、正式名称はセノハブダイディス・エレガンス。分子遺伝学的な解析の可能なモデル動物の1つ。半世紀近く前にシドニー・ブレナーにより利用され始め、細胞死の発見、RNA干渉の発見、緑色蛍光タンパク質の個体レベルでの応用により2002年と2006年のノーベル医学生理学賞、2008年のノーベル化学賞の対象となった。1998年には多細胞生物で初めて全ゲノム配列の解読が終了した。ヒトの遺伝子数と同程度の約2万個の遺伝子を持ち、それらの中にはヒトの遺伝子と類似したものが40%弱も含まれる。また体が透明なため、体外から体を傷つけずに蛍光観察できる。 - オプトジェネティクス
光遺伝学と呼ばれる、最先端のテクノロジー。光感受性のイオンチャネル分子を標的の神経細胞に発現させ、光刺激によりそのイオンチャネルを活性化させることで標的の神経細胞を活性化できる。線虫の場合、体が透明で光透過性が高いので、体を傷つけずに標的の神経細胞のみを活性化させることができる。本研究では、前進と後進を駆動する神経細胞にイオンチャネル分子を発現し、活性化した。
平成31年2月18日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2019/02/19-1.html応用物理学領域の富取教授らの研究成果が国際学術誌Advanced Materials Interfaces 誌のInside Back Coverに採択
応用物理学領域の富取 正彦教授、高村 由起子准教授、アントワーヌ・フロランス講師らの研究成果が国際学術誌Advanced Materials Interfaces に掲載され、フロランス講師による図がInside Back Cover(裏表紙内面)に採択されました。
この論文は、本学博士後期課程の修了生・野上真さんが実施した「副テーマ研究」が基になりました。副テーマ研究は本学が創設以来行ってきた制度です。学生が所属する主研究室を越えて他研究室で活動し、経験や研究の枠を広げるとともに、科学技術の融合を図ろうというものです。この成果はその良い一例と言えるでしょう。
■掲載誌
Advanced Materials Interfaces
■著者
Makoto Nogami, Antoine Fleurence, Yukiko Yamada‐Takamura, Masahiko Tomitori
■論文タイトル
Nanomechanical Properties of Epitaxial Silicene Revealed by Noncontact Atomic Force Microscopy
■論文概要
本研究では、原子レベルの分解能を持つ非接触原子間力顕微鏡(nc-AFM)を用いて、2次元材料として注目を集めているシリセン(シリコンの同素体)のナノスケールでの力学特性の解明に挑みました。nc-AFMが持つ力学的散逸エネルギーの測定能力も活用し、エピタキシャル成長したシリセンが示す特異な柔軟性・原子の変位挙動、周期的縞状構造の歪み分布に関する新たな知見を得ました。この成果は、ナノスケールの新奇デバイス作製の基盤となることが期待されます。
論文詳細:https://doi.org/10.1002/admi.201801278
Inside Back Cover詳細: https://doi.org/10.1002/admi.201970014

平成31年2月1日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2019/02/01-3.html宮竹小学校4年生を対象に理科特別授業を実施
1月29日(火)、能美市立宮竹小学校の4年生22名を対象に理科特別授業を実施しました。これは、児童に理科への関心をより深めてもらう取組として、同小学校から本学に対して企画の依頼があったものです。
特別授業では、ナノマテリアルテクノロジーセンターの赤堀准教授(応用物理学領域)及び木村技術専門職員が講師となり、液体窒素を用いた様々な科学実験を行いました。
液体窒素によって、花やスーパーボール、乾電池などの身近な材料が化学反応を起こす光景に、子供たちは目を輝かせて見入っていました。
また、特別授業終了後にはJAISTギャラリーの見学を行いました。実際に触って解いて遊ぶことができるパズルの数々に、子供たちは興味津々な様子でした。
今回の企画は、子供たちにとって、先端科学技術の世界に触れるまたとない機会となりました。

特別授業の様子

パズルで遊ぶ子供たち
平成31年2月1日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2019/02/01-1.html世界最高水準の(有機系)Liイオン伝導体 ―有機系擬固体電解質の作製に成功―
世界最高水準の(有機系)Liイオン伝導体
―有機系擬固体電解質の作製に成功―
北陸先端科学技術大学院大学(学長・浅野 哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科・環境エネルギー領域の金子 達雄教授と物質化学領域の松見 紀佳教授らは、バイオ分子から10-2 Scm-1弱のイオン伝導性を持つ擬固体電解質の作製に世界で初めて成功しました。
バイオ由来材料は植物などの生物に由来する再生可能な有機性資源(バイオマス)を原材料とする材料で、二酸化炭素(CO2)削減と廃棄物処理に有効であるとされていますが、未だ使い捨て分野で使用されているのが現状であり、用途は限られています。一方その高価格を想定した場合には、高付加価値を持つ用途への展開が想定されます。今回、東京大学でバイオ分子として数年前に見出された3-アミノー4-ヒドロキシ安息香酸を化学的にアレンジすることでポリベンズイミダゾールという超高耐熱高分子を合成し、その一部をホウ素系物質で化学修飾することでイオン化に成功しました。イオン化されたポリベンズイミダゾール(iPBI)とイオン液体をコンポジット化することでペースト状の固体電解質を得ました。その10%重量減少温度は340℃を超えるため高耐熱な擬固体電解質であり、かつイオン伝導性8.8x10-3Scm-1という有機系固体としては極めて高い値であることが分かりました。さらに、このイオン伝導のほとんどがLiイオン伝導の寄与によるものであることも分かりました。このメカニズムはiPBI鎖の持つ特別な電子状態によりLiイオンがあまり強く結合していないために印加電圧に敏感に応答するためと考えています。さらに、直線走査ボルタンメトリーにより4.5Vまでの電位窓を有することが分かりました。
さらに、この擬固体電解質の有用性を探るために、リチウムイオン二次電池セルを作製しその充放電特性を調べました。その結果、擬固体系ながらLi/電解質/Siセルにおいて0.1Cで約1300mAhg-1の放電容量を示しました。これにより未来指向型の次世代自動車に必須とされる高性能二次電池や、高電圧を必要とする他のエネルギーデバイスの要素技術として有効と考えられます。
本成果は、英国王立化学会誌Journal of Materials Chemistry A(インパクトファクター9.9)に1/28 午前10時(英国時間)オンライン公開されました。

平成31年1月29日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2019/01/29-1.html「日本固有資源"サクラン"の細胞を並べる機能を発見」を開発 -細胞組織工学へ新たな道-
「日本固有資源"サクラン"の細胞を並べる機能を発見」を開発
-細胞組織工学へ新たな道-
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北陸先端科学技術大学院大学(JAIST、学長・浅野 哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科/環境・エネルギー領域の金子研究室らは、日本固有種微生物スイゼンジノリから抽出される超高分子サクラン(発見者:岡島麻衣子研究員)の新しい機能を発見しました。3Dプリンターで凹凸にパターン化したポリスチレン基板(武藤工業株式会社作成)の上でサクランゲルを作成することで、このパターンが転写されたゲルを得ました。ゲル内部の分子配列は特殊であり凹部のみでサクラン分子鎖が配向し、細胞をその上に播種すると細胞のほとんどがそれに沿って伸展することが見いだされました。
スイゼンジノリは日本固有種の食用藻類で福岡県、熊本県の一部で地下水を利用し養殖されています。このスイゼンジノリの主成分であるサクランは、2006年本学の岡島らによって発見され、天然分子の中で最も大きな分子量を持ち、高い保水能力(ヒアルロン酸の5倍~10倍)と抗炎症効果を持つ新機能物質として注目され、現在では化粧品を中心に幅広く用いられています。研究チームは昨年このサクランの高い保水能力に着目し、サクラン・レーヨン混紡繊維"サク・レ"を作製するなど、人体に接触する材料としての研究を進めてきました。並行してサクランが作るゲルの細胞適合性などを系統的に研究する中で、今回の発見に至りました。 このゲルは極めて低濃度で液晶構造を形成するサクラン分子鎖の自己配向性を巧みに利用した例であり、サクランがポリスチレン基板に張り付きながら乾燥していく際に、凸部から凹部に向かって重力に伴う延伸張力が働き分子配向すると考えられます。これにより膜自身にも分子配向の方向に筋状のマイクロ構造が形成され、その方向を細胞が認識して配向伸展したと考えています。これが細胞を並べるメカニズムです。また、サクランは光合成を行うラン藻(スイゼンジノリ)が作る物質であるため、空気と水と日光さえあれば作ることが可能であり、生産時に大気の二酸化炭素(CO2)削減に貢献する究極にエコな物質といえます。 ![]() 写真 パターン化サクランゲル(左:ゲル,右:ゲル上の伸展細胞) 本成果はアメリカ化学会誌 [ACS Applied Materials & Interfaces(インパクトファクター8.1)] でオンライン公開され近く印刷公開予定です。 |
<開発の背景と経緯>
藻類などの植物体に含まれる分子を用いて得られるバイオマス注1)材料の中には、材料中にCO2を長期間固定できるため、持続的低炭素社会の構築に有効であるとされています。北陸先端科学技術大学院大学の研究チームはこれまで、淡水性の藍藻であるスイゼンジノリから高保湿力を持つ繊維質である超高分子「サクランTM」注2)を開発してきました。
近年、iPS細胞の発見に端を発し、細胞組織工学の分野が活発化してきています。しかし、細胞を配向させる技術が無いと人工臓器も単なる分化細胞の塊にすぎません。そこで、細胞を適所で配向させる技術が待たれています。
<作製方法>
3Dプリンタで作成したマイクロプラスチック棒のアレイの上にサクランをキャストした。得られたフィルムはプラスチック棒の間でサクランが棒に対して垂直に配向することが分かりました(図1)。
<今回の成果>
このゲルは極めて低濃度で液晶構造を形成するサクラン分子鎖の自己配向性を巧みに利用した例であり、サクランがポリスチレン基板に張り付きながら乾燥していく際に、凸部から凹部に向かって重力に伴う延伸張力が働き分子配向すると考えられます。これにより膜自身にも分子配向の方向に筋状のマイクロ構造が形成され、その方向を細胞が認識して配向伸展したと考えています。この上に、L929マウス線維芽細胞を播種した所、細胞はサクランの配向に応じてパターン化した配向性を示すことが分かりました(図2)。
<今後の展開>
ほとんど全ての臓器は配向しており細胞を配向させるこの技術は組織工学に極めて有用と考えられる。サクランは元来緊急時の火傷治療膜、臓器癒着防止膜、湿布剤に応用できると報告してきましたが、今回人工血管、人工皮膚など、組織工学用基板へ応用展開も期待できます。
| <参考図> | ||
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| 図1 3Dプリンタで作成した基板上でキャストしたサクランの偏光顕微鏡注3)写真(530nmの鋭敏色板使用) 左2つは上からの観察、右は横からの観察 | ||
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| 図2 播種した細胞の写真(ほぼすべての細胞が左右に伸展している) | ||
<用語説明>
注1)バイオマス(例 スイゼンジノリ)
生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、一般的には「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」をバイオマスと呼ぶ。本研究で取り扱ったスイゼンジノリ(ラン藻の一種であり学名はAphanothece sacrum)は日本固有のバイオマスの一種であり、世界でも極めて希な食用ラン藻である。また、スイゼンジノリは江戸時代から健康維持のために食され、当時は細川藩および秋月藩における幕府への献上品とされてきた。大量養殖法が確立されている。
注2)サクラン
スイゼンジノリが作る寒天質の主成分である。硫酸化多糖類の一つでスイゼンジノリから水酸化ナトリウム水溶液により抽出される。サクランの重量平均絶対分子量は静的光散乱法で2.0 x 107 g/mol と見積もられている。現実的には原子間力顕微鏡によりサクラン分子が 13 μm の長さを持つことが直接観察されている。天然分子で 10 μm 以上の長さにも達するものを直接観察した例はこれが初めてとされる。サクランという名称はスイゼンジノリの種名の語尾を多糖類の意味の "-an" という接尾後に変換したもので、北陸先端科学技術大学院大学の岡島らによって発見され名付けられた。現在もその金属吸着性や高保水性などに関する研究が進められており、吸水高分子として応用が進められている。
注3)偏光顕微鏡
光学顕微鏡の一種。試料に偏光を照射し、偏光および複屈折特性を観察するために用いられる。偏光特性は結晶構造や分子構造と密接な関係があるため、鉱物学や結晶学の研究で多く用いられる。他、高分子繊維の研究などにも用いられる。一般には特定方向に偏波させることのできる二枚のフィルター(偏光板)をお互いに直交させて使用する。これにより光は通らなくなるが、屈折率に方向依存性のある高分子繊維などが二枚の偏光板の間に存在すると、この高分子繊維だけが観察可能となる。さらに、特殊なカラーフィルターを組み合わせることで高分子繊維内部の分子配向の方向を色調変化により判定することが可能となる。
平成31年1月21日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2019/01/21-1.html知能ロボティクス領域のHo准教授、物質化学領域の西村准教授がH31.4より融合科学共同専攻の専任教員へ
知能ロボティクス領域のHo Anh Van准教授、物質化学領域の西村 俊准教授が、平成31年4月より、金沢大学と本学が共同で設置している融合科学共同専攻に専任教員として新たに加わることとなります。
●融合科学共同専攻教員一覧については、こちらのページをご覧ください。
■融合科学共同専攻とは
北陸先端科学技術大学院大学と金沢大学は、将来が見通しにくい現代社会において、卓越した発想と行動力を基に、社会を力強く導いていけるような 「科学技術イノベーション人材」を養成するため、大学院レベルでの共同教育課程を立ち上げました。
イノベーションの源泉である「新たな知」の創造は、既存の科学分野を超えた、複数の科学分野の"融合"から生まれるとの考えから、2大学で「融合科学共同専攻」を立ち上げ、 新しい研究領域に挑戦する"融合型大学院教育モデル"の構築を目指します。
●融合科学共同専攻の趣旨・教育方針等については、こちらのページをご覧ください。
平成30年12月14日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2018/12/14-1.html学生の鈴木さんが応用物理学会北陸・信越支部において発表奨励賞を受賞
学生の鈴木 友康さん(博士前期課程1年、環境・エネルギー領域・大平研究室)が、平成30年度応用物理学会北陸・信越支部学術講演会において発表奨励賞を受賞しました。
「応用物理学会」は、半導体、光・量子エレクトロニクス、新素材など、それぞれの時代で工学と物理学の接点にある最先端課題、学際的なテーマに次々と取り組みながら活発な学術活動を続けています。またこの賞は、応用物理学会北陸・信越支部の学術講演会において、応用物理学の発展に貢献しうる優秀な一般講演論文を発表した若手会員に対し「北陸・信越支部発表奨励賞」を授与し、その功績を称えることを目的としています。
■受賞年月日
平成30年12月1日
■講演題目
「n型フロントエミッター型太陽電池モジュールの電圧誘起劣化におけるSiO₂膜の効果」
■講演概要
近年、大規模太陽光発電所などで、太陽電池モジュールのアルミフレームとセル間の電位差に起因して性能が劣化する電圧誘起劣化(PID)が問題となっている。本研究では、今後の普及が期待される、基板にn型結晶Siを用い、光入射側にp型エミッター層があるn型フロントエミッター型(n-FE)結晶Si太陽電池モジュールに関し、セル中のSiO₂膜がPIDにおよぼす影響を、SiO₂膜がないn-FEセルを用いたモジュールへのPID試験との比較により検証した。SiO₂膜の無いモジュールでは、表面の窒化Si膜への正電荷蓄積に起因する初期の劣化が確認できなかったが、Na+侵入に起因するその後の劣化に関しては、劣化の程度が大きく、発現する時間も早まった。以上のことから、n-FEモジュールのSiO₂膜は、窒化Siに蓄積する正電荷のSi側への放出を抑止するため初期のPIDを引き起こす一方、Na+侵入によるPIDを遅延する効果があると考察した。
■受賞にあたって一言
この度、応用物理学会北陸・信越支部学術講演会におきまして、発表奨励賞を頂けたことを大変光栄に思います。ご指導いただいた、産業技術総合研究所増田淳様、大平圭介教授、D3山口世力氏ならびに研究室のメンバーには厚く御礼申し上げます。また、今回の実験を行うに当たり、n-FEセルを作製いただいた、豊田工業大学の中村京太郎教授にも厚く御礼申し上げます。今後もこれを励みにし、研究に精一杯取り組んでいきたいと思います。

平成30年12月12日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2018/12/12-1.html修了生の高橋さんが公益財団法人井上科学振興財団の第35回井上研究奨励賞を受賞
修了生の高橋 麻里さん(平成30年3月博士後期課程修了、物質化学領域・前之園研究室)が公益財団法人井上科学振興財団の第35回井上研究奨励賞を受賞しました。
井上研究奨励賞は、理学、医学、薬学、工学、農学等の分野で過去3年の間に博士の学位を取得した37歳未満の研究者で、優れた博士論文を提出した若手研究者に対し、公益財団法人井上科学振興財団より贈呈される名誉ある賞です。
第35回井上研究奨励賞においては、全国の大学から推薦された140名の優れた候補者の中から、厳正なる選考の結果40名に贈呈されます。贈呈式は2019年2月4日、東京都内にて開催される予定です。
■受賞年月日
平成30年12月6日
■博士論文題目
細胞小器官の高選択的磁気分離技術構築に向けた磁性-プラズモンハイブリッドナノ粒子の創製とオートファゴソームの単離への応用に関する研究
平成30年12月7日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2018/12/07-1.html金沢市産学連携ものづくり技術交流塾「企業向け大学等シーズ発表会」~技術の種をものづくりに活かそう!~に出展
11月28日(水)、ITビジネスプラザ武蔵(金沢市武蔵町)にて、金沢市及び近郊の11高等教育機関が一同に会し、『金沢市産学連携ものづくり技術交流塾「企業向け大学等シーズ発表会」~技術の種をものづくりに活かそう!~』が開催され、本学からはシングルナノイノベーティブデバイス研究拠点・生命機能工学領域の高村 禅教授が発表及び出展を行いました。
参加高等教育機関によるシーズ発表会では、高村教授は「BioMEMS技術の医療・環境応用」をテーマに発表を行い、多くの聴講者によって活況を呈しました。
また、同会場内で行われた参加高等教育機関の紹介や発表内容に関するパネル展示において、高村教授はシングルナノイノベーティブデバイス研究拠点における研究内容等について紹介し、本学ブースには地元企業関係者をはじめ、参加機関関係者の方などが来訪され、活発な情報交換の場となりました。

シーズ発表会にて発表を行う高村教授

本学出展ブースにて来訪者へ説明・情報交換等を行う様子
平成30年12月5日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2018/12/05-1.html学生のYUAN, Xidaさんが平成30年度北陸地区高分子若手研究会にて優秀ポスター賞を受賞
学生のYUAN, Xidaさん(博士前期課程2年、物質化学領域、松村研究室)が平成30年度北陸地区高分子若手研究会にて優秀ポスター賞を受賞しました。
高分子学会北陸支部では、高分子科学を基軸として研究を展開する若手の交流と、更なる研究の活性化を目的として、毎年若手研究会を開催しています。高分子科学と他の研究分野を融合することによる新規材料の研究・開発に従事し、活躍している研究者の講演および、学生を中心としたポスター発表や交流会が行われます。このうち、ポスターセッションでは、優れた発表を行った学生へポスター賞が授与されます。
■受賞年月日
平成30年11月16日
■論文タイトル
「過ヨウ素酸塩酸化セルロースの分解に関する研究」
■論文概要
過ヨウ素酸により酸化させたセルロースのアミノ酸との反応による分解過程を詳細に調べた研究であり、細胞足場材料やドラッグデリバリー材料への応用が期待される。
■受賞にあたって一言
高分子学会北陸支部若手研究会におきましてポスター優秀賞を頂きまして、大変光栄に思います。学会に参加することで、自分の研究を見直し、たくさんの考え方に出会うことが研究者としての喜びだと感じました。特にご指導頂きました松村先生及び支援して頂いた松村研のメンバーに深く御礼申し上げます。今後も謹んで研究し続けたいと考えております。

平成30年11月27日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2018/11/27-1.html学生の舟橋さんが平成30年度北陸地区高分子若手研究会にて奨励賞(ポスター賞)を受賞
学生の舟橋 靖芳さん(博士前期課程2年、環境・エネルギー領域、金子研究室)が平成30年度北陸地区高分子若手研究会にて奨励賞(ポスター賞)を受賞しました。
高分子学会北陸支部では、高分子科学を基軸として研究を展開する若手の交流と、更なる研究の活性化を目的として、毎年若手研究会を開催しています。高分子科学と他の研究分野を融合することによる新規材料の研究・開発に従事し、活躍している研究者の講演および、学生を中心としたポスター発表や交流会が行われます。このうち、ポスターセッションでは、優れた発表を行った学生へポスター賞が授与されます。
■受賞年月日
平成30年11月16日
■発表者名
舟橋靖芳、吉中陽平、高田健司、金子達雄
■発表題目
「4-アミノ桂皮酸由来水溶性ポリアミドの合成と力学物性評価」
■研究概要
本研究では微生物から誘導される化合物の一種である4-アミノ桂皮酸を原料としたポリアミド (高耐熱・高透明性・高強度材料の一種)の合成と高機能化を目的とした。4-アミノ桂皮酸由来のポリアミドは非常に高い力学物性を示したが、特定の有機溶媒にしか溶けない性質があり取り扱いに問題があった。本研究ではポリアミドの分子構造に着目し、水に溶ける性質を付与した。これにより、ポリアミドの取り扱いの問題を解決するだけでなく材料の複合化や機能化の幅を拡大することが可能となった。
■受賞にあたって一言
このような賞を頂き大変光栄に思います。本研究の遂行にあたり、厳格なご指導を頂きました金子達雄教授、桶葭興資講師、高田健司特任助教には厚く御礼申し上げます。また多くのご助言を頂きました研究室のメンバーおよび共同研究者の方々に深く感謝いたします。

平成30年11月26日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2018/11/26-2.html学生のNAG, Aniruddhaさんが、14th IUPAC International Conference on Novel Materials and their Synthesis (NMS-XIV)においてexcellent poster prizeを受賞
学生のNAG, Aniruddhaさん(博士後期課程3年、環境・エネルギー領域・金子研究室)が、14th IUPAC International Conference on Novel Materials and their Synthesis (NMS-XIV)においてexcellent poster prizeを受賞しました。
■受賞年月日
平成30年10月25日
■論文タイトル
Novel molecular designing of solid polymer electrolytes of bio-polybenzimidazole with ultrahigh conductivity
■論文概要
Here we have successfully synthesized bio-based plastic consist of high thermo-mechanical properties comparable with engineering plastics. Polybenzimidazoles (PBIs) are a series of highest thermo-stable polymers attracting researchers' attention because of PBIs have a rigid aromatic structure and hetero rings in their backbone to induce a good stability. However, previously bio-based PBIs have ever been tried to prepare and base on such a background we have used renewable 3-amino-4-hydroxybenzoic acid (3, 4-AHBA) derived from Actinomycetes metabolite to produce bio-based PBI. Also, PBIs have active imidazole hydrogen (-NH) to receive chemical modification. Here we report lithium single-ion conducting polymer electrolyte using organoborane-modified polybenzimidazole (B-PBI) and ionic liquid (IL). The PBI was modified by triethylborane substitution to imidazole proton to create boronated PBI (B-PBI) with Li counter ion. Considerable battery performance was confirmed along with stable interfacial properties while using this as solid polymer electrolyte (SPE).
■受賞にあたって一言
First of all it was an honor for me to present my research outcomes as poster presentation in a conference like-NMS-XIV, co-organized by the 'International Union of Pure and Applied Chemistry' (IUPAC). I could meet with enormous number of researchers from China and many other countries who are working on the same field as mine. Moreover, I am thankful to organizing committee to consider my research for the excellent poster prize. I would like to convey my humble gratitude to Professor Tatsuo Kaneko for his continuous support, guidance and encouragement. I am also immensely grateful to Professor Noriyoshi Matsumi and former Asst. Prof. Raman Vedarajan for their necessary guidance. Lastly I would like to thank all of my lab members for their continuous support.

平成30年11月19日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2018/11/19-1.html応用物理学領域の富取教授と修了生の野上さんらが応用物理学会において優秀論文賞を受賞
応用物理学領域の富取 正彦教授と修了生の野上 真さん(平成28年6月博士後期課程修了)らが応用物理学会において優秀論文賞を受賞しました。
応用物理学会は、応用物理学および関連学術分野の研究の促進ならびに成果の普及に関する事業を行い、もって社会の発展に寄与することを目的として設立された日本の学会です。70年以上の歴史があり、会員数は2万人を越えています。
優秀論文賞は、応用物理学会が刊行する学術誌において発表された応用物理学の進歩向上に寄与する優秀な原著論文に与えられる賞です。
■受賞年月日
平成30年9月18日
■著者
Makoto Nogami, Akira Sasahara, Toyoko Arai and Masahiko Tomitori
■論文タイトル
Atomic-scale electric capacitive change detected with a charge amplifier installed in a non-contact atomic force microscope
■受賞理由
本論文は、非接触原子間力顕微鏡(nc-AFM) にチャージアンプ(CA) を導入することによって、探針-試料間の静電容量(CTS) と接触電位差(CPD) を起源とした電荷移動を計測する、という著者らが独自に提案した手法について述べたものである。同手法の導入により、走査型プローブ顕微鏡(SPM)が持つ原子レベルの高い空間分解能を生かしながら表面電子状態を解析することが可能となるものと期待される。特にCAは、電荷量の変化に対して高い感度を持つと同時に通常の電流増幅アンプと比べて非常に高速に応答することから、SPMの走査速度を落とすことなく、CTSやCPDの変化を計測できるものと考えられる。実際、CAを利用することで原子像に対応したCPD像の獲得に成功しており、原子レベルの空間分解能像を有する計測にCAが利用できることを本論文が初めて実証した。 また、CAによる電荷計測は、nc-AFMだけではなく、他のSPM計測法にも導入できることから、その利用が広がる可能性は高く、本研究の成果は、表面・界面の電子トンネル現象、各種相互作用力や電荷移動現象などの統合的な評価手法の発展に寄与するものと期待される。
■受賞にあたって一言
40年も続いている歴史ある論文賞を頂くことができ、大変光栄です。これを励みに、今後とも物理的センスを核に、開拓者精神を忘れずに教育研究に努めたいと思います。

平成30年9月26日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2018/09/26-1.htmlイムノクロマト診断薬の高感度化、迅速診断化に有効な金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子を創製
イムノクロマト診断薬の高感度化、迅速診断化に有効な
金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子を創製
ポイント
- 金および白金ナノ粒子をラテックス粒子にそれぞれ約200個、25,000個担持させた金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子の合成に成功
- 合成した金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子を用いたイムノクロマトは、金コロイドとの比較において最大64倍の感度向上を示した。
- 金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子は、ビオチン-アビジン結合を利用することにより、様々な抗体、バイオマーカーを粒子表面にコーティング可能であることを示唆した。
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北陸先端科学技術大学院大学(学長・浅野哲夫、石川県能美市)、物質化学領域の前之園 信也 教授らは、新日鉄住金化学株式会社総合研究所(新日鉄住金化学株式会社と新日鉄住金マテリアルズ株式会社は経営統合し、2018年10月1日より日鉄ケミカル&マテリアル株式会社となります)と連携し、医療診断薬(イムノクロマト)の高感度化・迅速診断化に有効な金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子を創製しました。 イムノクロマト注)は、特別な設備が不要なハンディータイプのデバイスであり短時間に目視判定ができるため、 その簡便性・迅速性をメリットとして先進国から発展途上国まで世界の様々な医療現場において重要な検査手法として利用されています。しかしながら、イムノクロマトの感度は十分とは言えず、現状では検体中の抗原やバイオマーカーが比較的豊富に存在する検査項目に限定されています。また、検査項目の中には、発症初期の抗原濃度が低い場合、判定が不十分なものもあるため、検出感度の向上は非常に重要な課題となっています。このイムノクロマトの感度向上には、標識粒子の発色性が大きく影響します。すなわち、標識粒子の発色性を強くすることにより、イムノクロマトの感度を向上することが可能となります。 この様な背景の中、我々は従来標識粒子として利用されている金や白金ナノ粒子をラテックス粒子に数百~数万個担持させることにより粒子1個当たりの発色性が極めて強い金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子を合成しました。さらに粒子サイズや金属ナノ粒子の担持量を最適化することでイムノクロマトの感度と検出時間を飛躍的に向上することに成功しました。本成果は、アメリカ化学会が発行するACS Applied Materials and Interfaces 誌に2018年9月5日に掲載されました。 本研究の一部は文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業(分子・物質合成)の支援により北陸先端科学技術大学院大学で実施されました。 |
<今後の展開>
本研究で合成した金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子の実用化を推進していきます。また、磁性粒子の担持など新しい機能化も検討していきます。一方、この粒子は、イムノクロマトでの利用のみに留まらず多種多様な応用の可能性を持っています。今後、様々な分野での適用検討を行うことで、この粒子の新しいアプリケーションの創製に繋がることを期待しています。

図1 金ナノコンポジット微粒子(左)と白金ナノコンポジット微粒子(右)のSEM写真

図2 金ナノコンポジット(Au-P2VP:青)と白金ナノコンポジット(Pt-P2VP:赤)の吸収スペクトル。 比較として、担体であるラテックス(P2VP:灰)および金コロイド(AuNP:緑)の吸収スペクトルもプロット。 挿入した写真は、Au-P2VPおよびPt-P2VPの水分散液。尚、Au-P2VP、Pt-P2VP、P2VP(1×109)は同じ粒子数で測定し、AuNPは100倍の粒子数(1×1011)で測定した。

図3 (A)インフルエンザA型で評価した結果。(上)Au-P2VP、(中)Pt-P2VP、および(下)Pt-P2VPを用いたイムノクロマト(640 HAU/mlの抗原を1.0×102〜1.024×105倍に希釈)。左の列はイムノクロマトのカラー写真を示し、右の列はコントラストを強調した黒と白のネガ画像を示す。 NC、C lineおよびT lineは、それぞれネガティブコントロール、コントロールラインおよびテストラインを示す。(B)抗原希釈倍率と吸収スペクトル強度の相関を示したグラフ。
<論文>
| 掲 載 誌 | ACS Applied Materials and Interfaces |
| 論文題目 | Metal (Au, Pt) Nanoparticle-Latex Nanocomposites as Probes for Immunochromatographic Test Strips with Enhanced Sensitivity |
| 著 者 | Yasufumi Matsumura,† Yasushi Enomoto,† Mari Takahashi,‡ Shinya Maenosono‡ †新日鉄住金化学株式会社 総合研究所 ‡北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス系 物質化学領域 |
| DOI | 10.1021/acsami.8b11745 |
| 掲 載 日 | 2018年9月5日にオンライン掲載(Just Accepted Manuscript) |
<用語説明>
注)イムノクロマト
抗原抗体反応を利用した迅速検査方法。イムノクロマトは目視で結果を判定することができるため、簡便な方法として、主に細菌やウイルスなどの病原体の検出に用いられています。日本国内では、妊娠検査薬やインフルエンザ検査薬として多く利用されています。
平成30年9月21日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2018/09/21-1.html








