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研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。金沢市産学連携ものづくり技術交流塾「企業向け大学等シーズ発表会」~技術の種をものづくりに活かそう!~に出展
11月28日(水)、ITビジネスプラザ武蔵(金沢市武蔵町)にて、金沢市及び近郊の11高等教育機関が一同に会し、『金沢市産学連携ものづくり技術交流塾「企業向け大学等シーズ発表会」~技術の種をものづくりに活かそう!~』が開催され、本学からはシングルナノイノベーティブデバイス研究拠点・生命機能工学領域の高村 禅教授が発表及び出展を行いました。
参加高等教育機関によるシーズ発表会では、高村教授は「BioMEMS技術の医療・環境応用」をテーマに発表を行い、多くの聴講者によって活況を呈しました。
また、同会場内で行われた参加高等教育機関の紹介や発表内容に関するパネル展示において、高村教授はシングルナノイノベーティブデバイス研究拠点における研究内容等について紹介し、本学ブースには地元企業関係者をはじめ、参加機関関係者の方などが来訪され、活発な情報交換の場となりました。

シーズ発表会にて発表を行う高村教授

本学出展ブースにて来訪者へ説明・情報交換等を行う様子
平成30年12月5日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2018/12/05-1.html金沢市産学連携ものづくり技術交流塾「企業向け大学等シーズ発表会」~技術の種をものづくりに活かそう!~に本学が出展
11月28日(水)、ITビジネスプラザ武蔵(金沢市武蔵町)にて、金沢市及び近郊の11高等教育機関が一同に会し、『金沢市産学連携ものづくり技術交流塾「企業向け大学等シーズ発表会」~技術の種をものづくりに活かそう!~』が開催されます。
本学からは、シングルナノイノベーティブデバイス研究拠点の高村 禅教授が下記のテーマで発表及び出展を行います。 参加お申し込みのうえ、ぜひ会場に足をお運びください。
日 時 | 平成30年11月28日(水)14:00~17:00 |
会 場 | ITビジネスプラザ武蔵(金沢市武蔵町14-31) |
参加機関 | 石川県立大学、石川工業高等専門学校、金沢大学、金沢医科大学、 金沢学院大学、金沢工業大学、金沢星陵大学、金沢美術工芸大学、 北陸大学、北陸学院大学、北陸先端科学技術大学院大学 |
開催内容 | ・14:00~ 発表会(各高等教育機関による10分間のシーズ発表) 本学発表者:シングルナノイノベーティブデバイス研究拠点 生命機能工学領域 高村 禅教授 発表テーマ:「BioMEMS 技術の医療・環境応用」 ・14:00~17:00 展示会(各高等教育機関の紹介や発表内容に関したパネル等展示) ・16:00~ 交流会(講師や他の参加者との情報交換) |
参加申込 | 下記PDFの参加申込フォームに必要事項をご記入の上、FAXまたはE-mailでお申込みください。 (定員:50名、参加無料) 申込締切:11月26日(月) |
イムノクロマト診断薬の高感度化、迅速診断化に有効な金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子を創製

イムノクロマト診断薬の高感度化、迅速診断化に有効な
金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子を創製
ポイント
- 金および白金ナノ粒子をラテックス粒子にそれぞれ約200個、25,000個担持させた金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子の合成に成功
- 合成した金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子を用いたイムノクロマトは、金コロイドとの比較において最大64倍の感度向上を示した。
- 金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子は、ビオチン-アビジン結合を利用することにより、様々な抗体、バイオマーカーを粒子表面にコーティング可能であることを示唆した。
北陸先端科学技術大学院大学(学長・浅野哲夫、石川県能美市)、物質化学領域の前之園 信也 教授らは、新日鉄住金化学株式会社総合研究所(新日鉄住金化学株式会社と新日鉄住金マテリアルズ株式会社は経営統合し、2018年10月1日より日鉄ケミカル&マテリアル株式会社となります)と連携し、医療診断薬(イムノクロマト)の高感度化・迅速診断化に有効な金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子を創製しました。 イムノクロマト注)は、特別な設備が不要なハンディータイプのデバイスであり短時間に目視判定ができるため、 その簡便性・迅速性をメリットとして先進国から発展途上国まで世界の様々な医療現場において重要な検査手法として利用されています。しかしながら、イムノクロマトの感度は十分とは言えず、現状では検体中の抗原やバイオマーカーが比較的豊富に存在する検査項目に限定されています。また、検査項目の中には、発症初期の抗原濃度が低い場合、判定が不十分なものもあるため、検出感度の向上は非常に重要な課題となっています。このイムノクロマトの感度向上には、標識粒子の発色性が大きく影響します。すなわち、標識粒子の発色性を強くすることにより、イムノクロマトの感度を向上することが可能となります。 この様な背景の中、我々は従来標識粒子として利用されている金や白金ナノ粒子をラテックス粒子に数百~数万個担持させることにより粒子1個当たりの発色性が極めて強い金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子を合成しました。さらに粒子サイズや金属ナノ粒子の担持量を最適化することでイムノクロマトの感度と検出時間を飛躍的に向上することに成功しました。本成果は、アメリカ化学会が発行するACS Applied Materials and Interfaces 誌に2018年9月5日に掲載されました。 本研究の一部は文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業(分子・物質合成)の支援により北陸先端科学技術大学院大学で実施されました。 |
<今後の展開>
本研究で合成した金属ナノ粒子-ラテックスナノコンポジット微粒子の実用化を推進していきます。また、磁性粒子の担持など新しい機能化も検討していきます。一方、この粒子は、イムノクロマトでの利用のみに留まらず多種多様な応用の可能性を持っています。今後、様々な分野での適用検討を行うことで、この粒子の新しいアプリケーションの創製に繋がることを期待しています。
図1 金ナノコンポジット微粒子(左)と白金ナノコンポジット微粒子(右)のSEM写真
図2 金ナノコンポジット(Au-P2VP:青)と白金ナノコンポジット(Pt-P2VP:赤)の吸収スペクトル。 比較として、担体であるラテックス(P2VP:灰)および金コロイド(AuNP:緑)の吸収スペクトルもプロット。 挿入した写真は、Au-P2VPおよびPt-P2VPの水分散液。尚、Au-P2VP、Pt-P2VP、P2VP(1×109)は同じ粒子数で測定し、AuNPは100倍の粒子数(1×1011)で測定した。
図3 (A)インフルエンザA型で評価した結果。(上)Au-P2VP、(中)Pt-P2VP、および(下)Pt-P2VPを用いたイムノクロマト(640 HAU/mlの抗原を1.0×102〜1.024×105倍に希釈)。左の列はイムノクロマトのカラー写真を示し、右の列はコントラストを強調した黒と白のネガ画像を示す。 NC、C lineおよびT lineは、それぞれネガティブコントロール、コントロールラインおよびテストラインを示す。(B)抗原希釈倍率と吸収スペクトル強度の相関を示したグラフ。
<論文>
掲 載 誌 | ACS Applied Materials and Interfaces |
論文題目 | Metal (Au, Pt) Nanoparticle-Latex Nanocomposites as Probes for Immunochromatographic Test Strips with Enhanced Sensitivity |
著 者 | Yasufumi Matsumura,† Yasushi Enomoto,† Mari Takahashi,‡ Shinya Maenosono‡ †新日鉄住金化学株式会社 総合研究所 ‡北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス系 物質化学領域 |
DOI | 10.1021/acsami.8b11745 |
掲 載 日 | 2018年9月5日にオンライン掲載(Just Accepted Manuscript) |
<用語説明>
注)イムノクロマト
抗原抗体反応を利用した迅速検査方法。イムノクロマトは目視で結果を判定することができるため、簡便な方法として、主に細菌やウイルスなどの病原体の検出に用いられています。日本国内では、妊娠検査薬やインフルエンザ検査薬として多く利用されています。
平成30年9月21日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2018/09/21-1.html物質化学領域の篠原准教授が第67回高分子学会年次大会で広報委員会パブリシティ賞を受賞
物質化学領域の篠原 健一准教授が第67回高分子学会年次大会において広報委員会パブリシティ賞を受賞しました。
公益社団法人高分子学会は、現在、会員数10,000を超える学術団体として、高分子科学の基礎的分野はもとより、機能性ならびに高性能材料などの応用分野、例えば電気、電子、情報、バイオ、医療、輸送、建築、宇宙など幅広い研究分野の会員によって支えられています。高分子学会では、学術や産業界の発展に寄与するために、年次大会、高分子討論会、ポリマー材料フォーラムの中から、高分子の研究開発に大きな影響を与える研究発表の内容について広報活動を行っており、広報委員会がプレスリリースのために選定したものに対して、パブリシティ賞を授与することになっています。
この高分子学会広報委員会パブリシティ賞はその発表内容が学術、技術、又は産業の発展に寄与するものであり対外的に発表するにふさわしいと認められたものです。(第67回高分子学会年次大会:総計1,514件のうち、11件)
参考:http://main.spsj.or.jp/koho/koho_top.php
■受賞年月日
平成30年5月8日
■タイトル
ポリマー1分子の直視:らせん高分子鎖に沿って分子が歩行する現象の全原子MDシミュレーション
■研究の概要
ナノマシンは、分子レベルで動作する微小な機械です。既に篠原准教授らは、らせん高分子鎖の上を動くナノマシン・分子モーターの発見をしていますが、今回、並列計算機を用いた全原子分子動力学(MD)シミュレーションによって、このモーター分子が室温の液中でレール分子鎖と相互作用して動く様子を原子スケールで可視化することに成功しました。 この新手法は分子モーターの設計指針を明確化し人工筋肉など新動力の開発に繋がります。
■受賞にあたって一言
私共のポリマー1分子研究が高く評価され大変嬉しく思います。この一連の研究は、生物物理学分野における生体分子モーターの1分子研究に触発されたものであり、異分野を融合する研究の醍醐味を日々味わっています。また、全原子MD計算は、本学情報社会基盤研究センターの並列計算機を使用して実施いたしました。この場を借りて感謝申し上げます。
平成30年5月17日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2018/05/17-1.html磁性-プラズモンハイブリッドナノ粒子を用いて、従来分離が難しかった細胞小器官(オートファゴソームなど)の新たな分離法の開発に成功

磁性-プラズモンハイブリッドナノ粒子を用いて、従来分離が難しかった
細胞小器官(オートファゴソームなど)の新たな分離法の開発に成功
ポイント
- これまで分離が難しかった細胞小器官を磁気分離するためのプローブとして、粒径約15 nmで単分散なAg/FeCo/Agコア/シェル/シェル型磁性-プラズモンハイブリッドナノ粒子を創製した。
- ハイブリッドナノ粒子を哺乳動物細胞に取り込ませ、培養時間を変化させた際、ナノ粒子が細胞内のどの部分に局在するかということをAgコアのプラズモン散乱を利用して可視化することに成功した。
- 培養時間が30分~2時間の間でハイブリッドナノ粒子がオートファゴソームに局在することがわかったため、オートファゴソームをターゲットとして、適切な時間帯で細胞膜を破砕して磁気分離を行うことでオートファゴソームの分離に成功した。
- 単離したオートファゴソームをプロテオミクス/リピドミクス解析に供することで、オートファジーの機能欠損による疾患の創薬へと展開できる可能性がある。
- リガンド結合ハイブリッドナノ粒子を用いた汎用的かつ高選択的な細胞小器官分離技術へと拡張することで、基礎生物学上重要な発見を導く可能性があるほか、肥満や老化を防止する医療技術へと繋がることも期待される。
北陸先端科学技術大学院大学(学長・浅野哲夫、石川県能美市)、物質化学領域の前之園 信也 教授らは、東京大学、金沢大学ほかと共同で、独自開発の磁性-プラズモンハイブリッドナノ粒子を用いてオートファゴソームのイメージングと磁気分離に成功しました。この手法は、これまで分離が困難であった他の細胞小器官へ拡張可能なため、新たな細胞小器官分離法としての応用が期待されます。 2013年のノーベル生理学・医学賞は、「小胞輸送の分子レベルでの解析と制御メカニズムの解明」という功績に対して、米国の3名の研究者に贈られました。また、2016年のノーベル生理学・医学賞は、「オートファジー注1)の分子レベルでのメカニズムの解明」の功績に対して、東京工業大学・大隅 良典 栄誉教授に贈られたことはまだ記憶に新しいところです。これらの研究はいずれも"細胞内物質輸送"に関するものでした。細胞内物質輸送には多種多様な細胞小器官注2)が関与しており、それらの機能は細胞小器官に存在するタンパク質や脂質によって制御されています。従って、細胞小器官の機能を理解するためには、そこに存在するタンパク質/脂質を調べることが必要不可欠です。そのための有力な手段の一つとして、タンパク質/脂質が機能している小器官ごと単離して解析するという方法があります。細胞小器官の一般的な単離法には超遠心分離注3)がありますが、比重に差が無い異種の小器官の分離は困難であることに加え、分離工程が煩雑で手間がかかるほか、表在性タンパク質注4)の脱離や変性が問題となる場合もあるため、新たな分離法の開発が望まれています。 本成果は、アメリカ化学会が発行するオープンアクセスジャーナルであるACS Omega誌に2017年8月25日に掲載されました。 |
<今後の展開>
単離したオートファゴソームをプロテオミクス/リピドミクス解析に供することで、これまでとは異なる視点からオートファジーを俯瞰でき、オートファジーの機能欠損による疾患の創薬へと展開できる可能性があります。また、ハイブリッドナノ粒子表面に所望のリガンドを結合させることによって、目的の細胞小器官への受容体を介したターゲティングが可能なナノ粒子を作製し、そのリガンド結合ナノ粒子を用いて標的細胞小器官を高選択的に単離する技術を確立することで、基礎生物学上重要な発見を導く可能性があります。さらに、肥満や老化を防止する医療技術へと繋がることも期待されます。
図1 磁性-プラズモンハイブリッドナノ粒子を哺乳動物細胞にトランスフェクションした後、培養時間(図中右に行くに従って培養時間が長いことを意味する)とともにナノ粒子の局在が初期エンドソーム(early endosome)、オートファゴソーム(autophagosome)、オートファゴリソソーム(autophagolysosome)へと移行する様子をプラズモン散乱を利用した共焦点顕微鏡イメージングで確認でき、各々の時間帯で磁気分離を行うとそれぞれ異なる種類の細胞小器官を分離することが可能であることを示した図。
<論文>
掲載誌: | ACS Omega |
論文題目: | "Magnetic Separation of Autophagosomes from Mammalian Cells using Magnetic-Plasmonic Hybrid Nanobeads"(磁性-プラズモンハイブリッドナノ粒子を用いた哺乳動物細胞からのオートファゴソームの磁気分離) |
著者: | Mari Takahashi,1 Priyank Mohan,1 Kojiro Mukai,2 Yuichi Takeda,3 Takeo Matsumoto,4 Kazuaki Matsumura,1 Masahiro Takakura,5 Hiroyuki Arai,2 Tomohiko Taguchi,6 Shinya Maenosono1* 1北陸先端科学技術大学院大学 2東京大学大学院薬学系研究科 衛生化学教室 3大阪大学大学院医学系研究科 4金沢大学医薬保健研究域医学系 5金沢医科大学産科婦人科 6東京大学大学院薬学系研究科 疾患細胞生物学教室 |
DOI: | 10.1021/acsomega.7b00929 |
掲載日: | 2017年8月25日 |
<用語解説>
注1)オートファジー
オートファジー(Autophagy)は、細胞が持っている、細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つ。自食とも呼ばれる。酵母からヒトにいたるまでの真核生物に見られる機構であり、細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、過剰にタンパク質合成したときや栄養環境が悪化したときにタンパク質のリサイクルを行ったり、細胞質内に侵入した病原微生物を排除することで生体の恒常性維持に関与している。
注2)細胞小器官
細胞の内部で特に分化した形態や機能を持つ構造の総称。細胞内器官やオルガネラとも呼ばれる。細胞小器官が高度に発達していることが、真核細胞を原核細胞から区別している特徴の一つである。
注3)超遠心分離
数万G(重力加速度)以上の遠心力をかける遠心分離法。
注4)表在性タンパク質
疎水性相互作用、静電相互作用など共有結合以外の力によって脂質二重層または内在性膜タンパク質と一時的に結合しているタンパク質。
注5)超常磁性
強磁性体やフェリ磁性体のナノ粒子に現れる。磁性ナノ粒子では磁化の向きが温度の影響でランダムに反転しうる。この反転が起こるまでの時間をネール緩和時間という。外場の無い状態で、磁性ナノ粒子の磁化測定時間がネール緩和時間よりもずっと長い時、磁化は平均してゼロであるように見える。この状態を超常磁性という。
注6)エンドサイトーシス
細胞が細胞外の物質を取り込む過程の一つ。細胞に必要な物質のあるものは極性を持ちかつ大きな分子であるため、疎水性の物質から成る細胞膜を通り抜ける事ができない、このためエンドサイトーシスにより細胞内に輸送される。
注7)オートファゴソーム
オートファジーの過程で形成される二重膜構造を有した袋状の細胞小器官。他の細胞小器官やタンパク質などを囲い込んだ後、リソソームと融合することで内容物を消化する。
注8)プラズモン
プラズマ振動の量子であり、金属中の自由電子が集団的に振動して擬似的な粒子として振る舞っている状態をいう。金属ナノ粒子ではプラズモンが表面に局在することになるので、局在表面プラズモンとも呼ばれる。
注9)トランスフェクション
人為的にDNAやウイルスなどを細胞に取り込ませる手法。
注10)プラズモン散乱イメージング
局在表面プラズモン共鳴に起因した光散乱を利用したイメージング。共焦点顕微鏡を用いたバイオイメージングでは一般的に蛍光色素が用いられるが、長時間観察では光退色が問題となる。しかし、プラズモン散乱を用いたイメージングでは光退色の心配がない。
注11)蛍光免疫染色
抗体に蛍光色素を標識しておき、抗原抗体反応の後で励起光を照射して蛍光発光させ、共焦点顕微鏡などで観察することによって本来不可視である抗原抗体反応(免疫反応)を可視化するための組織化学的手法。
注12)初期エンドソーム
初期エンドソームは、エンドサイトーシスされた物質を選別する場として機能する細胞小器官である。エンドサイトーシスによって細胞内へと取り込まれた物質は、まず細胞辺縁部に存在する初期エンドソームへと輸送される。初期エンドソームを起点として、分解される物質は分解経路へと、細胞膜で再利用される物質はリサイクリング経路へと選別されていく。
注13)オートファゴリソソーム
オートファゴソームとリソソームの融合によってできる細胞小器官。
注14)ウェスタンブロッティング
電気泳動によって分離したタンパク質を膜に転写し、任意のタンパク質に対する抗体でそのタンパク質の存在を検出する手法。
注15)LC3-II
LC3はオートファゴソームマーカーとして広く知られている。オートファジーが開始されると、LC3はプロペプチドとして発現し、直ちにC末端が切断されて細胞質型のLC3-Ⅰとなる。LC3-ⅠのC末端にホスファチジルエタノールアミンが付加され、膜結合型のLC3- IIへ変換する。LC3- IIはオートファゴソーム膜へと取り込まれて安定に結合するため、哺乳動物におけるオートファゴソーム膜のマーカーとして用いられている。
平成29年8月25日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2017/08/25-1.html多糖類から「ゼロ複屈折ポリマー」の開発に成功

多糖類から「ゼロ複屈折ポリマー」の開発に成功
1. 発表者 |
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檀上 隆寛 (東京大学 大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻 博士課程) ロジャース 榎本 有希子 (東京大学 大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻 特任助教(当時)/ 国立研究開発法人産業技術総合研究所 構造材料研究部門 主任研究員(現在)) 島田 光星 (北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス研究科 博士課程) 信川 省吾 (北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス研究科 助教(当時)/ 名古屋工業大学 大学院物質工学専攻 有機分野 助教(現在)) 山口 政之 (北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科マテリアルサイエンス学系 教授) 岩田 忠久 (東京大学大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻 教授/JST-ALCA ホワイトバイオテクノロジー・岩田チーム 研究代表者) |
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2. 発表のポイント |
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3. 発表概要 |
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多糖類の1つであるプルランを出発原料とし、プルランの持つ特徴的な分子構造を保持したまま、簡単なエステル化により、光学特性に非常に優れたゼロ複屈折ポリマーの開発に成功しました。開発したゼロ複屈折ポリマーは、添加剤を一切加えることなくゼロ複屈折を発現するとともに、全ての可視光領域に対して、複屈折がゼロである優れた光学特性を持ち、機械物性、耐熱性、耐水性、成形加工性にも優れています。また、置換するエステル基の種類を変えることにより、ゼロ複屈折から高複屈折を持つさまざまな光学フィルムを作製することも可能であることから、偏光板保護フィルム(注4)や位相差フィルム(注5)として、多方面での利用が期待されます。
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4. 発表内容 |
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液晶ディスプレイは、スマートフォン、タブレットPC、液晶テレビなどに広く用いられています。液晶ディスプレイの基本構成材料の1つである偏光板を保護する目的で、さまざまなポリマー保護フィルムが使われています。一般的なポリマー保護フィルムは、セルローストリアセテート、シクロオレフィン樹脂、アクリル系樹脂などのポリマーから製造されていますが、その複屈折をゼロに近づけるために、多くの添加剤が混ぜられています。
本研究グループは今回、多糖類の一種であるプルランから、添加剤を全く必要としない「ゼロ複屈折ポリマー」の開発に成功しました。 原料として用いたプルランは、微生物によって生合成される水溶性多糖類の1つで、グルコースが2つのα-1,4結合と1つのα-1,6結合を規則正しく繰り返すことにより長くつながった、階段状の非常に珍しい分子構造を持っています(図1)。プルランは主に、食品添加剤、可食性フィルムや医療用カプセルなどとして利用されていますが、これまでプラスチックの原料として用いられることはありませんでした。 今回、プルランの特徴的な分子構造に着目し、分子構造中に存在する3つの水酸基(-OH)をエステル基に置換してプルランアセテートに変えることにより、特徴的な分子構造を残したままで、ゼロ複屈折を発現させることに成功しました(図2)。 開発したゼロ複屈折ポリマーは、ゼロ複屈折の発現に、添加剤を一切必要としません。これは、プルランの持つ特徴的な階段状の分子構造のため、分子配向が抑制されたためであると考えられます。また、熱延伸を施しても、分子配向の緩和が容易に起こることから、ゼロ複屈折の延伸フィルムも得られることがわかりました。さらに、このゼロ複屈折ポリマーは、全ての可視光領域(波長=380~750nm)において、ゼロ複屈折を示すことも発見しました。機械物性、耐熱性、耐水性、成形加工性にも優れていることから偏光板保護フィルムや位相差フィルムとして、さまざまな分野での利用が期待されます。 今後は、溶融押出成形などの工業手法により、ゼロ複屈折フィルムの作製を行いたいと考えています。自然界には、人工的には決して作り出すことができない、さまざまな特徴的な分子構造を持つ多糖類が存在します。今後は、それらの特徴的な構造を保持したまま、新規な高機能・高性能ポリマーの開発を行いたいと考えています。今回の成果を糸口として、石油由来の原料を使用しない、バイオベースのプラスチック創出技術を確立することで、二酸化炭素の排出削減につながることが期待されます。 本研究は、JST戦略的創造研究推進事業先端的低炭素化技術開発(ALCA)と文部科学省科学研究費補助金 基盤研究A(研究代表者:岩田忠久)の一環として行われました。深く感謝いたします。 |
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5. 発表雑誌 |
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雑誌名:Scientific Reports 論文タイトル:Zero birefringence films of pullulan ester derivatives 著者:Takahiro Danjo, Yukiko Enomoto-Rogers, Hikaru Shimada, Shogo Nobukawa, Masayuki Yamaguchi and Tadahisa Iwata* (*責任著者) DOI番号:10.1038/srep46342 URL: www.nature.com/articles/srep46342 日本時間4月18日(火)午後6時(イギリス時間18日(火)午前10時)に公開されました。 |
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6. 用語解説 |
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注1 プルラン デンプンを原料として黒酵母によって生合成される水溶性多糖類。グルコースが2つのα-1,4結合と1つのα-1,6結合を規則正しく繰り返した分子構造を持つ(図1)。 注2 エステル化 多糖類の水酸基(-OH)を、アセチル基(-OCOCH3)やプロピオニル基(-OCOCH2CH3)などのエステル基に化学的手法により置換すること。 注3 ゼロ複屈折ポリマー 物体中を光が透過する際、光の振動方向によって進む速度が異なる現象を複屈折と呼ぶ。一般にポリマーフィルムにおいても、分子が配向することにより複屈折が生じる。ゼロ複屈折ポリマーとは、種々の方法により複屈折をなくしたポリマーのこと。 注4 偏光板保護フィルム 液晶ディスプレイなどに用いられる偏光板を保護するために貼られるポリマーフィルム。このフィルムの複屈折は、可能な限りゼロであることが望ましい。 注5 位相差フィルム 光学補償フィルムの1つで、複屈折による光学的な歪みや視角方向による変調が原因で起こる表示の着色等を防止するために貼られるポリマーフィルムのこと。 |
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7. 添付資料 |
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平成29年4月19日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2017/04/19-1.html生命機能工学領域の藤本教授らの研究チームが超高速遺伝子解析用試薬の実用化に寄与
生命機能工学領域の藤本健造教授らの研究チームは、 日華化学株式会社(本社:福井市、代表取締役社長:江守康昌、以下日華化学)と共同研究を行い、同研究室の保有する研究成果と、日華化学のコア技術である精密有機合成の知見を生かし、超高速遺伝子解析用試薬の安定供給・品質の確保を実現しました。
この試薬は、藤本教授らが発明者である基本特許を使用しており、国内外の研究者や企業から多くの問合せを受けていました。今回、日華化学との共同研究を通じて、合成プロセスの改良により大幅なコストダウンと安定供給を実現したものです。今後、国内外の研究者や企業での利用、応用が期待されます。
■研究概要
藤本研究室では、光を用いて遺伝子を操作する全く新しい独自の技術を追求しています。藤本教授が開発した核酸試薬を用いることで、DNAを自在に光で高速操作できるようになり、高速遺伝子解析が可能となるだけでなく、細胞内の遺伝子発現を光制御できるようになりました。研究室では、これからも医療・健康分野に焦点を当てながら、生命科学の枠を超えて様々な分野への貢献を目指し研究を進めています。
■今後の展開
光を用いた核酸類操作は、従来の酵素を用いた遺伝子操作と比較して操作性、機械化への適用度、コスト、時空間制御といった点で優れていると考えられます。LED光を照射した時だけ、照射した場所にのみ操作でき、しかも誰もがスイッチ1つで操作可能なユーザーフレンドリーな技術として期待されています。細胞内での遺伝子発現制御にも最近有効であることが見出されており、手軽な遺伝子診断システムをはじめ、局所疾患への医療応用など幅広い分野への貢献が期待されます。
日華化学株式会社プレスリリース
http://www.nicca.co.jp/01topics/2016/09/post-194.html
平成28年9月15日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2016/09/15-1.html日本海イノベーション会議[北陸先端科学技術大学院大学プログラム]を開催

8月27日(土)、日本海イノベーション会議[北陸先端科学技術大学院大学プログラム](本学、北國新聞社主催)が開催されました。
「日本海イノベーション会議」とは、石川県内の大学の研究成果等を広く県民や企業に知ってもらうことを目的として、北國新聞社と石川県内の大学が共同で開催している講演会であり、今年度は、「先端科学技術が拓く未来」をテーマに、寺野 稔理事・副学長と先端科学技術研究科(物質化学領域)の山口 政之教授が約60名の聴講者を前に講演を行いました。
第1部では寺野理事が「未来を拓くプラスチック」と題して、最先端の科学技術が身近なプラスチックに数多く応用されていることを、医療器具、自動車部品、食料品等を例に、わかりやすく解説しました。
第2部では山口教授が「知性を備えたプラスチック」と題して、「インテリジェント(知性を備えた)な高分子」と呼ばれる、外部の環境に応じて形態を変えるプラスチックやゴムに関する研究について、フィルムの透明度が温度によって変化する様子など、映像も交えて紹介しました。

寺野理事

山口先生

講演会の様子
平成28年8月29日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2016/08/29-2.html学生の Gargi Joshiさんの論文が英国王立化学会刊行 Soft MatterのBack Coverに採択
学生のGargi Joshiさん(博士前期課程2年、環境・エネルギー領域・金子研究室)の論文が、英国王立化学会刊行 Soft MatterのBack Coverに採択されました。
■掲載誌
Royal Society of Chemistry, Soft Matter 2016, 12, 5515 - 5518.
■著者
Gargi Joshi, Kosuke Okeyoshi*, Maiko K. Okajima, Tatsuo Kaneko*
■論文タイトル
Directional control of diffusion and swelling in megamolecular polysaccharide hydrogels
■論文概要
3次元網目構造を持つ高分子ゲルは生体組織に類似する特徴を多々有しており、新規バイオマテリアルへの応用が注目されています。通常のゲルでは等方的に体積膨潤するのに対し本研究では、内部の層構造を制御することで異方的に膨潤するハイドロゲルの作製に成功しました。100倍以上の膨潤率を示すこのゲルは、水の拡散吸収が層構造の側面から起こり、層間隙を広げて一軸方向にのみ膨潤する特徴が実証されました。高分子ネットワークはシアノバクテリア由来の超高分子量を持つ多糖類「サクラン」で構成され、高分子の自己配向性・生体適合性・高吸水性などを有します。水の拡散と膨潤方向が制御されたゲルの特性を活用することで、ティッシュエンジニアリング・再建手術・ドラッグデリバリーシステムなど医療用材料への展開が期待されます。
参考 http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2016/sm/c6sm00971a#!divAbstract
平成28年6月23日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2016/06/23-1.html環境・エネルギー領域の桶葭助教が三谷研究開発支援財団の研究開発助成に採択
環境・エネルギー領域の桶葭興資助教が三谷研究開発支援財団の研究開発助成に採択されました。
三谷研究開発支援財団は、財団法人三谷育英会の姉妹財団として、平成17年3月10日に設立され、今年で11年目を迎えました。三谷育英会は、三谷産業株式会社を創業した故 三谷進三氏の個人資産を基に、1960年設立され、以来、高等学校並びに大学に学ぶ学生に対し奨学金による支援が続けられております。2005年、三谷育英 会の設立45周年に際し、当時、三谷育英会の二代目理事長であった三谷美智子氏は「三谷育英会の奨学生が学ぶ大学の研究室で進められる研究開発に対しても、何か支援することが出来ないか」と思い、自身の持つ三谷産業株式会社株式200万株等を基に当財団を設立いたしました。当財団は、将来を担う研究者の 方に更に研究に邁進していただくため、石川県内の大学および大学院で行われている有益な研究に対し援助することを目的としています。なお、平成24年4 月より当財団は石川県の認定を受け、財団法人から公益財団法人へ移行し、新たな第一歩を踏み出しました。当財団は、石川県地域に立地する研究機関、すなわ ち大学及び大学院で行われている研究開発に対し、支援、表彰等を行い、もって地域の研究開発と産業の発展に寄与することを目的とします。
■採択期間
平成28年度
■テーマ
「乾燥誘起による超高分子多糖類の一軸配向膜作製技術の開拓」(天然高分子機能創発チーム)
■テーマ概要
自然界の生命が常に対面している乾燥現象を利用して、自然法則に基づいた高分子配向制御法の新機軸を構築する。特に、シアノ バクテリア由来高分子多糖類の水溶液の乾燥過程に着目し、高秩序化された高分子膜の作製技術を開拓する。乾燥による一軸配向膜作製の新たな技術を確立することで、細胞足場材料など医療分野や分子認識材料など環境分野への応用が期待できる。産業界においても高秩序化されたバイオ分子修飾基板の作製は、IPS 細胞培養用はじめ早急に解決すべき問題である。
■採択にあたって一言
本研究課題について採択頂き大変嬉しく存じます。三谷研究開発支援財団、および本助成の選考委員会の皆様に深く感謝申し上げます。また、金子達雄教授はじめ、共同研究者の皆様、ご助言頂いた研究室の皆様にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。科学と技術の発展に貢献できる様誠心誠意励んで参ります。
平成28年6月6日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2016/06/06-1.html令和6年度 第3回 超越バイオメディカルDX研究拠点 エクセレントコアセミナー
下記のとおりセミナーを開催しますので、ご案内します。
日 時 | 令和7年3月13日(木) 15:30~16:50 |
場 所 | JAISTイノベーションプラザ 2F シェアードオープンイノベーションルーム |
講演者 | 金沢医科大学医学部解剖学Ⅰ,医学博士 八田 稔久 教授 金沢医科大学総合医学研究所 島崎 猛夫 准教授 |
講演題目 | 島崎准教授(15:30~16:10) バイオデジタルツインを目指した生体模倣システムと細胞加工技術 八田教授(16:10~16:50) 生物標本透明化技術の開発とその社会実装に向けた取り組み ※講演要旨は別添フライヤーのとおり |
参加申込 | ・参加費無料 ・要予約(定員30名) 下記の担当へメールにてお申し込みください。 【本件担当・予約申込先】 北陸先端科学技術大学院大学 超越バイオメディカルDX研究拠点長 松村 和明(mkazuaki@jaist.ac.jp) |
金沢大学・北陸先端科学技術大学院大学 第2回共同シンポジウムを開催
令和5年12月12日(火)、金沢大学宝町キャンパス 医学図書館2階 十全記念スタジオにおいて、金沢大学・北陸先端科学技術大学院大学 第2回共同シンポジウムが開催されました。
金沢大学と本学は、融合科学共同専攻における分野融合型研究を推進してきましたが、今年度より、融合科学共同専攻にとどまらず、両大学間の共同研究の発展と促進を目指し、共同シンポジウムを開催しています。第1回目は令和5年6月26日に本学にて開催いたしましたが、第2回目である今回は「バイオメディカル」をテーマに、金沢大学にて開催いたしました。
金沢大学 和田隆志学長による開会挨拶後、本学 超越バイオメディカルDX研究拠点長 松村和明教授、金沢大学 附属病院眼科 小林 顕講師、金沢大学 医薬保健研究域医学系 三枝理博教授、本学 バイオ機能医工学研究領域 筒井秀和准教授がそれぞれバイオメディカル関連の最新研究について講演し、本学 寺野稔学長の挨拶をもって閉会となりました。
両学長は、開会・閉会の挨拶の際に、本シンポジウムをきっかけとしたシーズ開発や社会実装、および研究連携を中枢とした両大学の発展への期待について述べられました。また、本シンポジウムが、今後の両大学間の共同研究の発展と促進を目的としていることから、各講師の先生方は、自身の研究内容の説明に加えて、「どのような研究分野との共同研究が可能か」という点も併せて講演されました。
オンライン配信とのハイフレックス形式にて開催しました本シンポジウムには、両大学より多くの方が参加され、質疑応答の時間には講演内容に関する活発な意見交換が研究者間で行われました。次回は本学を会場として開催される予定です。本シンポジウムが今後両大学間の共同研究発展の端緒となるよう推進して参ります。

開会の挨拶をする金沢大学 和田学長

講演①「両性電解質高分子による細胞凍結保護とタンパク質安定化作用」
松村 和明 教授(本学 超越バイオメディカルDX研究拠点長)

講演②「水疱性角膜症治療 (角膜内皮移植)の進歩」
小林 顕 講師(金沢大学附属病院 眼科)

講演③「中枢体内時計神経ネットワークの動作原理解明と操作に向けて」
三枝 理博 教授(金沢大学医薬保健研究域医学系)

講演④「細胞認識能を備えた電気生理学計測法の構築にむけて」
筒井 秀和 准教授(本学 バイオ機能医工学研究領域)

閉会の挨拶をする寺野学長
令和5年12月15日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2023/12/15-1.html博士研究員の中村重孝さんが日本核酸医薬学会2016において優秀発表者賞(川原賞)を受賞
博士研究員の中村重孝さん(生命機能工学領域・藤本研究室) が、日本核酸医薬学会年会において、優秀発表者賞(川原賞)を受賞しました。
本学会は核酸医薬の創出を第一の目的として、化学、生物、DDS、医学(臨床)および規制科学の5つのサイエンス部門と広報と国際部門から構成されています。企業研究者が学会運営の一翼を担うなど基礎研究から産学連携まで統合された学会となっています。化学、生物、DDS、医学(臨床)といった複合領域にまたがる約140件ある発表の中から5件優秀発表者賞が選ばれています。
■受賞年月日
平成28年11月17日
■論文タイトル
Photoinduced double duplex formation using ultrafast photo-cross-linker toward for antigene method
(光誘起型ダブル2重鎖形成を用いた新規アンチジーン法の開発)
■論文概要
従来、安定な2本鎖DNAをターゲットとした核酸医薬開発は困難とされていたが、超高速光架橋分子を用いることで光照射により安定なダブル2重鎖形成可能であることを見出した。今までにない新規アンチジーン法を提唱している。
■受賞にあたって一言
核酸医薬は、分子を標的とした次世代の医薬として注目を集めており、化学、生物、DDS、医学、薬学といった学問の融合研究領域としてもさらなる飛躍が期待されており、その核酸医薬学会でこのような賞を頂いたことに心から感謝いたします。また本研究の遂行にあたりご指導頂きました藤本先生、ならびに共同研究者の先生方、研究室のメンバーに深くお礼申し上げます。
平成28年11月28日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2016/11/28-1.html学生の中嶋さんが日本顕微鏡学会第67回シンポジウムにおいて学生優秀ポスター賞を受賞
学生の中嶋まいさん(博士前期課程2年、ナノマテリアル・デバイス研究領域、大島研究室)が公益社団法人日本顕微鏡学会第67回シンポジウムにおいて学生優秀ポスター賞を受賞しました。
日本顕微鏡学会は顕微鏡学に関わる研究発表、知識の交換並びに社会との連絡連携の場となり、顕微鏡学の進歩発展を図り、もって社会および産業界に寄与することを目的として、電子顕微鏡(学)に関する理論、基礎的な研究を行うとともに、産業界、医学界、生物界における実際問題への応用研究も盛んに行っています。
同学会第67回シンポジウムは、『GXに貢献する顕微科学の未来』をメインテーマとして、令和6年11月2日~3日にかけて、北海道大学にて開催されました。
学生優秀ポスター賞は、顕微鏡技術(装置・手法)部門、医学・生物科学部門、材料・物質科学部門の各部門ごとに選考が行われ、優れたポスター発表を行った学生に授与されるものです。
※参考:日本顕微鏡学会第67回シンポジウム
■受賞年月日
令和6年11月2日
■研究題目、論文タイトル等
GaSeナノリボンの電子照射によるスイッチング動作の検証
■研究者、著者
中嶋まい、Limi Chen、麻生浩平、高村(山田)由起子、大島義文
■受賞対象となった研究の内容
GaSe(セレン化ガリウム)は光や電子に対して高い光伝導効果が知られている二次元材料であり、超小型スイッチングデバイスへの応用が期待されている。しかし、二次元材料の電子に対する応答を測定することは難しく、電子照射効果の影響は解明されていなかった。
本研究では、二次元材料の転写方法の改善と、独自に開発したその場電子顕微鏡観察法を行い、原子構造の観察をしながら電子照射下の電気伝導測定を行った。この結果、初めて電子照射量に対する電流の増加量(=応答率)を導くことができ、電子照射応答のメカニズムの解明に貢献した。
■受賞にあたって一言
この度は学生優秀ポスター賞を賜り、大変光栄に存じます。本研究の遂行にあたり、丁寧なご指導をしてくださった大島義文教授、高村(山田)由起子教授、および研究室の皆様に深くお礼申し上げます。今後も、二次元材料の物性研究を進めて参ります。
令和7年1月16日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2025/01/16-1.html高密度なイオン液体構造を持つ新高分子材料の創出

高密度なイオン液体構造を持つ新高分子材料の創出
ポイント
- バイオベース化合物であるポリフマル酸の高分子反応により、高密度にイオン液体構造を有する高分子化イオン液体の合成に成功しました。
- 作製したアノード型ハーフセルは、リチウムイオン二次電池における1Cにおいて297 mAhg-1、ナトリウムイオン二次電池において60 mAg-1で250 mAhg-1の放電容量を示しました。
- いずれの電池系も高い耐久性を示し、リチウムイオン二次電池では750サイクル後に80%、ナトリウムイオン二次電池においては200サイクル後に96%の容量維持率を示しました。
- 高密度イオン液体構造を有するバインダーは、リチウムイオン二次電池系の急速充放電能において適性を示し、5CにおいてPVDF系の約2倍の85 mAhg-1を示しました。
- また、同バインダーは、ナトリウムイオン二次電池のハードカーボン負極バインダーとして、ナトリウムイオンの負極における拡散を改善しつつ、PVDF系の約2倍の放電容量を発現させました。
北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市)物質化学フロンティア研究領域の松見紀佳教授、Amarshi Patra大学院生(博士後期課程)は、バイオベースポリマーであるポリフマル酸から高密度にイオン液体構造を有する新たな高分子化イオン液体を開発しました。開発した本高分子材料をリチウムイオン二次電池[*1]用グラファイト負極バインダーとして適用することにより、急速充放電能が促されました。また、ナトリウムイオン二次電池[*2]用ハードカーボン負極バインダーとして適用することにより、PVDFバインダー系の2倍の放電容量を観測しました。これらは、いずれも本バインダーが負極内における円滑な金属カチオンの拡散を促した結果です。また、構築した電池系はいずれも高い耐久性を示しました。 高分子化イオン液体は極めて多様な応用範囲を有する材料群であり、高密度なイオン液体構造を有する新材料の創出は、多様な分野における研究を活性化させる可能性を有しています。 |
【研究背景と内容】
今日、高分子化イオン液体は、各種エネルギーデバイス向けの材料や生医学用材料、センシング用材料、環境応答性材料、触媒の担持体等の広範な分野で、極めて活発に研究されている重要な機能性材料となっています。
本研究では、バイオベースポリマー[*4]であるポリフマル酸の高分子反応によって、高密度にイオン液体構造を有する新たな高分子化イオン液体を合成しました。また、得られた材料をリチウムイオン二次電池及びナトリウムイオン二次電池の負極バインダーとして適用しました。その結果、負極内の金属イオンの拡散が促進され、それぞれの電池系の特性の改善につながることを見出しました。
本高分子化イオン液体の合成においては(図1)、まずフマル酸[*3]エステルをAIBNを開始剤としてラジカル重合し、ポリフマル酸エステルを得ました。その後、ポリマーをKOH水溶液で100oCにおいて12時間処理し、透析を行うことでポリフマル酸を得ました。一方、アリルメチルイミダゾリウムクロリドをAmberlite樹脂によりイオン交換することで、アリルメチルイミダゾリウムヒドロキシドを調整し、これを常温でポリフマル酸と中和させることにより、高密度なイオン液体構造を有する高分子化イオン液体(PMAI)を合成しました。ポリマーの構造は、1H-、13C-NMR及びIR等により決定しました。
まず、本ポリマー(PMAI)のグラファイトとのコンポジット(PMAI/Gr)、ハードカーボンとのコンポジット(PMAI/HC)について、銅箔への接着性を引き剝がし試験により評価したところ、いずれの系もPVDFとのコンポジット系よりも大幅に改善された接着力を示しました。PMAI/Grは10.9 Nを要し、PMAI/HCは11.0 Nを要し、いずれもPVDF/Grの9.8 N、PVDF/HCの9.9 Nを上回りました。
次に、本ポリマー(PMAI)のリチウムイオン二次電池用負極バインダーとしての性能を評価しました。アノード型ハーフセル[*5]における電荷移動界面抵抗はPMAI/Grにおいて21.9Ωであり、PVDF/Gr系の125.9Ωを大幅に下回りました。これは、高密度なイオン液体構造が負極内におけるLiイオン拡散を促す結果と考えられます。また、PMAI/Gr系においてはSEI抵抗も11.08Ωと低く、PVDF/Gr系の29.97Ωよりも顕著に低いことがわかりました。(図2)。
さらにLi+拡散係数をインピーダンススペクトルにおける低周波数領域から解析したところ、PMAI/Gr系では1.03 x 10-10 cm2/s、PVDF/Grでは3.08 x 10-12 cm2/sとなり、前者において著しく低くなりました。結果として、作製したアノード型ハーフセル(図2)はリチウムイオン二次電池における1Cにおいて297 mAhg-1の放電容量を示し、750サイクル後に80%の容量維持率を示しました。また、本バインダー系は、急速充放電能において適性を示し、5CにおいてPVDF系の約2倍の85 mAhg-1を示しました。
本ポリマー(PMAI)のナトリウムイオン二次電池用負極バインダーとしての性能に関しても評価しました。アノード型ハーフセルにおける電荷移動界面抵抗はPMAI/HCにおいて31.38Ωであり、PVDF/HC系の83.09Ωを大幅に下回りました。さらにNa+拡散係数をインピーダンススペクトルにおける低周波数領域から解析したところ、PMAI/HC系では3.35 x 10-13 cm2/s、PVDF/HCでは1.01 x 10-13 cm2/sとなり、前者において3倍以上の拡散性を示しました。ナトリウムイオン二次電池の負極ハーフセルにおいて、60 mAg-1で250 mAhg-1の放電容量を示し、200サイクル後に96%の容量維持率を示しました。結果としてPVDF系の約2倍の放電容量を発現させました。
また、充放電後の負極をSEM観察したところ、PVDF系と比較して大幅に負極マトリックス上のクラックが少なく、安定化している様子が観察されました。(図3)
本成果は、Advanced Energy Materials(WILEY - VCH)(IF 24.4)のオンライン版に9月12日に掲載されました。
【今後の展開】
本高分子材料においては、種々なカチオン構造の改変が可能であり、さらなる高性能化につながると期待できます。
今後は、企業との共同研究(開発パートナー募集中、サンプル提供応相談)を通して、将来的な社会実装を目指します。(特許出願済み)。また、高耐久性リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池の普及を通して、社会の低炭素化に寄与する技術への展開が期待できます。
集電体への接着力が高く、高耐久性を促すバインダー材料として、広範な蓄電デバイスへの応用展開が期待されるほか、新たな高分子化イオン液体材料として、エネルギーデバイス以外の広範な分野における応用も期待できます。
図1.高密度高分子化イオン液体の合成法
図2.PMAI/Gr、PVDF/Gr系の充放電サイクル特性(リチウムイオン二次電池、負極型ハーフセル) (a) 1C(800サイクル)(b) 5C(1000 サイクル);SEI抵抗の電圧依存性(RSEI vs. V) (c)リチウム挿入反応中の電圧 (d)リチウム脱離反応中の電圧
図3.(a)(d) PMAI/HC、PVDF/HC 系の充放電前のSEM像;(b) PMAI/HC (e) PVDF/HC系の充放電後のTop View像;(c) PMAI/HC (f) PVDF/HCの充放電後の断面像
【論文情報】
雑誌名 | Advanced Energy Materials |
題目 | Densely Imidazolium Functionalized Water Soluble Poly(ionic liquid) Binder for Enhanced Performance of Carbon Anode in Lithium/Sodium-ion Batteries |
著者 | Amarshi Patra and Noriyoshi Matsumi* |
掲載日 | 2024年9月12日 |
DOI | 10.1002/aenm.202403071 |
【用語説明】
電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う二次電池。従来型のニッケル水素型二次電池と比較して高電圧、高密度であり、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車に適用されている。
電解質中のナトリウムイオンが電気伝導を担う二次電池。従来型のリチウムイオン二次電池と比較して原料の調達の利便性やコスト性に優れることから、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車への適用が期待されている。
フマル酸は無水マレイン酸(バイオベース無水マレイン酸を含む)を原料として工業的に生産されるが、糖類に糸状菌を作用させて製造することも可能である。さらに、最近ではCO2を原料とした人工光合成によりフマル酸を生産する技術も脚光を浴びている。CO2もしくは糖類、バイオベース無水マレイン酸から誘導可能なフマル酸を用いた高付加価値な化成品の製造は、カーボンニュートラルへの貢献において魅力あるアプローチといえる。
生物資源由来の原料から合成される高分子材料の総称。低炭素化技術として、その利用の拡充が期待されている。
例えば、ナトリウムイオン二次電池の場合には、アノード極/電解質/Naの構成からなる半電池を意味する。
令和6年9月17日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2024/09/17-1.htmlバイオ機能医工学研究領域の廣瀬講師がCHEMINAS 49において優秀研究賞を受賞
バイオ機能医工学研究領域の廣瀬大亮講師が、化学とマイクロ・ナノシステム学会第49回研究会(CHEMINAS 49)において、優秀研究賞を受賞しました。
一般社団法人化学とマイクロ・ナノシステム学会は、化学・生命科学・医学などの物質や生命現象を対象とする学問分野と、マイクロ・ナノスケールの材料・加工、計測・制御、システム構築などを対象とする工学技術を融合することで、新たな学術領域・技術分野を開拓し、それらを応用した新規産業の創出を目指しています。
CHEMINAS 49は、令和6年6月1日~2日にかけて東京農工大学小金井キャンパスにて開催され、研究の質とフラッシュプレゼンテーションを含む発表の質の両面において、優秀な研究発表を行った正会員または賛助会員の発表者、及びその連名者全員に優秀研究賞が授与されました。
※参考:CHEMINAS 49
■受賞年月日
令和6年6月2日
■研究題目、論文タイトル等
酸化物薄膜トランジスタ型核酸センサーの機械学習を用いた検出判定
■研究者、著者
廣瀬大亮、ZHAO Yunshu(博士前期課程2年)、高村禅
■受賞対象となった研究の内容
本研究室で研究を進めている酸化物薄膜トランジスタ(ox-TFT)型センサーは、小型、高感度、リアルタイム検出可能と、核酸検出の極めて有力なツールとなる可能性を有している。しかしながら、検体のわずかな液性変化で検出判定が左右されるという打たれ弱さがあった。そこで我々は、機械学習を用いることでより精度の高いDNAの検出判定が可能になるのではないかと考えた。500以上の実測データを用いて、主成分分析による測定データの次元圧縮ならびに教師あり学習による検出判定を行ったところ、高精度での核酸の検出判定ができることがわかった。
・発表ポスターより
背景
作製した酸化物薄膜トランジスタ型センサーと機械学習による検定結果
■受賞にあたって一言
この度は化学とマイクロ・ナノシステム学会第49回研究会において優秀研究賞を受賞でき、大変光栄です。講師就任後、初の発表でしたが、気負うことなくこれまでの成果をまとめることができたのが、吉と出たかと思っています。材料科学と情報科学を組み合わせることで、魅力的な研究となったと実感しております。高村禅教授をはじめ、研究室の皆さまより様々なサポートをいただいたことに深く感謝します。


令和6年8月22日