研究活動の検索
研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。エクセレントコアシンポジウム&グリーンイノベーションポリマーシンポジウム合同開催
標題について、エクセレントコアシンポジウム「The 3rd Symposium of the Center for High-performance Nature-derived Materials (Excellent Core)」及びグリーンイノベーションポリマーシンポジウム「The 4th International Symposium for Green-Innovation Polymers(GRIP2017)」を下記のとおり合同で開催しますので、ご案内いたします。
両シンポジウムは、本学のエクセレントコア「高性能天然由来マテリアル開発拠点」及び先端科学技術研究科マテリアルサイエンス系によるジョイント国際シンポジウムです。国内外からの招待講演者や本学教員による、持続可能社会の実現に向けたポリマー材料等に関する最先端の研究発表をお届けします。
参加は無料となっており、事前の参加申込み等も必要ありませんので、奮ってご参加下さい。
| 開催日時 | 平成29年9月26日(火)10:00~17:10 | ||||||||||||||||||||||||||||
| 会 場 | 知識科学系講義棟2階 中講義室 | ||||||||||||||||||||||||||||
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| 使用言語 |
英語 |
細胞・組織の機能を制御する高分子材料を創成し、医療に役立てる
細胞・組織の機能を制御する高分子材料
を創成し、医療に役立てる
生体制御高分子研究室 Laboratory on Biofunctional Polymers
教授:松村 和明(MATSUMURA Kazuaki)
E-mail:
[研究分野]
材料化学、高分子化学、生体材料
[キーワード]
高分子化学、バイオマテリアル、再生医療、凍結保存、ハイドロゲル
研究を始めるのに必要な知識・能力
化学をベースとして、生体に応用できる材料を目指すので、化学の基礎知識は持っていた方が望ましいです。その上で、生物学や医学に対しても必要な事を習得する姿勢を期待します。異分野からの参加は歓迎しますが、化学、高分子化学の勉強を興味を持って続けられる向上心は必要です。
この研究で身につく能力
生体材料の研究は化学・生物・医学また物理学を含んだ学際的領域の研究です。生体の持つ高度に制御された機能を学び、それを代替する材料の創成を目標として研究を続けていくことで、化学のみならず、生物学や医学、物理学などの幅広い学問分野に触れ、多角的な物の見方を獲得することが出来ます。
また、生体材料の研究は目的がはっきりしているニーズ指向型の研究のため、課題解決能力を育む事が可能です。特に博士後期課程の学生に関しては、問題発見能力も同時に身につけるように研究を進めていきます。
【就職先企業・職種】 製造業・化学メーカーなど
研究内容
機能性高分子バイオマテリアル
人工臓器やドラッグデリバリーシステム(DDS)には高分子化合物のようなソフトマテリアルが多く使用され、研究されています。バルクな材料だけでなく、コロイドやミセル、溶液なども一種のバイオマテリアルとして様々な場面での研究が展開されています。
高分子材料はそのバルク界面で、もしくは溶液状態で細胞や組織と相互作用し、機能を制御することが可能であることがわかってきました。また、様々な場面でその機能を利用したバイオマテリアルの研究開発が行われています。
凍結保護高分子
細胞を凍結保存することができる高分子を見出し、その機序を調べると共に応用を目指しています。この不思議な現象は、電荷密度の高い高分子化合物、特に両性電解質高分子に見られる特徴であることがわかってきました。細胞などの様な水を含む高次構造体をそのまま凍結すると細胞内の水の結晶化により致命的なダメージが加わり、死滅します。このような高分子化合物で細胞を凍結時のダメージから保護できるということは、これまでの常識では考えにくいことでした。従って、この現象の機序を解明することで、凍結保護だけでなく、生体組織や高次構造体の保護作用などへとつながる可能性を秘めています。我々はこの高分子をゲルにすることで、細胞保護性のハイドロゲルを作成しました。また、ナノ粒子化することでドラッグデリバリーシステムへの応用も試みています。

再生医療応用可能な高分子
再生医療や組織工学に応用可能な、生体内分解性セルロースの開発も行っています。この技術により、細胞をその中で増殖させ、生体内で細胞治療が可能な足場材料の開発が期待されます。
生体と調和する高分子バイオマテリアル
生体機能の再生を目的とした診断・治療の支援を行うために、材料工学の手法を用いた、基礎的ならびに応用的研究も目指しています。具体的には、ハイドロゲルを用いた人工関節や人工血管用材料の設計など、高分子材料の観点から生物と化学の融合を目指し、さらには生体を凌駕するような機能を探求しています。

主な研究業績
- Rajan R, Furuta T, Zhao D, Matsumura K. Molecular mechanism of protein aggregation inhibition with sulfobetaine polymers and their hydrophobic derivatives. Cell Rep. Phys. Chem. 5, 102012 (2024)
- Kumar K, Nakaji-Hirabayashi T, Kato M, Matsumura K, Rajan R. Design of Highly Selective Zn-Coordinated Polyampholyte for Cancer Treatment and Inhibition of Tumor Metastasis. Biomacromolecules 25, 1481-1490 (2024)
- Hirose T, Rajan R, Miyako E, Matsumura K. Liquid metal–polymer nano-microconjugations as an injectable and photo-activatable drug carrier. Mol. Syst. Des. Eng. 9, 781-789 (2024)
使用装置
NMR
FITR
動的粘弾性装置
細胞培養用装置
共焦点レーザー顕微鏡
研究室の指導方針
本研究室では、高分子化学の基礎から応用までを理解し、生体材料としての応用を目指しています。そのためには、化学の知識だけでなく、生物や医学、さらには機械工学などの幅広い学問領域に通じている必要があります。また、生体材料がカバーする範囲は、人工臓器、再生医療、ドラッグデリバリー、バイオセンサなど多種多様であり、それらの研究開発に必要な知識を興味を持って獲得し、多角的な視点で課題の解決を遂行できる力のある学生を育成することを目標としています。
年に数度の学会発表を通じてプレゼンテーション能力を身につけ、週一度の研究室ゼミで基礎力・ディスカッション能力を養います。
[研究室HP] URL:https://matsu-lab.info/
人体に学び、自然を理解し、ナノ戦略で難治性疾患や老化に挑む
人体に学び、自然を理解し、ナノ戦略で難治性疾患や老化に挑む
抗疾患ナノファイター研究室 Laboratory on Anti-Disease Nano-Fighter
教授:鄭 主恩(CHUNG, Joo Eun)
E-mail:
[研究分野]
バイオマテリアル、ドラッグデリバリーシステム(DDS)、ナノメディシン、抗がん治療、アンチエイジング
[キーワード]
生体適合性ポリマー、ナノ粒子、非侵襲的薬物送達、ターゲティング、薬効増幅、緑茶カテキン、メラトニン
研究を始めるのに必要な知識・能力
特別な専門知識や技術は必要ありません。科学への探究心があり、向上心、自他への責任感、本気で世界トップレベルの研究に取り組む意欲と覚悟が大事です。
この研究で身につく能力
バイオマテリアルの合成やナノ粒子の調製から化学物質・細胞・動物を用いた様々な手法の評価まで、学際的な知識や分析技術を経験し習得することができます。社会実装価値の高い医療技術創出を目指し世界最先端技術と競う研究を行う中、実験・ディスカッション・プレゼンテーション・論文執筆を通して、論理的思考、慎重さ、忍耐強さ、トラブルシューティング能力、洞察力、コミュニケーション能力を鍛えられるよう指導します。
【就職先企業・職種】 大学教員、博士研究員、特許審査官、化学企業、製薬企業
研究内容

図1 自然由来のナノファイターによる難治性疾患治療および健康寿命の伸長
当研究室はバイオマテリアルを用いたナノシステムを開発し、現治療法の限界を克服することを目指しています。
昨今、医療技術の発展に伴い世界中の人々の寿命が長くなっていますが、健康寿命の伸長は平均寿命より遅く、そのギャップは老化に伴う様々な疾患による生活質(QOL)の低下や個人と社会への大きな負担をもたらしています。当研究室では自然や人体由来の物質からなる新規な生体分解性バイオマテリアルを合成し、様々な難治性疾患の治療や抗老化作用を発揮するナノ粒子を開発しています。例えば、緑茶カテキンまたは脳内睡眠ホルモンであるメラトニンの誘導体を薬物キャリアとしたナノ粒子の開発により、今まで薬物送達が困難とされている疾患部位(がん・脳・後眼部など)へタンパク質・抗体・低分子・核酸などの性質の異なる様々な薬物を高濃度で疾患部位へ特異的に送達し、従来の薬物治療の大きい問題となっている正常部位への副作用を低減すると共に、緑茶カテキンやメラトニンから由来するキャリア本来の治療効能とのシナジー効果により、著しく薬効を増幅することが可能であります(図1)。このナノ粒子は薬物送達の妨げになっている様々な生体バリアを効率よく克服する高い薬物送達能力と、副作用のない低濃度の薬物を用いても高い薬効を達成する薬効増幅能力を兼ね備えた革新的なテクノロジーであり、トップジャーナルに掲載され高い国際評価を受けています。さらに国際特許(90報以上)の出願・登録および大学や企業との共同研究など臨床応用及び産業化を目指した研究開発を推進します。
従来のDDS製剤とは異なる設計指針によって開発されている当研究室のナノメディシンにより、今まで治療困難であった難治性疾患の治療や老化により蓄積する生体へのダメージの修復を可能とし、健康な生活・社会の実現や産業の活性化を目指しています。
主な研究業績
- N. Yongvongsoontorn, J. E. Chung, S. J. Gao, K. H. Bae, M. H. Tan, J. Y. Ying, M. Kurisawa, Carrier-enhanced anticancer efficacy of sunitinib-loaded green tea-based micellar nanocomplex beyond tumor-targeted delivery, ACS Nano 13, 7591-7602 (2019).
- K. Liang, J. E. Chung, S. J. Gao, N. Yongvongsoontorn, M. Kurisawa, Highly augmented drug loading and stability of micellar nanocomplexes comprised of doxorubicin and poly(ethylene glycol)-green tea catechin conjugate for cancer therapy, Advanced Materials 30, 1706963 (2018).
- J. E. Chung et al. Self-assembled nanocomplexes comprising green tea catechin derivatives and protein drugs for cancer therapy, Nature Nanotechnology. 9, 907-912 (2014).
使用装置
動的光散乱測定装置、紫外可視分光光度計、HPLC、NMR、電子顕微鏡、細胞培養装置、動物実験関連機器、IVIS動物イメージングシステム
研究室の指導方針
自分が行っている研究の科学的・社会的意義やインパクト、そして最先端技術と競うレベルの新規性をしっかり理解することで、熱意と意欲を持って研究を進めるよう鼓舞します。研究の進捗状況に関する十分なディスカッションを行い、総合・分析・判断力や問題解決能力を身につけるよう指導します。研究課題を含め学生の個性と適性に合った方法で段階的なマルチプルマイルストーンを設定し、着実に自信をつけながら成長するよう努めます。迅速な意見交換やチームワークは研究遂行において重要であるため、コアタイム(10-17時)を設けます。雑誌会、研究発表、論文執筆を通して、実力・倫理観・リーダーシップを兼ね備えた科学者として活躍できるよう育成します。
[研究室HP] URL:https://chungje-lab.labby.jp/
無人移動ロボットによる知的環境センシング技術の開拓
無人移動ロボットによる知的環境センシング技術の開拓
移動ロボティクス研究室 Laboratory on Mobile Robotics
准教授:池 勇勳(JI Yonghoon)
E-mail:
[研究分野]
ロボティクス、センサ情報処理
[キーワード]
移動ロボット、ロボットビジョン、環境センシング、 SLAM(simultaneous localization and mapping)
研究を始めるのに必要な知識・能力
線形代数学、確率論等の数学の基礎力と、ロボット工学、計測工学、機械学習の全般的な知識を持っていた方が望ましく、好奇心を持って研究への意欲のある学生であれば歓迎します。自分のアイデアをロボットシステムに実装するために、簡単なハードウェアの制作とプログラミング言語(特にC++又はPython)に慣れている場合は有利です。
この研究で身につく能力
ロボティクスは、機械・電子・情報・制御・計測等の様々な分野の要素技術が融合される分野であり、システムインテグレーション技術が非常に重要です。具体的な研究テーマによって差はありますが、エンジニアとしての幅広い工学的知識を習得可能です。また、当研究室では実際の現場に適用可能な社会実装に焦点を当てた研究を積極的に行っているため、様々な社会ニーズと先端技術とのマッチング能力と、社会に貢献可能な新しい技術を創造する基礎能力を学ぶことができます。
【就職先企業・職種】 製造業、IT系企業、研究職等
研究内容
当研究室では、無人移動ロボットと各種センサ情報処理技術を通じて、実社会における様々な問題解決に貢献可能な研究に取り組んでいます。特に、人間の代わりに災害環境や豪雪環境など過酷な環境内に分布する様々な物理的な情報を計測することで、高度な知的環境認識及び運動制御技術を実現しています。
■被災地探査ロボットシステム
当研究室では、自然災害をはじめ原子力災害等の災害現場において、被害情報収集活動や原子炉建屋内の環境モニタリングを実施するための、半自律移動ロボットによるセマンティックサーベイマップ生成システムを開発しています。具体的には、ロボットに搭載されたサーモカメラやハイパースペクトルカメラ、LiDARなどの複数種類のセンサ情報を取得・融合し、環境の物理的な特徴量を含むマップを生成する技術を開発しています。
■自律除雪ロボットシステム
当研究室では、過酷な豪雪による冬期間の積雪環境において、除雪車の自動運転のための基盤技術を開発しており、自律除雪ロボットシステムに搭載したカメラによる周囲環境の知覚能力の向上を図るため、近年驚くほどの技術革新が見られる画像・動画生成AI技術に着目しています。夏季の道路環境と冬季の積雪道路環境との関係性を画像・動画情報により事前に学習しておくことで、冬季にも対応する夏季の偽画像を高精度で生成可能となり、雪に覆われた除雪対象の舗道領域を正確に検出することが可能です。
また、正確な積雪分布状態の予測による除雪ロボットの高度な経路計画や運動最適化性能を向上させるための研究を行っています。
■特殊環境における自律移動ロボットのナビゲーション
様々なサービスロボットの開発のために不可欠な要素である自律移動ロボットのナビゲーション技術は、ここ数十年間活発に研究されてきた分野であり、最近では既に多くの技術が実用化されつつあります。当研究室では、他にも様々な次世代センサからの計測情報を処理し、多様な特殊環境における自律移動ロボットのナビゲーションの性能を向上させるための研究を行っています。
主な研究業績
- Y. Wang, Y. Ji, H. Woo, Y. Tamura, H. Tsuchiya, A. Yamashita, and H. Asama, "Acoustic Camera-based Pose Graph SLAM for Dense 3-D Mapping in Underwater Environments," IEEE Journal of Oceanic Engineering, 46(3), PP. 829-847, 2021.
- Y. Ji, Y. Tanaka, Y. Tamura, M. Kimura, A. Umemura, Y. Kaneshima, H. Murakami, A. Yamashita, and H. Asama, “Adaptive Motion Planning Based on Vehicle Characteristics and Regulations for Off-Road UGVs,” IEEE Transection on Industrial Informatics, 15(1), pp. 599-611, 2019.
- Y. Ji, A. Yamashita, and H. Asama, “Automatic Calibration of Camera Sensor Network Based on 3D Texture Map Information,” Robotics and Autonomous Systems, 87(1), pp. 313-328, 2017.
使用装置
車輪型およびクローラ型の移動ロボット
LiDAR、測域センサ、光学カメラ、サーモグラフィ、音響カメラ等の環境計測センサ
研究室の指導方針
当研究室では、ロボティクスという学問分野を通じて、多方面に社会に貢献できる人材を育成することを目指しています。そのためには、社会ニーズを把握した上で関連する技術動向を反映させる指導が重要であると考えており、学生には実際の現場に適用可能な社会実装を目標とした研究テーマを与えています。次に、研究成果を世の中に発信するため、すべての学生に対して国内・国際学会発表および学術論文の作成を積極的に推奨しています。最後に、研究室内でのミーティングはもちろん他大学および企業との連携を通じて、複数人のグループでの働き方、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力等も鍛えることを目指しています。
[研究室HP] URL:http://robotics.jaist.ac.jp/
次世代の医用材料による医療の発展
次世代の医用材料による医療の発展
医用材料学研究室 Laboratory on Biomedical Materials
講師:西田 慶(NISHIDA Kei)
E-mail:
[研究分野]
生体材料学、合成高分子、タンパク質工学、ナノメディシン
[キーワード]
医用高分子、刺激応答性、バイオ界面、細胞膜、細胞内分解系
研究を始めるのに必要な知識・能力
特定分野の知識や能力は問いません。高分子化学、タンパク質工学、分子生物学、薬学、情報学を含む学際的な医用材料の研究について、学生のバックグラウンドに応じてテーマを設定します。新しい技術や分野を開拓する好奇心や向上心が最も大切です。
この研究で身につく能力
合成高分子やタンパク質、細胞を材料とした医用材料や疾患の診断・治療法の開発に取り組みます。学生の興味やバックグラウンドに応じて、有機合成や遺伝子工学、生物といった基盤材料を選択し、社会的にも学術的にも重要な研究テーマを進めてもらいます。各種材料の作製だけでなく、材料物性の評価、細胞や動物を用いた生命科学的な評価と多岐の分野にわたる実験技術や知識が必要になります。材料学と生命科学といった学問的な高いレベルの知識と技術が身につくとともに、理系人材としてどこでも活躍できる広い視野と知恵を養います。
【就職先企業・職種】材料、製薬、医療機器、食品関連企業
研究内容
私達は、がんをはじめとした疾患の治療や診断法の開発といった応用研究と、生体と医用材料の相互作用の理解や制御といった基礎研究を両立した医用材料の開発を進めています。有機合成、遺伝子工学、タンパク質工学、細胞工学を駆使して様々な材料を設計し、次世代の医用材料を創出しています。
1. 細胞の代謝機能を改善する刺激応答性高分子

図1 刺激応答性高分子やタンパク質からなる医用材料

図2 ステルス材料としての直鎖状タンパク質
がん化や老化した細胞は、正常な細胞と比較して代謝機能が大きく変わります。この代謝機能の変化に着目して、がんや老化の進行を逆転させる治療法の開発に取り組んでいます(図1)。特に、代謝産物や生理活性分子を細胞に送り込むことで代謝を改善し、疾患治療への応用を検討しています。具体的には、代謝産物などを原料とした刺激応答性合成高分子を設計し、細胞内の特異的環境に応答して分解・代謝物を放出する医用材料を合成しています。
2. 細胞膜構成分子に着目したがん治療・診断
がん細胞の細胞膜構成分子に着目した新たながん治療や診断法を開発しています (図1)。特に、がん細胞で異常性がある細胞膜のコレステロールや糖鎖を標的としています。このような細胞膜構成分子と相互作用するタンパク質材料を遺伝子工学的に設計し、がん治療や診断法を検討しています。例えば、細胞膜コレステロールに相互作用する合成タンパク質を設計し、がん細胞のコレステロール合成系やオートファジーといった細胞内分解系を制御し、がんの殺傷を可能にしています。
3. 直鎖状タンパク質のde novo設計とステルス材料
採血管や注射器から人工心肺、人工臓器、バイオ医薬などの医療機器・医薬品は、医療技術に必要不可欠なものです。医療機器・医薬品の表面は血液や体液と接触するため、血液の凝固や異物認識、免疫・炎症応答を抑制するためにタンパク質の吸着を抑制するステルス特性が重要です。私達は、医療機器・医薬品にステルス性を付与するタンパク質性の医用材料を構築しています (図2)。特に、計算科学やAIを活用した直鎖状タンパク質の設計法を考案し、ステルス性医用材料としての有用性を検討しています。
主な研究業績
- Kei Nishida, et al, Cholesterol- and ssDNA-binding fusion protein-mediated DNA tethering on the plasma membrane, Biomaterials. Science, 13, 299-309 (2025)
- Kei Nishida, et al., Sensitive detection of tumor cells using protein nanoparticles with multiple display of DNA aptamers and bioluminescent reporters, ACS Biomaterials Science and Engineering., 9, 5260–5269 (2023)
- Kei Nishida, et al., Selective Accumulation To Tumor Cells With Coacervate Droplets Formed From Water-Insoluble Acrylate Polymer, Biomacromolecules, 23, 1569–1580 (2022).
使用装置
NMR、高速液体クロマトグラフ、水晶振動子マイクロバランス、接触角計、フローサイトメーター、共焦点レーザー顕微鏡
研究室の指導方針
医用材料に関する研究では、様々な学問に関する知識や技術必要です。個々に独立した研究テーマを設定し、基礎知識や技術を指導するとともに自分の研究に愛着と興味を持って自らが研究を追求できるように導きます。さらに理系人材として重要な科学的な思考力や文章力、表現力を身に付けられるようサポートします。また、もっとも成長する場である学会の参加・発表のチャンスもたくさんあります。ディスカッション、就活、生活についての悩み等、なんでも相談してください。ウェルカムです。
[研究室HP] URL:https://miyakoeijiro.wixsite.com/eijiro-miyako-lab
機能性バイオマテリアルで難治性疾患を治療する
機能性バイオマテリアルで難治性疾患を治療する
先端ナノ医療・長寿創生研究室
Laboratory on Advanced Nanomedicine and Longevity Creation
教授:栗澤 元一(KURISAWA Motoichi)
E-mail:
[研究分野]
バイオマテリアル、ドラッグデリバリーシステム(DDS)、ナノメディシン、再生医療
[キーワード]
生体内分解性高分子、ナノ粒子、緑茶カテキン、インジェクタブルゲル、薬物徐放・ターゲッテイング、細胞治療
研究を始めるのに必要な知識・能力
高分子化学の基礎知識があれば、問題なく研究を始めることができますが、入学前に特別な知識・能力がなくても大学や企業で活躍出来るように本気で指導します。要は日々の研究活動に対する心構え次第で、いくらでも成長できます。そのためには自他共栄の精神を研究スタッフ・学生と共有できる研究室づくりが大切だと考えています。
この研究で身につく能力
栗澤研究室では、ナノ粒子やゲルの設計・合成、キャラクタリゼーションを行い、細胞実験や動物実験によって、目的とする機能が十分であるのか否かを評価します。幅広い領域を学ぶので、種々の測定装置や実験手法の基礎を身につけることができます。動物実験を完了するころには、緻密な実験計画を立てる能力、討論・プレゼンテーション能力を習得することができます。研究目的を達成することに邁進することは大事なのですが、フェアに実験結果を評価できる能力を習得できるように指導します。
【就職先企業・職種】 大学教員、博士研究員、特許審査官、化学企業、製薬企業
研究内容

図1.緑茶カテキン・ナノ粒子による疾患治療
当研究室では、高分子科学、生体材料、ドラッグデリバリーシステム(DDS)、再生医療などの学問領域を基盤とし、難治性疾患を治療可能とする機能性生体材料を開発します。昨今、遺伝子治療や再生医療などを含む先端医療が実施され、これまでに治療不可能とされてきた疾患に新しい治療法が切り拓かれてきています。このような先端医療を支える生体材料に関する研究は、難治性疾患を将来的に治療可能とする医療技術開発において益々重要な役割を果たすものと考えられます。シンガポール、韓国、米国をはじめとする海外研究機関との共同研究を展開しており、臨床応用及び産業化を目指した研究開発を推進します。
[緑茶カテキン・ナノ粒子を用いたドラックデリバリーシステム]
栗澤研究室では、タンパク質・抗体・低分子・核酸などの性質の異なる医薬品の内包を可能とする緑茶カテキン誘導体を薬物キャリアとしたナノ粒子の開発によって、癌をはじめとする難治性疾患の治療を目指したドラッグデリバリーシステム(DDS)の研究を展開します(図1)。 緑茶カテキン・ナノ粒子は、薬物を疾患部に送達することを主な目的とした従来のDDS製剤とは異なる設計指針によって開発されています。疾患部への送達に加えて、薬物キャリアの主成分である緑茶カテキンが抗癌活性を有するために、薬物と緑茶カテキンのそれぞれの抗癌活性に基づくシナジー効果によって、抗腫瘍効果を増幅することを特徴としています。

図2.インジェクタブルゲル・システムによる医療応用
[インジェクタブルゲルによるヘルスケアへの貢献]
生体内での安全なハイドロゲル形成を可能とするインジェクタブルゲルシステムの開発及びその生体機能性材料としての応用研究を展開します。従来、注射によって生体内で安全に化学架橋を誘導する事は困難でありましたが、高分子—フェノールコンジュゲートと酵素溶液の同時注入により、コンジュゲート中のフェノールの酸化カップリングを誘導し、生体内で安全にゲル化させるプラットホームテクノロジーを開発しています(図2)。この手法によって、生体内で薬物及び細胞をゲル内に固定し、長期間に及ぶ薬物徐放及び細胞増殖・分化の制御が可能となることから、様々な疾患に対して新たな治療法をDDS及び再生医療分野において確立されることが期待されます。
主な研究業績
- N. Yongvongsoontorn, J. E. Chung, S. J. Gao, K. H. Bae, M. H. Tan, J. Y. Ying, M. Kurisawa, Carrier-enhanced anticancer efficacy of sunitinib-loaded green tea-based micellar nanocomplex beyond tumor-targeted delivery, ACS Nano 13, 7591-7602 (2019).
- K. Liang, J. E. Chung, S. J. Gao, N. Yongvongsoontorn, M. Kurisawa, Highly augmented drug loading and stability of micellar nanocomplexes comprised of doxorubicin and poly(ethylene glycol)-green tea catechin conjugate for cancer therapy, Adv. Mater. 30, 1706963 (2018).
- J. E. Chung et al. Self-assembled nanocomplexes comprising green tea catechin derivatives and protein drugs for cancer therapy, Nature Nanotechnol. 9, 907-912 (2014).
使用装置
紫外可視分光光度計、NMR、動的光散乱測定装置、HPLC、レオメーター、電子顕微鏡、細胞培養装置、動物実験関連機器
研究室の指導方針
学生に寄り添うスタイルで研究室を運営することをモットーとします。研究のディスカッションや勉強会・雑誌会はできる限り、 頻繁に行い、学生の研究能力の向上に努めます。当然ながら、レベルの高い研究成果を多く創出することは重要ではありますが、学生には先ず、自身が携わっている学問や研究が開拓しうる将来の社会を楽しく想像しながら研究することを提案します。応用研究を遂行する際には、社会貢献の可能性について、学生と十分に議論し、将来に学生が社会でリーダとして活躍するべく力を養う機会にします。また、学生であっても情報受信だけではなく、情報発信ができるよう指導いたします。学生の興味や個性をよく把握し、学生の能力を伸ばします。研究室内では常に世界の最先端の研究を意識しつつ、研究室もその舞台の中であり、世界に向けて発信したいと強く学生が意識する雰囲気を創ります。
[研究室HP] URL:https://kurisawa-lab.labby.jp/
学生のSUMALDEさんがPVSEC-36においてBest Oral Presentation Awardを受賞
学生のSUMALDE, Adrian Augusto Mendozaさん(博士後期課程2年、サスティナブルイノベーション研究領域、大平研究室)が36th International Photovoltaic Science and Engineering Conference(PVSEC-36)においてBest Oral Presentation Awardを受賞しました。
PVSEC-36は、令和7年11月9日~14日まで、タイ・バンコクのチュラロンコン大学(Chulalongkorn University)にて開催された、太陽光発電システムに関する国際会議です。同会議では、世界中の研究者や技術者が一堂に会し、最先端の研究成果について活発な議論が行われました。
※参考:PVSEC-36
■受賞年月日
令和7年11月14日
■研究題目、論文タイトル等
Development of encapsulant-less vertical crystalline silicon photovoltaic modules with various thermoplastic materials as module base
■研究者、著者
Adrian Augusto M. Sumalde, Kensaku Maeda, and Keisuke Ohdaira
■受賞対象となった研究の内容
Encapsulant-less PV modules were developed to address the recyclability concerns in conventional crystalline silicon (c-Si) photovoltaic (PV) modules. Specifically, these modules were conceptualized for vertical installations for building integration, targeting high urban density areas and/or locations with heavy snowfall conditions. This work evaluated the potential of several thermoplastics as primary material for module base, providing both physical stability and aesthetic appeal. The design utilizes grooves for easy installation and removal of module components, as well as "corner" and "bar" holding structures to minimize partial shading and vertical stability. Mini-modules were 3d-printed using black polycarbonate (PC), translucent polyethylene terephthalate glycol (PETG), and white acrylonitrile styrene acrylate (ASA). Electrical performance was evaluate using 1-sun illuminated J - V characteristics, EQE spectra, and electroluminescence imaging, while an initial 72-hour damp-heat test was conducted to investigate the response of modules to thermo-hygrometric stress. Using corner holding structures in the module base design, performance losses were successfully minimized, kept to as low as 0.36% ηabs for the white ASA modules. The translucency of PETG modules and white colors of ASA modules also resulted in cell-to-module ratios above 90%, with confidence that upscaling will improve these values. Future direction involves upsizing and redesigning for additional physical stability, to be evaluated using moisture ingress and vibration stability tests.
■受賞にあたって一言
I am truly honored to have received the award at PVSEC-36. It validated my efforts throughout the year and motivates me to continue working hard in my research and my PhD studies. I would like to thank Professor Keisuke Ohdaira and Senior Lecturer Kensaku Maeda for their continuous guidance and instilling discipline in my daily research activities in JAIST, as well as to NEDO and Specially Appointed Professor Marwan Dhamrin, The University of Osaka, for their technical support for the fabrication of our solar cells. Lastly, I would also like to thank Associate Professor Kotona Motoyama, Kanazawa University, who strengthened my awareness of responsible research and innovation. Through her, I am always reminded that whenever we communicate our research, the benefit to society is a common language that we all can understand.


令和7年12月9日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2025/12/09-1.html学生のNGUYEN, Kim Loc Thiさんらの論文が、Advanced Science (WILEY) 誌の表紙に採択
学生のNGUYEN, Kim Locさん(博士後期課程3年、サスティナブルイノベーション研究領域、桶葭研究室)らの「パターン形成:分割現象における「対称性の破れ」を実証」に係る論文が、Advanced Science (WILEY) 誌の表紙に採択されました。
■掲載誌
Advanced Science, volume 12, issue 32 (2025)
掲載日:2025年9月1日
■著者
Thi Kim Loc Nguyen, Taisuke Hatta, Koji Ogura, Yoshiya Tonomura, Kosuke Okeyoshi*
■論文タイトル
Symmetry breaking in meniscus splitting: Effects of boundary conditions and polymeric membrane growth
■論文概要
自然界には様々な幾何学パターンがあり、例えば雪の結晶の形は、気温と水蒸気の量で多様に変化します。また、乾燥環境は水の蒸発を引き起こし、生物であればその成長過程で非対称なパターンをつくります。これまで、この幾何学性や非対称性について、数理的な解釈がなされてきたものの、物理化学的実験に基づいた再現はなされてきませんでした。本研究は、界面分割現象のパターン形成において、対称性が破れることを実証しました。この分割現象は「ワインの涙」として知られる粘性フィンガリング現象を展開したものです。有限空間からポリマー水分散液が乾燥する際、空間中心からずれた位置にポリマーを析出して乾燥界面を分割します。これは、界面科学や高分子科学だけでなく、生体組織など自然界に見られる非対称なパターン形成の理解に重要です。
表紙詳細:https://advanced.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.71215
論文詳細:https://advanced.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.202503807
プレスリリース:https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/06/04-1.html

令和7年9月8日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2025/09/08-1.html能美市の中学生の皆さんが来学
8月21日(木)、能美市の中学2年生20名の皆さんが施設見学のため来学しました。
中学生の皆さんは、本学と学術協力の基本協定を締結している沖縄科学技術大学院大学(OIST)を9月に訪問する予定で、その前に地元にある本学(JAIST)を知るため、見学に来られました。
はじめに学長から挨拶があり、附属図書館の『解体新書』(杉田玄白著)や情報社会基盤研究センターの超並列計算機システム「KAGAYAKI」、ナノマテリアルテクノロジーセンターを見学しました。その後、サスティナブルイノベーション研究領域の小矢野 幹夫教授による研究紹介があり、熱電ミニカーの走行体験をしました。中学生の皆さんにとっては、本学の研究環境に触れるよい機会となったようです。

学長挨拶

附属図書室の見学

大規模並列計算機
KAGAYAKIの見学

ナノマテリアルテクノロジー
センターの見学

小矢野研究室による
熱電ミニカーの走行体験
令和7年8月26日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2025/08/26-1.htmlIIP(アイ・アイ・ピー)金沢示野校の生徒の皆さんが来学
7月30日(水)、IIP(金沢示野校)のロボット教室およびこどもプログラミング教室に通う生徒の皆さんと保護者の方々が、施設見学のため本学を訪れました。
当日はキャンパス内のさまざまな施設を巡り、研究や学びの現場を間近にご覧いただきました。なかでも、ロボット工学に関心のある生徒に実際の研究現場を見学させたいとのご要望を受け実施した、人間情報学研究領域の池勇勳准教授の研究室訪問では、池准教授や学生による無人移動ロボットの実演などが行われ、実際にロボットが目の前で動く様子を見ながら、研究の説明に熱心に耳を傾ける姿が印象的でした。
また、情報社会基盤研究センターに設置されている大規模並列計算機「KAGAYAKI」や貴重図書室に所蔵されている『解体新書』(杉田玄白著)、パズル展示施設「JAISTギャラリー」も見学しました。ギャラリーに併設されたプレイルームでは、生徒たちが展示されているパズルに実際に触れ、夢中になって楽しむ様子も見られました。
今回の訪問が、生徒の皆さんにとって今後の進路選択や学びへの関心を深めるきっかけとなるとともに、保護者の方々にとっても、本学の教育・研究活動への理解を深めていただく機会となれば幸いです。






令和7年8月4日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2025/08/04-3.htmlパターン形成:分割現象における「対称性の破れ」を実証
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北陸先端科学技術大学院大学 科学技術振興機構(JST) |
パターン形成:分割現象における「対称性の破れ」を実証
【ポイント】
- 水の蒸発によって現れるパターン形成「界面分割現象」の新たな特徴を発見
- ポリマー分散液の蒸発界面が複数に分割するとき、「対称性の破れ」が現れることを実証
- 生体組織など自然界に見られる非対称なパターン形成の理解に有用
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市)サスティナブルイノベーション研究領域のグエン チキムロク大学院生(博士後期課程)、桶葭興資准教授らは、ポリマーが水に分散した粘性流体から現れる散逸構造[用語解説1]「界面分割現象」において、対称性の破れ[用語解説2]を実証した。これまで、界面[用語解説3]で起こる幾何学変形が、時間とともにどう進んでいくかは、不明な点が多かった。今回、明確な境界条件のもと、確率統計を通した解析を進めた結果、分割時に現れる核の位置に、空間的な「対称性の破れ」が生じることが明らかになった。これは、生体組織など自然界に見られる非対称なパターン形成の理解に有用である。 |
【研究概要】
自然界には様々な幾何学パターンがあり、例えば雪の結晶の形は、気温と水蒸気の量で多様に変化する。また、乾燥環境は水の蒸発を引き起こし、生物であればその成長過程で非対称なパターンをつくる。これまで、この幾何学性や非対称性について、数理的な解釈がなされてきたものの、物理化学的実験に基づいた再現はなされてこなかった。一方、桶葭准教授らの研究グループはこれまでに、ポリマー水分散系の蒸発界面に着目し、散逸構造「界面分割現象」を報告してきた (※1)。これは、ポリマー水溶液などの粘性流体を明確な境界のある有限空間から乾燥環境下におくと、一つの蒸発界面が複数の界面に分割される幾何学化現象である。ここで、空間軸の一つを1ミリメートル程度の隙間にすることで毛管現象[用語解説4]の物理条件が制御された空間となる。さらに、一定温度下で水の蒸発を一方向になるよう設定すると、蒸発界面直下の濃密なポリマーの密度がゆらぎ、複数の特異的位置でポリマーが析出して界面分割する。具体的には、多糖[用語解説5]の水溶液を乾燥環境下におくと、まるで界面から芽が出るようにセンチメートル単位で多糖が析出し界面が複数に分割される。ここでは、ミクロ構造の秩序化と同時に、マクロなパターンが現れることが分かっていた。しかし、非平衡で開放的な蒸発界面から引き起こされる実際の分割現象は、核形成位置の平均的情報は得られるものの、その不確定さのため複数の核形成メカニズムについては未解明な特徴が多かった。
※1. https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/09/22-1.html

| 図. 界面分割現象における「対称性の破れ」: A. 空間軸の一つとしてセル幅を大きくしていくと、分割現象の特徴が現れる概念図。界面がゆらぎ、対称性が破れ、そして水中に分散していたポリマーが析出する核を非同期に形成する。B. 同一条件で得られる異なる分割(二分割、もしくは三分割)と、セル幅に対する核形成位置のデータ。C. 対称性の破れを加味した分岐モデル。核1と核2とは、タイミングがずれて発生する(時間的に同期していない)。 |
そこで今回、ポリマー分散液の一つの蒸発界面が、二つ、もしくは三つに分割される空間条件に焦点をあて、その核形成位置を詳細に検討した(図A)。確率統計論を通した界面科学的な解析から、それぞれの分割数に対して、「対称性の破れ」と「非同期性」が現れ、相互に関係し合う特徴であることが分かった。核の位置については平均化による統計評価ではなく、結果に対する場合分けを通し、特徴的な「ずれ」を評価した(図B)。すると、分割点の位置には偏りがあり、セル幅に対して均等に半分、もしくは均等に三分の一に分割するわけではない、という基本原理が明らかになった。実際、二分割される場合、核はセル幅の中心ではなく、中心からずれた位置に形成される傾向となった。この「ずれ」は、セル幅を少しずつ大きくすると顕著に現れ、三分割される場合、2番目の核形成が起こるタイミングや位置に大きく影響し、非同期性として現れた。この「対称性の破れ」と「非同期性」は、時間発展の現象理解に重要である(図C)。
また、この核間隔は、ポリマー水溶液の液相と空気の界面における毛管長が影響する。今回の実証実験では、粘性流体として多糖キトサン[用語解説6] の水分散系を用いており、5~8ミリメートル程度の間隔であった。これまでにいくつかの多糖でも分割現象は実証されており、研究グループは現在、様々な化学種・物質群への拡張や現象の特徴的メカニズムの解明を進めている。これらを通して、自然界にも通ずるパターン形成の普遍的理解が期待される。
本成果は、2025年6月4日に科学雑誌「Advanced Science」誌(WILEY社)のオンライン版で公開された。なお、本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(JPMJFR201G)、日本学術振興会科研費 基盤研究B(JP23K21136)、日本学術振興会科研費 新学術領域研究(JP22H04532)、および公益財団法人旭硝子財団 若手継続グラントの支援のもと行われた。
【今後の展開】
生物を含め自然界には多様な散逸構造が在り、対称性の破れを明確に扱うことは重要である。パターン形成に関する歴史的研究にはチューリングパターン[用語解説7]などがあり、ソフトマテリアルを題材とした研究例も多い。これは、生物における自己組織化の理解や実空間におけるマテリアル設計に重要なテーマと認識されているためでもある。今回のような実検証を通じたパターン形成の理解が進めば、今後、高分子科学、コロイド科学、界面科学、材料科学、流体力学、非平衡科学、生命科学などの分野への進展に留まらない。実時空間と仮想時空間を通した数理科学、シミュレーション、データサイエンスなどとの融合によって、パターン形成の理解と材料設計に有用と期待される。
【論文情報】
| 掲載誌 | Advanced Science (WILEY) |
| 題目 | Symmetry breaking in meniscus splitting: Effects of boundary conditions and polymeric membrane growth |
| 著者 | Thi Kim Loc Nguyen, Taisuke Hatta, Koji Ogura, Yoshiya Tonomura, Kosuke Okeyoshi* |
| DOI | 10.1002/advs.202503807 |
| 掲載日 | 2025年6月4日 |
【用語解説】
令和7年6月4日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/06/04-1.html未来を描くキャリア相談会(大学生または高専生とその保護者、大学院進学を考える社会人対象)
生成AIが飛躍的に進化し、グローバルの経済状況が流動化していく中、私たちの生活スタイルや考え方も変化していくこの時代を生き抜くうえで、「大学院」で学ぶことは非常に有意義です。物理学・化学・生物学といった自然科学を基盤とした学際的な研究分野であるマテリアルサイエンス研究領域の現役教員が、大学院という選択肢について、ざっくばらんにお話しします。
興味のある方は、以下の連絡先までぜひお申し込みください。
北陸先端科学技術大学院大学
マテリアルサイエンス 教授 栗澤元一(kurisawa@jaist.ac.jp)
令和7年3月26日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2025/03/26-1.html学生の永原さんが第6回フロンティア太陽電池セミナーにおいて優秀ポスター賞を受賞
学生の永原光倫さん(博士前期課程2年、サスティナブルイノベーション研究領域、大平研究室)が、第6回フロンティア太陽電池セミナーにおいて優秀ポスター賞を受賞しました。
フロンティア太陽電池セミナーは、産官学の様々な分野で太陽電池研究に取り組む研究者が集まり、シリコンや化合物など無機系、有機薄膜系、ペロブスカイト型、さらには量子ドット型など新しい太陽電池も含み、広く太陽電池の開発研究および関連する基盤技術を題材に取り上げ、様々な視点から徹底的に議論し、研究者間での連携を深めることで、本研究分野の飛躍的な発展の促進を図るものです。
第6回フロンティア太陽電池セミナーは令和6年12月12日~13日にかけて、愛媛県(松山市)にて開催されました。
※参考:第6回フロンティア太陽電池セミナー
■受賞年月日
令和6年12月13日
■研究題目、論文タイトル等
封止材とカバーガラスを使用しない曲面結晶Si太陽電池モジュールの機械的強度および浸水試験
■研究者、著者
永原光倫、Huynh Thi Cam Tu、大平圭介
■受賞対象となった研究の内容
封止材とカバーガラスを使用しない曲面・大面積結晶Si太陽電池モジュールに対し、JIS規格に基づく砂袋式荷重試験と降雹試験の2種類の機械的強度試験を行った。結果として、砂袋式荷重試験では、切削加工により作製したポリカーボネート(PC)ベースが破壊されないことや、フロントカバーであるPC板と太陽電池セルの接触による破損がないことが分かった。降雹試験では、降雹によるフロントカバーに傷が確認されないことや、衝撃による太陽電池セルの破損が見られないことを確認した。以上のことから、従来型太陽電池モジュールの評価基準を満たす機械的強度を有することが分かった。また、ベースの端部にOリングをはめ込み、ポリカーボネート製カバーとフレーム状のクランプで押さえることにより水分浸入の抑止を試みた。この構造を持つ小型モジュールに対し浸水試験を行った結果、水分浸入がみられなかったことから、OリングとAlフレームは水分浸入を防ぐ構造であるということが示された。
■受賞にあたって一言
優秀ポスター賞を受賞でき、とてもうれしく思います。研究を進める中で、大平圭介教授をはじめ多くのサポートと貴重な助言をいただいたことが、今回の受賞につながったと感じています。これからも一層研究活動に取り組んでいきたいです。
令和7年1月31日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2025/01/31-2.html学生の萩原さんがGel Symposium 2024においてSmart Molecules Best Poster Awardを受賞
学生の萩原礼奈さん(博士後期課程1年、サスティナブルイノベーション研究領域、桶葭研究室)が14th International Gel Symposium(Gel Symposium 2024)において、Wiley社発行のジャーナルSmart MoleculesよりBest Poster Awardを受賞しました。
Gel Symposiumは、高分子ゲルおよび関連する材料科学・工学の基礎研究と実用的応用における最新の課題に焦点を当てた国際会議です。
Gel Symposium 2024は、令和6年11月17日~21日にかけて沖縄県にて開催され、高分子ゲルだけでなく、無溶媒エラストマー、ゴム、その他のポリマーネットワーク、およびアクティブソフトマターに関する研究についても議論が行われました。
※参考:Gel Symposium 2024
■受賞年月日
令和6年11月21日
■研究題目、論文タイトル等
Design of Open Systems Using Aqueous Polymer Solutions Causing Meniscus Splitting
■研究者、著者
萩原礼奈、桶葭興資
■受賞対象となった研究の内容
高分子溶液の乾燥過程で界面の変形が生じる界面分割現象は非平衡現象の一つとして注目されている。多糖類のみで確認されていたこの現象を合成高分子でも実証した本研究は、開口部のデザインにより湿度を調整することで界面変形パターンの制御に成功した。
■受賞にあたって一言
この度はGel Symposium 2024にてSmart Molecules Best Poster Awardを頂戴し、誠に光栄に思います。本研究の遂行にあたり、丁寧なご指導を賜りました桶葭興資准教授及び研究室のメンバーにこの場を借りて心より御礼申し上げます。今後も界面変形の普遍性を明らかにするため、研究を進めていきます。
令和7年1月21日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2025/01/21-1.htmlなぜ実用熱電材料の熱伝導率は低いのか?レーザーラマン散乱分光が出した答えは? ~実用熱電モジュールの性能向上に大きく期待~
なぜ実用熱電材料の熱伝導率は低いのか?レーザーラマン散乱分光が出した答えは?
~実用熱電モジュールの性能向上に大きく期待~
【ポイント】
- レーザーラマン散乱分光法を応用した格子振動の解析手法を、熱電材料の熱伝導率評価に適用しました。
- 実用熱電材料(ビスマス-テルル-セレン系材料)において、4次以上の高次の非調和振動はほとんど存在しないことを実証しました。
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市)サスティナブルイノベーション研究領域のLiu Ruian大学院生(博士後期課程)、小矢野 幹夫教授は、レーザーラマン散乱分光法を実用熱電材料(ビスマス-テルル-セレン系材料)に適用し、4次以上の高次の非調和格子振動がほとんど存在しないことを実証しました。この成果は、なぜ実用熱電材料の熱伝導率は低いのかという問いに対して答えを与えるだけでなく、よりよい熱電材料、すなわち低い熱伝導率をもつ材料を開発するにはどうすればよいかという指針を与えるものです。 |
【研究背景と内容】
熱電変換技術は、固体素子(以下、「熱電素子」という。)のみを使って、熱エネルギーから電気エネルギーを取り出したり、電気によって熱の流れを制御する技術です。熱電変換技術のうち、熱電素子に直流電流を流すと素子の両端でそれぞれ吸発熱がおこるペルチェ効果と、素子に温度差をつけると電圧が発生するゼーベック効果があります(図1)。特に、ペルチェ効果は、インターネットや先進AI技術を支える光通信用レーザーダイオードの温度制御に使用されており、私たちの豊かな生活を陰で支えている必要不可欠なものです。

| 図1 一対のp型およびn型の熱電素子を組み合わせたπ型熱電モジュールの概念図。熱電モジュールに直流電流を流すと上下電極で吸発熱が起こり(左図)、温度差をつけると逆に電圧が発生する(右図)。 |
このように産業応用されている熱電素子の心臓部にはビスマス-テルル-セレン系の材料が使われています。この材料は、同じような結晶構造を持つビスマス-アンチモン-テルル系材料と組み合わせて熱電素子が製造されます。このビスマス-テルル-セレン系の熱電材料は、熱を伝えにくいという性質(低い熱伝導率*1)が特徴で、優れた熱電性能を持っています。電気の良導体であるにもかかわらず、窓ガラスのような絶縁体と同等の熱伝導率(約 1 W/mK)を示します。
低い熱伝導率の原因として、これまで格子振動の非調和項が熱の流れを阻害していることが効いているのではないかと考えられてきましたが、よくわかっていませんでした。本研究は、レーザーラマン散乱分光法をビスマス-テルル-セレン系材料に適用して、格子振動の高次の項がどのようになっているかを確かめた画期的なものです。
レーザーラマン散乱分光法は、試料に単色レーザー光を照射して、散乱してきた光(ラマン散乱光)と入射レーザー光のエネルギー差から、物質中の格子振動のエネルギーを測定する手法です。さらに散乱光ピークのピーク幅を解析することにより、格子振動の緩和時間(格子振動がどれくらいの速さで励起されて減衰するか)に関する情報が得られます。得られた振動エネルギーを、計算機でシミュレーションした結果と比較することにより、どの振動パターンがどのようなエネルギーを持っているかを推測することも可能です。
私たちは図2に示す温度可変ラマン散乱分光器を用いて、ビスマス-テルル-セレン系材料のラマン散乱スペクトルを広い温度範囲で測定し、その変化を詳細に解析しました。スペクトルは図3に示すように3本のピーク(一つ一つが格子振動のエネルギーに対応します)からなっており、その半値幅を温度に対してプロットすると、温度の上昇とともにほとんど直線的に増加しています(図4)。この温度変化をBalkanskiモデル*4を使って解析すると、「格子振動には非調和成分が存在するが、それは3次までの振動であり、4次以上の非調和振動*2*3は存在しない」ということが明らかになりました。4次の非調和振動は近似的には大きな振幅をもった格子振動に対応するため、この結果は、「大振動振幅が熱の流れを阻害することは、ビスマス-テルル-セレン系材料の低熱伝導率の原因ではない」ということを示しており、むしろ構成元素が重元素であることが主な理由であることを明確に表しています。

| 図2 レーザーラマン散乱分光実験の様子。温度可変チェンバー内のアルミ基板上に設置された試料に、光学窓を通してレーザー光を照射する。散乱されたラマン光は顕微鏡の接眼レンズを通して分光器で分光される。 |

| 図3 実測された熱電材料Bi2Te3のラマンスペクトルの一例。特徴的な3本のピーク(A1gおよびEgモード)が観測される。黒点が測定値、赤線はフィッテイング曲線である。 |

| 図4 ラマンピークの半値幅の温度依存性の一例。温度の上昇とともに、ほとんど直線的に半値幅が広くなっていることが分かる。4次の非調和項が含まれる場合は、この振る舞いが下凸の曲線となる。 |
これらの情報は、なぜ実用熱電材料の熱伝導率は低いのかという問いに対して答えを与えるだけでなく、よりよい熱電材料、すなわち低い熱伝導率をもつ材料を開発するにはどうすればよいかという指針を与えるものです。さらにレーザーラマン散乱分光法が物質の熱の伝わり方を解析する一つの有効な手法として提示されたため、今後、他の材料の熱測定にも同様の手法が応用されることが期待されます。
本成果は、2024年11月25日に科学雑誌「Physical Review B」に掲載されました。なお、本研究は、科学研究費助成事業基盤研究(C)20K05343の支援のもと行われたものです。
【論文情報】
| 掲載誌 | Physical Review B 110, 174310(2024) |
| 論文題目 | Investigation of phonon anharmonicity in Se-doped Bi2Te3 via temperature-dependent Raman spectroscopy |
| 著者 | Ruian Liu, and Mikio Koyano |
| 掲載日 | 2024年11月25日 |
| DOI | 10.1103/PhysRevB.110.174310 |
【用語説明】
熱の伝わりやすさを示す指標。固体の場合、単位温度差を付けた場合に単位時間内に流れる、単位長さ単位断面積当たりの熱量で定義される(単位: W/mK)。一般に熱伝導率が高い物質(金属等)は熱をよく伝え、電気を流さない絶縁体は熱を伝えにくい。熱電変換材料の場合は、高い伝導率と低い伝導率という相反する物性が要求される。
物質中では原子の熱振動を通じて熱エネルギーが高温側から低温側に伝わっていく。このときの状態は、原子がバネで規則的につながれたモデルで記述することができる。フックの法則に従う理想的なバネで構成されていれば、原子が振動したとき、この連成振動系の固有振動のみが安定なエネルギーを持つ。この振動状態を調和振動と呼ぶ。
調和振動のみでは固体の熱膨張が説明できないため、実際の固体物質を構成しているバネは非線形バネである。非線形バネは、調和振動に加えて3次や4次の高次の非調和項を持っている(図5)。3次の項は振動の平衡位置のずれ、4次の項は大振幅振動に近似的に対応する。非調和項が存在すると音波同士の衝突が可能となるため、より減衰が速くなり熱エネルギーの伝播が阻害される。
音波とのアナロジーで考えると、調和振動は基準音(純音)に、非調和項は倍音に対応する。
物質の振動特性を解析するための理論モデルで、特にラマン散乱分光法のデータを解析する際に用いる。このモデルが提唱する半値幅の温度依存性を用いることにより、格子振動の非調和項を次数ごとに分離することができる。

図5 格子振動の調和項(調和振動)と非調和項の概念図。
令和7年1月6日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/01/06-1.html福井県立坂井高校の学生さんが来学
12月12日(木)、福井県立坂井高校の生徒30名の皆さんが施設見学のため来学しました。
同校は「マイスター・ハイスクール普及促進事業」の拠点校に指定されており、その一環として大学の最先端技術を学ぶことを目的として行われました。
人間情報学研究領域の池 勇勳准教授の研究室を訪問し、池准教授と学生が無人移動ロボットの実演を行いました。また、情報社会基盤研究センターの大規模並列計算機「KAGAYAKI」や貴重図書室の『解体新書』(杉田玄白著)、パズル展示施設JAISTギャラリーを見学しました。
池研究室のロボット実演では、多くの生徒さんから「おおっ~」という驚きの声も聞こえてきました。皆さんとても熱心に、楽しそうに見学してくださり、ありがとうございました。

池研究室にて無人移動ロボットの実演

大規模並列計算機KAGAYAKIの見学

貴重図書室の見学

JAISTギャラリーの見学
令和6年12月25日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2024/12/25-1.html



