研究活動の検索
研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。サスティナブルイノベーション研究領域の小矢野教授らが国立天文台「金属3Dプリンタを用いた、初の電波天文用の受信機部品の製作」に協力
国立天文台は、アルマ望遠鏡のバンド1受信機に搭載する部品「コルゲートホーン」を、金属3Dプリンタを用いて製作することに成功しました。電波天文観測において、金属3Dプリンタで製作した初めての部品を組み込んだ受信機が誕生します。
本部品の開発・製作には本学からサスティナブルイノベーション研究領域の小矢野幹夫教授及び宮田全展講師が熱伝導や電気伝導の測定等において協力しました。
詳細については、関連情報をご覧ください。
[関連情報]
国立天文台プレスリリース(令和4年10月26日)
https://www.nao.ac.jp/news/topics/2022/20221026-alma.html
令和4年10月31日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2022/10/31-1.html研究員のMANINDERさんがFalling Walls Lab Sendai 2022において2位を受賞
研究員のMANINDER, Singhさん(サスティナブルイノベーション研究領域、金子 達雄研究室)がFalling Walls Lab Sendai 2022において2位を受賞しました。
Falling Walls Lab(FWL)は、「ベルリンの壁」崩壊20周年を記念し、2009年にベルリンにて設立された財団「Falling Walls Foundation」主催の弁論大会です。世界に存在する「様々な壁」を打破することをコンセプトに、若手研究者等が、3分間で自身の研究活動をプレゼンテーションします。今年度の大会では、異なる分野の17人の候補者の中から3人の受賞者が選ばれました。
今回、Falling Walls Lab Sendai 2022は令和4年9月22日に東北大学およびオンラインにてハイブリッド開催されました。
■受賞年月日
令和4年9月22日
■研究題目、論文タイトル等
Biodegradable Plastics "Blessing in Disguise"
■受賞対象となった研究の内容
It mentioned how biobased nylons could be the best substitute for current nylons and other plastics.
■受賞にあたって一言
I received recognition for presenting my research on "Biodegradable Plastics-Blessing in Disguise".
Knowing that the research I most enjoy conducting and that has great potential for addressing the world's plastic problem has earned me an award makes me feel extremely happy. I am earnestly grateful for the recognition I have received for my work. I assure you that I have worked hard over the last two years to get this recognition, but someone has always outdone me. In retrospect, I believe it was a good thing because it motivated me to do better than I had previously. Never before have I felt such a strong desire to win an award, or any accolade for that matter. I'm not sure what changed me, but whatever it was, I'm grateful for it.
To conclude, I'd like to thank my professor Tatsuo Kaneko, Dr. Maiko K. Okajima sensei for their kind support and constant motivation. I would like to extend my thanks to Dr. Kenji Takada sensei, Dr. Mohammad Asif Ali, my parents, lab members, Dr. Gargi Joshi, and Dr. Manjit Singh Grewal for believing in me. I would also like to acknowledge funding support from Moonshot. Last but not least, I would like to thank Atsuko Kohata sensei (a well-known NHK presenter), Tetsuya Kageyama sensei (Specially Appointed Assistant Professor), and the organizers of Tohoku University.
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MANINDERさん(左) |
令和4年10月14日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2022/10/14-1.html人間情報学研究領域のホ准教授がIEEEシニアメンバーに昇格
人間情報学研究領域のホ アン ヴァン准教授がIEEEシニアメンバーに昇格しました。
IEEE(米国電気電子学会)は、人類社会の有益な技術革新に貢献する世界最大の専門家組織で、世界160ヵ国以上、42万人を超える会員がいます。論文等出版、国際会議の開催、標準規格の策定、教育・キャリア形成の支援、表彰、会員のコミュニケーション支援などの活動を通じて、コンピュータ、バイオ、ロボテック、通信、電子、電力、航空、などのさまざまな分野で指導的な役割を担っています。
シニアメンバーは、少なくとも10年間専門的業務に携わっており、そのうち少なくとも5年間にわたり優れた業績を挙げた者に認められる会員資格です。
■承認日
令和4年2月19日
令和4年10月14日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2022/10/14-1.htmlリチウムイオン2次電池の急速充放電を実現する新しいナノシート系負極活物質の開発

リチウムイオン2次電池の急速充放電を実現する新しいナノシート系負極活物質の開発
ポイント
- リチウムイオン2次電池開発において、急速充放電技術の確立は急を有する課題となっている。
- TiB2(二ホウ化チタン)粉末のH2O2による酸化処理、遠心分離、凍結乾燥により簡便に得られる二ホウ化チタンナノシートをリチウムイオン2次電池の負極活物質として適用した。
- 二ホウ化チタンナノシートを負極活物質としたアノード型ハーフセルで充放電挙動を評価した結果、比較的低い充放電レートの0.025 Ag-1では約380 mAhg-1の放電容量を示した。
- 当該アノード型ハーフセルにおいて、1 Ag-1 (充電時間約10分)の電流密度では、174 mAhg-1の放電容量を1000サイクル維持した(容量維持率89.4 %)。さらに超急速充放電条件(15~20 Ag-1)を適用すると、9秒~14秒の充電で50~60 mAhg-1の放電容量を10000サイクル維持するに至り(容量維持率80%以上)、高い安定性が確認された。
- 急速放充電技術の普及を通して社会の低炭素化に寄与する技術への展開が期待される。
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)(学長・寺野稔、石川県能美市)の先端科学技術研究科 松見紀佳教授(物質化学フロンティア研究領域)、ラージャシェーカル バダム元講師(物質化学フロンティア領域)、アカーシュ ヴァルマ元大学院生(博士前期課程修了)、東嶺孝一技術専門員らの研究グループとインド工科大学ガンディナガール校カビール ジャスジャ准教授、アシャ リザ ジェームス大学院生は、リチウムイオン2次電池*1において二ホウ化チタンナノシートの負極活物質への適用が急速充放電能の発現に有効であることを見出した。 |
【研究の内容と背景】
リチウムイオン2次電池開発において、急速充放電技術の確立は急を有する課題となっている。しかしながら、その実現には固体中のリチウムイオンの拡散速度の向上や電極―電解質界面の特性、活物質の多孔性などの諸ファクターの検討を要している。これまで急速充放電用途のナノ材料系負極活物質としては、チタン酸リチウムのナノシートや酸化チタン/炭素繊維コンポジットなどが検討されてきたほか、新しい2次元(2D)材料*2への関心が広がりつつあり、グラフェン誘導体や金属カーバイド系材料にも検討が及んでいる。
本研究においては、TiB2(二ホウ化チタン)のH2O2による酸化処理、遠心分離、凍結乾燥による簡便なプロセスで作製可能なTiB2ナノシートをリチウムイオン2次電池負極活物質として適用し、アノード型ハーフセルを構築して急速充放電能について検討した。
合成は、共同研究者であるインド工科大学准教授カビール氏らが報告している手法*3に従い、TiB2粉末を過酸化水素水と脱イオン水との混合溶液に懸濁させ、24時間の攪拌後に遠心分離し、上澄みを-35oCで24時間凍結させた後に72時間凍結乾燥することにより粉末状のTiB2ナノシートを得た(図1)。得られた材料のキャラクタリゼーションは前述の手法に従い、XRD、HRTEM、FT-IR、XPS等の各測定により行った。
電池セルの作製において、負極の組成としてはTiB2ナノシートを55 wt%、アセチレンブラックを35 wt%、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を10 wt%を用い、NMP(N-メチルピロリドン)を溶媒とした懸濁液から銅箔集電体にコーティングした。電解液としては 1.0 M LiPF6 のEC/DEC (1:1 v/v)溶液を用い、対極にはリチウム箔を用いた。
TiB2ナノシートを負極活物質としたアノード型ハーフセル*4のサイクリックボルタモグラム(図2)においては、第一サイクルにおいてのみ0.65 V (vs Li/Li+)に電解液の分解ピークが現れたが、それ以降は消失した。リチウム脱離に相当するピークは2つ観測され、0.28 Vにおけるピークはリチウムが複数インターカレートしたTiB2からの脱リチウムピーク、0.45VにおけるピークはTiB2の再生に至る脱リチウムピークにそれぞれ相当する。約1.5 Vからの比較的高いリチウム挿入電位は、チタン酸リチウムやホウ素ドープTiO2とほぼ同様であった。
また、このアノード型ハーフセルの充放電挙動では、比較的低い充放電レートの0.025 Ag-1では約380 mAhg-1の放電容量を示した(図3)。
アノード型ハーフセルにおいて、1 Ag-1(充電時間約10分)の電流密度では、174 mAhg-1の放電容量を1000サイクル維持し、容量維持率は89.4 %を示した(図3)。さらに超急速充放電条件である15-20 Ag-1を適用すると、9秒~14秒の充電で50-60 mAhg-1の放電容量を10000サイクル維持するに至り、容量維持率は80%以上であった。
本成果は、ACS Applied Nano Materials (米国化学会)のオンライン版に9月19日に掲載された。なお、本研究は、文部科学省の「大学の世界展開力強化事業」採択プログラムに基づいた北陸先端科学技術大学院大学とインド工科大学ガンディナガール校(JAIST-IITGN)の協働教育プログラム(ダブルディグリープログラム)のもとで実施した。
【今後の展開】
TiB2ナノシートの積極的活用により、急速充放電能を有する次世代型リチウムイオン2次電池の発展に向けた多くの新たな取り組みにつながり、関連研究が活性化するものと期待される。
さらに活物質の面積あたりの担持量を向上させつつ電池セル系のスケールアップを図り、産業的応用への橋渡し的条件においても検討を継続する。
既に日本国内及びインドにおいて特許出願済みであり、今後は、企業との共同研究(開発パートナー募集中、サンプル提供応相談)を通して将来的な社会実装を目指す。急速充放電技術の普及を通して社会の低炭素化に寄与する技術への展開が期待される。
【論文情報】
雑誌名 | ACS Applied Nano Materials(米国化学会) |
題目 | Titanium Diboride-Based Hierarchical Nanosheets as Anode Material for Li-ion Batteries |
著者 | Akash Varma, Rajashekar Badam, Asha Liza James, Koichi Higashimine, Kabeer Jasuja * and Noriyoshi Matsumi* |
WEB掲載日 | 2022年9月19日 |
DOI | 10.1021/acsanm.2c03054 |
図1.TiB2ナノシートの合成とキャラクタリゼーション (a)バルクのTiB2粉末 (b)過酸化水素水(H2O2) (3% v/v)にTiB2を分散した黒色の分散液 (c) 24時間攪拌後のTiB2の溶解と遠心分離後の上澄みの使用 (d)凍結乾燥後の粉末のナノ構造 (e) FESEM像 (f) TiB2 粉末及び TiB2ナノシートのFTIRスペクトル (g)ホウ素のハニカム状平面にチタンがサンドイッチされた結晶構造 (h) Si/SiO2 ウエハに担持させたTiB2ナノシートの光学像 (i) TiB2ナノシートのHRTEM像。ポーラスなシート状構造を示す。 |
図2.TiB2ナノシートを負極活物質としたアノード型ハーフセルのサイクリックボルタモグラム (a) 電圧範囲0.01-2.5V ;掃引速度 0.1 mV/s (b) 電圧範囲0.5-2.5V ;掃引速度 0.1, 0.3, 0.5, 0.7, and 1 mV/s. |
図3.TiB2ナノシートを負極活物質としたアノード型ハーフセルの充放電挙動 (a)レート特性の検討結果 (b)充放電曲線 (c)長期サイクル特性 |
【用語説明】
電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う2次電池。従来型のニッケル水素型2次電池と比較して高電圧、高密度であり、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車に適用されている。
グラフェンや遷移金属ジカルコゲニドなどの2次元(2D)層状無機ナノ材料は、その優れた物理的および化学的特性のために最近注目されている化合物で、光触媒や太陽電池、ガスセンター、リチウムイオン電池、電界効果トランジスタ、スピントロニクスなどへの応用が期待されている。
James, Asha Liza; Lenka, Manis; Pandey, Nidhi; Ojha, Abhijeet; Kumar, Ashish; Saraswat, Rohit; Thareja, Prachi; Krishnan, Venkata; Jasuja, Kabeer
Nanoscale (2020), 12 (32), 17121-17131CODEN: NANOHL; ISSN:2040-3372. (Royal Society of Chemistry)
リチウムイオン2次電池の場合には、アノード極/電解質/Liの構成からなる半電池を意味する。
令和4年9月30日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2022/09/30-1.html物質化学フロンティア研究領域の谷池教授の研究課題がJST「未来社会創造事業」に採択
物質化学フロンティア研究領域の谷池 俊明教授らが提案した研究課題が、科学技術振興機構(JST)の「未来社会創造事業」(探索加速型)に採択されました。
「未来社会創造事業」は、探索加速型と大規模プロジェクト型の2つのアプローチで構成され、科学技術により「社会・産業が望む新な価値」を実現する研究開発プログラムです。経済・社会的にインパクトのある目標を定め、基礎研究段階から実用化が可能かどうか見極められる段階(概念実証:POC)に至るまでの研究開発を実施します。
探索加速型は、研究開発を探索研究から本格研究へと段階的に進めるもので、探索ステージ(※)の研究期間は2年6か月となります。
今年度は、221件の応募の中から、26件の採択課題が決定され、谷池教授の提案は、重点公募テーマ「革新的な知や製品を創出する共通基盤システム・装置の実現」において採択されました。
※本事業では、ステージゲート方式を導入しています。これは研究開発を複数のステージに分け、各ステージでの評価に基づいて研究開発課題の続行または廃止を決定する仕組みです。
*詳しくは、JSTホームページをご覧ください。
■研究課題名
超広域材料探索を実現する材料イノベーション創出システム
■研究概要
材料開発にかつてない難度と速度が要求される現在、我が国の研究開発現場は、研究のグランドデザインを見直す基盤技術を欠いており、苦境に立たされています。本研究開発では、ハイスループット実験やデータ科学技術を基盤とし、広大な材料空間から前知見を必要とすることなくシーズを創出する超高効率な方法論、「材料イノベーション創出システム」を開発し、その社会普及やオープンイノベーションを通して我が国のあらゆる材料研究開発現場の生産性・創造性を革新します。
令和4年9月27日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2022/09/27-1.htmlサスティナブルイノベーション研究領域の水田教授が応用物理学会からフェロー称号を受理

サスティナブルイノベーション研究領域の水田 博教授に公益社団法人応用物理学会からフェローの称号が授与され、表彰を受けました。
応用物理学会は、半導体、光・量子エレクトロニクス、新素材など、それぞれの時代で工学と物理学の接点にある最先端課題、学際的なテーマに次々と取り組みながら活発な学術活動を行っています。公益性の高い学会として広く活動を展開し、社会連携事業にも取り組んでいます。
*参考:公益社団法人応用物理学会ホームページ
■フェローの概要等
「応用物理学会フェロー表彰」制度は、同学会の会員表彰制度の一環として、2006年に創設されました。この表彰制度は、同学会における継続的な活動を通じて、学術・研究における業績、産業技術の開発・育成における業績、教育・公益活動を通した人材育成や教育における業績などにより、応用物理学の発展に貢献した在籍累計年数10年以上の正会員を対象とし、特に貢献が顕著であると認められた会員を表彰するものです。また、フェローの人数は同学会個人会員数の3%程度と定められています。
*参考:第16回(2022年度)応用物理学会フェロー表彰者
■授与日
令和4年9月20日
■表彰内容
ナノメータスケール電子-機械複合機能素子の研究
■水田教授からの一言
本フェロー表彰の対象となった研究は、企業から大学に異動した2003年頃に「従来の電子デバイスの中に機械的に動くパーツを入れたら面白いことができるのでは?」という単純な発想で開始したものです。約20年にわたり東工大、サウサンプトン大、本学と職場を移しながら継続し、特に本学ではグラフェンなど原子層材料を用いて、気相単分子センシングやナノスケール熱制御素子などの極限機能素子について原理探索から社会実装までを進めてきました。英国で働いた期間も長かったのですが、その間、応用物理学会では200件超の発表、分科会・研究委員会幹事、シンポジウム世話人、また応物主催/共催の国際学会の実行委員長・論文委員長など、微力ながら学会の活動に参画させていただきました。これらはひとえに学内外の多くの方々からいただいた多大なご支援、特に研究室の同僚の方々・学生の皆さんのご協力の賜物です。この場をお借りして心より御礼を申し上げます。
*水田教授は2012年に英国物理学会(IOP)フェローの称号も受理しています。
![]() 表彰を受けた水田教授(左) |
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記念盾とフェローバッジ |
令和4年9月21日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2022/09/21-1.html学生の新保さんが第19回「次世代の太陽光発電システム」シンポジウムにおいてInnovative PV 奨励賞を受賞
学生の新保 俊大朗さん(博士前期課程2年、サスティナブルイノベーション研究領域、大平研究室)が第19回「次世代の太陽光発電システム」シンポジウム(第2回日本太陽光発電学会学術講演会)においてInnovative PV 奨励賞を受賞しました。
「次世代の太陽光発電システム」シンポジウムは、国内の太陽光発電にかかわる研究者や技術者が一堂に会し、分野の垣根なく議論する場として、平成16年の第1回から毎年1回開催されており、昨年からは令和2年10月に発足した日本太陽光発電学会が主催しています。
Innovative PV 奨励賞は、同シンポジウムにおいて発表された太陽光発電ならびにその関連分野の発展に貢献しうる優秀な講演論文を発表した35歳以下の同学会若手会員に対して、理事会での審議を経て授与されます。
今回、第19回「次世代の太陽光発電システム」シンポジウムは、令和4年6月28日~29日にかけて金沢市文化ホールおよびオンラインにてハイブリッド開催されました。
■受賞年月日
令和4年8月30日
■論文タイトル
封止材無しp型結晶Si太陽電池モジュールの電圧誘起劣化におけるセルとガラスの接触の影響
■研究者、著者
新保俊大朗, Huynh Thi Cam Tu, 大平圭介
■受賞対象となった研究の内容
現在ほとんどの太陽電池(PV)モジュールでは封止材を使用しているが、部材同士が強固に接着さ れており、分別してのリサイクルが困難である。また、封止材が電荷やNaイオンの移動経路となり電圧誘起劣化(PID)が発生する、汎用の封止材であるエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)とバックシートより浸入する水との反応で生成される酢酸により電極が腐食される、などの問題もある。これらの問題を解決するために、封止材を使用しない結晶 Si (c-Si) PVモジュールの開発に取り組んでいる。
今回の講演では、ポリカーボネート製ベースを用いた封止材無しp型結晶Si PVモジュールのPID加速試験におけるセルとガラスの接触の影響について調査した結果を発表した。PID加速試験においてセルとカバーガラスの接触を防ぐことで、PID耐性が向上することを明らかにした。
■受賞にあたって一言
この度、日本太陽光発電学会よりInnovative PV 奨励賞を賜りまして大変光栄に思います。今回の受賞に恥じない研究成果を残すため、今後も精進致します。本研究の推進にあたり、ご指導、ご協力いただいた大平先生、Huynh先生をはじめとした大平研究室メンバーの皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
令和4年9月8日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2022/09/08-1.htmlマイクロロボットを"流れ"作業で迅速に作製 -生体分子モーターによる人工筋肉で自在にプリント・動的再構成可能に-

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国立大学法人 大阪大学 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学 |
マイクロロボットを"流れ"作業で迅速に作製
-生体分子モーターによる人工筋肉で自在にプリント・動的再構成可能に-
【ポイント】
- マイクロ流路※1の中で、光に応答する材料を流しながら、マイクロロボット※2のボディと駆動源となるアクチュエータ※3を連続的に生産・組み立てを行う「マイクロロボットその場組み立て法」を開発
- 様々な機能をもつマイクロロボットの迅速な作製に成功
- より高機能なマイクロロボットの実現と、マイクロロボットの量産化に期待
【概要】
大阪大学・大学院工学研究科の森島圭祐教授、王穎哲特任研究員(常勤)は、 北陸先端科学技術大学院大学・先端科学技術研究科 バイオ機能医工学研究領域の平塚祐一准教授、岐阜大学・工学部の新田高洋教授との共同研究で、マイクロ流路内で、マイクロロボットの部品をプリント成形し、その場で組み立てることに成功しました。マイクロロボットの機械構造は光応答性ハイドロゲル※4でつくられ、アクチュエータは同じチームが開発した生体分子モーターからなる人工筋肉を利用しました。このアクチュエータと機械部品をマイクロ流路内で組み立てることにより、マイクロロボット製造の柔軟性と効率が向上しました。この方法で、様々な機能のマイクロロボットが実現されました。また、この成果により、これまで困難であった、特に柔軟な構造を持つマイクロソフトロボットの実現や、マイクロロボットの量産化が期待されます。 本研究成果は、2022年8月24日午後2時(米国時間)に発行される科学雑誌「Science Robotics」の表紙を飾りました。 |
【研究の背景】
マイクロロボット、特に柔軟な構造を持つロボットは、生物医学などの分野で非常に幅広い応用の可能性があるものの、小さなロボットにアクチュエータなど様々な機械部品を組み込むことは困難で、高機能のマイクロロボット開発の障害となっています。従来の方法では、通常、機械構造やアクチュエータなど、マイクロロボットの様々な部品を異なる場所で製造し、一つ一つ組み上げていくピック アンド プレース アセンブリによってマイクロロボットがつくられていました。この方法は時間と労力がかかり、また多くの制限があることが課題となっています。
【研究の内容】
本研究では、自然界の生体内システムの自己組織化プロセスに着想を得て、2021年に発表したプリント可能な生体分子モーターからなる人工筋肉(1)(2)に基づき、ロボット部品をその場で加工・組み立てしてマイクロロボットを製造する方法を開発しました。マイクロ流路内で、マスクレスリソグラフィー※5により、ハイドロゲル材料の機械的構造をプリントし、次に生体分子モーターからなる人工筋肉がハイドロゲル機構の狙った位置に直接プリントすることで、機構を駆動して目的の仕事を実施します(図1) 。 このその場組み立てにより、マイクロロボットを迅速に次々と生産することができます。
また、マイクロロボットに新しい人工筋肉を再プリントすることにより、アクチュエータを迅速に動的再構成し、複雑な仕事を行うマイクロロボットを実現しました(図2)。
さらに、生体分子モーターを使用する本研究とは異なる、生きた筋肉細胞を用いるアプローチとして細胞ハイブリッドロボット※6が注目されています。細胞ハイブリッドロボットは、柔軟性が高く、環境負荷が低いという利点があるものの、筋肉細胞の培養に数日かかってしまうという問題があります。本研究では、設計の柔軟性を向上させながら、製造プロセスを大幅に簡素化することに成功しました。今後のオンチッププリンティング技術の向上や人工筋肉の性能向上により、現在の細胞ハイブリッドロボットのボトルネックを打破し、実用化に向けた一歩を踏み出すことが期待される手法であると考えています。
(1) https://www.nature.com/articles/s41563-021-00969-6
(2) https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2021/04/20-1.html
図1 マイクロロボットその場組み立て法
図2 その場組み立て法によって製造したマイクロロボットが生体分子モーターからなる人工筋肉によって駆動する様子
【本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)】
今回の研究により、自然界の生体分子モーターによって運動が創発する自己組織化現象をオンチップ微小空間上で工学的に制御し、自在にデザインできる加工プロセスをボトムアップ的な発想でより簡便に実現できました。これにより、これまで超微小部品をトップダウン的に組み立てることが大きなボトルネックであったために遅れていた、マイクロロボットの組み立てやマイクロソフト機構のオンデマンド生産が可能になりました。今後、様々な機能を付与したマイクロロボットがオンチップ上で連続的にオンデマンド生産することが可能になり、化学エネルギーだけで駆動する超小型マイクロロボットが健康医療応用など様々な分野に展開、波及していくことが期待できます。
【特記事項】
本研究は、日本学術振興会(JSPS)科研費 基盤研究(S)(課題番号22H04951)、基盤研究(A)(課題番号22H00196)、基盤研究(B)(課題番号19H02106)、学術変革領域研究(A)(課題番号21H05880)、挑戦的萌芽研究(課題番号21K18700)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」(JPNP15009)の支援を受けて行われました。
【論文情報】
タイトル | In situ integrated microrobots driven by artificial muscles built from biomolecular motors |
著者名 | Yingzhe Wang, Takahiro Nitta, Yuichi Hiratsuka ,and Keisuke Morishima |
DOI | https://www.science.org/doi/10.1126/scirobotics.aba8212 |
【用語説明】
ガラスや高分子材料で作製した数ミリメートルから数マイクロメートルの流路で、効率的に化学反応などを起こすことができる。微小なバイオセンサーや化学分析装置に利用されている。
数ミリメートル以下のサイズのロボットで、医療などへの応用が期待されている。
モーターやエンジンなどのように電気や化学エネルギーなどを利用して、動きや力を発生する装置。
紫外線などの光を照射することでゼリー状に固まる物質。
光照射による微細加工技術で、半導体デバイスなどの製造に利用されている。
培養細胞と機械部品を融合させて作製したロボット。
【SDGs目標】
【参考URL】
森島圭祐教授 研究者総覧URL https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/90351526dc15ef59.html
生命機械融合ウェットロボティクス領域URL http://www-live.mech.eng.osaka-u.ac.jp/
令和4年8月26日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2022/08/26-1.htmlサスティナブルイノベーション研究領域の宮田助教が第19回日本熱電学会学術講演会において優秀講演賞を受賞
サスティナブルイノベーション研究領域の宮田 全展助教が第19回日本熱電学会学術講演会において優秀講演賞を受賞しました。
日本熱電学会学術講演会は、熱電科学 · 技術、アルカリ温度差電池(AMTEC)、熱光電池(TPV)などに関する材料、素子、デバイス、モジュール、アセスメント等について幅広く議論するものです。優秀講演賞は、熱電科学、工学と技術の発展に貢献しうる優秀な講演論文を発表した者に授与されます。
今回、第19回日本熱電学会学術講演会は令和4年8月8日から10日にかけて新潟県長岡市のアオーレ長岡にて開催されました。
■受賞年月日
令和4年8月10日
■講演題目
二元系リン化物 AgP2 の電子・フォノン物性と Ag 原子の大きな非調和フォノン散乱
■受賞対象となった研究の内容
蒸気タービンによるエネルギー回収が困難な低温排熱から、エネルギー回収をおこなえる熱電変換材料が注目を集めています。中でも、リンPを主成分としたリン化物が候補物質として近年注目を集めつつありますが、格子熱伝導率が高いことが問題の一つとなっています。
本研究では、合成したリン化物AgP2が高いHall移動度と低い格子熱伝導率を両立することを発見し、その起源がキャリアの長い緩和時間、軽い有効質量、およびAg-Pの異方的結合・質量差によって引き起こされるAg原子の大きな非調和フォノン振動であることを、実験と第一原理電子・フォノン計算の両面から明らかにしました。これにより、「Ag原子が異方的結合をもつAg-P化物は、Agの非調和振動により低い格子熱伝導率を示す」という新たな材料設計指針を確立することに成功しました。
■受賞にあたって一言
この度、日本熱電学会より優秀講演賞を賜りまして大変光栄に思います。今回の受賞を励みに、当該研究分野の発展により貢献できるよう邁進してまいります。本研究の推進にあたり数多くのディスカッション・ご助言をいただきました小矢野幹夫教授をはじめ、研究室の学生の皆様、熱電学会関係各所の皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。また。本研究は日本学術振興会(JSPS)科研費 JP20K15021の助成を受けて実施されました。感謝御礼申し上げます。


令和4年8月18日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2022/08/18-2.html物質化学フロンティア研究領域の松村教授らの論文がBiomacromolecules誌の表紙に採択
物質化学フロンティア研究領域の松村研究室による論文が、米国化学会(American Chemical Society :ACS)刊行のBiomacromolecules誌の表紙(Supplementary cover)に採択されました。本研究成果は、物質・材料研究機構および産業技術総合研究所との共同研究によるものです。
■掲載誌
ACS Biomacromolecules, 2022Volume 23, Issue 8
表紙掲載日2022年8月8日
■著者
Chiaki Yoshikawa, Keita Sakakibara, Punnida Nonsuwan(松村研究室修了生), Miwako Shobo, Xida Yuan(松村研究室修了生), Kazuaki Matsumura
■論文タイトル
Cellular Flocculation Driven by Concentrated Polymer Brush-Modified Cellulose Nanofibers with Different Surface Charges
■論文概要
今回の論文は、濃厚ポリマーブラシを表面グラフトしたセルロースナノファイバーが細胞と相互作用して凝集体を形成する際の表面電荷の影響について詳細に議論したものです。その結果、アニオン性のポリマーブラシをグラフトすることで良好な細胞凝集塊の形成がみられました。
本研究結果は、再生医療用三次元細胞足場材料への応用が期待できます。
本発表は、物質・材料研究機構、産業技術総合研究所との共同研究による成果です。
表紙詳細:https://pubs.acs.org/toc/bomaf6/23/8
論文詳細:https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.biomac.2c00294
令和4年8月9日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2022/08/09-1.html物質化学フロンティア研究領域の松見教授の論文がACS Applied Energy Materials誌の表紙に採択
物質化学フロンティア研究領域の松見 紀佳教授の論文が、米国化学会(American Chemical Society :ACS)刊行のACS Applied Energy Materials誌の表紙(Front Cover)に採択されました。
■掲載誌
ACS Applied Energy Materials 2022, 5, 7, 7977-7987 (Highlighted as Front Cover)
表紙掲載日2022年7月25日
■著者
Agman Gupta, Rajashekar Badam, Noriyoshi Matsumi*
■論文タイトル
Heavy-Duty Performance from Silicon Anodes Using Poly(BIAN)/Poly(acrylic acid)-Based Self-Healing Composite Binder in Lithium-Ion Secondary Batteries
■論文概要
本論文では、BIAN(ビスイミノアセナフテキノン)構造を有する共役系高分子とポリアクリル酸を組み合わせた自己修復性コンポジットバインダーをリチウムイオン二次電池用シリコン負極に適用することにより、シリコン負極の大幅な安定化を観測するに至った。600サイクル後にも2100 mAhg-1の放電容量を維持することに成功した。
表紙詳細:https://pubs.acs.org/toc/aaemcq/5/7
論文詳細:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsaem.2c00278
令和4年8月3日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2022/08/03-1.html超高強度シェルを有する高度安定化マイクロサイズシリコンの新規負極活物質の開発とリチウムイオン2次電池への応用

超高強度シェルを有する高度安定化マイクロサイズシリコンの
新規負極活物質の開発合成とリチウムイオン2二次電池への応用
ポイント
- 低コストながら、ナノサイズシリコンと比較して充放電に伴う体積膨張・収縮制御がより難しいマイクロサイズシリコンを用いた負極活物質に関して、シリコンオキシカーバイドの超高強度シェルを付与することにより課題の解決に成功した。
- 内部のマイクロサイズシリコンに一定の体積変化の余地を与えるために中間層としてカーボン層をスペーサーとして導入した。また、外殻層の電導性を確保するためにシリコンオキシカーバイド層にアセチレンブラック粒子を導入した。
- 本負極活物質を用いることにより、汎用のバインダー材料を用いた系であっても高放電容量と長期サイクル耐久性を同時に発現させることが容易に可能であり、優れたレート特性を有することも明らかとなった。
- 高容量放充電技術の普及を通して社会の低炭素化に寄与する技術への展開が期待される。
北陸先端科学技術大学院大学 (JAIST) (学長・寺野 稔、石川県能美市)の先端科学技術研究科 松見 紀佳教授(物質化学フロンティア研究領域)、バダム ラージャシェーカル講師(物質化学フロンティア研究領域)、東嶺 孝一技術専門員、Ravi Nandan研究員、高森 紀行大学院生(博士後期課程2年)らのグループは、リチウムイオン2次電池*1の安定な高容量充放電を低コストで可能にする新規負極活物質(Si/C/ABG)の開発に成功した。 |
【研究内容と背景】
リチウムイオン2次電池の負極材開発において、高容量の発現の観点から関心を集めているシリコンは充放電に伴う体積膨張・収縮制御の困難さに対応するためナノサイズシリコン粒子が広く用いられてきたが、汎用性やコスト性の観点からマイクロサイズシリコンを用いた高容量2次電池の実現が切望されている。体積膨張・収縮制御においては、マイクロサイズシリコンの適用によりさらなる困難が伴うが、新たなアプローチによる課題の克服への要求が高まっている。
本研究においては、ナノサイズシリコン粒子に代わってマイクロサイズシリコン粒子を適用しつつ、充放電に伴う大きな体積膨張・収縮を抑制するために特殊な材料設計を行った。本負極活物質の外殻には、超高強度を有することが知られるシリコンオキシカーバイド層をコーティングした。また、シリコンオキシカーバイドの不十分な電導性を補う目的でシリコンオキシカーバイド層にアセチレンブラック粒子を共存させた。また、内部のマイクロサイズシリコンに一定の体積変化の余地を与えるためにスペーサーとしてあらかじめマイクロサイズシリコン表面にカーボン層のコーティングを行い、中間層とした。
合成手順としては、マイクロサイズシリコン(~1μm)表面にpH8.5においてポリドーパミン形成させ、乾燥後焼成し、カーボンコーティングを行った。その後、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES; シリコンオキシカーバイドの前駆体)にアセチレンブラックを混合した懸濁液で処理し、乾燥後焼成した(図1)。得られた材料をTEM、HAADF-STEM、EDSマッピング、XPS等の各測定によりキャラクタライズした(図2)。マイクロサイズシリコン上のカーボン層及び外殻層のシリコンオキシカーバイド(ブラックグラス)層が観測され、外殻層にはアセチレンブラック粒子が埋め込まれている様子が見受けられた。XPS測定からは、シリコンオキシガーバイド(ブラックグラス)層にはSi、SiC4、SiC3O、SiC2O2、SiCO3、SiO4が混在している様子が観測された。
このようなシリコンオキシカーバイドは、7.1 GPaの弾性率、13 MPaの曲げ強さ、11 MPaの圧縮強度を有することがShellemanら*2により報告されており、本負極活物質においても外殻部分に著しい力学的強度をもたらすと期待できる。
合成した負極活物質(Si/C/ABG)の評価に先立って、マイクロサイズシリコンとシリコンオキシカーバイド層との間にカーボン中間層を有さない材料に関しても合成し、これを負極活物質としたアノード型ハーフセル*3を構築して評価した。この系においては、マイクロサイズシリコンの体積変化が大幅に抑制された結果、セルの充放電能は大幅に減少した。一方、中間カーボン層を有するマイクロサイズシリコン/カーボン/シリコンオキシカーバイド型の負極活物質(Si/C/ABG)を70 wt%(アセチレンブラック15 wt%; CMC 7.5 wt%; PAA 7.5 wt%)用いた系では、750 mA/gの充放電速度において775サイクル後に1017 mAhg-1の放電容量を維持し、優れたレート特性を有することが明らかとなった (図3)。また、正極をNCA(ニッケル酸リチウム)とした場合のフルセルも良好に動作した(詳細は原著論文参照)。
さらに、充放電サイクル(65サイクル)後の負極のSEM像(断面像)より、充放電後にもクラック形成や活物質層の崩壊、層の剥離などは認められず、本負極活物質が極めて高い安定性を示していることも明らかとなった(図3)。
本成果は、Journal of Materials Chemistry A(英国王立化学会)のオンライン版に7月18日に掲載された。
なお、本研究は、科学技術振興機構(JST) 未来社会創造事業(JP18077239)の支援を受けて実施した。
【今後の展開】
マイクロサイズシリコンの外殻層に超高強度シリコンオキシカーバイドを導入した特異的な負極活物質デザインにより、次世代型リチウムイオン2次電池へのマイクロサイズシリコン活用に道が拓かれると期待される。
さらに活物質の面積あたりの担持量を向上させつつ電池セル系のスケールアップを図り、産業応用への橋渡し的条件においての検討を継続する(国内特許出願済み)。
今後は、企業との共同研究(開発パートナー募集中、サンプル提供応相談)を通して将来的な社会実装を目指す。高容量充放電技術の普及を通して社会の低炭素化に寄与する技術への展開が期待される。
【論文情報】
雑誌名 | Journal of Materials Chemistry A (英国王立化学会) |
題目 | Black glasses grafted micron silicon: a resilient anode material for high-performance lithium-ion batteries |
著者 | Ravi Nandan, Noriyuki Takamori, Koichi Higashimine, Rajashekar Badam, Noriyoshi Matsumi* |
掲載日 | 2022年7月18日 |
DOI | 10.1039/D2TA03068C |
図1.マイクロシリコンへのシリコンオキシカーバイド層導入の手順
図2.(a-c) Si/C/ABGのTEM像
(d-h) Si/C/ABGのHAADF-STEM 像及び EDS マッピング
図3.充放電後のSEM像
(a,b) マイクロシリコン 負極(断面像)、(c) Si/C/ABG 負極top view、 (d) Si/C/ABG 負極(断面像)、 (e)シリコンオキシカーバイドをコートしたマイクロシリコン(Si/C/ABG)を負極としたハーフセルの充放電サイクル特性
【用語説明】
電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う2次電池。従来型のニッケル水素型2次電池と比較して高電圧、高密度であり、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車に適用されている。
リチウムイオン2次電池の場合には、アノード極/電解質/Liの構成からなる半電池を意味する。
令和4年7月28日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2022/07/28-1.html学生のJANCHAIさんとVOさんが国際会議CHEMEET 2022においてBest Poster Awardを受賞

学生のJANCHAI, Khunanyaさん(博士後期課程1年、物質化学フロンティア研究領域、山口政之研究室)とVO, Hoang Giang Daiさん(博士前期課程2年、物質化学フロンティア研究領域、山口政之研究室)が国際会議International Chemistry Conference(CHEMEET 2022)においてBest Poster Awardを受賞しました。
CHEMEET 2022は、今年から始まった化学の広い分野を対象として開催される国際会議で、令和4年6月27日から29日にかけてオンラインにて行われました。
■受賞年月日
令和4年6月29日
【JANCHAI, Khunanyaさん】
■研究題目、論文タイトル等
Effect of shear flow on the structure and properties of polypropylene film
■受賞対象となった研究の内容
Flow induced crystallization of polypropylene (PP) and the role of ultra-high molecular weight (UHMW) component on the crystallization were studied using PP having UHMW component. A polarized optical microscope attached with a parallel-plates shear device was employed to investigate the crystallization process. The addition of the UHMW component had no influence on the crystallization temperature without flow field, and spherulites were formed. However, the highly oriented structure was detected during crystallization after shear history. As a result, mechanical properties, i.e., Young's modulus, yield stress, and tensile strength of the films were significantly higher than those of the film without UHMW component.
■受賞にあたって一言
I am deeply pleased and honored to receive the "CHEMEET BEST POSTER AWARD" at the International Chemistry Conference on June 27-29, 2022. I got the benefits of attending a conference to learn, develop my research skill, and have the chance to get feedback from expert persons on my work. I would like to express my sincere gratitude to my supervisor, Professor Yamaguchi Masayuki, who gave me invaluable advice, continuous support, and the excellent opportunity to join this conference. Also, I'd like to express my sincere thanks to the laboratory members for their good cooperation.
【VO, Hoang Giang Daiさん】
■研究題目、論文タイトル等
Evaluation of flow-induced crystallization for poly (lactic acid)
■受賞対象となった研究の内容
Thermal properties and crystallization behavior of poly (lactic acid) (PLA), one of the biomass-based plastics, were investigated by in-situ polarized optical microscopy equipped with a shear stage. The results indicated that PLA cannot be crystallized at a fast cooling rate (≥30oC/min). In contrast, with shear history, the PLA chains were crystallized even at 30oC/min. A similar result was obtained also at the isothermal crystallization process after shear history.
■受賞にあたって一言
I am very honored to receive "CHEMEET BEST POSTER AWARD" at this conference. I deeply express my sincere thanks to the award committee who rated my poster as one of the best posters. This best poster award is one of the first achievements that I have in my research career. However, I must work more and try harder in the future. Lastly, I would like to express my appreciations to my supervisor - Professor Yamaguchi Masayuki, and lab-mates, who helped and encouraged me while I was making my poster.
令和4年7月8日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2022/07/08-1.htmlサスティナブルイノベーション研究領域の高田助教が高分子学会 高分子研究奨励賞を受賞
サスティナブルイノベーション研究領域の高田 健司助教が公益社団法人高分子学会の高分子研究奨励賞を受賞しました。
高分子学会では、高分子学会年次大会、高分子討論会、ポリマー材料フォーラムにおいて発表、および、 論文発表若しくは特許出願、国際会議での発表など、顕著な研究活動をしているものを対象とし、高分子若手研究者の活発な研究を奨励するとともに、将来、高分子科学の発展のために貢献する人材を育成することを目的として高分子研究奨励賞を制定しています。
*参考:高分子学会ホームページ
■受賞年月日
令和4年5月26日
■研究題目
光機能性桂皮酸を基盤とした高機能バイオベース材料の開発
■研究概要
天然に存在する桂皮酸誘導体の光反応性を利用した、高耐熱、高強度材料の開発並びに光応答材料の研究に取り組んでまいりました。桂皮酸は、光に対して、E-Z異性化と[2+2]環化付加反応の2種類の反応性を有する一方で、それらの2種類の反応制御を通した材料開発の例は少ないです。我々はこれら桂皮酸の光反応性を制御することで、新たな桂皮酸二量体を設計し、高透明性ポリアミドや水溶性ポリイミドへの展開を達成しました。さらに、桂皮酸を主鎖に有したポリエステルを合成し、その光反応性を時間分解赤外分光法により評価することで、桂皮酸の有する2種類の光反応性に基づく変形メカニズムを解明するに至りました。
これらの研究成果は、天然由来物質の利用にとどまらず、新規な光機能性材料の開発に寄与するものであり、高分子研究奨励賞に値するものと認められました。
■受賞にあたって一言
この度、高分子学会より高分子研究奨励賞を頂くことができ誠に光栄に思います。また、本件の選考委員の皆様に深く感謝申し上げます。新たな研究分野を開拓できるように邁進してまいります。研究に関して多くのディスカッションとアドバイスをいただいた金子達雄教授はじめ、これまでにご指導いただいた先生方、先輩方、学生の皆様および研究費のご支援をいただいた関係各所にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。


令和4年7月1日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2022/07/01-1.htmlダイヤモンド中に10兆分の1秒で瞬く磁化を観測 ~超高速時間分解磁気センシング実現に期待~

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国立大学法人筑波大学 国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) |
ダイヤモンド中に10兆分の1秒で瞬く磁化を観測
~超高速時間分解磁気センシング実現に期待~
磁石や電流が発する磁気の大きさと向きを検出するデバイスや装置を磁気センサーと呼びます。現在では、生体中における微弱な磁気から電子デバイス中の3次元磁気イメージングに至るまで、磁気センサーの応用分野が広がりつつあります。磁気センサーの中で最も高感度を誇るのが、超伝導量子干渉素子(SQUID)で、1 nT(ナノテスラ、ナノは10億分の1)以下まで検出可能です。また、ダイヤモンドの点欠陥である窒素−空孔(NV)センターと走査型プローブ顕微鏡(SPM)技術を組み合わせることで、数十nm(ナノメートル)の空間分解能を持つ量子センシングが可能になると期待されています。 このように、従来の磁気センシング技術は感度や空間分解能に注目して開発されてきましたが、時間分解能はマイクロ秒(マイクロは100万分の1)の範囲にとどまっています。このため、磁場を高い時間分解能で測定できる新しい磁気センシング技術の開発が望まれていました。 本研究では、表面近傍にNVセンターを導入したダイヤモンド単結晶に超短光パルスを照射し、それにより10兆分の1秒で瞬く結晶中の磁化を検出することに成功しました。検出感度を見積もると、約35 mT(ミリテスラ、ミリは1000分の1)となりました。また、計測の時間分解能は、超短光パルスにより磁化を発生させたことにより、約100フェムト秒(フェムトは1000兆分の1)となりました。 本研究成果により、NVセンターでは従来困難だった高速に時間変化する磁気のセンシングも可能であることが示され、高い時間分解能と空間分解能を兼ね備えた新たな磁気センシングの開拓につながることが期待されます。 |
【研究代表者】
筑波大学 数理物質系
長谷 宗明教授
北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアル・デバイス研究領域
安 東秀准教授
【研究の背景】
磁石や電流が発する磁気の大きさと向きを検出するのが磁気センサーです。現在では、生体中における微弱な磁気から、電子デバイス中の3次元磁気イメージングに至るまで、磁気センサーの研究開発が進んでいます。磁気センサーには、比較的簡便なトンネル磁気抵抗素子注1)によるものや、超伝導体のリングを貫く磁束の変化を電流で読み取る超伝導量子干渉素子(SQUID)注2)などがあります。その中でも最高感度を誇るのがSQUIDで、1 nT(ナノテスラ)以下の磁場をも検出できるほどです。しかし、超伝導体を用いるSQUIDは電気回路や極低温などの高度な取扱いを要します。このため、近年では、ダイヤモンドの点欠陥である窒素−空孔(NV)センター注3)を用いた磁気センサーの開発が進んでいます。特に、負に帯電したNVスピン状態を利用した全光読み出しシステムが、室温でも動作する量子磁力計として注目されています。また、NVセンターの利用と、走査型プローブ顕微鏡(SPM)注4)技術を組み合わせることで、数十nmの空間分解能注5)で量子センシング注6)を行うことが可能になります。
このように、従来の磁気センシング技術は感度や空間分解能に注目して開発されてきました。その一方で、時間分解能注7)はマイクロ秒の範囲にとどまっています。このため、磁場をより高い時間分解能で測定できる新しい量子センシング技術の開発が望まれていました。
そうした中、NVセンターを高濃度に含むダイヤモンド単結晶膜において、入射された連続発振レーザーの直線偏光が回転することが分かり、ダイヤモンドにおける磁気光学効果が実証されました。NVセンターに関連する集団的な電子スピンが磁化として機能することが示唆されていますが、この手法では時間分解能を高めることができません。他方、逆磁気光学効果、すなわち光パルスで磁気を作り出すという光磁気効果に対するダイヤモンドNVセンターの研究については、行われてきませんでした。しかし、この光磁気効果を開拓することは、ダイヤモンドの非線形フォトニクスの新しい機能性を追求する上で非常に重要です。また、ダイヤモンドNVセンターのスピンを用いた非接触かつ室温動作の量子センシング技術を、高い時間分解能という観点でさらに発展させるためにも、光磁気効果の開拓が必要だと考えられます。
【研究内容と成果】
本研究チームは、フェムト秒(1000兆分の1秒)の時間だけ近赤外域の波長で瞬く超短パルスレーザー注8)を円偏光にして、NVセンターを導入した高純度ダイヤモンド単結晶に照射し、結晶中に発生した超高速で生成・消滅する磁化を検出することに成功しました。
実験ではまず、波長800nmの近赤外パルスレーザー光をλ/4波長板により円偏光に変換し、NVセンターを導入した高純度ダイヤモンド単結晶に励起光として照射しました。その結果、磁気光学効果の逆過程(光磁気効果)である逆ファラデー効果注9)により、ダイヤモンド中に磁化を発生できることを見いだしました(参考図1挿入図)。この磁化が生じている極短時間の間に直線偏光のプローブ光を照射すると、磁化の大きさに比例してプローブ光の偏光ベクトルが回転します。これを磁気光学カー回転と呼びます。磁気光学カー回転の時間変化はポンプープローブ分光法で測定しました(図1)。測定の結果、逆ファラデー効果で生じるダイヤモンド中の磁化は、約100フェムト秒の応答として誘起されることが確かめられました(図2左)。NVセンターを導入していないダイヤモンドでも磁化は発生しますが、導入すると、発生する磁化が増幅されることも明らかになりました(図2右)。
次に、励起レーザーの偏光状態を直線偏光から右回り円偏光、そして直線偏光に戻り、次に左回り円偏光と逐次変化させることで、波長板の角度とカー回転角(θ )の関係を調べました。すると、NVセンターを導入する前の高純度ダイヤモンド単結晶では、逆ファラデー効果を示すsin 2θ 成分および非線形屈折率変化である光カー効果を示す sin 4θ 成分のみが観測されました。一方、NVセンターを導入したダイヤモンドでは、それらの成分に加えて、新規にsin 6θ の成分を持つことが明らかになりました(図3a)。さらに、励起光強度を変化させながら各成分を解析したところ、sin 2θ 成分およびsin 4θ 成分は励起光強度に対して一乗で増加しますが(図3b,c)、新規のsin 6θ の成分の大きさは励起光強度に対して二乗で変化することが分かりました(図3d)。これらのことから、 sin 6θ の成分は、NVセンターが有するスピンが駆動力となり、ダイヤモンド結晶中に発生した非線形な磁化(逆コットン・ムートン効果注10))であることが示唆されました。また、この付加的で非線形な磁化により、図2で観測された磁化の増幅が説明できました。この非線形な磁化による磁場検出感度を見積もると、約35 mT(ミリテスラ)となりました。SQUIDの検出感度には及びませんが、本手法では約100フェムト秒という高い時間分解能が得られることが示されたといえます。
【今後の展開】
本研究チームは、今回観測に成功した光磁気効果を用いた量子センシング技術をさらに高感度化し、ダイヤモンドを用いたナノメートルかつ超高速時間領域(時空間極限領域)での量子センシングに深化させることを目指して研究を進めていきます。今後は、ダイヤモンドNVセンターが駆動力となった逆コットン・ムートン効果を磁気センシングに応用することで、先端材料の局所磁場やスピン流を高空間・高時間分解能で測定することが可能となります。さらに、パワーデバイス、トポロジカル材料・回路、ナノバイオ材料など実際のデバイスの動作条件下で、例えば磁壁のダイナミクスや磁化反転などデバイス中に生じるダイナミックな変化を、フェムト秒の時間分解能で観察できることになり、先端デバイスの高速化や高性能化への貢献が期待されます。
【参考図】
図1 本研究に用いた実験手法 パルスレーザーから出たフェムト秒レーザー光はビームスプリッタでポンプ光とプローブ光に分割され、それぞれ波長板と偏光子を通過した後、ポンプ光は光学遅延回路を経由した後レンズで試料に照射される。プローブ光も同様に試料に照射された後、偏光ビームスプリッタにより分割されて二つの検出器で光電流に変換される。その後、電流増幅された後、デジタルオシロスコープで信号積算される。右上の挿入図は、逆ファラデー効果の模式図を示し、右回り(σ+)または左回り(σ-)の円偏光励起パルスによりダイヤモンド結晶中に上向き(H+)または下向きの磁化(H-)が生じる。なおデジタルオシロスコープでは、下向きの磁化が観測されている。 |
図2 高純度ダイヤモンド(NVなし)およびNVセンターを導入したダイヤモンド(NVあり)における時間分解カー回転測定の結果。赤色および青色の実線はそれぞれ、右回り円偏光、左回り円偏光により励起した実験結果を示す。 |
図3 NVセンターを導入したダイヤモンドにおけるカー回転の解析結果 (a) 下図(青丸)はカー回転角の波長板の角度(θ )に対するプロットである。黒い実線はCsin 2θ + Lsin 4θ による最小二乗回帰曲線(フィット)を示す。上図(赤丸)は下図の最小二乗回帰の残差を示す。太い実線はFsin 6θ による最小二乗回帰曲線(フィット)を示す。また最上部は偏光状態の変化(直線偏光→右回り円偏光→直線偏光→左回り円偏光→直線偏光)を表す。(b) Csin 2θ の振幅Cを励起フルエンスに対してプロットした図。 (c) Lsin 4θ の振幅Lを励起フルエンスに対してプロットした図。(d) Fsin 6θ の振幅Fを励起フルエンスに対してプロットした図。(b)と(c)の実線は一次関数によるフィットを示し、(d) の実線は二次関数によるフィットを示す。 |
【用語解説】
注1)トンネル磁気抵抗素子
2枚の磁性体の間に非常に薄い絶縁体を挟んだ構造(磁性体/絶縁体/磁性体)からなる素子。磁性体は金属であり、電圧を加えると、薄いポテンシャル障壁を通り抜けるという量子力学的なトンネル効果により絶縁体を介したトンネル電流が流れる。各磁性体の磁化の向きが平行な場合と反平行な場合で、素子の電気抵抗が大きく変化する。これをトンネル磁気抵抗効果という。よって、この効果を原理とした素子をトンネル磁気抵抗素子と呼ぶ。
注2)超伝導量子干渉素子(QUID)
超伝導体のリングにジョセフソン接合(二つの超伝導体間にトンネル効果によって超伝導電流が流れるようにした接合のこと)を含む素子を、超伝導量子干渉素子(SQUID)と呼ぶ。リングを貫く磁束が変化すると、ジョセフソン接合を流れるトンネル電流が変化するため、高感度の磁気センサーとして用いられる。
注3)窒素−空孔(NV)センター
ダイヤモンドは炭素原子から構成される結晶だが、結晶中に不純物として窒素(Nitrogen)が存在すると、そのすぐ隣に炭素原子の抜け穴(空孔:Vacancy)ができることがある。この窒素と空孔が対になった「NV(Nitrogen-Vacancy)センター」はダイヤモンドの着色にも寄与し、色中心と呼ばれる格子欠陥となる。NVセンターには、周辺環境の温度や磁場の変化を極めて敏感に検知して量子状態が変わる特性があり、この特性をセンサー機能として利用することができる。
注4)走査型プローブ顕微鏡(SPM)
微小な探針(プローブ)で試料表面をなぞることにより、試料の凹凸を観察する顕微鏡の総称である。細胞やデバイスなどにおいて、分子や原子などナノメートルの構造を観察するのに用いられる。代表的なものに原子間力顕微鏡(AFM)などがある。
注5)空間分解能
近い距離にある2つの物体を区別できる最小の距離である。この距離が小さいほど空間分解能が高く、微細な画像データの測定が可能になる。
注6)量子センシング
量子化したエネルギー準位や量子もつれなどの量子効果を利用して、磁場、電場、温度などの物理量を超高感度で計測する手法のこと。
注7)時間分解能
観測するデータに識別可能な変化を生じさせる最小の時間変化量である。最小時間変化量が小さいほど時間分解能が高く、高速で変化する画像などのデータ識別が可能となる。
注8)超短パルスレーザー
パルスレーザーの中でも特にパルス幅(時間幅)がフェムト秒以下の極めて短いレーザーのことをいう。光電場の振幅が極めて大きいため、2次や3次の非線形光学効果を引き起こすことができる。
注9)逆ファラデー効果
ファラデー効果は磁気光学効果の一種で、磁性体などに直線偏光が入射し透過する際に光の偏光面が回転する現象のことをいう。その際、入射光の伝播方向と物質内の磁化の向きは平行である。逆ファラデー効果はこれとは逆に、円偏光したレーザー光を物質に入射することで、入射した方向に平行に磁化が生じる現象のことをいう。磁性体に限らず、あらゆる物質で生じる非線形光学過程である。
注10)逆コットン・ムートン効果
コットン・ムートン効果は磁気光学効果の一種で、磁性体などに直線偏光が入射し透過する際に、光の偏光面が回転する現象のことをいう。その際、入射光の伝播方向と物質内の磁化の向きは垂直である。逆コットン・ムートン効果は、逆に、磁界が印可された物質に直線偏光のレーザー光を入射した際に、入射した方向に垂直に磁化が生じる現象であり、磁性体などで生じる高次の非線形光学過程である。
【研究資金】
本研究は、国立研究開発法人 科学技術振興機構 CREST「ダイヤモンドを用いた時空間極限量子センシング(JPMJCR1875)」(研究代表者:長谷 宗明)、および独立行政法人 日本学術振興会 科学研究費補助金「サブサイクル時間分解走査トンネル顕微鏡法の開発と応用」(研究代表者:重川 秀実)による支援を受けて実施されました。
【掲載論文】
題 目 | Ultrafast opto-magnetic effects induced by nitrogen-vacancy centers in diamond crystals. (ダイヤモンド結晶中の窒素空孔センターが誘起する超高速光磁気効果) |
著者名 | Ryosuke Sakurai, Yuta Kainuma, Toshu An, Hidemi Shigekawa, and Muneaki Hase |
掲載誌 | APL Photonics |
掲載日 | 2022年6月15日(現地時間) |
DOI | 10.1063/5.0081507 |
令和4年6月16日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2022/06/16-1.html修了生のKulisara Budpudさんらの論文がWILEY社刊行Macromolecular Rapid Communications誌の表紙に採択
修了生のKulisara Budpudさん(令和3年9月博士後期課程修了、サスティナブルイノベーション研究領域、金子研究室)らの論文がWILEY社刊行のMacromolecular Rapid Communications誌の表紙に採択されました。
■掲載誌
Macromolecular Rapid Communications, Volume 43, Issue 11 (2022)
掲載日2022年6月7日
■論文タイトル
Super-Moisturizing Materials from Morphological Deformation of Suprapolysaccharides
■著者
Kulisara Budpud, Kosuke Okeyoshi*, Shoko Kobayashi, Maiko K Okajima, Tatsuo Kaneko*
■論文概要
サスティナブルイノベーション研究領域、金子研究室の修了生ブッドプッド クリサラさん、桶葭興資准教授、金子達雄教授らは、多糖の形態不安定性、特に、水中環境の変化に応じたミクロンファイバー状と微粒子状の可逆的な自己集合/分解を発見した。また、内部に架橋点が導入された微粒子は、空気中で超保湿マテリアルとして振る舞う。天然由来の多糖をナノメートルスケールから再組織化させたことも意義深い。持続可能な社会の構築に向け、光合成産物の多糖を先端材料化することは重要である。
参考
論文詳細:https://doi.org/10.1002/marc.202200163
表紙詳細:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/marc.202270029
令和4年6月14日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2022/06/14-1.html