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研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。生命機能工学領域の藤本研究室の論文が英国王立化学会刊行 Organic & Biomolecular Chemistry誌の表紙に採択
生命機能工学領域の藤本研究室の論文が、英国王立化学会刊行 Organic & Biomolecular Chemistry誌の表紙に採択されました。
■掲載誌
Organic & Biomolecular Chemistry (Royal Society of Chemistry, IF = 3.564)2017年 5109-5111頁
■著者
Shigetaka Nakamura(助教)、Yang Hui (M2)、Chihiro Hirata、Fluorian Kersaudy、Kenzo Fujimoto(教授)
■論文タイトル
Development of 19F-NMR chemical shift detection of DNA B-Z equilibrium using 19F-NMR
(19F-NMRを用いたDNA B-Z構造転移の19F-NMRケミカルシフトの開発)
■内容等
細胞内での核酸構造は生命機能と密接に関係することが報告されており、その解析手法について様々な手法が報告されている。今回、高い生体透過性と尖鋭性を有するフッ素核磁気シグナルに注目し、DNAのB-Z構造変化をトリフルオロメチルシチジンやトリフルオロメチルチミジンを組み込んだDNAを用いる事により、フッ素核磁気シグナルの変化から定量的に検出できることを明らかにした。また、1本鎖状態のDNAも識別することが可能であり、従来の光学的手法と比較しても大幅な検出時間の短縮が可能である。今後、従来は困難であった細胞内の核酸構造検出への応用が期待される。
詳細: http://pubs.rsc.org/en/Content/ArticleLanding/2017/OB/C7OB00706J#!divAbstract

平成29年7月25日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2017/07/25-1.html多糖が自らパーティション -光合成産物の多糖が乾燥下、センチメートルスケールの3次元空間を認識-
多糖が自らパーティション
-光合成産物の多糖が乾燥下、センチメートルスケールの3次元空間を認識-
PRポイント
- 「多糖が乾燥環境下、3次元空間を認識することを世界で初めて発見」
- 「乾燥によって析出した多糖の薄膜はナノメーターから階層的に整った構造で、新たなバイオマテリアルの設計手法が期待」
- 「天然高分子への展開」:今回、淡水性シアノバクテリア由来の多糖類を使用したin vitro実験によって新現象が確認されており、今後、他の多糖や天然高分子などでも展開を検討
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北陸先端科学技術大学院大学(学長・浅野哲夫、石川県能美市)、環境・エネルギー領域の桶葭興資助教、金子達雄教授らは、シアノバクテリア由来の多糖が自ら乾燥環境でセンチメートルスケールのパターンを形成することを発見した。多糖と乾燥環境は自然界で密接な関係にあり、今回のin vitro実験で「多糖が空間を認識する能力」が実証されただけでなく、簡便な乾燥によってバイオマテリアルの新たな設計手法が見出されると期待される。 自然界では熱帯魚の縞模様や巻貝のらせんなど様々な幾何学模様がセンチメートル以上のスケールで存在し、パターン発生原理の議論は歴史的研究の一つである。例えば、人工的に化学物質を選択してチューリングパターンやベローソフ・ジャボチンスキー反応など、パターン発生原理の研究が世界的に何世紀にも渡ってなされてきた。しかし、「自然界にある物理化学的な条件を再現して人工的にパターンを制御すること」はこれまで困難を極めていた。 これに対して研究チームは今回、シアノバクテリア由来の多糖が乾燥環境下、センチメートルスケールで空間分割パターンを形成することを発見した。多糖の水溶液を狭い間隙の制限空間から乾燥させると、1つの空間を複数の空間に分けるように多糖が析出する(図)。蒸発時、多糖は気液界面を増加させようとして界面を分割して薄膜として析出した。このように空間がパーティション化される現象はin vitro実験で確認されたもので、自然環境の多糖が乾燥と常に対面していることと密接に関係する。特に、今回使用した多糖は、シアノバクテリアが光合成によって生み出したサクランという生体適合性に優れた物質を用いているため、再生医療用材料としても有望である。
本成果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」誌に7/21午前10時(英国時間)オンライン版で公開された。 |
<論文情報>
掲載誌:Scientific Reports
論文題目:Emergence of polysaccharide membrane walls through macro-space partitioning via interfacial instability.
著者:Kosuke Okeyoshi, Maiko K. Okajima, Tatsuo Kaneko
DOI: 10.1038/s41598-017-05883-z
掲載日:7月21日午前10時(英国時間)にオンライン掲載
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本研究成果は、以下の事業・開発課題によって得られました。 |
<背景と経緯>
建築学で駆使されている3次元的な幾何構造は、自然対数を利用した橋の設計など自然界と調和した形状である。材料学においても自然界と調和する幾何形状や規則性の制御によって新しい材料設計方法が期待され続けている。しかし、「自然界にある物理化学的な条件下を再現して人工的に幾何学パターンを制御すること」はこれまで困難を極めていた。
自然界では熱帯魚の縞模様や巻貝のらせんなど様々な幾何学模様がセンチメートル以上のスケールで存在し、パターン発生の議論は歴史的研究の一つである。例えば、人工的に化学物質を選択してチューリングパターン注1)やベローソフ・ジャボチンスキー反応注2)など、パターン発生原理の研究が世界的になされてきた。さて、生物の体表などのパターンはなぜできるのか?遺伝子?天気?それとも..?果たして「人工的な実験」で、「ビーカーの中」で、科学によって再現できるのか?
<今回の成果>
1.乾燥環境下で多糖が3次元空間を認識することを発見(図1)
乾燥環境下、シアノバクテリア注3)由来の多糖注4)がセンチメートルスケールの3次元空間を認識して、自らパーティションとなるように析出膜を形成することを発見した。この現象はin vitro注5)実験で確認されたもので、高粘性の多糖「サクラン」注6)の水溶液を2枚のガラス板に挟まれた間隙の制限空間から乾燥させると、1つの空間を複数の空間に分けるように多糖が析出する。
初期状態:間隙1 mmの上面開放型セルに多糖の水溶液を満たす。セルの幅をセンチメートルスケールで様々に変えて乾燥実験を行った。
乾燥過程:セルの幅が0.7 cm 程度であると、2枚のガラス板を橋掛けするような析出膜は形成されず、底に析出するだけであった。これに対して、1.5 cm 容器の幅を広げると、2枚のガラス板を橋掛けするような析出膜が形成された。高分子のサイズからすれば、1 mm の間隙は著しく大きいにもかかわらず、橋掛けできることは驚異に値する。これは、多糖が自己集合的に20 µm以上の長さのファイバー状となっていることが関係する。さらにセルの幅を広げると垂直に析出する膜の数は増え、3次元空間が複数に分けられた。幅が10 cmの場合でもこの現象は確認され、多糖が乾燥時に自らパーティションとなる析出膜を形成し、センチメートル空間を認識可能であることを裏付けている。
2.垂直に析出した膜は、高分子がナノメータースケールから3次元的に揃っている(図2)
さらに、この析出膜を偏光顕微鏡や電子顕微鏡で観察すると、2枚のガラス板を結ぶ方向に、高分子が整然と揃っていることが判明した。多糖の水溶液を乾燥するだけで高分子が3次元的に方向制御されることは極めて驚異である。
この析出膜に架橋構造を導入したあと水に再び戻すと、遮光用ブラインドのように一方向に大きく伸びる。図2中の青いまま伸びている様子は、高分子の3次元的な整列を保ったまま一方向に伸びていることを示す。
なお、研究チームはこれまでにも、層状構造を持つ膜から一次元膨潤するゲルの作製に成功している。今回の新たな膜作製技術と合わせてバイオマテリアルへの応用が期待できる。
<今後の展開>
パーティション現象を他の天然高分子へ展開
物理化学的な条件と幾何学的な条件を整えることで、他の多糖や高分子へ展開可能である。特に「乾燥環境」に注目して、パターンの形成法則を系統的に解明することで、陸上進出する多糖の進化を紐解けるかもしれない。
パターンが多糖で構成されているため、新たなバイオマテリアル設計手法が期待される
センチメートル以上の空間パターンを自発的に形成する構造には、リーゼガング現象やチューリング現象など自己組織化による「散逸構造」が挙げられる。しかしこれらの現象は、生体が存在し得る自然界の物理化学条件から遠く離れた環境でのみ可能で、材料分野への適用は困難を極めていた。
一般に、多糖、DNAおよび骨格タンパク質などの剛直な生体高分子はナノメートルやマイクロメートルスケールのパターンを形成することが知られている。ポリペプチドのαヘリックスやβシート、DNAの螺旋構造はその代表例である。これに対して研究チームが発見したパーティション現象は、光合成産物の多糖を使って発見したセンチメートルスケールの空間パターンであり、散逸構造を用いた材料学の道が一気に開かれる。さらに、DDSなど医療用材料に期待の大きい多糖を使用していることから、臓器の再生医療などに向けた新たな材料設計手法として有望である。

図1. 多糖の乾燥実験とパーティション現象
A. 上面開放型セルから多糖の水溶液を乾燥させる実験の概念図。
B. 様々な幅からの乾燥過程を2枚の偏光子を介して観察した画像。白色部分は高分子が配向している(揃っている)。
C. 幅10 cmの上面開放型セルから乾燥させたあとに現れる空間分割パターン。

図2. 析出した垂直膜の顕微鏡観察と瞬時に一方向へ膨らむゲル
乾燥実験後に析出した垂直膜を特殊な光学フィルターが入った偏光顕微鏡で観察すると、2枚のガラス板を結ぶ方向に高分子が整然と配向していることが分かる。さらにこの乾燥した膜を水にもどすと、「窓のブラインド」のように瞬時に一方向へ膨らむことが分かった。
<用語解説>(Wikipedia より)
注1)チューリングパターン:
イギリスの数学者アラン・チューリングによって1952年に理論的存在が示された自発的に生じる空間的パターンである。
注2)ベローソフ・ジャボチンスキー反応:
系内に存在するいくつかの物質の濃度が周期的に変化する非線型的振動反応の代表的な例として知られている。この反応などの振動反応は平衡熱力学の理論が成り立たない非平衡熱力学分野の代表例である。
注3)シアノバクテリア:
ラン藻細菌のこと。光合成によって酸素と多糖を生み出す。
注4)多糖:
グリコシド結合によって単糖分子が多数重合した物質の総称である。デンプンなどのように構成単位となる単糖とは異なる性質を示すようになる。広義としては、単糖に対し、複数個(2分子以上)の単糖が結合した糖も含むこともある。
注5)in vitro:
"試験管内で"という意味で、試験管や培養器などの中でヒトや動物の組織を用いて、体内と同様の環境を人工的に作り、薬物の反応を検出する試験のことを指す。in vitroの語源はラテン語で「ガラスの中で」という意味。
注6)サクラン:
硫酸化多糖類の一つで、シアノバクテリア日本固有種のスイゼンジノリ (学名:Aphanothece sacrum) から抽出され、重量平均分子量は2.0 x 107g/mol とみつもられている。
平成29年7月21日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2017/07/21-1.html「天然繊維に新風、保湿性抜群 超!しっとり新繊維"サク・レ"」を開発 -日本固有バイオマスからの新機能繊維-
「天然繊維に新風、保湿性抜群 超!しっとり新繊維"サク・レ"」を開発
-日本固有バイオマスからの新機能繊維-
ポイント
- 従来の機能性繊維には乾燥肌には痒みを与えるなどの問題点があった
- 独自の技術でサクランとレーヨンを混合紡糸することに成功
- 新繊維は従来のレーヨン繊維の抱水率を遥かに上回る抱水性・保湿性を示すことが分かった
- サクランの導入によりレーヨンの表面構造が変化することを発見
- 新機能繊維として高い保湿性能を持つ「しっとり」とした下着やベビー服の実用化へ期待
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北陸先端科学技術大学院大学(JAIST、学長・浅野哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科/環境・エネルギー領域の金子達雄教授らは、グリーンサイエンスマテリアル株式会社(GSM、社長金子慎一郎、熊本県熊本市)およびオーミケンシ株式会社(社長石原美秀、大阪市中央区)とともに、レーヨンに日本固有種微生物スイゼンジノリから抽出される超高分子サクラン(発見者:岡島麻衣子研究員)を練り込む独自技術を開発し、従来のレーヨンより抱水性を26%も向上させる新素材の作製に成功しました。伊藤忠商事子会社の株式会社ロイネ(社長・木下昌彦、大阪府箕面市)が主に乾燥肌・ベビー向け下着として製品化・販売を目指します。 ![]() ![]() 写真 サク・レ(左:実体像、右:走査型電子顕微鏡像「レーヨンのスムーズな表面がサクランでおおわれている」) そこで、衣料品製造販売会社のロイネがこのサク・レ30%と綿混紡ベア天竺を試作したところ、その吸放湿性は綿ベア天竺よりも20%高まることが分かりました。この吸放湿性は肌と衣服間の保湿性と関係するため、サク・レを用いることで高い保湿性能を持つ「しっとり」とした下着やベビー服の実用化を目指します。肌と接触する衣類の保湿性は快適な着心地の実現のため非常に重要であるため、サク・レは、今後特に乾燥肌や肌の弱い乳幼児の中でニーズが高まると期待されます。 |
<開発の背景と経緯>
藻類などの植物体に含まれる分子を用いて得られるバイオマス注1)材料の中には、材料中にCO2を長期間固定できるため、持続的低炭素社会の構築に有効であるとされています。北陸先端科学技術大学院大学の研究チームはこれまで、淡水性の藍藻であるスイゼンジノリから高保湿力を持つ繊維質である超高分子「サクランTM」注2)を開発してきました。
近年、従来化学繊維を改良することで開発される新機能繊維が注目され我々のQOL向上に役立っています。しかし化学繊維は敏感肌や乾燥肌の痒みの原因となる場合もあり天然素材、例えば綿やレーヨン注3)、シルク等の優れた保湿性能が見直されています。しかし、従来のレーヨンの保湿力は限界があり、これが下着や裏地に使用された場合、乾燥肌や敏感肌の方々に更に心地よく着用してもらうためには保湿力向上の改善が望まれています。
<作製方法>
「セルロースをビスコース法で溶解した原液に独自技術でサクランを混合し、レーヨン繊維にサクランを練り込みます。
<今回の成果>
レーヨン繊維にサクランを練り込む条件の最適化を行い混紡糸を作製しました。これにより、レーヨン繊維の表面構造がサクランの導入により変化し、ナノスケールの凹凸が発生していることが走査型電子顕微鏡注4)により分かりました(参考図1)。これから、もともとスムーズであったレーヨンの表面にサクランが存在していることが確認できます。さらに、このサク・レ(0.1%)に水を少量添加したところ水を2.78倍程度吸収することが偏光顕微鏡注5)観察により分かりました。この値はレーヨンのみの観察結果2.16倍と比較すると、サクラン添加により28%程度吸水量が向上したということとなります(参考図2)。
実際に、従来のレーヨン繊維の抱水率を遥かに上回る抱水性・保湿性を持つことが分かりました。またサクランはレーヨン繊維中に練り込まれているためレーヨン繊維の持つ独特なソフトな風合いは損なわれず、かつサクランの超保水機能によって、従来品より遥かにしっとりとした感触が付与され、洗濯耐久性も維持されました。そこで、衣料品製造販売会社のロイネがこのサク・レ30%と綿混紡ベア天竺を混編したところ、その吸放湿性はベア天竺よりも20%高まることが分かりました。
<今後の展開>
この吸放湿性は肌と衣服間の保湿性と関係するため、サク・レを用いることで高い保湿性能を持つ「しっとり」とした下着やベビー服の実用化を目指します。肌と接触する衣類の保湿性は快適な着心地の実現のため非常に重要であるため、サク・レは、今後特に乾燥肌や肌の弱い乳幼児の中でニーズが高まると期待されます。
<参考図>
![]() |
| サク・レの実体像 |
| 従来レーヨン | 0.1% サクラン+レーヨン |
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図1 サク・レの走査型電子顕微鏡像 レーヨンのスムーズな表面(左図)がサクランでおおわれている(右図)
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図2 サク・レの偏光顕微鏡像 水添加により繊維の直径が平均約15ミクロン(左図)から平均約25ミクロン(右図)に増加したことが分かる。また、水添加後も分子配向による繊維の着色が維持されていることが分かる。
<用語説明>
注1)バイオマス(例 スイゼンジノリ)
生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、一般的には「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」をバイオマスと呼ぶ。本研究で取り扱ったスイゼンジノリ(ラン藻の一種であり学名はAphanothece sacrum)は日本固有のバイオマスの一種であり、世界でも極めて希な食用ラン藻である。また、スイゼンジノリは江戸時代から健康維持のために食され、当時は細川藩および秋月藩における幕府への献上品とされてきた。大量養殖法が確立されている。
注2)サクラン
スイゼンジノリが作る寒天質の主成分である。硫酸化多糖類の一つでスイゼンジノリから水酸化ナトリウム水溶液により抽出される。サクランの重量平均絶対分子量は静的光散乱法で2.0 x 107 g/mol と見積もられている。現実的には原子間力顕微鏡によりサクラン分子が13μm の長さを持つことが直接観察されている。天然分子で10μm 以上の長さにも達するものを直接観察した例はこれが初めてとされる。サクランという名称はスイゼンジノリの種名の語尾を多糖類の意味の "-an" という接尾後に変換したもので、北陸先端科学技術大学院大学の岡島麻衣子によって発見され名付けられた。現在もその金属吸着性や高保水性などに関する研究が進められており、吸水高分子として応用が進められている。
注3)レーヨン
絹に似せて作った再生繊維であり光線(英:ray)と綿 (cotton) を組み合わせた言葉である。パルプなどのセルロースを水酸化ナトリウムなどのアルカリと二硫化炭素に溶かしてビスコースにし、酸の中で紡糸(湿式紡糸)して製造する。ポリエステルなど石油を原料とした化学繊維と異なり、加工処理したあと埋めると土に還る。そのため、レーヨン自体は環境に負荷をかけない繊維とされる。絹に似た光沢・手触りが特徴。洋服の裏地などに用いられる。
注4)走査型電子顕微鏡
電子顕微鏡の一種。電子線を絞って電子ビームとしてサンプルに照射し、そこから放出される二次電子、反射電子等を検出する事でサンプルの表面の構造を微細に観察できる。細い電子線で試料を走査(scan)し、電子線を当てた座標の情報から像を構築して表示する。観察試料は高真空中(10-3Pa以上)に置かれ、この表面を電界や磁界で絞った電子線(焦点直径1-100nm程度)で走査する。走査は直線的だが、走査軸を順次ずらしていくことで試料表面全体の情報を得る。
注5)偏光顕微鏡
光学顕微鏡の一種。試料に偏光を照射し、偏光および複屈折特性を観察するために用いられる。偏光特性は結晶構造や分子構造と密接な関係があるため、鉱物学や結晶学の研究で多く用いられる。他、高分子繊維の研究などにも用いられる。一般には特定方向に偏波させることのできる二枚のフィルター(偏光板)をお互いに直交させて使用する。これにより光は通らなくなるが、屈折率に方向依存性のある高分子繊維などが二枚の偏光板の間に存在すると、この高分子繊維だけが観察可能となる。さらに、特殊なカラーフィルターを組み合わせることで高分子繊維内部の分子配向の方向を色調変化により判定することが可能となる。
平成29年7月7日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2017/07/07-1.html「BIO tech 2017 内 第14回アカデミックフォーラム」に出展
6月28日(水)~30日(金)の3日間、東京ビッグサイト(東京都江東区有明)にてバイオ・ライフサイエンスに係る大規模展示会「BIO tech 2017(第16回バイオ・ライフサイエンス研究展)」が開催され、同展示会内で催された「第14回アカデミックフォーラム」に、本学から生命機能工学領域の藤本健造教授及び平塚祐一准教授が出展しました。
藤本教授はUFC(超高速光架橋)法を用いた核酸類操作について、平塚准教授はモータータンパク質で駆動するマイクロロボットの開発について、ポスター発表を行いました。2日目には藤本教授、平塚准教授ともに口頭発表も行い、訪れた聴講者で本学ブースは賑わいを見せていました。
ポスター発表は3日間通しで行われ、本学ブースには企業や大学、公的研究機関から約200名の方々が訪れました。本学展示説明者は、展示した研究成果について資料を用いながら説明し、来訪者と活発な情報交換を行っていました。

藤本教授

平塚准教授

本学出展ブースにて来訪者へ説明・情報交換等を行う様子
平成29年7月7日
https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2017/07/07-1.html学生のLe Cong DuyさんがThe 9th International Conference on Molecular Electronics and Bioelectronics においてBest Paper Awardを受賞
学生のLe Cong Duyさん(博士前期課程2年、応用物理学領域・村田研究室)がThe 9th International Conference on Molecular Electronics and BioelectronicsにおいてBest Paper Awardを受賞しました。
The 9th International Conference on Molecular Electronics and Bioelectronics (M&BE9) has been organized by the Japan Society of Applied Physics (JSAP) since 2001. Topics of this conference are basic studies such as fabrication and characterization of thin films, interfacial phenomena, spectroscopy, and single-molecule manipulations, as well as application-oriented studies, related to LEDs, FETs, solar cells, memory devices, biochips, biosensors.
There were 224 authors in the poster session and 14 authors were selected for the Best Paper Award.
■受賞年月日
平成29年6月27日
■タイトル
Significant Lifetime Enhancement of Organic Light Emitting Diodes by Removing Residual Water during Device Fabrication.
■概要
The degradation of Alq3-based organic light emitting diodes (OLEDs) can be attributed to the residual gas striking to substrates during the fabrication process. In this study, to further evacuating the residual gas in an evaporation chamber, non-evaporable getters (NEG) pumps were added along with tandem turbo molecular pumps (TMPs). We demonstrate fivefold and twofold enhancement in the short- and long-term stability of the device fabricated with a combination of TMPs and NEGs, respectively. Surprisingly, almost no change in operation voltage in the OLED-NEG after the 500 h operation was observed. This suggests that voltage increase due to charge trapping is not the origin of either the short-term or long-term degradation of Alq3-based OLEDs.
■受賞にあたって一言
I'm honored to receive the Best Poster Award in 9th International conference Molecular Electronics and Bioelectronics (M&BE9, Kanazawa 2017). It was such a great opportunity for me not only to get updated the latest research in my field of organic light emitting diodes, but also to broaden my view to other interesting fields such as bioelectronics and solar cells. I would like to express my gratitude to Prof. Hideyuki Murata and Asst. Prof. Heisuke Sakai for their constant supervision. In addition, thanks to all members in Murata laboratory for always being collaborative and supportive.

平成29年7月7日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2017/07/7-2.html学生の芳本さんがEM-NANO2017においてポスター賞を受賞
学生の芳本祐樹さん(博士後期課程3年、環境・エネルギー領域・下田研究室)がThe 6th International Symposium on Organic and Inorganic Electronic Materials and Related Nanotechnologies (EM-NANO2017)においてポスター賞を受賞しました。
International Symposium on Organic and Inorganic Electronic Materials and Related Nanotechnologies (EM-NANO) は2、3年に一度開催される「有機・無機電子材料とナノテクノロジーに関する国際シンポジウム」であり、応用物理学会主催の国際会議で、国内外から最先端の研究者・技術者の方々が参加する国際的な研究発表および情報交換の場となっています。ポスター形式の発表ではデザイン、内容、質疑応答などにおいて優れているものに対してポスター賞を進呈しています。
■受賞年月日
平成29年6月21日
■タイトル
Study on low temperature solution processed Indium oxide using ultraviolet annealing
■概要
紫外線照射は酸化物ゲルを固体化させる有効な手段であることがわかっている。液相プロセスによる機能性薄膜を急速に発展するフレキシブルエレクトロニクスへの応用を可能にするために、紫外線照射を用いて機能性酸化物薄膜の低温形成に取り組んだ。また、材料系を低温形成用に設計し紫外線照射による焼成補助プロセス「紫外線照射アニール」を開発した。この最適化した材料系と紫外線照射アニールの組み合わせによりり200℃程度のプロセス温度で高性能なインジウム酸化物薄膜の形成に成功した。
■受賞にあたって一言
この度、EM-NANO2017におきまして、Student Paper Awardを頂き大変光栄に思います。本研究を進めるにあたり熱心にご指導を頂きました下田達也教授にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。また、多くのご助言を頂きましたシングルナノイノベーティブデバイス研究拠点のメンバーおよび研究室のメンバーにも深く感謝いたします。

平成29年7月7日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2017/07/7-1.html最高水準のリチウムイオン輸率を示す液状電解質の開発に成功 ― 次世代高容量電極への活用に期待 ―
最高水準のリチウムイオン輸率を示す液状電解質の開発に成功
― 次世代高容量電極への活用に期待 ―
ポイント
- 高イオン伝導度と0.9以上の高リチウムイオン輸率を併せ持つ高性能リチウムイオン輸送性電解質の開発に成功した。
- 本電解質は電気化学的安定性においても優れ、実際にハーフセル(Li/電解質/Si)を構築し充放電試験を行ったところ、可逆的な充放電挙動と共に非常に高い放電容量(>2500mAh/g)を示した。
- 安全志向の高性能電解液として、リチウムイオン2次電池のみならず広範な蓄電デバイスへの応用が期待される。
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北陸先端科学技術大学院大学 (JAIST) (学長・浅野哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科物質化学領域の松見紀佳教授、ラーマン ヴェーダラージャン助教らはリチウムイオンを90%以上高選択的に輸送する液状電解質の開発に成功した。 |
<今後の展開>
セル構成や充放電条件を最適化し、最も優れた特性を有する蓄電デバイスの創出に結びつける。
安全志向の高性能電解液として、リチウムイオン2次電池のみならず広範な蓄電デバイス(リチウムイオンキャパシタ、マグネシウム電池、金属―空気電池等)への応用が見込まれる。

図1.
(a) イオン液体/メシチルジメトキシボラン体積比とリチウムイオン輸率の関係
(b) イオン液体/メシチルジメトキシボラン系(v/v = 1/2)の直線走査ボルタモグラム
(c) Li/電解質/Si型セル[1-アリル-3メチルイミダゾリウム FSI/メシチルジメトキシボラン(v/v = 1/2)]の充放電曲線 (0.3 C)
(d) Li/電解質/Si型セル[1-アリル-3メチルイミダゾリウム FSI/メシチルジメトキシボラン(v/v = 1/2)]の充放電における各サイクルのクーロン効率
<用語説明>
リチウムイオン2次電池:
電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う2次電池。従来型のニッケル水素型2次電池と比較して高電圧、高密度であり、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車に適用されている。
リチウムイオン輸率:
系内におけるすべてのイオン種の移動において、リチウムイオンが移動する割合。系内を移動するイオンがすべてリチウムイオンである場合には1となる。
電位窓:
電解質材料を安定に使用可能な電位の範囲。電池の作動電圧よりも広い電位窓を有する電解質が求められる。高電圧の電極系の発達に伴い、より広い電位窓を示す電解質材料が求められつつある。
平成29年7月4日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2017/07/04-1.html学生の平田さんが第66回高分子学会年次大会において優秀ポスター賞を受賞
学生の平田雄大さん(博士前期課程2年、物質化学領域・松見研究室)が第66回高分子学会年次大会において優秀ポスター賞を受賞しました。
高分子学会年次大会優秀ポスター賞は高分子学会年次大会で優れたポスター発表を行った発表者を表彰し、さらなる研究発表を奨励しつつ高分子科学ならびに高分子学会の発展に資するために設けられています。高分子学会年次大会の運営委員会内に優秀ポスター発表賞の選考委員会が設置されており、発表の予稿原稿をもとに第一次審査、ポスター発表をもとに第二次審査が行われ、選考委員会の審議により受賞者が決定されます。
■受賞年月日
平成29年6月21日
■ポスタータイトル
RuOxおよびWOxを複合させたTiO2ナノチューブを用いた光電気化学的水分解
■ポスター概要
水素エネルギーは発電時のエネルギー変換効率が高く、燃料として使用してもCO2などの温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギーとして注目されています。しかし、水分解に必要な反応開始電圧が高いため、広範な実用化には未だ至っていません。本研究では陽極に合成したTiO2ナノチューブ上にRuOxおよびWOxを同時に担持させることで効率的な電荷分離を促進させ、より反応開始電圧の低い光触媒電極の開発に成功しました。
■受賞にあたって一言
この度は高分子学会年次大会におきまして、このような栄誉ある賞を頂き大変嬉しく思います。本研究において熱心にご指導して頂いた松見教授、Raman助教、ならびに研究室の皆様に深く感謝いたします。


環境エネルギー領域の金子教授がドイツ・イノベーション・アワードにおいてゴットフリード・ワグネル賞を受賞
環境エネルギー領域の金子達雄教授がドイツ・イノベーション・アワードにおいてゴットフリード・ワグネル賞を受賞しました。
ドイツ・イノベーション・アワード「ゴットフリード・ワグネル賞」は、2008年、日本の若手研究者の支援と日独間の産学連携を進めることを目的として、技術革新を重視するドイツ企業と在日ドイツ商工会議所により創設されました。この賞は 1868年に来日し、日本の科学界と教育界に大きな足跡を残したドイツ人科学者、ゴットフリード・ワグネル(1831-1892)にちなんで始まりました。本賞は、スポンサーのドイツ企業と在日ドイツ商工会議所が共催し、日独の多くの研究 ・助成機関および政府機関による協力と後援に支えられています。また、ドイツ連邦共和国大使館、ドイツ連邦教育研究省をはじめ、ドイツ科学・イノベーションフォーラム東京、ドイツ学術交流会、ドイツ研究振興協会、フラウンホーファー研究機構、国立研究開発法人科学技術振興機構、独立行政法人日本学術振興会からの支援を受けています。
本賞の受賞者は、共催企業の技術専門家による予備審査の後、大学学長レベルの常任委員と専門委員から構成される選考委員会において審査し、決定しています。 創設以来、8年間で36件の日本の大学・研究機関に所属する45歳以下の研究グループに授与されました。材料、デジタル化とモビリティ、エネルギー、ライフサイエンスの分野における革新的で創造的な解決策を提案する応用研究を対象としています。
今回は、全国の大学・研究機関から、合計68件の応募がありました。企業及び大学関係の専門家による書面審査で7名の最終候補者の絞り込みが行われ、2017年5月17日に開催された最終審査会でインタビューによって、各研究領域から1人、合計4人の受賞者が決定されました。
■受賞年月日
平成29年6月19日
■研究テーマ
エキゾチックなアミノ酸を用いた高熱力学性能を持つ透明バイオプラスチックの開発
■研究概要
輸送機器インフラの部品軽量化に、軽くて強く、耐熱性も高い新素材が待望されている。持続可能な社会を構築するため、天然分子から作る安価なバイオプラスチックへの期待は大きいが、通常は軟らかくて分解しやすく、使い捨て製品など、用途は限られている。また、強化剤の添加などで白濁化が進み、透明にならない弱点もある。これらの課題を解決するため、受賞者らは天然分子の特徴を生かす新しい「バイオマス高分子科学」を展開した。堅い化学構造を持つ香辛料のシナモンに似たエキゾチック(風変わり)なアミノ酸の4-アミノ桂皮酸に注目して、高熱力学性能と透明性が両立するように分子設計をした。まず、このアミノ桂皮酸の合成遺伝子を大腸菌に組み込み、安価に大量生産できることを示した。それから光反応と重縮合で、シクロブタン環が2つのベンゼン環で挟まれたトルキシル酸という骨格を形成した。この骨格は、剛直性を保ちながらも、シクロブタン環のわずかな屈曲部位が「分子バネ」として働き、強度が飛躍的に向上した。この骨格からなる高分子のバイオプラスチックは透明で、ガラスの3倍の強度を示した。透明樹脂の中では最も高い強度と考えられる。さらに、熱分解温度もセ氏425度と高かった。これを用いた透明メモリー素子も作製した。
■受賞にあたって一言
若手中堅研究者の登竜門とも言えるGerman Innovation Awardの受賞に驚きと喜びが入り混じっています。これは生物学者である筑波大学の高谷教授のご支援無くしては成しえなかったことですのでこの場を借りて御礼申し上げます。また長年ご支援と叱咤激励いただきましたJST ALCAの関係者の皆様方にも感謝申し上げます。さらに、共に分子設計に取り組んできた連名受賞者の立山博士および本学の宮里技術職員に感謝申し上げます。バイオプラスチックの分野は社会的意義は既に認められていますし、ドイツをはじめ欧州では特に重要視されています。しかし、日本ではその価値は思いのほか低く見なされているのが現状です。今回の権威あるアワードを通じてバイオプラスチックがinnovativeな新機能物質を創出するための重要な概念であることが日本で再認識されればと思っております。さらに、世界中で安全なプラスチックが生産されつづけることを期待いたします。最後に常にサポートして下さった本学のスタッフの方々ならびに諸先生方、また研究室の学生・スタッフの皆様方に心より感謝申し上げます。


平成29年6月20日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2017/06/20-1.html環境・エネルギー領域の桶葭助教らの開発した技術が米国ビデオ誌JoVEにて紹介
環境・エネルギー領域の桶葭興資助教らの開発した技術が米国ビデオ誌JoVEにて紹介されました。
■掲載誌
Journal of Visualized Experiments (JoVE) 2017, 122, e55274.
■著者
Kosuke Okeyoshi*, Kensuke Osada, Maiko K. Okajima, Tatsuo Kaneko
■タイトル
Methods for the self-integration of megamolecular biopolymers on the drying air-LC interface
■概要
米国マサチューセッツ州のビデオ誌において、著者らが開発した偏光システム導入型の光学的観察法が取り上げられた。実験デモンストレーションとして、乾燥環境下にある生体高分子の水溶液が気液界面で自己配向・自己集積する様子が紹介されている。液晶性を示す生体高分子(天然多糖類、骨格タンパク質、DNAなど)水溶液の蒸発面と垂直な方向から光学的に観察する技術を構築することで、集積の経時変化を可視化することに成功している。この技術によって、生体高分子の乾燥環境下にあるユニークな振る舞いを理解できるだけでなく、人工的な材料の設計指針が得られると期待される。
参考: https://www.jove.com/video/55274/methods-for-self-integration-megamolecular-biopolymers-on-drying-air

平成29年5月25日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2017/05/25-2.html環境・エネルギー領域の桶葭助教、金子教授らの研究成果が米国化学会刊行Langmuir誌の表紙に採択
環境・エネルギー領域の桶葭興資助教、金子達雄教授らの研究成果が米国化学会刊行Langmuir誌の表紙に採択されました。
■掲載誌
American Chemical Society, Langmuir 2017, 33, 4954 - 4959.
■著者
Kosuke Okeyoshi*, Gargi Joshi, Sakshi Rawat, Saranyoo Sornmkamnerd, Kittima Amornwachirabodee, Maiko K. Okajima, Mayumi Ito, Shoko Kobayashi, Koichi Higashimine, Yoshifumi Oshima, Tatsuo Kaneko*
■論文タイトル
Drying-induced self-similar assembly of megamolecular polysaccharides through nano and submicron layering
■論文概要
超高分子量の天然多糖類水溶液を乾燥させると、気液界面を利用してナノメータースケールとサブミクロンスケールで自己相似的に層構造を形成することが立証された。ここでは、分子スケールからミリスケールに至る階層的な構造形成が面状の気-液晶界面で誘起されることが電子顕微鏡観察法と偏光観察法により明らかになった。今回解明された多糖類サクランの階層構造を活用することで、電気、光学、細胞工学など多分野における新規材料の創製が期待される。
■採択にあたって一言
本研究を遂行するにあたり、応用物理学領域の大島義文准教授はじめ、ナノマテリアルテクノロジーセンター伊藤真弓研究員、小林祥子研究員、東嶺孝一技術専門員に大変お世話になりました。この場をお借りして心より感謝の意を表します。
参考: http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.langmuir.7b00107

平成29年5月25日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2017/05/25-1.html物質化学領域の松村准教授らの研究成果が英国王立化学会発刊の国際学術誌Journal of Materials Chemistry Bのfront coverに採択
物質化学領域の松村和明准教授らの研究成果が英国王立化学会発刊の国際学術誌Journal of Materials Chemistry B (IF:4.872)のfront coverに採択されました。
■掲載誌
Journal of Materials Chemistry B (Royal Society of Chemistry)2017. 5, 3488-3497.
■著者
Monika Patel (D3), Tatsuo Kaneko, Kazuaki Matsumura*
■論文タイトル
Switchable release nano-reservoirs for co-delivery of drugs via a facile micelle-hydrogel composite
■論文概要
ブロックポリペプチドからなるカチオン性およびアニオン性のミセルを混合し、片方のミセルのみを架橋したハイドロゲルを作成した。このとき、別々の薬物をそれぞれのミセル内に封じ込め、ゲルからの薬物の徐放性を評価したところ、pHやゲルの架橋密度、ミセルの組成などにより、二種類の薬物の放出を独立に制御することが可能となった。この技術により、抗菌剤と治療薬を別々のタイミングで放出することで創傷治癒が促進されるなど、デュアルドラッグデリバリーシステムと呼ばれる次世代の薬物治療への応用が期待される。
詳細: http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2017/tb/c7tb00701a#!divAbstract

平成29年5月22日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2017/05/22-1.html研究員のPriyank Mohanさんが日本化学会 第97春季年会において学生講演賞を受賞
研究員のPriyank Mohanさん(平成29年3月博士後期課程修了、物質化学領域・前之園研究室)が日本化学会 第97春季年会において学生講演賞を受賞しました。
日本化学会第97春季年会は、国内最大規模の学術組織である日本化学会(現在の会員数は約40,000名)が毎年3月下旬に開催する年会(参加人数約10,000名、講演約6,000件)の第97回目にあたり、2017年3月16日(木)~19日(日)の日程で慶應義塾大学日吉キャンパスにて開催されました。学生講演賞は、博士後期課程の学生会員を対象とした講演賞であり、「発表内容、プレゼンテーション、質疑応答などにおいて優れた講演で講演者の今後の一層の研究活動発展の可能性を有すると期待されるもの」に対して、厳正なる審査を経て授与されるものです。
■受賞年月日
平成29年3月30日
■論文タイトル
Design of Magnetic-Plasmonic Ternary Metallic Nanoparticles
■論文概要
Magnetic-plasmonic multimetallic nanoparticles (NPs) which incorporate magnetic elements with plasmonic metals have attracted much attention as next-generation bioprobes simultaneously enabling plasmonic bioimaging and magnetic manipulation. Unfortunately, however, integration of Fe with Au (or Ag) is challenging due to the large immiscibility in binary Au-Fe and Ag-Fe systems. Even though much effort has been made to synthesize AuFe alloy or FePt@Au core@shell magnetic-plasmonic systems, most of the literature conflict each other in terms of structure-property relation, and therefore, there still remains several challenges regarding the chemical synthesis of homogeneous alloy NPs without any phase segregation, while in the case of core@shell NPs, inability to coat magnetic core with the plasmonic shell, suppressing the formation of pure Au or Ag NPs is a major challenge.
On the other hand, there are a number of studies which show that, Au or Ag has been included in fcc FePt, as a dopant to lower the annealing temperature required for the transformation from chemically-disordered fcc phase to chemically-ordered L10 phase. On the basis of these previous studies, we designed a synthetic strategy where Pt can be used as mediating element for combining Fe with Au or Ag, to form AuFePt or AgFePt ternary alloy NPs. The work demonstrates new avenues for the creation of multimetallic magnetic-plasmonic NPs and gives new insight into control over the resulting magnetic and plasmonic characteristics.
■受賞にあたって一言
I am very privileged to receive prestigious CSJ Student Presentation Award 2017. I am earnestly grateful to the organizing committee and jury members for recognition of my work because I believe that every other nominee for this award was equally capable of winning it. Besides, by attending this conference I got an opportunity to learn various aspects of cutting edge research presented by diversified peer research groups, which was definitely a phenomenal experience and helped me to improvise and broaden my knowledge in the materials science. Since I have successfully completed my doctoral studies in March 2017, therefore this award becomes more special for me as an acceptance of my research work by the greater global scientific community.
Having been a doctoral student of JAIST, I can safely say that I took correct decisions a few years ago to pursue my studies in this institute. The world-class scientific environment, research facilities, comfortable life and monetary supports granted by JAIST could only be made this success possible, therefore I would like to express my sincere gratitude towards JAIST. I would like to say that this is not just my individual effort, in fact, I would like to make a special mention of my supervisor Professor Shinya Maenosono, who has been my mentor throughout my masters and doctoral studies and stay in Japan. It is him, who saw the capabilities in me and nurtured my passion for pursuing doctoral studies in the materials science. Everyone has the dream to get such a teacher, fortunately, I got mine. Once again my heartfelt thanks to him. At the same, I would also like to take this opportunity to thank Assistant Professor Derrick Mott for his persistent guidance and constant motivation. It is important to mention and thanks, Mr. Koichi Higashimine here, for his valuable effort to help us regarding few of our most crucial measurements, without which our research work cannot be done. Special cheers to all the Maenosono lab members, this award is definitely an effort by all of us together and will be shared equally among all of us. Finally, I like to thanks my parents and family members for always encouraging me to continue the hard work and morally supporting throughout my good and bad times. I would like to dedicate this award to my parents and all others.
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平成29年5月2日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2017/05/2-1.html多糖類から「ゼロ複屈折ポリマー」の開発に成功
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多糖類から「ゼロ複屈折ポリマー」の開発に成功
| 1. 発表者 |
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| 檀上 隆寛 (東京大学 大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻 博士課程) ロジャース 榎本 有希子 (東京大学 大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻 特任助教(当時)/ 国立研究開発法人産業技術総合研究所 構造材料研究部門 主任研究員(現在)) 島田 光星 (北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス研究科 博士課程) 信川 省吾 (北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス研究科 助教(当時)/ 名古屋工業大学 大学院物質工学専攻 有機分野 助教(現在)) 山口 政之 (北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科マテリアルサイエンス学系 教授) 岩田 忠久 (東京大学大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻 教授/JST-ALCA ホワイトバイオテクノロジー・岩田チーム 研究代表者) |
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| 2. 発表のポイント |
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| 3. 発表概要 |
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多糖類の1つであるプルランを出発原料とし、プルランの持つ特徴的な分子構造を保持したまま、簡単なエステル化により、光学特性に非常に優れたゼロ複屈折ポリマーの開発に成功しました。開発したゼロ複屈折ポリマーは、添加剤を一切加えることなくゼロ複屈折を発現するとともに、全ての可視光領域に対して、複屈折がゼロである優れた光学特性を持ち、機械物性、耐熱性、耐水性、成形加工性にも優れています。また、置換するエステル基の種類を変えることにより、ゼロ複屈折から高複屈折を持つさまざまな光学フィルムを作製することも可能であることから、偏光板保護フィルム(注4)や位相差フィルム(注5)として、多方面での利用が期待されます。
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| 4. 発表内容 |
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液晶ディスプレイは、スマートフォン、タブレットPC、液晶テレビなどに広く用いられています。液晶ディスプレイの基本構成材料の1つである偏光板を保護する目的で、さまざまなポリマー保護フィルムが使われています。一般的なポリマー保護フィルムは、セルローストリアセテート、シクロオレフィン樹脂、アクリル系樹脂などのポリマーから製造されていますが、その複屈折をゼロに近づけるために、多くの添加剤が混ぜられています。
本研究グループは今回、多糖類の一種であるプルランから、添加剤を全く必要としない「ゼロ複屈折ポリマー」の開発に成功しました。 原料として用いたプルランは、微生物によって生合成される水溶性多糖類の1つで、グルコースが2つのα-1,4結合と1つのα-1,6結合を規則正しく繰り返すことにより長くつながった、階段状の非常に珍しい分子構造を持っています(図1)。プルランは主に、食品添加剤、可食性フィルムや医療用カプセルなどとして利用されていますが、これまでプラスチックの原料として用いられることはありませんでした。 今回、プルランの特徴的な分子構造に着目し、分子構造中に存在する3つの水酸基(-OH)をエステル基に置換してプルランアセテートに変えることにより、特徴的な分子構造を残したままで、ゼロ複屈折を発現させることに成功しました(図2)。 開発したゼロ複屈折ポリマーは、ゼロ複屈折の発現に、添加剤を一切必要としません。これは、プルランの持つ特徴的な階段状の分子構造のため、分子配向が抑制されたためであると考えられます。また、熱延伸を施しても、分子配向の緩和が容易に起こることから、ゼロ複屈折の延伸フィルムも得られることがわかりました。さらに、このゼロ複屈折ポリマーは、全ての可視光領域(波長=380~750nm)において、ゼロ複屈折を示すことも発見しました。機械物性、耐熱性、耐水性、成形加工性にも優れていることから偏光板保護フィルムや位相差フィルムとして、さまざまな分野での利用が期待されます。 今後は、溶融押出成形などの工業手法により、ゼロ複屈折フィルムの作製を行いたいと考えています。自然界には、人工的には決して作り出すことができない、さまざまな特徴的な分子構造を持つ多糖類が存在します。今後は、それらの特徴的な構造を保持したまま、新規な高機能・高性能ポリマーの開発を行いたいと考えています。今回の成果を糸口として、石油由来の原料を使用しない、バイオベースのプラスチック創出技術を確立することで、二酸化炭素の排出削減につながることが期待されます。 本研究は、JST戦略的創造研究推進事業先端的低炭素化技術開発(ALCA)と文部科学省科学研究費補助金 基盤研究A(研究代表者:岩田忠久)の一環として行われました。深く感謝いたします。 |
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| 5. 発表雑誌 |
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| 雑誌名:Scientific Reports 論文タイトル:Zero birefringence films of pullulan ester derivatives 著者:Takahiro Danjo, Yukiko Enomoto-Rogers, Hikaru Shimada, Shogo Nobukawa, Masayuki Yamaguchi and Tadahisa Iwata* (*責任著者) DOI番号:10.1038/srep46342 URL: www.nature.com/articles/srep46342 日本時間4月18日(火)午後6時(イギリス時間18日(火)午前10時)に公開されました。 |
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| 6. 用語解説 |
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| 注1 プルラン デンプンを原料として黒酵母によって生合成される水溶性多糖類。グルコースが2つのα-1,4結合と1つのα-1,6結合を規則正しく繰り返した分子構造を持つ(図1)。 注2 エステル化 多糖類の水酸基(-OH)を、アセチル基(-OCOCH3)やプロピオニル基(-OCOCH2CH3)などのエステル基に化学的手法により置換すること。 注3 ゼロ複屈折ポリマー 物体中を光が透過する際、光の振動方向によって進む速度が異なる現象を複屈折と呼ぶ。一般にポリマーフィルムにおいても、分子が配向することにより複屈折が生じる。ゼロ複屈折ポリマーとは、種々の方法により複屈折をなくしたポリマーのこと。 注4 偏光板保護フィルム 液晶ディスプレイなどに用いられる偏光板を保護するために貼られるポリマーフィルム。このフィルムの複屈折は、可能な限りゼロであることが望ましい。 注5 位相差フィルム 光学補償フィルムの1つで、複屈折による光学的な歪みや視角方向による変調が原因で起こる表示の着色等を防止するために貼られるポリマーフィルムのこと。 |
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| 7. 添付資料 |
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平成29年4月19日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2017/04/19-1.html学生の中山さんが、マテリアルライフ学会第21回春季研究発表会において研究奨励賞を受賞
学生の中山超さん(博士前期課程2年、物質化学領域・谷池研究室)が、マテリアルライフ学会第21回春季研究発表会において研究奨励賞を受賞しました。
マテリアルライフ学会は、有機、無機、金属からなる素材およびそれらを加工して得られる各種材料と構成物・製品並びにバイオマテリアル、古文化財などの耐久性、寿命予測と制御についての科学および技術の進歩を図ることを目的とした学会です。
研究奨励賞は、優れた発表を行った発表者に授与され、耐久性、寿命予測と制御についての科学および技術の進歩に資することを目的としています。本賞の授賞件数は18件の研究発表において3名の発表者が研究奨励賞を受賞しました。
■受賞年月日
平成29年2月24日
■論文タイトル
人工クモ糸の熱酸化劣化における化学発光挙動
■論文概要
近年、強度と伸度を両立し、規格外の靭性を有するクモ糸は、産業用構造材料として大きな注目を集めていますが、タンパク質の高温・高湿度環境への脆弱性が産業応用に向けた最大の障壁となっています。我々は、人工クモ糸の高温で放出する化学発光を捉えることで、熱酸化劣化挙動を系統的に検討し、人工クモ糸の劣化機構を明らかにしました。本研究は、人工クモ糸の材料寿命の確保に当たって極めて有用な知見を与えるものです。
■受賞にあたって一言
今回、このような賞をいただき大変嬉しく思います。本発表において熱心なご指導を頂いた谷池准教授、Dao博士研究員、および激励を頂いた研究室の皆様には心より感謝申し上げます。

平成29年4月5日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2017/04/5-1.html学生のGargi Joshiさんが、The 11th International Gel Symposium (GelSympo2017)においてポスター賞を受賞
学生のGargi Joshiさん(博士後期課程1年、環境・エネルギー領域・金子研究室)が、The 11th International Gel Symposium (GelSympo2017)においてポスター賞を受賞しました。
■受賞年月日
平成29年3月8日
■タイトル
Directional Control of Diffusion and Swelling in Hydrogels Prepared from Cyanobacterial Exopolysaccharide
■論文概要
With the goal of constructing novel biomaterials, we have studied the LC hetero-polysaccharide, sacran extracted from the extracellular matrix of the freshwater cyanobacteria, Aphanothece sacrum. It demonstrated a high potential for significant water retention and had a liquid crystal nature at a critical concentration of ~ 0.3 %. In the present work, by investigating the swelling ratio and swelling kinetics three-dimensionally, the effects of the thickness of precursor films with LC orientation on diffusion are discussed. The thinner films swelled to a larger extent than their thicker counterparts. The dried films were analyzed using TEM and SEM techniques at nano- and sub-micron scale, respectively. It was observed that sacran fibers arrange in nano-platelets during the drying process and form oriented structure via nano layering and sub-micron layering. Due to the presence of this layered structure, we have successfully controlled the diffusion parallel to the planar direction and swelling in the lateral direction. We believe that these hydrogels will be useful for dynamic control in biomedical applications such as engineering replacement tissues, reconstructive surgeries, and the design of sustained drug delivery devices.
■受賞にあたって一言
I'm very grateful to Polymer Gel Research Group for presenting me with the Best Student Soft Matter Poster Award (Gel Symposium, Chiba 2017). It was an inspiring event to interact with researchers from the same field. I'm indebted to Prof. Tatsuo Kaneko and Asst. Prof. Kosuke Okeyoshi. I have been able to get this award all because of their constant guidance and constructive criticism. Also, Dr. Okajima and Dr. Asif Ali for the support and care. Big thanks to all Kaneko lab members for being cooperative, kind and fun to be with.

平成29年3月13日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2017/03/13-1.html









