PCサイトを見る

大学案内

学長メッセージ

学長対談[北陸経済連合会会長 久和 進氏]

学長対談(久和氏)
 北陸先端科学技術大学院大学では、地元自治体、北陸3県の産業界及び近隣大学との連携強化を掲げ、研究成果を地域社会へ還元することを目指しています。この取り組みを産業界側から支え、尽力されている北陸経済連合会の久和進会長を招き、浅野哲夫学長と教育・研究と産業、そして北陸地域の活性化について意見交換しました。

企業へ向けた、存在感を高めるための政策

学長対談(久和氏)

浅野 2014年に学長に就任して間もない時期に、北陸経済連合会(以下、北経連)から大学に向けて加盟の呼びかけがあり、産学連携を進める意味でも非常に良いタイミングであると喜んで一員に加わらせていただきました。今夏には理事も拝命して私自身北経連とともに歩んできたという実感があり、北陸地域全体の企業との関係を強めていくために、今後もお力をお借りしたいと考えています。

久和 北陸先端科学技術大学院大学(以下、JAIST)には、石川県のみならず北陸全体の中での大学であるという意識で運営していただくことを望んでいます。企業経営者の立場から言えば、私どもの会社の方も北陸全体をカバーしていますので、例えば富山大学、金沢大学に寄附講座を設けておりますし、共同研究やインターンシップにおいても地域にある各大学と協力関係を築こうという視点をもってやってきております。

浅野 本学では研究成果を還元し、社会と地域の発展に寄与することをビジョンに掲げておりまして、北陸の企業との結びつきを深めることは大きな意味があると考えます。しかし、地域の会社からはJAISTをよく知らない、あるいは敷居が高い、という声も寄せられています。これの払拭が課題なのですが、北経連が主催された大学見学会で企業の方々に来ていただき、アピールさせていただいたところ、参加企業との共同研究にまで繋がったという実績も生まれています。

久和 大学見学会の第1回がJAISTでしたね。今後も様々な形で会員企業へのPRをしていただけると、さらに成果が出てくるのではないでしょうか。

浅野 JAISTへの敷居を下げてもらうためには、本学のURA(リサーチ・アドミニストレーター)に北陸の企業を数多く回らせ、そこで課題を探してくるという政策を始めています。企業の技術的課題を把握し、それについて興味を示す教員がいれば、企業側には費用負担を求めずに大学が教員へ研究費を支援して、事前検討を開始してもらいます。事前検討の結果、課題解決の見通しが立った後に、改めて相手企業と有償契約を結ぶという形式であり、共同研究のハードルを低くする効果を狙っています。現在は初期段階の契約がかなり増えてきて手応えを感じています。

「産学連携」が及ぼす教育面への効果

学長対談(久和氏)

浅野 本学では産学連携を1つの柱にしようと取り組んできていますが、この推進が研究の場を変えてゆくと考えています。これまで我々は企業に対して、シーズを持っていますから、使えるものなら使っていいですよという打ち出し方をしていました。難解な理論のまま、あまり説明もしないままで社会にオープンにしていたのですね。しかしそれでは、産学連携が育たない。ニーズ指向への転換が必要だろうと考え、もっと企業側に歩み寄ってゆこうと努力しています。実はこれが学生への教育にもかなり役立つと私は信じています。
 大学の先生というのは、自分の携わっている研究を他人も解っていると思ってしまいがちな人種です。だから、学生に対して研究の意義など説明しなくても理解していると信じている。しかし、対企業の場面ではきちんと意図を伝えるために丁寧な説明が求められます。先生方は共同研究の場でそのような状況に置かれることで、翻って学生にも同じような目線で対応しなければならないという意識が芽生えてくると思うのです。つまり、学生に対して、君がやっていることは社会ではこう役立つのだということをしっかり説明し理解を促すと、学生は自分の研究がもつ社会的な意義を了解し、言われたからやるのではなく、自ら問題を解決しようという意欲が湧いてくる。そのやる気こそ、非常に重要な“研究の源泉”になると思うのです。

久和 確かに、指示されたことを「はい」わかりました、とやっているだけでなく、自分の頭で考えて実行していける力は、実社会の場でも大切です。最近の若い人は、小さい頃から管理された環境に育っていることもあってか、つまずくと立ち直れない面があるように思います。そういった意味でたくましさは大事であり、失敗してもいいから何事もやってみて、うまくいかなければ、そこで考え、なんとか先に進もうという実行力を持ってほしいですね。大学には企業に就職してからも新しい分野のことを自ら進んで学習しようとする学ぶ力を育成してほしいと思います。これは浅野学長の提唱されている“知的たくましさ”にも相通じるものであると思うのです。

浅野 本学では今年から、従来の3つの研究科を1つに統合し、区別なく入学できる体制を構築しました。これがどのような効果を及ぼすのか、未知数なところもあったのですが、入ってきた学生は、「自由でいい」、「いろんなことにチャレンジできる」と捉えてくれたのですね。これは非常に嬉しいことで、そこにはまさに本学が追究する“知的たくましさ”があります。
 入ってくる学生については、学部で取り組んできた研究内容に関連する分野で学位を目指すだけでなく、自身のベースとなる知識体系は別に持った上で、幅広い知識を得ようとする志の高い学生が入学してくることが一つの理想だと思っています。さすがに研究科統合の初年度からは期待できないと思っていたのですが、今年入学した300人のうち6人が指導教員とは違う学位が欲しいと望んでいるというのです。これほど早く統合の効果が現れるとは予想外であり、そのたくましさには驚かされました。

情報発信が地域活性化のカギを握る

久和 研究科統合による人材育成もそうですが、地方の大学でもそれぞれに独自の試みを始めて素晴らしい業績を上げたり、立派な先生がおられたりします。そういったことをもっと積極的に情報発信していただくことが地域活性化を後押しすると思います。東京への一極集中の問題は未だ解消されていませんが、時代の流れは地方創生へ向かっています。地方にいても日本全国更には世界に通用する仕事ができるという認識が定着していけば、一極集中も改善されていくのではないでしょうか。その意味で、北陸の大学も企業も、もっと情報発信に力を入れていくべきと考えます。

浅野 北陸エリアでの大学間交流は、最近盛んに取り組んでおりまして、福井大学、金沢大学、富山大学の3校で本学の説明会をやらせていただき、富山大学とは双方向での推薦入学協定を結びました。例えば、富山大学で学部を出て、JAISTで修士を過ごし、博士は再び富山に戻る、そんな形も可能にしています。

久和 学生に対するアピールも大切ですが、そればかりでなく親御さんを含めた社会一般への働きかけも重要でしょう。就職を考えても、北陸には素晴らしい会社がたくさんあるものの、一般の方々にはあまり知られていない。その多くがいわゆるB to Bで、原材料や中間材料、あるいは工作機械等を作っているため最終消費者の認知度が低く、学生が親にこの会社に就職したいといっても「そんな会社は聞いたことがない」などと言われて敬遠されてしまうのです。北経連としてもPRに力を注いでいますが、JAISTも石川県だけでなく、北陸全体さらには全国版のマスコミに情報を流すなどして、大学の認知度を上げていくのも大事ではないでしょうか? わかりやすい例を挙げれば、新幹線の名前に“北陸”と付いただけで、北陸の認知度が非常に上がり、そのおかげもあって在来線の時代に比べて乗降客が従来の3倍にも増加しましたからね。

浅野 北陸新幹線開業で長野県などから学生さんが来るようになり、その影響力の大きさを感じています。親御さんも心理的に北陸を近く感じるようになったのかと推測しています。

久和 北陸は人口こそ300万人程度ですが、東京・名古屋・大阪の大人口密集地帯からほぼ等距離という地の利があり、日本海側でプレート型の地震の心配も少ない地域です。世帯収入や教育レベルが高く、都道府県の幸福度ランキングでは、5位までに北陸3県が名を連ねています。北陸ってすごいんだ、という実際の姿をもっと全国に発信していくべきですね。それによって人が集まり活力が生まれてくると思います。
 若い人も、これまでは都会の大学に行ってしまったらそのまま就職してしまうケースが多く、最近少しずつ戻ってくる割合が増えてはいますが、もっとUターンを促進したいし、北陸以外から当地の大学に来た学生が北陸で就職する、いわゆるIターンにもつなげていきたいです。

早期離職問題へ向けて大学院大学ならではの支援を

学長対談(久和氏)

浅野 今後私どもが力を入れようと考えているのは、学士課程を出て就職後3年以内に約3割が離職してしまうという、早期離職の問題です。一つにはそうした若い人に対して、本学を次へのステップとして活用してほしいと思っています。離職後、運良く次の会社が見つかればいいですが、そうでないと手に職をつけようと専門学校に行くことがあります。そこで、専門学校に行かずに、ちょっと分野を変えて本学に来なさい。2年間で徹底的に鍛えてあげますという主旨なのです。修士として修了し、キャリアアップして再就職に臨むことができます。
 さらにもう1点、学内への良い作用として、そうした多様な人材が入ってくることで、他の学生たちは同級生から様々な経験、苦労を知ることができる。これが貴重な人生勉強になると思うのです。今の日本の大学は、同じくらいの年齢、偏差値の人が集まる均質な状態の中で、他の世代と交わることなく4年なりを過ごしてしまうものです。これが、自分とは異なる境遇の人から話を聞いたり、JAISTにも多くいる留学生から外国の事情を学んだりするなど、多様性に富んだ経験を積んでおけば、就職後の意識の持ち様にも影響して、離職の比率を抑えていく一助になるのではないかと考えます。

久和 企業側では、学生の希望とのミスマッチを防ぐ意味でインターンシップを受け入れるなど、少しでも会社を知り、体験してもらうことに力を入れています。また、具体的な仕事内容よりもその会社が何を目指して事業を行っているのか、経営者が理想や理念を直接学生に話しかけることが大事だという話も出てきています。学生はそういった企業の社会的価値の部分を敏感に感じ取っているようですから。

浅野 その点は、先ほど申し上げた産学連携を教育の場に生かすということにも共通すると感じます。研究にせよ仕事にせよ、その意義や社会的貢献を理解するのが、取り組む意欲の源泉となりますね。

久和 今後も大学と産業界とが接点を広げ深めていくことで、それぞれの場に良い効果がフィードバックされるものと期待しています。その意味でも大学の先生方は、研究室にいると世界が狭くなってしまう面があろうかと思いますので、ぜひ積極的に外へ出て、産業界を含めて広く社会と交流していただきたいと願っています。

浅野 本日は貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。北陸における産学連携の発展のために今後とも、ご協力をよろしくお願いいたします。

平成28年10月掲載

PAGETOP