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研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。学生の松本さんと石須さんがSI2024において優秀講演賞を受賞
学生の松本創大さん(令和7年3月博士前期課程修了、ナノマテリアル・デバイス研究領域、HO研究室)と石須滉大さん(令和7年3月博士前期課程修了、ナノマテリアル・デバイス研究領域、HO研究室)が、第25回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2024)において、優秀講演賞を受賞しました。
SI2024は、「サステナブルな社会を目指すシステムインテグレーション」をテーマに、SI部門設立25周年の記念大会として、令和6年12月18日~20日にかけて、岩手県のアイーナいわて県民情報交流センターにて開催されました。
優秀講演賞は、SI部門講演会において発表された全ての発表を対象として審査が行われ、講演会実行委員会によって選出されるものです。
※参考:SI2024
■受賞年月日
令和7年2月17日
【松本創大さん】
■研究題目、論文タイトル等
口径変化が可能な吸着型ソフトロボットハンド
■研究者、著者
松本創大、HO, Anh Van
■受賞対象となった研究の内容
松ぼっくりの形状から着想を得た、吸着口を可変できるソフトロボットハンドを開発した。把持したい物体の形状、重さ、大きさに対して適切な口径を変化させることができるロボットハンドを開発し、吸着力実験と把持実験を通してロボットハンドとしての性能を評価した。
■受賞にあたって一言
自分の研究が評価されて、光栄です。今後ソフトロボットが社会実装されるための1手段になってくれることを願います。
【石須滉大さん】
■研究題目、論文タイトル等
深い接触を許容するビジョンベース触覚センサを用いた回転物体における初期滑り検知
■研究者、著者
石須滉大、Luu Quan、HO, Anh Van
■受賞対象となった研究の内容
ロボットの物体把持のために初期滑り検知が必要。視覚ベース触覚センサを使ってこれまでよりも簡単な方法で初期滑りの特徴を検知した。
■受賞にあたって一言
まずは、本研究を支えてくださったLuu QuanさんとHo, Anh Van教授に深く感謝申し上げます。本研究がソフトロボット学の発展に貢献できれば光栄です。


令和7年5月7日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2025/05/07-1.htmlナノ粒子の三次元結晶構造を明らかにする格子相関解析を開発 ― 欠陥を多く含むメタチタン酸ナノ粒子の構造決定に成功 ―
ナノ粒子の三次元結晶構造を明らかにする格子相関解析を開発
― 欠陥を多く含むメタチタン酸ナノ粒子の構造決定に成功 ―
【ポイント】
- 高分解能透過電子顕微鏡法とデータ科学手法を組み合わせた格子相関解析を開発
- 欠陥を多く含むメタチタン酸ナノ粒子の三次元結晶構造の決定に成功
- 多様な結晶構造をとり得る金属オキシ水酸化物ナノ粒子の構造解明に役立つと期待
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市) ナノマテリアル・デバイス研究領域の麻生浩平講師、大島義文教授、宮田全展講師 (研究当時)、同大学ナノマテリアルテクノロジーセンターの東嶺孝一技術専門員、日本製鉄株式会社 技術開発本部の神尾浩史主幹研究員らの研究グループは、高分解能透過電子顕微鏡法とデータ科学手法を組み合わせた格子相関解析を開発しました。これにより、従来のX線回折法(XRD)*1などでは困難だった、欠陥を多く含むメタチタン酸ナノ粒子の結晶構造を決定することに成功しました。メタチタン酸ナノ粒子は、アナターゼ型酸化チタン(TiO2)構造を基本骨格とするものの、TiO2層とTi(OH)4層が交互に積層した構造であることを明らかにしました。酸素と金属で構成される金属酸化物や、さらに水素が加わった金属オキシ水酸化物は、多様な結晶構造をとり、それに応じて多彩な物性を発現することが知られています。格子相関解析は、このような材料の構造解明に弾みをつける新たな手法であり、多彩な物性の理解に貢献すると期待されます。 本研究成果は、2025年4月28日 (英国標準時間)に科学雑誌「Communications Chemistry」誌のオンライン版で公開されました。 |
【研究の背景及び概要】
酸素と金属で構成される金属酸化物ナノ粒子や、水素が加わった金属オキシ水酸化物ナノ粒子は、現代社会に欠かせない触媒、エネルギー変換、吸着材として注目されています。これらのナノ粒子は、組成が同じでも異なる構造をとり、異なる物性を示します。つまり、物性を真に理解する上で、合成されたナノ粒子の形状や構造の解明は欠かせません。典型的な構造解析として、X線回折法やラマン分光法*2があります。しかし、サイズが数ナノメートル (nm, 十億分の一メートル) 程度のナノ粒子の場合、ピークが明瞭でないため解析が困難です。また、今回の研究対象とした、金属オキシ水酸化物のひとつであるメタチタン酸は、欠陥を多く含むため構造解析がより困難となっていました。一方、透過電子顕微鏡 (TEM)*3や走査TEM (STEM)*4は、原子配列を可視化できますが、得られる情報は投影した二次元像です。
そこで、三次元の結晶構造を明らかにするため、多数のメタチタン酸ナノ粒子のTEM像を異なる様々な方位から取得しました。様々な方位から多数の像を得るのは、生物分野で利用される単粒子解析と類似していますが、本研究では異なる解析手法を採用しています。単粒子解析では、対象物の形状が均一であると仮定し、多数の像を観察方位ごとに分類して足し合わせることで、像の質を高めます。しかし、メタチタン酸ナノ粒子の場合、形状が均一ではないため、従来の方法をそのまま応用することはできませんでした。そこで、今回開発した手法では、像の足し合わせではなく、周期性や格子定数に敏感な結晶格子の間隔や異なる格子間の角度に着目しました。本手法は、間隔や角度の相関を統計的に解析することで、結晶構造の特徴を抽出しようとした点に新規性があります。
メタチタン酸ナノ粒子は、TEM試料用の支持膜上にランダムな方位を向いて分散するので、様々な方位からの粒子の原子分解能TEM像が得られます (図1a)。得られたTEM像から、画像処理によって個々のナノ粒子を検出し (図1b)、そのナノ粒子にガウス関数のマスクをかけて高速フーリエ変換 (FFT) パターンを得ました(図1c)。FFTパターンで観察されるスポットは、ナノ粒子の結晶格子の周期を反映します。異なるスポットの配置から、格子の間隔や角度の相関 (格子相関) が分かります。この処理を、500枚のTEM像で撮影された1300個のナノ粒子に対して行うことで、メタチタン酸ナノ粒子がもつ特徴的な格子相関を統計的に得ることが出来ました (図1d)。異なる観察方位に対する格子相関を組み合わせて解析することで、構造に関する三次元情報が得られます。
解析の結果、メタチタン酸ナノ粒子は、アナターゼ型酸化チタン(TiO2)構造を基本骨格とするものの、TiO2層とTi(OH)4層が交互に積層した構造であることを明らかにしました(図1e)。この構造は、密度汎関数理論による計算*5でも安定であることが確認されました(図1f)。また、原子の個数や原子番号をより直接的に反映する環状暗視野STEM像*6(図1g)とも整合しており、提案する構造は妥当であると判断しました。
本研究で開発した格子相関解析は、従来と比べて1/20から1/500程度の低い電子線照射量で、三次元的な結晶構造の解明を可能とします。今後は、電子線に敏感なため解析が困難だった、金属オキシ水酸化物ナノ粒子や有機物を含むナノ材料への展開が期待されます。新規材料探索は理論計算による研究が多いなかで、本手法は解析の自動化が可能であり、実験による新たなアプローチを提示できると考えています。これにより、より適切な材料設計や高性能デバイスの開発に弾みがつくと期待されます。

| 図1 (a) HRTEM像。暗いコントラストで示されるメタチタン酸ナノ粒子が見られる。(b) 画像処理によって粒子領域を検出した図。粒子ごとに色分けして塗りつぶしている。(c) b中の中央下、白い丸とバツでマークされた粒子のFFT図形。(d)格子相関マップの一例。ここでは(004)面と(110)面、(002)面と(110)面の組み合わせがスポットとして現れている。(e)解析から提案された結晶模型。(f)結晶模型について計算した環状暗視野STEM像。(g)メタチタン酸ナノ粒子の環状暗視野STEM像。 |
【論文情報】
| 雑誌名 | Communications Chemistry |
| 論文名 | Three-dimensional atomic-scale characterization of titanium oxyhydroxide nanoparticles by data-driven lattice correlation analysis |
| 著者 | Kohei Aso, Koichi Higashimine, Masanobu Miyata,Hiroshi Kamio,and Yoshifumi Oshima |
| 掲載日 | 2025年4月28日 |
| DOI | doi.org/10.1038/s42004-025-01513-2 |
【用語説明】
物質の平均的な結晶構造を調べる代表的な技術。X線を試料に照射してプロファイルを取得し、回折ピークの配置を解析することで試料の平均的な結晶構造が得られる。
物質にレーザー光を照射し、散乱された光の波長変化(ラマン散乱)を解析することで、物質の化学結合や結晶構造を得る手法。
電子線を試料に透過させ、得られた投影像から結晶構造を観察する手法。電子線を使うことを除いて、原理的には一般的な光学顕微鏡と同様。
0.1 nm程度に絞った電子線を試料上で走査し、試料各点からの信号によって結像する手法。
原子や分子の電子状態を理論に基づき計算する手法。ここでは、結晶構造のサイズ(格子定数)や原子位置をわずかに変化させながら計算を繰り返し、構造の安定性を評価した。
STEMのうち、前方散乱された電子をマッピングした像。原子番号や厚みの違いをより直接的に反映した像が得られる。
令和7年4月30日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/04/30-1.html二次元格子をひねって重ねると一次元超格子が出現 ――二次元原子層物質が一次元物性研究の新しいプラットフォームに――
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| 東京大学 北陸先端科学技術大学院大学 大阪大学 科学技術振興機構(JST) |
二次元格子をひねって重ねると一次元超格子が出現
―― 二次元原子層物質が一次元物性研究の新しいプラットフォームに ――
【ポイント】
- シート状の原子層二枚を、特定の角度に向きをずらして重ねると、一方向に縞模様を持つ一次元モアレ超格子構造が形成できることを発見しました。
- 従来のモアレ超格子は原子層の構造と類似の二次元の周期性を持ちますが、本研究では、一次元の周期性しか持たない新しいコンセプトのモアレ超格子を提案・実証しました。
- モアレ超格子による原子層の性質の人工制御物性変調や、一次元性ならではの異方性の高い新奇物性研究の新しいプラットフォームになることが期待されます。また、素子応用に向けた研究の発展にも寄与することが期待されます。

二次元原子層WTe2のツイスト積層による一次元モアレ超格子の形成
| 東京大学 生産技術研究所の張 奕勁 助教と町田 友樹 教授らの研究グループは、北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアル・デバイス研究領域の大島 義文 教授および高村 由起子 教授の研究グループ、大阪大学大学院 理学研究科の越野 幹人 教授の研究グループと共同で、原子層物質(注1)の人工ツイスト二層構造(注2)において一次元の周期性を持つモアレ超格子(注3)が実現できることを明らかにしました。 本研究では、二テルル化タングステン(WTe2)の原子層二枚を使用し、それぞれの結晶方位に角度差(ツイスト角)を付けた状態で人工的に重ね合わせた構造(ツイスト二層構造)を作製し、透過型電子線顕微鏡(TEM)を用いて原子の配列パターンを直接観察しました。一般的にツイスト二層構造で出現するモアレ超格子内の原子配列パターンは二次元の周期性を持って変化しますが、本研究では特定のツイスト角において配列パターンの変化が一次元的になる、すなわち周期性が一方向のみになることを世界で初めて示しました(図1)。また、本モアレ超格子が従来のモアレ超格子とは異なる原理で形成されていることを理論的に突き止めました。一次元性による母物質の物性変調に伴う新奇物性探索の新しい舞台になることが期待されます。 |

図1:透過型電子線顕微鏡を用いたツイスト二層WTe2の原子像観察。
| (a)WTe2原子層の模式図。a軸方向とb軸方向で周期性が異なる。(b,c)WTe2原子層二枚をツイスト角62度(b)および58度(c)でツイスト積層させた構造。単独の原子層が持つ周期性と異なる一次元的な周期性が出現する。(d) 試料構造および実験の模式図。h-BNは試料の保護層。(e,f)ツイスト角62度(e)および58度(f)で作成したツイスト二層WTe2試料の原子像。白いスケールバーは10 nm(ナノメートル)。(g,h)62度(g)および58度(f)ツイスト試料の電子回折像。緑と茶色の点がそれぞれの原子層の構造の周期性を示す回折スポット。赤枠(e)と青枠(f)で示された回折スポットのペアがモアレ超格子の周期性を表す。どちらの場合も回折スポットのペアが平行に並んでいることから、モアレ超格子が一方向のみに周期性を持っていることがわかる。青いスケールバーは2 nm-1(ナノメートルインバース)。 |
【発表者コメント:張 奕勁助教の「もしかする未来」】
本研究は偶然の発見から始まりました。パワーポイントの上で結晶構造を二つ重ね、片方をぐるぐる回転させていたところ一瞬縞模様が見えたのがきっかけです。モアレ超格子の原子配列を実際に観察し、また、理論的にその起源と一次元性を示すことができました。カーボンナノチューブなどの一次元物質は低次元特有の現象を示しますが、その特性を残したまま大面積化することは困難でした。今回、ナノチューブよりも面積の大きい原子層物質を用いて一次元構造が作製できたので、今後は一次元性を反映した物性の探索を進めていきたいと思います。
【発表内容】
原子層物質の人工ツイスト積層構造技術は、現在の原子層物質を用いた基礎物性研究の中心的な技術の一つです。異なる原子層物質を積層する場合だけでなく、同一の原子層物質を積層する場合であっても、それぞれの結晶方位をずらして積層(ツイスト積層)すると、元の物質の持つ周期性よりも大きな周期性を持つモアレ超格子が出現します。モアレ超格子が出現することで、元の原子層物質の物性を大きく変調し、新奇物性を誘起することが可能になります。例えば、単層グラフェンをツイスト角1.05度でツイスト積層すると、低温で超伝導転移を誘起できることが知られています。一般的に、モアレ超格子の大きさはツイスト角の増加とともに小さくなるため、これまでの研究は低ツイスト角領域(0度付近)を中心に行われてきました。
この度、本研究チームは、原子層物質二テルル化タングステン(WTe2)を用いた研究から、高ツイスト角でもモアレ超格子が出現し、さらに、特定の角度(62度と58度付近の二点)では一次元的なモアレ構造が出現することを発見しました。WTe2の特徴は、結晶構造が異方的、すなわち、結晶方位によって周期の大きさが異なることです(図1a)。代表的な原子層物質であるグラフェンや二セレン化タングステン(WSe2)は等方的(物理的な性質が方向によって異ならないこと)な結晶構造を持っており、高ツイスト角ではモアレ超格子は出現しません。本研究では、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてツイスト二層WTe2の原子配列パターンを直接観察することで高ツイスト角領域における一次元モアレ超格子を実験的に示しました(図1c,d)。また、構造の周期性を示す電子回折パターン(注4)において、モアレ超格子の周期を示す回折スポットのペアが全て平行になるという特徴を観測しました(図1e,f)。
モアレ超格子の周期性は元の原子層の持つ周期性から説明できますが、従来のモデルでは高ツイスト角領域におけるモアレ超格子を説明できません。本研究では従来のモデルを拡張することで、高ツイスト角領域においてモアレ超格子が出現し、さらに、62度と58度付近でモアレ超格子が一次元になる、すなわち、周期性が一方向のみになることを理論的に示すことに成功しました(図2)。加えて、電子回折パターンのシミュレーションから、実験的に観測された回折スポットペアの特徴(図1e,f参照)が一次元性を示す証拠になっていることを理論的に示すことにも成功しました(図3)。また、一次元モアレ超格子の出現はWTe2に特異な現象ではなく、異方的な結晶構造を持つすべての原子層物質で起こりうる普遍的な現象であることも明らかになりました。
一次元的なモアレ超格子を形成することで、従来の二次元的なモアレ超格子で誘起された物性変調とは異なる変調効果が期待されます。従来、カーボンナノチューブなど一次元物質の持つ物性の研究や素子応用には、無数のチューブを配向させた膜の形成という技術的な障壁がありましたが、人工ツイスト積層構造の一次元モアレ超格子ではマイクロメートルスケールで一次元構造が広がるため、基礎研究のみならず素子応用に向けた研究の発展にも寄与することが期待されます。

図2:近似三角格子モデルを用いた一次元モアレ超格子の再現。
| (a)WTe2原子層の結晶構造。格子ベクトルa1、a2で囲われた長方形がユニットセル(周期一つ分の構造)。W原子とTe原子を区別せず原子位置に多少の動きを許容すると、格子ベクトルl1、l2で定義された三角格子(灰色点線)で近似できる。近似された格子は正三角形ではなく二等辺三角形になっている。(b)近似三角格子をツイスト積層した場合のモアレ超格子。一次元構造が再現されている。 |

図3:人工ツイスト二層WTe2の電子回折パターンのシミュレーション。
| 従来の低ツイスト角の場合と本研究における高ツイスト角の場合の比較。ベクトルb1、b2はそれぞれ格子ベクトルa1、a2(図2a参照)の周期を示す逆格子ベクトル。黒点と赤点がそれぞれの原子層に由来する原子回折スポット。黒矢印で示された解析スポットのペアがモアレ超格子の周期性(大きさおよび方向)を決定する。低ツイスト角の場合モアレ超格子の周期は様々な方向を向くため、二次元の超格子となる。一方62度と58度付近ではすべて平行になり一方向にしか周期性が存在しないため、一次元の超格子となる。 |
【発表者・研究者等情報】
張 奕勁 助教
町田 友樹 教授
大島 義文 教授
高村 由起子 教授
越野 幹人 教授
【論文情報】
| 雑誌名 | ACS Nano |
| 題名 | Intrinsic One-Dimensional Moiré Superlattice in Large-Angle Twisted Bilayer WTe2 |
| 著者名 | Xiaohan Yang, Yijin Zhang*, Limi Chen, Kohei Aso, Wataru Yamamori, Rai Moriya, Kenji Watanabe, Takashi Taniguchi, Takao Sasagawa, Naoto Nakatsuji, Mikito Koshino, Yukiko Yamada-Takamura, Yoshifumi Oshima & Tomoki Machida* |
| DOI | 10.1021/acsnano.4c17317 |
| URL | https://doi.org/10.1021/acsnano.4c17317 |
【研究助成】
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「トポロジカル材料科学と革新的機能創出(研究総括:村上 修一)」研究領域における「極性二次元物質とそのヘテロ構造におけるバルク光起電力効果(JPMJPR20L5)」、さきがけ「新原理デバイス創成のためのナノマテリアル(研究総括:岩佐 義宏)」研究領域における「顕微分光による二次元物質デバイスの物性開拓(JPMJPR24H8)」、同 戦略的創造研究推進事業 CREST「原子・分子の自在配列・配向技術と分子システム機能(研究総括:君塚 信夫)」研究領域における「原子層のファンデルワールス自在配列とツイスト角度制御による物性の創発(JPMJCR20B4)」、日本学術振興会 科学研究費助成事業 学術変革領域(A)「2.5次元物質科学:社会変革に向けた物質科学のパラダイムシフト」(課題番号:JP21H05232, JP21H05233, JP21H05234, JP21H05235, JP21H05236)、および文部科学省 マテリアル先端リサーチインフラ事業(課題番号:JPMXP1223JI0033)の支援により実施されました。
【用語解説】
原子層物質とは、原子1個または数個分の厚みしかない層状の物質。原子間力で層間が弱く結合しており、二次元物質とも呼ばれる。層状構造を持つ単結晶から、スコッチテープなどの粘着性のテープを貼り付けて剥がすことで得られる(テープに付着している)、数ナノメートル以下まで薄くした二次元シート状の薄膜として作製する。代表例としてグラフェン、二硫化モリブデンなどが挙げられる。
原子層を二つ用意し、それぞれの結晶方位の間に相対的な角度差をつけて人工的に重ねた構造。
複数の原子層物質を重ねた際に出現する新たな周期構造。元の原子層物質の構造が持つ周期とは異なる周期性を持つ。
物質に電子線を照射した際に観察される干渉パターン。物質の構造の持つ対称性や周期性を反映したパターンが出現する。
令和7年3月28日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/03/28-1.htmlJSTのさくらサイエンスプログラムを実施
ナノマテリアル・デバイス研究領域の安東秀准教授のマレーシアとの交流計画が国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「国際青少年サイエンス交流事業 さくらサイエンスプログラム」に採択されたことを受け、1月9日~1月18日の日程でマレーシア国民大学(UKM)及びマレーシアマラッカ技術大学(UTeM)並びにマレーシアプトラ大学(UPM)から13名の教員・研究者・大学院生を本学に受け入れました。
「国際青少年サイエンス交流事業 さくらサイエンスプログラム」は、産学官の緊密な連携により、諸外国・地域の青少年を我が国に招へいし、我が国の青少年との科学技術分野の交流を行う事業です。これを通して、
①科学技術イノベーションに貢献しうる優秀な人材の養成・確保
②国際的頭脳循環の促進
③日本と諸外国・地域の教育研究機関間の継続的連携・協力・交流
④科学技術外交にも資する日本と諸外国・地域との友好関係の強化
に貢献し、ひいては、日本及び世界の科学技術・イノベーションの発展に寄与することを目的とします。
参考:https://ssp.jst.go.jp/outline/detail/
本学はアジア諸国の大学・研究機関との学術的交流を強く推進しており、将来的に優秀な学生を受け入れるためにマレーシアにおける大学・研究機関においても交流を進めています。
本交流の趣旨は昨年実施された環境・エネルギー分野に続いてナノマテリアル・デバイス・計測分野にて交流を実施し、本学のマレーシアにおける学術的交流活動をより広く促進する効果を狙った計画となりました。また、今回、本学での学位取得者であるAmbri教授(UKM)とAsyadi教授(UTeM)が実施担当者として来日し、本学と各大学の交流基盤を再構築することができました。プログラム期間中には、本学教員による研究指導等を実施し、最終日には成果報告会が行われました。また、金沢のひがし茶屋街での金箔体験や、ゆのくにの森での蒔絵体験を通して日本的な文化や美にも触れ、さらに、中谷宇吉郎雪の科学館、東京の日本科学未来館を訪問して日本の多様な先端科学技術を紹介しました。
本交流プログラムはこれらの経験を通して招聘者の将来の日本への留学を促し、本学が招聘者の母国やアジアの科学技術の進歩や発展に貢献することを目指しています。
■実施期間
令和7年1月9日~令和7年1月18日
■研究テーマ
ナノマテリアル・デバイス・計測に関する技術交流
■本交流について一言
本計画をサポートいただきましたJSTに御礼申し上げます。また、本学受入教員の村田教授、赤堀准教授、高村由起子教授、廣瀬講師、大島教授、松見教授、上田准教授、篠原准教授、長尾教授に御礼申し上げます。また、降雪の中プログラム実施をサポートして下さった長尾教授、青木助教をはじめとする10名以上の教職員や学生の皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました。引き続きマレーシアとの交流の発展にお力添えをお願い致します。

歓迎ミーティング

初雪体験

金沢で金箔貼体験

ゆのくにの森

研究実施風景

成果報告会、終了式
令和7年1月24日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2025/01/30-1.html学生の中嶋さんが日本顕微鏡学会第67回シンポジウムにおいて学生優秀ポスター賞を受賞
学生の中嶋まいさん(博士前期課程2年、ナノマテリアル・デバイス研究領域、大島研究室)が公益社団法人日本顕微鏡学会第67回シンポジウムにおいて学生優秀ポスター賞を受賞しました。
日本顕微鏡学会は顕微鏡学に関わる研究発表、知識の交換並びに社会との連絡連携の場となり、顕微鏡学の進歩発展を図り、もって社会および産業界に寄与することを目的として、電子顕微鏡(学)に関する理論、基礎的な研究を行うとともに、産業界、医学界、生物界における実際問題への応用研究も盛んに行っています。
同学会第67回シンポジウムは、『GXに貢献する顕微科学の未来』をメインテーマとして、令和6年11月2日~3日にかけて、北海道大学にて開催されました。
学生優秀ポスター賞は、顕微鏡技術(装置・手法)部門、医学・生物科学部門、材料・物質科学部門の各部門ごとに選考が行われ、優れたポスター発表を行った学生に授与されるものです。
※参考:日本顕微鏡学会第67回シンポジウム
■受賞年月日
令和6年11月2日
■研究題目、論文タイトル等
GaSeナノリボンの電子照射によるスイッチング動作の検証
■研究者、著者
中嶋まい、Limi Chen、麻生浩平、高村(山田)由起子、大島義文
■受賞対象となった研究の内容
GaSe(セレン化ガリウム)は光や電子に対して高い光伝導効果が知られている二次元材料であり、超小型スイッチングデバイスへの応用が期待されている。しかし、二次元材料の電子に対する応答を測定することは難しく、電子照射効果の影響は解明されていなかった。
本研究では、二次元材料の転写方法の改善と、独自に開発したその場電子顕微鏡観察法を行い、原子構造の観察をしながら電子照射下の電気伝導測定を行った。この結果、初めて電子照射量に対する電流の増加量(=応答率)を導くことができ、電子照射応答のメカニズムの解明に貢献した。
■受賞にあたって一言
この度は学生優秀ポスター賞を賜り、大変光栄に存じます。本研究の遂行にあたり、丁寧なご指導をしてくださった大島義文教授、高村(山田)由起子教授、および研究室の皆様に深くお礼申し上げます。今後も、二次元材料の物性研究を進めて参ります。
令和7年1月16日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2025/01/16-1.html量子グレードの高品質・高輝度蛍光ナノ粉末ダイヤモンド ~ナノダイヤモンド量子センサの性能向上で超高感度の測定が可能に~
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| 岡山大学 量子科学技術研究開発機構 北陸先端科学技術大学院大学 筑波大学 |
量子グレードの高品質・高輝度蛍光ナノ粉末ダイヤモンド
~ナノダイヤモンド量子センサの性能向上で超高感度の測定が可能に~
【ポイント】
- 明るい蛍光イメージングとナノ量子計測法が利用可能な品質等級(量子グレード)を実現しました。
- 従来の蛍光ナノ粉末ダイヤモンド※1に比べて量子特性が10倍以上、温度感度が2桁向上しました。
- ナノダイヤモンド量子センサの性能を大幅に向上させた画期的な成果です。
- 細胞内やナノ電子デバイスの温度や磁場を超高感度で測定可能になることが期待されます。
| 岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理)の藤原正澄研究教授、押味佳裕日本学術振興会特別研究員、同大大学院環境生命自然科学研究科の中島大夢大学院生、大学院自然科学研究科のマンディッチサラ大学院生、小林陽奈非常勤研究員(当時)は、住友電気工業株式会社の西林良樹主幹、寺本三記主席、辻拡和研究員、量子科学技術研究開発機構量子生命科学研究所の石綿整主任研究員、北陸先端科学技術大学院大学ナノマテリアル・デバイス研究領域の安東秀准教授、筑波大学システム情報系の鹿野豊教授らとの共同研究により、従来の10倍以上の優れた量子特性(量子コヒーレンス※2)を持つ高輝度の蛍光ナノ粉末ダイヤモンドを世界で初めて報告しました。この蛍光ナノ粉末ダイヤモンドは、住友電気工業株式会社との協力によって実現されたもので、高い蛍光輝度で蛍光イメージングが可能で、高品質な量子センサ特性を有しており、温度量子測定においても1桁以上の感度向上が確認されました。 本研究成果は、2024年12月16日に「ACS Nano」のオンライン先行版に掲載されました。蛍光ナノ粉末ダイヤモンドを用いた量子センシング※3技術は、近年注目を集めている超高感度ナノセンシング技術です。しかし、これまで高い蛍光輝度と様々な量子計測法を行うのに要求される品質等級(量子グレード)の両立は困難とされてきました。本研究により、ナノダイヤモンド量子センサの性能が大幅に向上され、細胞内やナノ電子デバイスの温度や磁場を超高感度で測定できると期待されます。 |
【現状】
蛍光ナノ粉末ダイヤモンドを用いた量子センシングは、ナノスケールでの温度、磁場、化学環境の変化を高感度に計測できる技術として、生命科学やナノテクノロジー分野で大きな注目を集めています。この技術は、細胞内の微小領域やデバイス内部の構造を精密に計測できることから、将来的には癌の超早期診断や極微量ウイルスの検出などの医療分野や、リチウムイオンバッテリーの状態モニタリングなどのスマートデバイス分野での応用が期待されています。しかし、量子センシングの性能は蛍光ナノ粉末ダイヤモンドの電子スピン特性に大きく依存しており、このスピン特性の向上が技術の成否を左右します。特に、従来の蛍光ナノダイヤモンドでは、蛍光強度とスピン特性の両立が難しく、測定感度が劣化するという課題がありました。
【研究成果の内容】
本研究では、蛍光ナノ粉末ダイヤモンド中のスピン不純物(孤立窒素原子や天然炭素に含まれる約1%の13C同位体)を大幅に減少させ、スピン純度を飛躍的に向上させることに成功しました。また、窒素空孔欠陥中心(NV中心)※4を高効率で生成するためのダイヤモンド成長法およびナノ粒子粉砕法を最適化し、含有されているNV中心が約1 ppm、孤立窒素が約30 ppm、13C同位体が0.01%以下に制御され、平均粒径277 nmの大きさを有するナノ粉末ダイヤモンドを作製しました。その結果、光検出磁気共鳴※5信号(ODMR)が著しく改善され、従来の蛍光ナノ粉末ダイヤモンドと比較して量子コヒーレンス時間が10倍以上延長されました。(図1)

図1:細胞内の量子グレード蛍光ナノ粉末ダイヤモンドとそのスピン特性
さらに、これらの蛍光ナノ粉末ダイヤモンドを細胞内に導入し、従来の蛍光ナノ粉末ダイヤモンドに比べてより高感度にODMR信号が検出できることを実証しました。また、バルク結晶のみで実現されていた量子計測法の1つである、超高感度温度測定法「サーマルエコー」も観測することに成功しました。これにより、従来のナノダイヤモンド温度量子センシングに比べて1桁以上感度が向上することを確認しました(図2)。ナノダイヤモンド量子センサの実用に道を開く画期的な成果です。

図2:サーマルエコー法による超高感度温度測定と従来に比べた測定感度の向上
【社会的な意義】
本研究は、生命科学やナノテクノロジー分野におけるナノスケールセンシング技術の大きな進展をもたらす可能性を秘めています。蛍光ナノ粉末ダイヤモンドは、優れた光安定性と生体適合性を持ち、既に一部で商用化が始まっている有望な蛍光イメージング材料です。ナノダイヤモンド量子センサの応用が進展すれば、癌などの超早期診断や極微量ウイルス検出といった新しい診断技術の開発が期待されます。また、ナノメートルからマイクロメートルの微小領域で温度や磁場を検出する技術は、リチウムイオンバッテリー内部の状態モニタリングなど、スマートデバイスの革新的な性能向上にも貢献すると期待されています。本研究を通じて量子センシング技術が進展することで、蛍光ナノ粉末ダイヤモンドのバイオ医療やスマート電子技術分野での幅広い商用化が期待されます。
【論文情報】
| 論文名 | Bright quantum-grade fluorescent nanodiamonds |
| 邦題名 | 「高輝度量子グレード蛍光ナノ粉末ダイヤモンド」 |
| 掲載紙 | ACS Nano |
| 著者 | Keisuke Oshimi, Hitoshi Ishiwata, Hiromu Nakashima, Sara Mandić, Hina Kobayashi, Minori Teramoto, Hirokazu Tsuji, Yoshiki Nishibayashi, Yutaka Shikano, Toshu An, Masazumi Fujiwara |
| DOI | 10.1021/acsnano.4c03424 |
| URL | https://doi.org/10.1021/acsnano.4c03424 |
【研究資金】
- 独立行政法人日本学術振興会「科学研究費助成事業」
‣基盤A・24H00406,研究代表:藤原正澄
‣基盤A・20H00335,研究代表:藤原正澄
‣国際共同研究強化(A)・20KK0317,研究代表:藤原正澄
‣特別研究員奨励費・23KJ1607,研究代表:押味佳裕 - 国立研究開発法人科学技術振興機構
「先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)次世代のためのASPIRE」
(JPMJAP2339,研究代表:鹿野豊(筑波大学) - 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
「官民による若手研究者発掘支援事業」
(JPNP20004,研究代表:藤原正澄) - 国立研究開発法人日本医療研究開発機構「ムーンショット型研究開発事業」
(JP23zf0127004,研究代表:村上正晃(北海道大学)) - 国立研究開発法人科学技術振興機構 未来社会創造事業 「共通基盤」領域 本格研究
(JPMJMI21G1,研究代表:飯田琢也(大阪公立大学)) - 国立研究開発法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業さきがけ
(JPMJPR20M4,研究代表:鹿野豊(筑波大学)) - 国立研究開発法人科学技術振興機構 科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業
(JPMJFS2128, 研究代表:押味佳裕(岡山大学))
(JPMJFS2126, 研究代表:マンディッチサラ(岡山大学)) - 公益財団法人 山陽放送学術文化・スポーツ振興財団「研究助成」(研究代表:藤原正澄)
- 公益財団法人 旭硝子財団「研究助成」(研究代表:藤原正澄)
- 文部科学省「ナノテクノロジープラットフォーム」(JPMXP09F21OS0055)
- 国立研究開発法人科学技術振興機構 創発的研究支援事業
(JPMJFR224K,研究代表:石綿整(QST)) - 公益財団法人 村田学術振興・教育財団「研究助成」(研究代表:石綿整(QST))
【補足・用語説明】
ダイヤモンド中に存在する窒素欠陥中心によって赤い発光を示す、ナノメートルサイズのダイヤモンド粉末粒子。褪色がなく安定した蛍光を半永久的に示す蛍光材料。生体毒性も低く、バイオイメージングなどに利用されている。
量子力学において量子状態が外部からの影響を受けずに一貫性を保ちながら情報を保持できる性質。温度測定の場合、ダイヤモンド窒素欠陥中心の電子スピン状態が温度情報を感じることのできる時間であり、コヒーレンスが失われると温度測定の精度が低下する。
量子力学の原理に基づいてさまざまな物理量を超高感度に計測することができる。特に蛍光ナノ粉末ダイヤモンドでは、窒素欠陥中心が有する電子スピン状態を、量子力学の原理に基づいて操作・検出することで、さまざまな物理量(磁気・温度・電気)を超高感度に計測することができる。
ダイヤモンドの炭素格子中に含まれる結晶欠陥の1つ。窒素原子と隣接する空孔から構成され、緑色の光を吸収して赤い蛍光を示す。この蛍光は、光検出磁気共鳴を示し※5、これが磁場や温度によって影響されるため、蛍光を通したセンシングが可能。超高感度計測が可能な量子センサとして注目され、生体内での温度や磁場の計測、量子情報技術などで注目されている。
光検出を通して電子スピンとマイクロ波の共鳴を観測する手法。蛍光ナノ粉末ダイヤモンドの場合、2.87 GHz付近のマイクロ波を照射すると、電子スピン共鳴が生じ、それが蛍光輝度の減少に表れる。
令和6年12月23日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2024/12/23-1.html高密度なイオン液体構造を持つ新高分子材料の創出
高密度なイオン液体構造を持つ新高分子材料の創出
ポイント
- バイオベース化合物であるポリフマル酸の高分子反応により、高密度にイオン液体構造を有する高分子化イオン液体の合成に成功しました。
- 作製したアノード型ハーフセルは、リチウムイオン二次電池における1Cにおいて297 mAhg-1、ナトリウムイオン二次電池において60 mAg-1で250 mAhg-1の放電容量を示しました。
- いずれの電池系も高い耐久性を示し、リチウムイオン二次電池では750サイクル後に80%、ナトリウムイオン二次電池においては200サイクル後に96%の容量維持率を示しました。
- 高密度イオン液体構造を有するバインダーは、リチウムイオン二次電池系の急速充放電能において適性を示し、5CにおいてPVDF系の約2倍の85 mAhg-1を示しました。
- また、同バインダーは、ナトリウムイオン二次電池のハードカーボン負極バインダーとして、ナトリウムイオンの負極における拡散を改善しつつ、PVDF系の約2倍の放電容量を発現させました。
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市)物質化学フロンティア研究領域の松見紀佳教授、Amarshi Patra大学院生(博士後期課程)は、バイオベースポリマーであるポリフマル酸から高密度にイオン液体構造を有する新たな高分子化イオン液体を開発しました。開発した本高分子材料をリチウムイオン二次電池[*1]用グラファイト負極バインダーとして適用することにより、急速充放電能が促されました。また、ナトリウムイオン二次電池[*2]用ハードカーボン負極バインダーとして適用することにより、PVDFバインダー系の2倍の放電容量を観測しました。これらは、いずれも本バインダーが負極内における円滑な金属カチオンの拡散を促した結果です。また、構築した電池系はいずれも高い耐久性を示しました。 高分子化イオン液体は極めて多様な応用範囲を有する材料群であり、高密度なイオン液体構造を有する新材料の創出は、多様な分野における研究を活性化させる可能性を有しています。 |
【研究背景と内容】
今日、高分子化イオン液体は、各種エネルギーデバイス向けの材料や生医学用材料、センシング用材料、環境応答性材料、触媒の担持体等の広範な分野で、極めて活発に研究されている重要な機能性材料となっています。
本研究では、バイオベースポリマー[*4]であるポリフマル酸の高分子反応によって、高密度にイオン液体構造を有する新たな高分子化イオン液体を合成しました。また、得られた材料をリチウムイオン二次電池及びナトリウムイオン二次電池の負極バインダーとして適用しました。その結果、負極内の金属イオンの拡散が促進され、それぞれの電池系の特性の改善につながることを見出しました。
本高分子化イオン液体の合成においては(図1)、まずフマル酸[*3]エステルをAIBNを開始剤としてラジカル重合し、ポリフマル酸エステルを得ました。その後、ポリマーをKOH水溶液で100oCにおいて12時間処理し、透析を行うことでポリフマル酸を得ました。一方、アリルメチルイミダゾリウムクロリドをAmberlite樹脂によりイオン交換することで、アリルメチルイミダゾリウムヒドロキシドを調整し、これを常温でポリフマル酸と中和させることにより、高密度なイオン液体構造を有する高分子化イオン液体(PMAI)を合成しました。ポリマーの構造は、1H-、13C-NMR及びIR等により決定しました。
まず、本ポリマー(PMAI)のグラファイトとのコンポジット(PMAI/Gr)、ハードカーボンとのコンポジット(PMAI/HC)について、銅箔への接着性を引き剝がし試験により評価したところ、いずれの系もPVDFとのコンポジット系よりも大幅に改善された接着力を示しました。PMAI/Grは10.9 Nを要し、PMAI/HCは11.0 Nを要し、いずれもPVDF/Grの9.8 N、PVDF/HCの9.9 Nを上回りました。
次に、本ポリマー(PMAI)のリチウムイオン二次電池用負極バインダーとしての性能を評価しました。アノード型ハーフセル[*5]における電荷移動界面抵抗はPMAI/Grにおいて21.9Ωであり、PVDF/Gr系の125.9Ωを大幅に下回りました。これは、高密度なイオン液体構造が負極内におけるLiイオン拡散を促す結果と考えられます。また、PMAI/Gr系においてはSEI抵抗も11.08Ωと低く、PVDF/Gr系の29.97Ωよりも顕著に低いことがわかりました。(図2)。
さらにLi+拡散係数をインピーダンススペクトルにおける低周波数領域から解析したところ、PMAI/Gr系では1.03 x 10-10 cm2/s、PVDF/Grでは3.08 x 10-12 cm2/sとなり、前者において著しく低くなりました。結果として、作製したアノード型ハーフセル(図2)はリチウムイオン二次電池における1Cにおいて297 mAhg-1の放電容量を示し、750サイクル後に80%の容量維持率を示しました。また、本バインダー系は、急速充放電能において適性を示し、5CにおいてPVDF系の約2倍の85 mAhg-1を示しました。
本ポリマー(PMAI)のナトリウムイオン二次電池用負極バインダーとしての性能に関しても評価しました。アノード型ハーフセルにおける電荷移動界面抵抗はPMAI/HCにおいて31.38Ωであり、PVDF/HC系の83.09Ωを大幅に下回りました。さらにNa+拡散係数をインピーダンススペクトルにおける低周波数領域から解析したところ、PMAI/HC系では3.35 x 10-13 cm2/s、PVDF/HCでは1.01 x 10-13 cm2/sとなり、前者において3倍以上の拡散性を示しました。ナトリウムイオン二次電池の負極ハーフセルにおいて、60 mAg-1で250 mAhg-1の放電容量を示し、200サイクル後に96%の容量維持率を示しました。結果としてPVDF系の約2倍の放電容量を発現させました。
また、充放電後の負極をSEM観察したところ、PVDF系と比較して大幅に負極マトリックス上のクラックが少なく、安定化している様子が観察されました。(図3)
本成果は、Advanced Energy Materials(WILEY - VCH)(IF 24.4)のオンライン版に9月12日に掲載されました。
【今後の展開】
本高分子材料においては、種々なカチオン構造の改変が可能であり、さらなる高性能化につながると期待できます。
今後は、企業との共同研究(開発パートナー募集中、サンプル提供応相談)を通して、将来的な社会実装を目指します。(特許出願済み)。また、高耐久性リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池の普及を通して、社会の低炭素化に寄与する技術への展開が期待できます。
集電体への接着力が高く、高耐久性を促すバインダー材料として、広範な蓄電デバイスへの応用展開が期待されるほか、新たな高分子化イオン液体材料として、エネルギーデバイス以外の広範な分野における応用も期待できます。

図1.高密度高分子化イオン液体の合成法
図2.PMAI/Gr、PVDF/Gr系の充放電サイクル特性(リチウムイオン二次電池、負極型ハーフセル) (a) 1C(800サイクル)(b) 5C(1000 サイクル);SEI抵抗の電圧依存性(RSEI vs. V) (c)リチウム挿入反応中の電圧 (d)リチウム脱離反応中の電圧

図3.(a)(d) PMAI/HC、PVDF/HC 系の充放電前のSEM像;(b) PMAI/HC (e) PVDF/HC系の充放電後のTop View像;(c) PMAI/HC (f) PVDF/HCの充放電後の断面像
【論文情報】
| 雑誌名 | Advanced Energy Materials |
| 題目 | Densely Imidazolium Functionalized Water Soluble Poly(ionic liquid) Binder for Enhanced Performance of Carbon Anode in Lithium/Sodium-ion Batteries |
| 著者 | Amarshi Patra and Noriyoshi Matsumi* |
| 掲載日 | 2024年9月12日 |
| DOI | 10.1002/aenm.202403071 |
【用語説明】
電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う二次電池。従来型のニッケル水素型二次電池と比較して高電圧、高密度であり、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車に適用されている。
電解質中のナトリウムイオンが電気伝導を担う二次電池。従来型のリチウムイオン二次電池と比較して原料の調達の利便性やコスト性に優れることから、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車への適用が期待されている。
フマル酸は無水マレイン酸(バイオベース無水マレイン酸を含む)を原料として工業的に生産されるが、糖類に糸状菌を作用させて製造することも可能である。さらに、最近ではCO2を原料とした人工光合成によりフマル酸を生産する技術も脚光を浴びている。CO2もしくは糖類、バイオベース無水マレイン酸から誘導可能なフマル酸を用いた高付加価値な化成品の製造は、カーボンニュートラルへの貢献において魅力あるアプローチといえる。
生物資源由来の原料から合成される高分子材料の総称。低炭素化技術として、その利用の拡充が期待されている。
例えば、ナトリウムイオン二次電池の場合には、アノード極/電解質/Naの構成からなる半電池を意味する。
令和6年9月17日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2024/09/17-1.htmlダイヤモンド結晶中の色中心から飛び出す準粒子を発見
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| 国立大学法人筑波大学 国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 慶應義塾大学 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) |
ダイヤモンド結晶中の色中心から飛び出す準粒子を発見
電子と結晶格子の振動をまとめて一つの粒子とみなしたものをポーラロン準粒子と呼びます。色中心と呼ばれる不純物を導入したダイヤモンド結晶に超短パルスレーザー光を照射し、その反射率の変化を精密測定した結果、ポーラロンが色中心の周りに飛び出して協力しあうことを発見しました。
| ダイヤモンドの結晶中に不純物として窒素(Nitrogen)が存在すると、すぐ隣に炭素原子の抜け穴(空孔:Vacancy)ができることがあります。この窒素と空孔が対になったNitrogen- Vacancy(NV)中心はダイヤモンドの着色にも寄与し、色中心と呼ばれる格子欠陥となります。NV中心には周辺環境の温度や磁場の変化を極めて敏感に検知して量子状態が変わる特性があり、この特性を高空間分解能・高感度なセンサー機能として利用することが期待されています。NV中心の周りの結晶格子の歪み(ひずみ)により、NV中心の電子のエネルギー準位が分裂することが分かっていますが、電子と格子歪みの相互作用メカニズムなど詳細については、ほとんど解明されていませんでした。 本研究では、純度の高いダイヤモンド結晶の表面近傍に、密度を制御したNV中心を極めて薄いシート(ナノシート)状に導入しました。そのシートにパルスレーザーを照射し、ダイヤモンドの格子振動の様子を調べた結果、NV中心の密度が比較的低いにもかかわらず、格子振動の振幅が約13倍に増強されることが分かりました。そこで、量子力学に基づく計算手法(第一原理計算)でNV中心の周りの電荷状態を計算したところ、正負の電荷が偏った状態になっていることが分かりました。 電子と結晶格子の振動をまとめて一つの粒子とみなしたものをポーラロン準粒子と呼び、これにはいくつかのタイプがあります。ダイヤモンドでは、約70年前にフレーリッヒが提案したタイプは形成されないと考えられていましたが、今回の解析結果は、フレーリッヒ型のポーラロンがNV中心から飛び出してナノシート全体に広がっていることを示しています。本研究成果は、ポーラロンを利用したNV中心に基づく量子センシング技術の新たな戦略への道筋を開くものです。 |
【研究代表者】
筑波大学 数理物質系
長谷 宗明 教授
市川 卓人 大学院生(当時)
北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアル・デバイス研究領域
安 東秀 准教授
慶應義塾大学 電気情報工学科
ポール フォンス 教授
【研究の背景】
ダイヤモンドは炭素原子のみからなる結晶で、高い硬度や熱伝導率を持っています。その特性を生かし、研磨材や放熱材料などさまざまな分野で応用されています。
そして、最近注目されているのが量子センサー注1)としての働きです。ダイヤモンド中の不純物には窒素やホウ素などさまざまなものがあります。その中でも、不純物原子で置換された点欠陥注2)に電子や正孔が捕捉され発光を伴う種類のものは、ダイヤモンドを着色させるため「色中心」と呼ばれ、量子準位の変化で温度や電場を読み取る量子センサーとして用いられています。量子センサーの中でも、ダイヤモンドに導入した窒素―空孔(NV)中心注3)と呼ばれる複合欠陥を用いたセンサーは、高空間分解能・高感度を必要とする細胞内計測やデバイス評価装置のセンサーへの応用が期待されています。
NV中心の周りの炭素原子の格子にはヤーン・テラー効果注4)により歪みが生じていることが分かっており、この格子歪みに伴いNV中心の電子状態が分裂し、NV中心からの発光強度などに影響を与えることが知られています。しかし、その格子歪みに関しては、ポーラロン注5)の存在が示唆されるものの、電子と格子振動の相互作用の観点からは十分な解明がなされていませんでした。
【研究内容と成果】
本研究では、極めて不純物が少ない高品質のダイヤモンド結晶に窒素イオン(14N+)を4種類の線量(ドーズ)で注入することで、NV中心の密度を制御しながら表面近傍40ナノメートルの深さに導入し、そのナノシートにおける炭素原子の集団運動(格子振動:フォノン注6))の様子を調べました。
フェムト秒(1000兆分の1秒、fs)の時間だけ近赤外域の波長で瞬く超短パルスレーザー注7)を、NV中心を導入した高純度ダイヤモンド単結晶に照射し、ポンプ・プローブ分光法注8)によりダイヤモンド試料表面における反射率の変化を精密に計測しました。その結果、ポンプパルス照射直後(時間ゼロ)に見られる超高速に応答する電気・光学効果注9)の信号に加え、結晶中に発生した40テラヘルツ(1012 Hz)の極めて高い周波数を持つ位相がそろった格子振動を検出することに成功しました(図1)。さらにNV中心の密度を変化させて計測を行ったところ、14N+ドーズ量が1x1012/cm2のときに、格子振動の振幅(波形の縦軸方向の幅)が約13倍にも増強されることが分かりました(図2)。
通常の固体結晶では、格子欠陥を導入すると欠陥による格子振動の減衰が大きくなるため、格子振動の振幅は小さくなることが知られており、約13倍もの増強は固体物理学の範疇では説明できません。そこで第一原理計算注10)を用いて、NV中心の周りの電荷状態を計算したところ、正負の電荷が偏った状態になっていることが分かりました。これは、NV中心の周りに分極が発生しており、ヤーン・テラー効果によるポーラロンとは全く異なるフレーリッヒ型ポーラロン注11)がNV中心の周りに存在していることを示唆しています。また、約13倍もの格子振動の増強は、フレーリッヒ型ポーラロンがNV中心近傍から飛び出してナノシート全体に広がり、互いに協力し合っていることを示しています(図3)。一方、さらにドーズ量が増加すると、今度は欠陥による減衰により格子振動の振幅が小さくなることも分かりました(図2)。よって、ドーズ量が1x1012/cm2の時に増強と減衰がつり合い、最も協力現象が起こりやすいことが示されました。
【今後の展開】
本研究グループではこれまで、ダイヤモンド結晶にNV中心を人工的に導入し、ダイヤモンド結晶の反転対称性を破ることで、2次の非線形光学効果である第二高調波発生(SHG)が発現することを報告しました。SHGは結晶にレーザー光を照射した際に、そのレーザー周波数の2倍の周波数の光が発生する現象です。今回の成果は、これらの先行研究に基づいたものです。
今回明らかにした物理的メカニズムは、レーザーパルスの強い電場下で起こるNV中心近傍のフレーリッヒ相互作用による協力的ポーラロンの生成と、それによるダイヤモンド格子振動の増強を示唆しています。また、今回観測したダイヤモンドの格子振動は、固体材料の中で最も高い周波数を持っています。つまり、これらの結果は、40テラヘルツという極めて高い周波数の格子歪み場による電子と格子振動の相互作用(ポーラロン準粒子)を利用したNV中心に基づく量子センシング技術の開発に向けた新たな戦略への道筋を開くものと言えます。
【参考図】

図1 本研究で行なった実験の概要図
NV中心なし、およびNV中心ありのダイヤモンド試料で得られた時間分解反射率信号。挿入図はNV中心の局所構造(楕円)およびポンプ・プローブ分光法の概要を示している。挿入図中の紫色の球が窒素(Nitrogen)を、点線で描かれた円が空孔(Vacancy)を示す。ポンプパルスを照射したのち、プローブパルスを照射するまでの時間を遅延時間(単位はfs)と呼ぶ。

図2 実験で得られた位相がそろった格子振動信号のドーズ依存性
NV中心なし、および4種類の窒素イオン(14N+)のドーズ量におけるダイヤモンド試料の時間分解反射率変化信号。黒線は、位相がそろった格子振動の信号を減衰型の正弦波(sin関数)によりフィットした結果である。ドーズ量が1x1012 N+cm-2の時に、位相がそろった格子振動の振幅がNV中心なしの場合と比較して約13倍に増強されていることが分かった。

図3 NVダイヤモンドにおける協力的ポーラロニック描像の模式図
図中のτは、パルスレーザー(ポンプパルス)照射後の経過時間(単位はfs)を表す。(a) 励起前のNVダイヤモンドの電荷状態を示す。NV中心は負に帯電したNV-状態(赤色の電荷分布)と電荷が中和されたNV0状態(緑色の電荷分布)が混在し、それぞれは局在している。挿入図はイオン化ポテンシャルINVを示し、rはイオン半径である。 (b) 光励起により、NV中心はポンプ電場Epumpによってイオン化される。 (c) 光励起直後、電荷は強く非局在化され、NV中心間の距離にわたって広がり、非線形分極PNLを形成する。 (d) 非線形分極PNLによりコヒーレントな(位相のそろった)格子振動が駆動される。
【用語解説】
量子化したエネルギー準位や量子もつれなどの量子効果を利用して、磁場、電場、温度などの物理量を超高感度で計測する手法のこと。
結晶格子中に原子1個程度で存在する格子欠陥を指す。原子の抜け穴である空孔や不純物原子で置換された置換型欠陥などがある。
ダイヤモンドは炭素原子から構成される結晶だが、結晶中に不純物として窒素(Nitrogen)が存在すると、すぐ隣に炭素原子の抜け穴(空孔:Vacancy)ができることがある。この窒素と空孔が対になった「NV(Nitrogen-Vacancy)中心」は、ダイヤモンドの着色にも寄与する色中心と呼ばれる格子欠陥となる。NV中心には、周辺環境の温度や磁場の変化を極めて敏感に検知して量子状態が変わる特性があり、この特性をセンサー機能として利用することができる。このため、NV中心を持つダイヤモンドは「量子センサー」と呼ばれ、次世代の超高感度センサーとして注目されている。
固体中において、電子的に縮退した基底状態を持つ場合、結晶格子は変形する(歪ませる)ことによりエネルギーが低く安定な状態になる。このような効果をヤーン・テラー効果という。1937年にイギリスのハーマン・アーサー・ヤーンとハンガリーのエドワード・テラーにより提唱された。
結晶中の格子振動と電子が相互作用すると、結合して相互作用の衣を着た素励起である準粒子、すなわちポーラロンが生成される。ポーラロンの存在は1933年にロシアの物理学者レフ・ダヴィドヴィッチ・ランダウによって提案された。フレーリッヒが提案したタイプのポーラロン注11)はこれまで極性をもつ半導体や誘電体など(分極を有する材料)で報告されているが、ダイヤモンドは極性材料ではないため、フレーリッヒ型ポーラロンは観測されていなかった。
原子の集団振動を格子振動と呼ぶ。格子振動を量子化したものをフォノンと呼ぶ。
パルスレーザーの中でも特にパルス幅(時間幅)がフェムト秒以下の極めて短いレーザーのこと。光電場の振幅が極めて大きいため、2次や3次の非線形光学効果を引き起こすことができる。
強い励起パルス(ポンプパルス)により試料を励起し、時間遅延をおいて弱い探索パルス(プローブパルス)を照射し、プローブ光による反射率変化などから試料内部に励起された物質の応答を計測する手法のこと。
物質に電場を印可すると、その強度に応じて屈折率が変化する効果のこと。
「もっとも基本的な原理に基づく計算」という意味で、量子力学の基本法則に基づいた電子状態理論を用いて電子状態を解く計算手法である。物質の光学特性などの物性を求めることができる。
電子と縦波光学フォノンの間の相互作用をフレーリッヒ相互作用と呼ぶ。1954年にドイツの物理学者ヘルベルト・フレーリッヒにより提唱された。この相互作用により生じたポーラロンがフレーリッヒ型ポーラロンである。
【研究資金】
本研究は、科研費による研究プロジェクト(22H01151, 22J11423, 22KJ0409, 23K22422, 24K01286)、および科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業CREST「ダイヤモンドを用いた時空間極限量子センシング」(研究代表者:長谷 宗明)(JPMJCR1875)の一環として実施されました。
【掲載論文】
| 題名 | Cooperative dynamic polaronic picture of diamond color centers. (ダイヤモンド色中心の協力的な動的ポーラロニック描像) |
| 著者名 | T. Ichikawa, J. Guo, P. Fons, D. Prananto, T. An, and M. Hase |
| 掲載誌 | Nature Communications |
| 掲載日 | 2024年8月30日 |
| DOI | 10.1038/s41467-024-51366-x |
令和6年9月2日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2024/09/02-1.htmlナトリウムイオン2次電池に高性能・高耐久性を付与する高官能基密度バイオベースバインダーを開発
ナトリウムイオン2次電池に高性能・高耐久性を付与する
高官能基密度バイオベースバインダーを開発
ポイント
- バイオベース化合物であるフマル酸エステルを原料とする高官能基密度バインダー(ポリフマル酸)を合成して、ナトリウムイオン2次電池におけるハードカーボン負極のバインダーとして適用した。
- ポリフマル酸/ハードカーボン系は、12.5 Nと基盤からの高い引きはがし力を要し、ポリアクリル酸/ハードカーボン系(11.5 N)、PVDF/ハードカーボン系(9.8 N)よりも吸着力が顕著に高かった。
- ポリフマル酸/ハードカーボン系を負極としたナトリウムイオン2次電池は、ポリアクリル酸/ハードカーボン系、PVDF/ハードカーボン系のいずれと比較しても放電容量、耐久性、レート特性等において優れていた。また、他系とは異なり、充放電後の負極はクラック形成や集電体からの剥離を示さなかった。
- 集電体への接着力が高く、高耐久性を促すバインダー材料として、ナトリウムイオン2次電池のみならず広範な蓄電デバイスへの応用展開が期待される。
| 北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)(学長・寺野稔、石川県能美市)の先端科学技術研究科 松見紀佳教授(物質化学フロンティア研究領域)、Amarshi Patra大学院生(博士後期課程)は、ナトリウムイオン2次電池*1の耐久性を大幅に高めつつ、高耐久性を促すバイオベース負極バインダーの開発に成功した。 |
【研究背景と内容】
今日、リチウムイオン2次電池との比較において、資源調達の利便性やコスト性に優れるナトリウムイオン2次電池の研究開発が国内外において活発に進められている。ハードカーボン負極に用いられるバインダーとしては、PVDFのほかポリアクリル酸誘導体、カルボキシメチルセルロース塩等が挙げられるが、特にナトリウムイオンの電極内における低い拡散性に対処するため、イオン拡散に優位な特性を有するバインダー開発が求められる。
従来型のポリアクリル酸の場合には、高分子主鎖において炭素原子ひとつおきに官能基としてのカルボン酸を有しているが、ポリフマル酸においては、主鎖を構成するすべての炭素原子上にカルボン酸を有し、高官能基密度高分子となっている。このようなポリフマル酸の構造的特質は、多点相互作用による集電体へのより強固な接着を促すとともに、高密度なイオンホッピングサイトによる高い金属カチオン拡散性をもたらすと期待できる。
加えて、フマル酸*2はバイオベース化合物であり、バイオベースポリマー*3としてのポリフマル酸の広範な活用は低炭素化技術としても魅力的である。フマル酸エステルのラジカル重合によるポリフマル酸エステルの加水分解において、ポリフマル酸を得た(図1)。ポリフマル酸の合成に関しては1984年に大津らが重合法を報告したが、電池研究への適用研究は行われていなかった。
本研究では、ハードカーボン、カーボンブラック(Super P)、ポリフマル酸から水系スラリーを作製し、銅箔上にコーティング、乾燥後負極とした。1.0M NaClO4 in EC: PC = 1:1 (v/v)を電解液としてアノード型ハーフセル*4を構築し、各種電気化学評価及び電池評価を行った。
電気化学評価に先立ち、基盤からの引きはがし力評価を行ったところ、ポリフマル酸/ハードカーボン系は、12.5 Nと基盤からの高い引きはがし力を要し、ポリアクリル酸/ハードカーボン系(11.5 N)、PVDF/ハードカーボン系(9.8 N)よりも吸着力が顕著に高かった(図2)。
また、充放電試験においては、上記のアノード型ハーフセルは30 mAg-1及び60 mAg-1の電流密度において、それぞれ288 mAhg-1及び254 mAhg-1の放電容量を示し、PVDF系やポリアクリル酸系と比較して顕著に優れた性能を示した(図3)。また、長期サイクル耐久性においても優れていた。さらに、負極におけるナトリウムイオン拡散係数はポリフマル酸/ハードカーボン系では1.90x10-13 cm2/s、ポリアクリル酸/ハードカーボン系では1.75x10-13cm2/s、PVDF/ハードカーボン系では8.88x10-14 cm2/sであった。
充放電後の負極をSEMによる断面像から観察したところ、ポリフマル酸/ハードカーボン系では、他系(ポリアクリル酸/ハードカーボン系、PVDF/ハードカーボン系)とは異なり、系内におけるクラック形成や集電体からの剥離が認められなかったことから、大幅に耐久性が改善されていることが示された(図4)。充放電後の負極のXPSスペクトルにおいては、ポリフマル酸系ではバインダー由来の高濃度の酸素原子の含有が観測されることに加え(図4)、Na2CO3、Na2O、NaCl等の無機成分も他のバインダー系よりも多く含まれ、ナトリウムイオンの高速な拡散に寄与しつつ電解液の更なる分解を抑制していると考えられる。
本成果は、Journal of Materials Chemistry A(英国王立化学会)(IF 11.9)オンライン版に5月10日(英国時間)に掲載された。また、Cover ArtのOutside Back Coverとしての採用も内定している。
【今後の展開】
本高分子材料においては種々の高分子反応等による様々な構造の改変が可能であり、さらなる高性能化につながると期待できる。
今後は、企業との共同研究(開発パートナー募集中、サンプル提供応相談)を通して将来的な社会実装を目指す(特許出願済み)。高耐久性ナトリウムイオン2次電池の普及を通して社会の低炭素化に寄与する技術への展開を期待したい。
集電体への接着力が高く、高耐久性を促すバインダー材料として、ナトリウムイオン2次電池のみならず広範な蓄電デバイスへの応用展開が期待される。

図1.ポリフマル酸の合成スキーム

図2.各バインダー系における引きはがし試験

図3.各バインダー系における負極型ハーフセルの充放電サイクル特性

図4.各バインダー系における充放電後の各負極のXPS(C1s)スペクトル及びSEM断面像
【論文情報】
| 雑誌名 | Journal of Materials Chemistry A |
| 題目 | Water Soluble Densely Functionalized Poly(hydroxycarbonylmethylene) Binder for Higher-Performance Hard Carbon Anode-based Sodium-ion Batteries |
| 著者 | Amarshi Patra and Noriyoshi Matsumi* |
| 掲載日 | 2024年5月10日 |
| DOI | 10.1039/D4TA00285G |
【用語説明】
電解質中のナトリウムイオンが電気伝導を担う2次電池。従来型のリチウムイオン2次電池と比較して原料の調達の利便性やコスト性に優れることから、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車への適用が期待されている。
フマル酸は無水マレイン酸(バイオベース無水マレイン酸を含む)を原料として工業的に生産されるが、糖類に糸状菌を作用させて製造することも可能である。さらに、最近ではCO2を原料とした人工光合成によりフマル酸を生産する技術も脚光を浴びている。CO2もしくは糖類、バイオベース無水マレイン酸から誘導可能なフマル酸を用いた高付加価値な化成品の製造は、カーボンニュートラルへの貢献において魅力あるアプローチといえる。
生物資源由来の原料から合成される高分子材料の総称。低炭素化技術として、その利用の拡充が期待されている。
ナトリウムイオン2次電池の場合には、アノード極/電解質/Naの構成からなる半電池を意味する。
令和6年5月20日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2024/05/20-1.htmlポリビニルホスホン酸を用いたリチウムイオン2次電池におけるマイクロシリコンオキシド負極の安定化に成功
ポリビニルホスホン酸を用いたリチウムイオン2次電池における
マイクロシリコンオキシド負極の安定化に成功
ポイント
- ポリビニルホスホン酸をリチウムイオン2次電池のマイクロシリコンオキシド負極のバインダーとして適用することにより、その優れた接着性を活かして負極を安定化させることに成功した。
- 作製したアノード型ハーフセルは1000 mAg-1の電流密度において200サイクル後に650 mAhgSiO+C-1(1300 mAhgSiO-1)を維持した。
- ポリビニルホスホン酸は銅箔への接着において、ポリアクリル酸(2.03 N/m)と比較して大幅に高い接着力(3.44 N/m)を要した。
- ポリビニルホスホン酸をバインダーとした場合には、ポリアクリル酸やポリフッ化ビニリデンをバインダーとした場合とは異なり、200回の充放電サイクル後においてもSEM像において集電体からの剥離は観測されなかった。
| 北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)(学長・寺野稔、石川県能美市)の先端科学技術研究科 松見紀佳教授(物質化学フロンティア研究領域)、高森紀行大学院生(博士後期課程)、テジキランピンディ ジャヤクマール元大学院生、ラージャシェーカル バダム元講師(物質化学フロンティア研究領域)、丸善石油化学株式会社らのグループは、リチウムイオン2次電池*1における負極バインダーとしてのポリビニルホスホン酸がマイクロシリコンオキシド負極を高度に安定化することを見出した。 |
【研究内容と背景】
リチウムイオン2次電池の負極材開発において、マイクロシリコンオキシドはシリコンと比較して比較的穏やかな体積変化を示すため、活用が広範に検討されている。しかし、なお体積変化による負極性能の劣化を抑制できるバインダーの開発が望まれている。
本研究においては、ポリビニルホスホン酸をマイクロシリコンオキシド負極のバインダーとして活用することにより、ポリアクリル酸の場合と比較して顕著に電池のサイクル特性が向上することを見出した。
ポリビニルホスホン酸に関してDFT計算で電子構造を計算すると、LUMOレベルは-1.92 eVであり、ポリアクリル酸(-1.16 eV)やエチレンカーボネート(-0.31 eV)のそれよりも大幅に低い。負極側近傍においてエチレンカーボネートの還元分解に先立ってポリビニルホスホン酸の還元が起こることが想定され、エチレンカーボネートの過剰な分解の抑制、すなわち被膜形成の抑制と界面抵抗の抑制につながると考えられる。
ポリビニルホスホン酸(PVPA)を銅箔でサンドイッチした系の引き剥がしに要する応力を評価したところ3.44 N/mであり、ポリアクリル酸(PAA)(2.03 N/m)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(0.439 N/m)と比較して大幅に高い接着力を示した(図1)。

図1.(a)ポリビニルホスホン酸、(b)ポリアクリル酸、(c) ポリフッ化ビニリデンの構造式
負極の組成をマイクロサイズSiO:グラファイト:ポリビニルホスホン酸:アセチレンブラック:カルボキシメチルセルロース=30:30:20:15:5とし、EC:DEC = 1:1(v/v)LiPF6溶液を電解液としてアノード型ハーフセル*2を構築した。
アノード型ハーフセルのサイクリックボルタモグラムでは、ポリビニルホスホン酸バインダーを用いた場合にのみ第一サイクルにおいてバインダーの還元ピークが観測された。また、本系ではLi挿入・脱挿入の可逆的な両ピークが他のバインダー系(PAA、PVDF)以上に明瞭に観測された(図2b-d)。
アノード型ハーフセルの充放電特性評価を行ったところ、ポリビニルホスホン酸バインダー系では1000 mAg-1の電流密度において200サイクル後に650 mAhgSiO+C-1以上の放電容量(1300 mAhgSiO-1以上の放電容量)を維持した(図2e)。一方、ポリアクリル酸バインダー系では、200サイクル後には300 mAhgSiO+C-1まで放電容量が低下した。また、ポリフッ化ビニリデンバインダー系の耐久性はさらに低く、200サイクル後には初期容量の20%の容量を維持するにとどまった。
グラファイトを用いずに負極におけるSiO組成を増加させた系についても検討したところ(SiO:ポリビニルホスホン酸:アセチレンブラック:カルボキシメチルセルロース=60:20:15:5)、0.21 mgSiOcm-2、0.85 mgSiOcm-2、1.84 mgSiOcm-2の活物質の塗布量においてそれぞれ100サイクル後に92.2%、90.9%、60.8%の容量維持率を示した(図2g)。

図2.(a)各アノード型ハーフセルの充放電曲線、(b)(c)(d)各アノード型ハーフセルのサイクリックボルタモグラム、(e)各アノード型ハーフセルの充放電サイクル特性、(f) 各アノード型ハーフセルの充放電レート特性、(g)各アノード型ハーフセルにおける活物質担持量の影響
200サイクルの充放電サイクル後、電池セルを分解して負極をSEM観察したところ、ポリビニルホスホン酸バインダー系においては集電体からの剥離は観測されなかった。一方、比較対象のポリアクリル酸バインダー系、ポリフッ化ビニリデンバインダー系では集電体からの剥離が観察された(図3)。

図3.各バインダーを用いた系の充放電前後の負極のSEM像及び充電後の膨張率
ポリビニルホスホン酸バインダーを用いたSiO負極とLiFePO4正極を組み合わせたフルセルも構築し、1.5 mAh以上の放電を150サイクルにわたって観測した。
本成果は、ACS Applied Energy Materials (米国化学会)のオンライン版に2024年2月8日に掲載された。
なお、本研究は、科学技術振興機構(JST)の次世代研究者挑戦的研究プログラムJPMJSP2102の支援を受けて実施した。
【今後の展開】
ポリビニルホルホン酸の優れた結着性を活用し、さらに様々なエネルギーデバイスへの適用範囲の拡充が期待される。
本材料はすでに丸善石油化学株式会社が生産技術を保有しており、国内特許、外国特許共に出願済みである(北陸先端科学技術大学院大学、丸善石油化学株式会社の共同出願)。
今後は、さらに電池製造に直接的に関わる企業との協同的取り組みへの展開を期待しており、電池製造技術を保有しつつ北陸先端科学技術大学院大学、丸善石油化学株式会社と三極的に連携できる企業の実用研究への参画を求めたい。
【論文情報】
| 雑誌名 | ACS Applied Energy Materials (米国化学会) |
| 題目 | Facile Stabilization of Microsilicon Oxide Based Li-Ion Battery Anode Using Poly(vinylphosphonic acid) |
| 著者 | Noriyuki Takamori, Tadashi Yamazaki, Takuro Furukawa, Tejkiran Pindi Jayakumar, Rajashekar Badam, Noriyoshi Matsumi* |
| 掲載日 | 2024年2月8日 |
| DOI | 10.1021/acsaem.3c02127 |
【用語説明】
電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う2次電池。従来型のニッケル水素型2次電池と比較して高電圧、高密度であり、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車に適用されている。
リチウムイオン2次電池の場合には、アノード極/電解質/Liの構成からなる半電池を意味する。
令和6年2月14日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2024/02/14-1.html【1/11(木)~12(金)開催】JAIST International Symposium on Nano-Materials for Novel Devices 2023(JAIST-NMND2023)
| 開催日時 | 2024年1月11日(木)13:00 - 21:00 2024年1月12日(金)10:00 - 12:00 |
| 会 場 | 金沢商工会議所 ホール |
| 参加費 | 一般 5,000円、学生 3,000円 |
| 講演者 | 基調講演者
Prof. Jana Vejpravova(カレル大学) 吾郷 浩樹 教授(九州大学 グローバルイノベーションセンター) 高村由起子 教授(ナノマテリアル・デバイス研究領域) |
| ポスター セッション |
主に、院生や若手研究者を対象にしています(50件)。 研究内容をアピールする良い機会ですので、積極的にご応募ください。 優れた発表に対し、若手優秀賞(副賞)が贈呈されます。 なお、このセッションは、1月11日(木)午後6時から9時まで行います。 |
| 言 語 | 英語 |
| 詳 細 | 詳細は下記ホームページをご覧ください。 https://www.jaist-nmnd2023.com/ |
| 参加申込み | ホームページの登録フォームより、12月8日(金)までにお申し込みください。 |
「世界で最も影響力のある科学者トップ2%」に本学から8名の教員が選出
エルゼビア社(寄稿者:スタンフォード大学John P.A. Ioannidis教授)が2025年9月19日に更新・発表した、科学分野で影響度の高い科学者を特定する「標準化された引用指標に基づく科学著者データベース"Updated science-wide author databases of standardized citation indicators"」の最新版において、本学から「単年(single recent year)」区分(2024年)で8名(「生涯(career-long)」区分で10名)の在籍教員が選出されました。
このリストは、エルゼビア社が提供する抄録・索引データベースScopusに基づき、22の科学分野と174のサブ分野において、5本以上の論文を発表した世界中の科学者を対象としたもので、各サブ分野で被引用数の上位2%に該当する研究者が毎年選出されています。
2024年単一年度(single recent year)区分 8名 ※研究領域順
| 氏名、英語表記 | 研究領域 | ランクされたサブ分野 |
| クサリ 准教授 Koohsari, Mohammad Javad |
創造社会デザイン | Public Health| Urban & Regional Planning |
| 藤﨑 英一郎 教授 Fujisaki, Eiichiro |
コンピューティング科学 | Artificial Intelligence & Image Processing| Networking & Telecommunications |
| 上田 純平 准教授 Ueda, Jumpei |
物質化学フロンティア | Applied Physics| Nanoscience & Nanotechnology |
| 栗澤 元一 教授 Kurisawa, Motoichi |
物質化学フロンティア | Biomedical Engineering| Polymers |
| 後藤 和馬 教授 Gotoh, Kazuma |
物質化学フロンティア | Inorganic & Nuclear Chemistry| Nanoscience & Nanotechnology |
| 長尾 祐樹 教授 Nagao, Yuki |
物質化学フロンティア | Energy| Polymers |
| 西村 俊 准教授 Nishimura, Shun |
物質化学フロンティア | Organic Chemistry| Physical Chemistry |
| 山口 政之 教授 Yamaguchi, Masayuki |
物質化学フロンティア | Polymers| Materials |
生涯(Career)区分 10名 ※研究領域順
| 氏名、英語表記 | 研究領域 | ランクされたサブ分野 |
| ヒュン ナム ヤン教授 Van-Nam, Huynh |
共創インテリジェンス | Artificial Intelligence & Image Processing| Operations Research |
| 藤﨑 英一郎 教授 Fujisaki, Eiichiro |
コンピューティング科学 | Artificial Intelligence & Image Processing| Networking & Telecommunications |
| 浅野 文彦 准教授 Asano, Fumihiko |
人間情報学 | Industrial Engineering & Automation| Design Practice & Management |
| 上田 純平 准教授 Ueda, Jumpei |
物質化学フロンティア | Applied Physics| Nanoscience & Nanotechnology |
| 栗澤 元一 教授 Kurisawa, Motoichi |
物質化学フロンティア | Biomedical Engineering| Polymers |
| 長尾 祐樹 教授 Nagao, Yuki |
物質化学フロンティア | Energy| Polymers |
| 松村 和明 教授 Matsumura, Kazuaki |
物質化学フロンティア | Biomedical Engineering| Polymers |
| 山口 政之 教授 Yamaguchi, Masayuki |
物質化学フロンティア | Polymers| Materials |
| 前之園 信也 教授 Maenosono, Shinya |
ナノマテリアル・デバイス | Applied Physics| Chemical Physic |
| 芳坂 貴弘 教授 Hohsaka, Takahiro |
バイオ機能医工学 | General Chemistry| Organic Chemistry |
【参照サイト】
[Elsevier Data Repository]
August 2025 data-update for "Updated science-wide author databases of standardized citation indicators"
https://elsevier.digitalcommonsdata.com/datasets/btchxktzyw/8
Published: 19 September 2025
DOI:10.17632/btchxktzyw.8
2025年度JST戦略的創造研究推進事業(CREST・ACT-X)に採択
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「戦略的創造研究推進事業(CREST・ACT-X)」において、本学の研究提案からCREST1件、ACT-X1件が採択されました。
採択者および採択課題は以下のとおりです。
【CREST】
研究代表者:ナノマテリアル・デバイス研究領域 ホ アン ヴァン教授
研究課題名:Cross-X: AI 駆動型の触覚・近接センシングおよび適応的コンポーネントによる、多様な形態に対応した身体知能の実現
研究領域:実環境知能システムを実現する基礎理論と基盤技術の創出
研究概要:
本研究は、全身にわたるマルチモーダルセンシングを、適応的形態、事前学習知識、継続学習と統合し、迅速かつ頑健に応答できる物理知能モジュールを構築することを目的とする。さらに、各モジュールにおける局所的なセンシング・駆動から、ロボット全体における統合的な機能発現へと至る「身体知能」の科学的基盤を確立し、次世代ロボティクスの新しいパラダイムを切り拓くことが期待される。
【ACT-X】
研究代表者:コンピューティング科学研究領域 鎌田 斗南助教
研究課題名:連続と離散を横断する計算基盤の確立と実問題への接続
研究領域:次世代 AI を築く数理・情報科学の革新
研究概要:
近年の計算機科学の発展により、実社会の多様な課題を計算機で扱うことが可能となった。しかし、社会課題の多くは本来的に連続的であり、計算機が扱う離散的な近似との間には根本的な差異がある。そのため、問題の困難性と容易性の境界を理解するためには、連続性を計算機上で扱う新たな枠組みが必要である。本研究では、実社会の問題を実数変数の決定問題としてモデル化し、その計算量解析を通じて、体系的な数理基盤を確立する。
CREST:
CRESTは、我が国が直面する重要な課題の克服に向けて、独創的で国際的に高い水準の目的基礎研究を推進し、社会・経済の変革をもたらす科学技術イノベーションに大きく寄与する、新たな科学知識に基づく創造的で卓越した革新的技術のシーズ(新技術シーズ)を創出することを目的とするネットワーク型(チーム型)研究です。
「実環境知能システムを実現する基礎理論と基盤技術の創出」領域では、実環境・物理空間における多様かつ予測困難な状況変化に対して柔軟かつ安全に対応できる知能システム(Physical AI)の構築に向けた基礎学理と基盤技術の創出を目指します。AI とロボティクスやIoT との連携により AI に身体性を付与するなど、知能、機械、数理、制御、計算、通信、神経科学等の学術分野の融合による高度な知能システム構築に資する研究開発を推進します。
▶ 戦略的創造研究推進事業(CREST)
ACT-X:
ACT-Xは、我が国が直面する重要な課題の克服に向けて、優れた若手研究者を発掘し育成することを目的としたネットワーク型(個人型)研究です。
「次世代AIを築く数理・情報科学の革新」領域では、既存のAI技術の限界・困難を克服するため、AI 技術・情報科学および数学・数理科学、その他様々な研究分野の融合・応用による AI技術の高度化や適用範囲の拡大などの、挑戦的な研究課題に取り組む若手研究者を支援することで、新しい価値の創造につながる研究開発を推進します。
▶ 戦略的創造研究推進事業(ACT-X)
令和7年9月29日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2025/09/29-2.html人と安全に協働できる"ソフトロボットリンク"を開発 触れてわかる、近づいて感じる-近接覚と触覚のハイブリッドセンシング技術「ProTac」
人と安全に協働できる"ソフトロボットリンク"を開発
触れてわかる、近づいて感じる-近接覚と触覚のハイブリッドセンシング技術「ProTac」
【ポイント】
- 透明・不透明を切り替えられるソフトスキンと視覚センサーを用い、近接センシングとスキン変形の解析による触覚センシングを備えたマルチモーダルソフトセンシング技術「ProTac」を開発
- 市販ロボットアームにも取り付け可能
- 従来の剛体リンクでは困難とされる、接触の多い環境下での動作制御が可能
- 農業や介護など、人とロボットが協働する作業への応用に期待
- AI駆動型センシングフュージョン技術
| 北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアル・デバイス研究領域のクアン・ハン・ルウ研究員、ホ・アン・ヴァン教授らの研究チームは、透明・不透明を電圧により切り替えられるソフト素材と視覚センシング技術を融合し、近接・触覚の両モードを切り替えて検知できるマルチモーダルソフトセンシング技術「ProTac」を世界で初めて開発しました。ProTacを用いたソフトロボットリンクは、周囲の物体を検知する近接センシングとマーカー画像の変化から触覚情報を読み取る触覚センシングを一台で切り替えて行うことができ、人との接触が多い環境で安全に動作制御が可能です。なお、本研究成果は、2025年7月28日にIEEE Transactions on Robotics(T-RO)に掲載されました。 |
【研究概要】
近年、人と同じ空間で安全かつ柔軟に作業できるロボットのニーズが高まっています。これに応えるため、私たちの研究チームは、ソフト機能材料と画像や映像から情報を取得・解析する技術である視覚センシング技術を融合した新しいマルチモーダルソフトセンシング技術「ProTac」(図1)を開発しました。
ProTacは、電圧をかけることで透明・不透明を切り替えられるポリマーディスパースド液晶(PDLC)フィルム注1)と内蔵カメラを組み合わせています。透明時には視界を活用して周囲の物体の近接を検知し、不透明時にはマーカー画像の変化から触覚情報の取得を実現します。また、最新の深層学習ベースの視覚アルゴリズムを用いることで、安定したリアルタイムセンシングが可能です。

図1:ProTacのイメージ図
この技術を用いたソフトロボットリンクは、市販のロボットアームやカスタム製作されたソフトロボットにも取り付け可能で、障害物検知に基づく速度調整や接触時の反射動作など、多様な制御戦略を実現します。ProTacを備えたソフト多機能センシングアームは、人とロボットが密に連携する場面や、従来の剛体リンクでは困難な動作制御において高い性能を示しました。
今後は、この技術を手足や胴体などロボットの各部位に応用し、高機能なマルチモーダルスキンを備えたヒューマノイドロボットの実現が期待されます。また、農業、家庭サービス、介護分野など、幅広い分野での応用も見込まれます。
【研究資金】
本研究は、日本学術振興会 科学研究費補助金 特別研究員奨励費(24KJ1203)、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)さきがけ(JPMJPR2038)による財政的支援を受けて実施されました。
【論文情報】
| 掲載誌 | IEEE Transactions on Robotics |
| 論文タイトル | Vision-based Proximity and Tactile Sensing for Robot Arms: Design, Perception, and Control |
| 著者 | Quan Khanh Luu, Dinh Quang Nguyen, Nhan Huu Nguyen, Nam Phuong Dam, Van Anh Ho |
| 掲載日 | 2025年7月28日 |
| DOI | 10.1109/TRO.2025.3593087 |
【用語説明】
電圧により透明・不透明を切り替えられる液晶材料。柔軟であり、ディスプレイやスマートウィンドウなどの光の透過を制御する用途に使用される。
令和7年8月22日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/08/22-1.html第5回 金沢大学・北陸先端科学技術大学院大学 共同シンポジウム
| 開催日時 | 令和7年9月29日(月)13:30~17:00 |
| 会 場 | 北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス系講義棟1階 小ホール ※オンラインにて同時配信(ハイフレックス開催) |
| 対 象 | 両大学の教職員・学生 |
| テーマ | 量子科学 |
| プログラム | 13:30~ オープニング(本シンポジウムの趣旨説明等) 13:35~ 開会挨拶 北陸先端科学技術大学院大学 寺野 稔 学長 13:40~14:20 ≪講演1≫ *講演:30分、質疑応答:10分 講演者:石井 史之 教授(金沢大学 ナノマテリアル研究所) 講演タイトル:『保護された量子』を探る ~計算科学が拓く新物質デザイン~ 14:25~15:05 ≪講演2≫ *講演:30分、質疑応答:10分 講演者:リム 勇仁 教授(本学 次世代デジタル社会基盤研究領域) 講演タイトル: The Past, Present, and Future of the Quantum Internet 15:05~15:25 休憩 15:25~16:05 ≪講演3≫ *講演:30分、質疑応答:10分 講演者:李 睿棟 准教授 (金沢大学 理工研究域電子情報通信学系) 講演タイトル:信頼性の高い分散型量子メタバースの実現に向けて 16:10~16:50 ≪講演4≫ *講演:30分、質疑応答:10分 講演者:安 東秀 准教授 (本学 ナノマテリアル・デバイス研究領域) 講演タイトル:ダイヤモンドNV中心を用いた、量子センシング、量子通信、量子コンピュータへの応用 16:50~ 閉会挨拶 金沢大学 和田 隆志 学長 <*終了後~18:00位まで 量子科学の先端的研究に係るポスター展示および研究者間の歓談時間> |
| 参加申込 | 下記申込み用フォームからお申込みください。 https://forms.cloud.microsoft/r/KkNMfyMe7S ※会場での参加、オンライン参加ともに事前申込みが必要です。 ※オンライン参加の方には、アクセス用URLをご連絡いただいたメールアドレスに後日送信いたします。 |
| 本件 問合せ先 |
研究推進課 学術研究推進係 TEL:0761-51-1907 / 1912 E-mail:suishin@ml.jaist.ac.jp |
次世代プロトン電池へ期待 ―多孔質MXene(マキシン)フィルムが高容量・高速充電を実現―
次世代プロトン電池へ期待
―多孔質MXene(マキシン)フィルムが高容量・高速充電を実現―
ポイント
- 次世代電池「プロトン電池」の鍵となる多孔質MXene (マキシン)フィルムを開発
- 素材の穴の量(細孔密度)を調整することで、従来を大きく上回る電池容量と充電性能を実現
- 長寿命でエコな電池づくりに前進、持続可能なエネルギー社会に貢献
| 北陸先端科学技術大学院大学 物質化学フロンティア研究領域のLinh Chi T. Cao大学院生(博士後期課程)、青木健太郎助教、長尾祐樹教授らは、タイ・タマサート大学シリントン国際工学部(SIIT)およびタイ・国立電子コンピューター技術研究センター (NECTEC)と共同で、再生可能エネルギーの普及や電気自動車の進化に伴い需要が高まる高性能エネルギー貯蔵デバイスの実現に向け、次世代型プロトン電池*1の鍵となる多孔質MXene*2,3アノード(陽極)の開発に成功しました。 本研究で開発された多孔質MXeneフィルムは、MXeneを用いた先行研究の中で最高の性能を発揮し、高容量と超高速充電を両立できることが示されました。この成果は、環境負荷の低い、持続可能な電池技術の発展に大きく貢献すると期待されます。 |
【背景】
現代社会では、電気自動車の普及や携帯端末の進化に伴い、効率の良いエネルギー貯蔵システムの重要性が高まっています。長く市場を牽引してきたリチウムイオン電池は、リチウム資源の限界、環境への影響、安全性といった課題を抱えており、資源の乏しい日本が持続可能な発展を遂げるためには、多様なエネルギー資源の活用と高効率な変換技術の確立が不可欠です。
そこで注目されているのが、プロトンと呼ばれる水素原子(H+)を電荷キャリアとして利用するプロトン電池(図1)です。プロトン電池は、水素イオンを使って電気をやりとりする電池で、材料が豊富でエコ、かつ素早く充電できる可能性を秘めており、次世代エネルギー貯蔵の有力候補として注目されています。二次元のナノ材料であるMXeneは、その優れた電気伝導性や高い表面積から、プロトン電池の有望なアノード候補です。しかし、従来のMXeneを薄膜状にしたMXeneフィルムは、MXeneのシート間の相互作用が強く、反応が起こる場所が減少したり、プロトンの輸送が阻害されたりといった課題を抱え、その性能を十分に引き出せていませんでした。

図1 本研究のプロトン電池の模式図
【成果】
本研究では、MXeneアノードの性能向上を目指し、ある物質を鋳型(テンプレート)として利用してその鋳型を犠牲にすることで目的とする物質構造を形成する合成手法である「犠牲テンプレート法」を用いて、細孔密度を系統的に調整した多孔質MXene(P-MX)フィルムを開発しました(図2)。特に、ポリ乳酸(PLA)とMXeneの比率が1:8の条件で合成された「1:8P-MX」アノードは、1 A g−1で104.8 mAh g−1という高容量を達成し、2000サイクル後も96.7%の容量維持率を維持しました(図3)。これは、これまでに報告されたMXeneアノードの中で最高の性能です(図4)。これは、電池を繰り返し使う中で、電解液が素材のすき間にしみ込みやすくなり、さらにプロトンが出入りすることで、素材同士がくっついてしまうのを防ぎ、性能の低下を抑えることができ、反応が起こる場所の増加に繋がったためと考えられます。
さらに、1:8P-MXアノードと銅鉄プルシアンブルー類似体*4(CuPBA)カソード(陰極)を組み合わせた「フルセル」プロトン電池を構築しました。この「フルセル」は、1 mol L−1 H2SO4電解液中で、1 A g−1(17 C)で57.9 mAh g−1、そして10 A g−1(188 C)という高速充電レート*5においても53.3 mAh g−1という高い容量を保持しました。二次電池(充電可能な電池)の充放電におけるエネルギー効率を表す指標である「クーロン効率」は200サイクル後も97%と安定して高い値を示しましたが、容量維持率は65.4%に低下しました。これは、主にCuPBAカソードの電解液中での溶解・分解に起因すると特定され、今後の課題となります。これらの結果は、MXeneアノードにおける細孔設計が、容量とレート性能の両方を向上させる上で極めて重要であることを示しています。

図2 多孔質MXene(P-MX)フィルムの走査電子顕微鏡観察

図3 1:8P-MXフィルムのサイクル特性:電流密度1 A g-1、
電位範囲 −0.7~0.2 Vにおける容量(左軸)および容量保持率(右軸)

図4 本研究におけるMXeneベースのアノード性能と文献との比較
【社会への還元として期待できる内容、今後の展望】
本研究の成果は、最適化された細孔設計を持つMXeneアノードが、高容量で高速充電が可能な次世代プロトン電池の実現に大きく貢献することを示しています。特に、高濃度酸性電解液や追加の活性材料を用いずに、MXeneのみで高性能を実現した点は、環境への影響を低減し、より持続可能なエネルギー貯蔵システムを開発する上で重要な進歩です。今後は、フルセル電池の長期安定性をさらに向上させるため、CuPBAカソードの電解液中での安定性改善に焦点を当てた研究を進めていきます。これにより、1:8P-MXアノードの優れた性能を最大限に引き出し、プロトン電池の実用化を目指します。
本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST(グラント番号 JPMJCR21B3)による財政的支援を受けて実施されました。
【論文情報】
| 掲載誌 | Chemical Engineering Journal |
| 論文タイトル | Porosity-controlled MXene anodes for enhanced rate and long cycle life performance in aqueous proton batteries |
| 著者 | Linh Chi T. Cao*, Kentaro Aoki, Shu-Han Hsu, Sakoolkan Boonruang, Yuki Nagao*(筆頭著者も責任著者) |
| 掲載日 | 2025年7月15日 |
| DOI | 10.1016/j.cej.2025.165882 |
【用語説明】
プロトン(水素イオン、H+)を電荷キャリアとして利用する二次電池の一種です。資源の豊富さや高速な電荷移動が特徴です。
二次元遷移金属炭化物の一種で、高い電気伝導性と表面積を持つ有望な新素材です。
微細な穴(細孔)を多数導入したMXene材料で、電解液の浸透性やイオン輸送経路を改善し、電池性能を向上させます。
プロトン電池のカソード材料として研究される化合物群です。
電池の充電および放電速度を示す指標です。1Cは定格容量を1時間で充放電する速度を意味します。
令和7年7月17日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/07/17-1.html






