Hou Youさんからの報告

私の研究室にいて、2019年3月に前期課程を修了したHoさんは中国に帰って大学で働いていましたが、コロナウィルスの感染爆発では一時的に医師に戻り(本学に入学する前、中国で医師として働いていた。)現場で応対しました。何かしらそこから学べることはないかと二人で話し合っているところです。以下は彼が報告してくれたことをまとめたものです。

以下はHouさんからの報告です:

45名に質問票を送り、35名から有効な回答を得た。質問は7項目あり、どのようなことにストレスを感じたか、ストレスにどう対処したか、どのような心理的影響を受けたか、どのような状況でストレスを感じたかなどを聞いた。回答者のうち29名が普段とは異なるストレスを感じた。また半数以上の20名が不眠や食欲不振に陥り、悲しみ、泣いた。困難な時は過ぎ去ったが、今も半数近い16名が極度のストレスを感じている。

どのようなことに対してストレスを感じたか

ストレスの原因としては、職務の重圧、不十分な感染防止対策、情報の不足、自らの家族への責任感などが挙げられる。あらゆる店舗が営業を停止したので気分転換する場所がなかった。大変な不便を感じた。レストランは閉まっているし、コーヒーを飲みに行く場所はない、日常品を買うこともできない。仕事で長時間、緊張を強いられることもストレスの原因である。

感染を防止するものが不足しているので、マスクの使用量を減らすためマスクを交換する回数を減らさざるを得なかった。僅かな予防手段を長い期間使い回さなければならない。身に纏うものを着替えるのはさらに難しかった。数が足りないということもあるが、脱ぐときに感染する恐れがあったからである。看護婦の多くが大人用おむつを使った。防御服を脱ぐ回数を減らすためである。(防御服を節約できるし、感染リスクを減らすことができる。)こういったニュースは中国でよく報道された。医療現場で市販の大人用おむつを使うとは皮肉なことである。今はこういった問題は解消された。

コロナウィルスをどう扱ったらよいのか、治療法がわからない。ウィルスの感染経路が不明だし、どのような種類なのかもわからない。正確な情報が無いので人々が恐怖した。

家族への配慮もある。医師らはコロナウィルスを家族に伝染させるのではないかと恐れていた。責任が大きい割に給料が安いことも医師らの意欲を挫いた。今の中国の物価からすると医師らの給料は相対的に低い。

いかにしてストレスを解消したか

自分を律することでストレスをコントロールした。スマートフォンをいじったり、泣いたり、音楽を聞いたりした。友達や家族とチャットするのも効果があった。体を動かすのもよい。いろいろな方法でストレスに対処していたが多くの人が挙げたのは「泣く」ことであった。

どのような人であれコロナウィルスに伝染する可能性がある。医師や看護師らは家族らを感染させないため、一人で過ごすことを選択した。孤独であることもストレスの原因となる。そういった状況においては「泣く」こともストレス軽減には役立つだろう。ネットを介してのチャットも効果があった。私自身、ひどい状況のときは毎晩、友人とチャットして気を紛らわせた。平時であれば一緒に食事しながら話すのだが、こういった状況ではスマートフォンでチャットして気を紛らわせるほかない。

ストレスは身体的にどのような影響を及ぼしたか

多くの回答者が不眠、食欲不振を経験した。13名が不安になり、落ち着かず、悲観的になった。

食欲不振は、食品の供給方法に起因すると推測する。感染爆発に対応している間、食料は病院から支給された。自分で買ったわけではない。自分の好物を買えないので食欲が減退したのかもしれない。多くの医師が働いていたが患者数も多かったので、毎日8時間から12時間勤務した。患者の多くが重症であり、1日24時間の絶え間ない監視を必要とする。夜勤が多かったため不眠に陥ったと思われる。(続く)

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