千一億光年トンネル 奥村綱雄

奥村綱雄氏の作品を見に行った。数週間前にNHKのアートシーンで紹介されているのを見て是非とも見たい、見なくてはいけないと思った。最初のチャンスは体の不調で見送ったが、ようやくギャラリーを訪れることが出来た。

布に糸を少しずつ刺して質感のある色彩を作り出すことに惹かれる。「小さな布に1000時間以上」費やすというが、そういう根性物語は別として、それから夜警の仕事の合間に作ったという伝説も別として、作品そのものを見たかった。

ギャラリー地階には 奥村綱雄、Nerhol、水戸部七絵という三人の作品が展示されているのだが、共通するテーマは「2次元と3次元のあいだ」とみた。布に糸を刺していくことで平面ではない、ほのかな凹凸ができる。凹凸が陰を生み出し、質感がでてくる。糸が立体的に光を乱反射することで絵画とは異なった色彩感が得られる。それを追究したのだろう。

もうひとつの特徴は精細な、あるいは繊細な作りにある。細密画に通じる、常識を越えた丁寧さが生み出す超越性がある。じっと見ていると大理石の床のようにも見えてくる。これに類するものを思いつかない。モザイク画のようでもあるが、タイルと糸は質感が違うので似ているとは言い難い。表現の抽象度の高さに惹かれる。敢えて言えばMark Rothkoを思い出させる。でもだいぶ違う。力や構造を感じさせないところがよい。のだろう。

布とは思えない質感がある

布とは思えない質感がある

何針刺したのか数えているらしい

何針刺したのか数えているらしい。どんな計算をしているのだろう。

仕事の過程を見せてくれている

仕事の過程を見せてくれている

裏はこんな感じになっている

裏はこんな感じになっている

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