バルカン半島へ

機内にて読了

機内にて読了

経由地ミュンヘンに到着。乗り換え便を待つ。ここまでの機内で「バルカン」を読了した。この地域に関する知識がほとんどないことに気づいて前夜、急いで紀伊国屋にて買い求めた。オスマントルコの支配を肯定的にとらえているところが特徴かな。民族の違いを理由に差別することがなかったという指摘が目新しかった。イスラム教やキリスト教といった信条が生活習慣と一体となっており、そのなかで人々が複数の宗教を使い分けていたという説明も面白かった。要するに民族主義とかナショナリズムという考え方は19世紀になって西ヨーロッパで生まれ、それが領土拡張主義を刺激するまで人々は平和に共存していたということだ。アルメニア人が100万人単位で虐殺されたり、アナトリアあたりからロシアへ知識人が亡命したりといったことは断片的に知識としてあったが、ギリシア正教とイスラム教の対立、それを利用した西欧諸国といった構図が理解できた。第三者としてみれば、「民族」はひとつの概念であって、宣伝によって流布し、定着したものであろう。日本が単一民族の国家という宣伝も同根であろう。言語や習慣、姿形で人は区別がつくがそれを根拠に国境線をひくのは無理があると感じた。「多民族」国家というのも考え方としては同じところにある気がする。

ヨーロッパ共同体はひとつの理念であるが、これもその根拠をどこに求めるかとなると難しい。トルコが加入を拒否されたが、根は深いとわかった。しかし部外者としては、トルコとの対話を通してEUの思想も深まるのではないかなと(無責任だが)感じた。まぁ、とにかくブルガリア到着前に読むことができて良かった。ブルガリアがEUに加わったのはつい10年前ということも知った。

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